打撲の症状と予防|病院に行くべき状況も解説
「打撲」(だぼく)は、衝突や転倒など外部からの衝撃が原因で、筋繊維、血管といった皮下組織が損傷した状態のことを言います。打撲は多くの場合、時間が経つにつれ、腫れや内出血が現れますが、重度の場合はしびれが出ることも特徴的です。打撲の症状、予防法、打撲を起こした場合に取るべき行動について、詳しく解説していきます。
打撲の症状

打撲は、「打ち身」とも呼ばれる外傷の一種。ぶつけたり、転んだりといった、外部からの強い衝撃を受けることで、筋繊維や血管などの皮下組織が損傷した状態を言います。
軽い打撲であれば放っておいても治りますが、強く打ち付けたり、頭を打ったりした場合は、重症になるケースもあるため、注意が必要です。ここでは、打撲の症状について詳しく見ていきましょう。
痛み、腫れ、内出血
打撲の代表的な症状としては「痛み」が挙げられますが、打撲した直後は痛みを感じず、時間が経ってから徐々に痛くなってくることがあります。
痛みの程度は、患部を押したときに軽い痛みを感じるだけの場合もあれば、炎症を起こして疼くような強い痛みが出る場合も。また、炎症を起こすと患部周辺が赤くなり、1週間程度腫れ上がることもあります。
なお、毛細血管が傷付いて内出血を起こしているときは、患部が青紫色に変色。打撲による痛みや腫れ、内出血が治まるのは、個人差や症状の程度によって異なります。
部位別の症状
打撲は、部位によって症状も様々。関節を打撲すると、腕や足を曲げにくくなることも。背中や胸を打ち付けた場合は、呼吸がしづらくなったり、吐き気を催したりします。
また、頭部を打撲した場合は、「たんこぶ」と呼ばれる皮下血腫ができることも。特に頭の打撲には注意が必要です。頭痛、吐き気、ろれつが回らないといった症状が現れたり、脳しんとうや意識障害を起こしたりする場合は、早急に専門医を受診しましょう。
高齢者が気を付けるべき怖い症状
骨折
打撲だと考えていても、実は骨折していた、というケースは少なくありません。痛みが強い場合やひどく腫れている場合、また、患部が明らかに変形している場合は、骨折の可能性があります。特に高齢者は痛みを我慢する傾向があるため、周囲の人達も注意しましょう。
慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)
高齢者の場合、最も気を付けたいのが、頭部の打撲です。慢性硬膜下血腫は、頭の中にある血管が切れて、ゆっくりと脳の表面に血が溜まっていく病気。数ヵ月かけて、血腫が脳を圧迫していき、言語障害や認知症状、意識障害を引き起こします。打撲の直後はCTにも異常が見られないことが多いため、数ヵ月は意識して様子を見ることが必要です。
打撲を予防するには

加齢と共に足腰の筋肉が衰えるため、高齢者は転倒しやすくなったり、障害物を避けにくくなったりする傾向があります。
また、ベッドからの転落なども、打撲を引き起こす大きな原因に。日頃から、転びにくい、ぶつかりにくい環境を整えて打撲を予防していきましょう。
浴室や廊下の工夫
家の中で転びやすい場所として、浴室や廊下、フローリングの部屋などが挙げられます。浴室内や脱衣所に滑り止めマットを設置したり、階段や玄関などの段差に手すりを取り付けたりして、滑ったり、転んだりしにくい環境にすることが必要です。
動線の確保
移動するときに、テーブルや棚など硬い家具にぶつかって打撲を起こすことも多くあります。通り道には、できる限り無駄な家具を減らし、動線(人や物が移動するための経路)を広めに確保しましょう。電化製品のコードが通り道にかからないよう、配置を工夫することもおすすめ。
また、新聞紙や雑誌などを踏んで転倒するケースも多いため、床に置かず、きちんと整理整頓しましょう。
ベッドに柵を設置する
ベッドからの転落を防止するには、柵の設置が効果的です。また、ベッドから起き上がるときには、ふらつきを避けるため、安定した部分を掴んでゆっくりと動くことを心がけましょう。特に夜のトイレは、暗くて物の位置が分かりにくいため、注意が必要です。
脱げやすい、滑りやすい履物を避ける
サンダルなど脱げやすい履物は転倒の原因になります。しっかりと足に合った靴を履きましょう。また、フローリングでのスリッパや靴下は滑りやすいため、気を付ける必要があります。
転倒しにくい体づくり
散歩や家事、軽い筋トレなどでこまめに体を動かし、つまずきにくい身体能力をキープすることが大切です。歩行に不安がある場合は、杖や歩行器などを利用しましょう。視力が落ちて足元がよく見えずに転倒する場合もあるので、自分に合った眼鏡を使うこともおすすめです。
打撲したらどうすれば良いか
打撲には、そのまま様子を見ても大丈夫な場合と、すぐに専門医の処置が必要な場合があります。打撲に関する正しい知識を身に付け、適切な行動を取りましょう。
応急処置の基本

打撲の基本的な応急処置には、保護、安静、冷却、圧迫、挙上(きょじょう:患部を胸よりも高い位置に上げる)、補助の6つがあります。
なかでも大切なのは冷却。アイスパックやタオルで巻いた氷などを使い、患部を冷やすことで、炎症が広がるのを抑え、腫れや痛みを軽減させることが可能です。
そして、患部はなるべく動かさず安静にしたまま、必要があれば包帯やテーピングで圧迫し、心臓よりも高い位置で固定します。
頭を打撲した場合
頭を打撲した場合は、無理に起こさず、寝かせたまま様子を確認しましょう。その際、意識障害がなければ少し頭を高くして寝かせ、たんこぶがあれば冷やします。
意識がない、意識があっても呆然としている、けいれんしている、強い頭痛がある、嘔吐する、呼吸障害がある、言葉をうまく話せない、手足がしびれるなどの症状があれば、すぐに救急車を呼びましょう。これらの症状がない場合でも、脳神経外科などを受診することをおすすめします。
胸や背中を打撲した場合
胸や背中を打撲した場合、ネクタイやボタンを外し、襟元を緩めて呼吸がしやすいようにしましょう。
呼吸困難に陥る、血痰が出る、痛みが強くなる、患部が著しく変色している、手足がしびれるなどの症状があれば、気胸や胸骨、肋骨を折っている可能性があるため、すぐに医療機関を受診することが肝心です。
腕や足を打撲した場合
転倒した高齢者の約5%が骨折をしていたというデータもあります。そのため、腕や足を打撲したときには、骨折をしているかどうかを確認しましょう。患部が浮き出ている場合や異常に腫れている場合は、すぐに医療機関へ。
骨折ではない場合でも、整骨院や鍼灸院では、電気治療をはじめ、超音波治療、柔整マッサージを行い、痛んでしまった筋肉や皮下組織の回復を早めてくれます。
まとめ
打撲は日常的に起こりやすいケガですが、決して甘く見てはいけません。特に頭部を打った場合は、命にかかわることがあります。転倒した際には、慌てずにゆっくり起き上がらせるか、その場に寝かせたまま、様子を見ましょう。
軽い打撲の場合は、通常1~2週間程度で痛みや腫れが引いてきますが、2週間経っても改善しない場合は医療機関に相談。普段から転ばない、ぶつけない生活を意識し、打撲を予防していくことが大切です。