ダブルケアとは?問題点や知っておきたい支援などを簡単に解説
ダブルケアとは、子育てと介護の両方を平行させて行う状態のことです。「心も体も疲れた」、「介護にばかり時間が取られ、子どもへの影響がないか心配」など、実際にダブルケアを行った人しか分からない悩みがあるため、当事者が孤立感を味わいやすいとされています。ダブルケアを行う人は、身体的・精神的負担が大きく、日本において深刻な社会問題となりつつあるのです。ダブルケアとは何か、備えと対策について見ていきましょう。
ダブルケアとは

ダブルケアは、親や親族の介護と子育てを同時に行う状態のこと。
かつては、親世代の介護が始まる年齢には、子育ては一段落ついた頃合いが多かったのですが、昨今は晩婚化と晩産化の影響で、ダブルケアとなる人が増えています。場合によっては、2人の親が同時に介護を必要とするなど、被介護者が複数名いるケースもあるのです。
2012年(平成24年)に横浜国立大学の「相馬直子」(そうまなおこ)さんは、ダブルケアを提唱する際、以下の社会問題を背景としました。
- 女性の社会進出による結婚と出産の高齢化
- 少子高齢化で兄弟姉妹の少ない家族構成や親戚との関係が希薄なことによる介護者の不足
介護を担う人はダブルケアラーと呼ばれ、団塊の世代が後期高齢者となる2025年(令和7年)以降には、その子ども世代である40〜50代が介護にあたる時期になり、ダブルケアラーがますます増加すると言われています。
ダブルケアの実態
2016年(平成28年)に内閣府が公示した「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査報告書」では、ダブルケアの推計人口は2012年(平成24年)時点において、約250,000人であることが分かりました。推計人口には性別に偏りがあり、女性は約170,000人、男性が約80,000人という結果です。
子育て世代である30~40代のダブルケアラーが全体の約8割を占めていることから、ダブルケアラーのなかでも、働き盛りの世代で育児と介護の両立に追われている人が少なくないことが分かります。
また、少子高齢化の影響で、兄弟や親戚で役割分担できない人も多いと考えられ、ダブルケアラーの孤立が危惧されているのです。
ダブルケアの問題点
ダブルケアにおける主な問題点について、2つご紹介します。
金銭的負担が大きい
ダブルケアラーは育児用品、介護用品、交通費が重なることで、金銭的負担が大きくなる傾向にあります。育児には、ミルク代、オムツ代、衣服代、保育料などがかかり、介護には、オムツ代、介護サービス代などが負担に。たとえひとつひとつの金額は高価でなくとも、総合すると毎月かかる金額は大きな負担になるのです。
ダブルケアラーが多い30〜40代は、教育費、住宅ローンなどで、お金がかかりやすい世代。いくら働き盛りの時期とはいえ、収入のほとんどを育児と介護の費用にかけるのは、経済的にも精神的にも負担が伴います。
仕事との両立が難しく離職する人も
ダブルケアを理由として仕事をやめなければならない人も、少なくありません。男性の離職率は2.6%、女性は17.5%で、ダブルケアのために業務量や労働時間を減らした男性は16.1%、女性は21.2%という結果が出ています。
また、ダブルケアラーが行政に充実してほしいと思う支援策として、男女ともに割合が高かったのは、「保育施設の量的拡充」でした。子どもを安心して預けられる場所がないと、フルタイムの仕事を続けるのが難しくなり、離職を選ぶ、派遣社員やパートへ転職するなど、働き方自体を変える必要に迫られます。
また、安心して働くために保育園や介護施設を申込んでも、条件が合わず入所できなかったり、時間の融通が利かなかったりすると、誰にも頼ることができず、負担が軽減できない事態に陥ってしまうのです。
孤立しやすい
少子高齢化と核家族化によって家族、親族間でサポートしてくれる人が少ない状況では、ダブルケアラーばかりに負担がかかります。ダブルケアラーは、悩みを共有できる相手が少ないことで孤立しかねません。ただでさえ肉体的にも精神的にも負担が大きいダブルケアラーは、孤立することでさらなる精神的負担を負うリスクもあります。
ダブルケアの問題は、まだ世の中に広く知られてはおらず、社会問題として捉えられにくいため、行政のサポートも充実しているとは言えません。自治体の多くに子育てや介護の窓口はあるものの、ダブルケア専用の相談窓口を設置しているところはほとんどないのが現状です。また、相談先があったとしても、ダブルケアラーは非常に忙しく、そもそも相談に行く時間すら確保するのが難しいという問題もあります。
ダブルケアへの備え・対策
将来ダブルケアになるかもしれない場合、早めに自治体の相談窓口や介護保険制度を調べ、支援の申請方法などを調べておくと安心です。
家族や親族間で話し合いをしておく
話しづらいテーマではありますが、介護が必要になる前の元気なうちに、家族や親族間で話し合っておくのが理想的です。なかには「介護はまだ先の話」、「うちの家族は大丈夫」と考える人もいますが、事前に話し合うことで心の用意ができ、いざというときの備えになります。
例えば、両親へ人生設計図とも言える「ライフプランノート」をプレゼントし、どのような介護を受けたいのか考えるきっかけを与えるのも方法のひとつです。実際に文字に書き起こすことで自分の気持ちが明確になり、個々が望む暮らしをお互いに理解できるメリットもあります。本人の希望を聞いたうえで、どこまでならサポートできるか家族の意見を伝えるのも大切です。
支援制度を事前に確認しておく
勤務先で使える制度、介護と育児で使える自治体の制度を事前に確認しておくと、ダブルケアが始まったときに外部の力を借りやすくなります。勤務先の制度であれば、勤務先の上司へ、介護や育児に関する制度については各都道府県に設置された労働基準監督署、公共職業安定所などの労働局に聞いてみましょう。
ダブルケアに関する制度 | |
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ダブルケアラーの 勤務先の制度 |
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自治体の制度 |
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ダブルケアはどこに相談すればいい?
一般的には、介護に関することは介護の窓口、子育てに関することは子育て支援課など、窓口はそれぞれです。介護の悩みは、まず要介護者が住んでいる地域の地域包括支援センターに相談しましょう。地域包括支援センターでは、高齢者に関する総合的な相談を無料で受け付けているため、安心して相談できます。
子育てに関する悩みは、地域の子育て支援課に相談しましょう。子育ての相談の他、家族に関する一般的なアドバイスも受けられるため、今後どうしたら良いか分かりやすくなります。なかには、子どもを遊ばせながら、経験豊富なスタッフに悩み相談できる自治体もあるため、気持ちのリフレッシュにもなるのです。
また、ダブルケア専用の相談窓口はほとんどないものの、自治体によっては、介護と育児の支援を一体的に行っている「社会福祉協議会」を設置しているところもあるため、まずは住んでいる地域のWeb サイトで調べてみましょう。
事前に情報収集しひとりで抱え込まないダブルケアを

働き盛りの世代に多いダブルケアは、ダブルケアラーにかかる負担が大きく、深刻な問題です。
たとえダブルケアが必要になっても、できるだけひとりで抱え込まず、困ったときは適切な相談先に相談しましょう。社会制度をできるだけ活用し、自分にかかる負担を少しでも軽減していくことが大切です。