シルバーハウジングとは?費用やメリット・デメリットを解説
「シルバーハウジング」とは、高齢者向けのバリアフリー設備を施した公営高齢者住宅です。「ライフサポートアドバイザー[LSA]」による生活相談、安否の確認、緊急時の対応を受けることができます。事業者は地方公共団体、都市再生機構、住宅供給公社で、高齢者を入居対象者にしていますが、基本的に介護を受けられません。そのため、介護が必要な場合は居宅介護サービスを個人で別途契約する必要があります。「シルバーハウジングとは?費用やメリット・デメリットを解説」では、シルバーハウジングの基本情報をはじめ、利用のメリットとデメリット、入居方法などを詳しくまとめました。
シルバーハウジング誕生の背景

「シルバーハウジング」は、1987年(昭和62年)に人口構成の高齢化が急速に進行するなかで、今後増大すると考えられる高齢単身者・夫婦世帯が、自立して安全かつ快適に生活を営むことができるよう制定された公営高齢者住宅です。
1993年(平成5年)に「ライフサポートアドバイザー常駐型」に「福祉施設連携型」が追加され、1996年(平成8年)には障害者世帯が入居対象者に追加されました。
シルバーハウジングの特徴
シルバーハウジングは高齢者が自立して快適に生活することができるように考えられた公営高齢者住宅で、建物には手すりの設置や段差を抑えたバリアフリー設計を施しています。そして、トイレや浴室に緊急通報装置が設置されているなど、見守り機能が付加された生活を送ることが可能です。
なお、シルバーハウジングのケアサービスは大きく分けて2種類。ひとつは「ライフサポートアドバイザー常駐型」で、ライフサポートアドバイザーによる様々な生活支援サービスを備えています。もうひとつは「福祉施設連携型」で、デイサービスセンターなどの施設と連携したサービスを提供。いずれも高齢者の生活に配慮したサービスを行っています。
シルバーハウジングのメリット
シルバーハウジングは、民間業者が提供する一般的なマンションや、住宅供給公社、都市再生機構が提供する公営高齢者住宅と変わらない生活ができることが最大のメリット。健康状態が良好な方であれば、できる限り、これからもこれまでと同様の生活をしたいものです。
しかし、単身であったり、高齢であったりすると、生活に不安を感じてしまうこともあるでしょう。シルバーハウジングであれば、ライフサポートアドバイザーが近くにおり、日常的な相談や緊急時の支援などを受けることができるため、入居者様はもちろんのこと、その関係者にとっても安心です。
また、バリアフリー設計された施設で緊急通報装置が居室内に設置されているので、安心して生活することができます。
シルバーハウジングのデメリット
シルバーハウジングは、住宅(自宅)としての要素が強いため、老人ホームなどと比較した場合、介護・医療体制が充分ではありません。そのため、体調が急に悪くなった場合などの対応が遅れてしまうことがあります。
また、介護度が重度(要介護4・5)となった場合であっても居宅介護サービスを利用し続けた場合、介護保険の上限額を超えてしまい、介護費用が割高になってしまうことには注意が必要です。もし、介護度が上がってしまった場合は、転居することもひとつの手と言えます。
シルバーハウジングの入居条件
シルバーハウジングに入居できるのは、60歳以上の単身世帯、または夫婦どちらか一方が60歳以上の方、障害者単身世帯または障害者と配偶者からなる世帯の方です。利用料については、利用者の年間所得によって決まり、1万~10万円程度と幅広く、所得が低い人でも入居することができます。
基本的にシルバーハウジングは介護サービスを提供する施設ではありません。入居条件のひとつとして、自立して食事の準備や入浴、排泄などができる方を対象にしており、介護や医療サービスを受けたい場合は、外部のサービス事業者と契約する必要があります。
供給数が不足するシルバーハウジング
高齢化が進んでいる日本では、「シルバーハウジング」を含め、「有料老人ホーム」や「グループホーム」など、高齢者住宅・施設の供給は慢性的に不足しているのが現状です。なかでもシルバーハウジングについては、利用料金も1~10万円と低く、さらにライフサポートアドバイザーが設置されているため、人気が高く、入居をしたくてもなかなか入居することができません。
シルバーハウジングへの入居申込み
シルバーハウジングの入居申込みについては、各都道府県・市区町村の役所にて所定の申込用紙を受取り、必要事項を記載し提出します。申込みは随時行われているため、入居条件などを確認しながら、申込みを行いましょう。入居申込みのあとは、各役所にて入居者様の選考が実施されます(入居者様の選考は、現在の住宅の困窮度により行われます)。
問題がなければ入居となりますが、シルバーハウジングは供給数が不足していることからほとんどの場合が抽選です。1回の申込みで入居が決まることは少ないため、入居選考に漏れたとしても、継続して入居申込みをし続けるのが入居するためのポイントと言えます。
ライフサポートアドバイザーとは?

ライフサポートアドバイザーとは、シルバーハウジングに配置されている生活援助員のことで、約30戸にひとりの割合で配置。
ライフサポートアドバイザーは、入居者様の相談に乗ったり、安否を確認したりする他、緊急時の対応を行います。
- 1生活サポート
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ライフサポートアドバイザーは入居者様の相談を聞いて専門機関と連絡調整するなど、入居者様の生活を支援。また、安否確認をはじめ、地域サークルや地域活動への参加を促すなど、入居者様が快適に暮らせるようなサポートも行っています。
- 2健康サポート
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ライフサポートアドバイザーは入居者様の健康を守るために、健康状態をチェックしたり、健康増進を促したりなど、入居者様が健やかに暮らせるようなサポートも行っています。
- 3緊急時サポート
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入居者様が病気になった際、家族や医療機関に連絡することもライフサポートアドバイザーの役割です。急病時は、家事を援助するなど、きめ細かなサポートも特徴です。
介護サービスが必要になったら

シルバーハウジングは、介護サービスを提供する施設ではないため、介護が必要になった場合は、自宅と同じように個人で介護サービス業者を選び「介護サービス」の契約を結びます。介護サービスは以下の通りです。
- 利用者の自宅に介護を専門とするスタッフが訪れる「居宅介護サービス」
- 利用者が施設に通ってサービスを受ける「通所サービス」
- 利用者が短期間施設に入所してサービスを受ける「短期入所サービス」
- その地域に住む住民だけが利用できる「地域密着型サービス」
また、車椅子などの福祉用具を借りた場合、介護度により介護保険が適用されるため、福祉用具貸与の対象者であれば、レンタル料金の1割(所得に応じて2~3割)、購入した場合には、購入金額の9割(年間10万円が上限)の助成金を得られるサービスもあります。本人に合ったサービスを検討しましょう。
シルバーハウジングの運営
シルバーハウジングは、住宅分野と福祉分野の行政が連携して生まれた公営高齢者住宅です。都市再生機構や住宅供給公社が提供しており、ライフサポートアドバイザーの人件費についても行政からの支援があります。
負担割合は国や地方公共団体が協力しており、国4割・県2割・市区町村2割・第1号保険料2割。施設の建設費についても、公営住宅の場合は国が5割を補助し、事業主体である地方公共団体が残り半分を負担しています。