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運転免許の高齢者講習と認知機能検査とは?内容・料金を解説

高齢者の運転にかかわる問題は、メディア報道を通じて多くの人々の関心を集めています。特に事故に関する報道が増える中で、免許返納を検討する高齢者も増加傾向に。しかし、多くの高齢者にとって車は生活の足として必要不可欠な存在であり、免許返納による生活の制約や不便を懸念して運転を続ける方も少なくありません。高齢者における運転免許証の講習と認知機能検査について解説します。

高齢者講習とは?70歳以上は受講が必要

高齢ドライバー

「高齢者講習」は、1998年(平成10年)の道路交通法改正に基づき、70歳以上のドライバーに求められている講習です。

講習の内容は、講義、運転適性のテスト、実際の車を使用した指導となっており、約2時間を要します。高齢者講習は、高齢者に関連する交通事故が増加していることに伴って導入。

主な狙いは、加齢に伴う心身の変化を自覚し、安全な運転を実践するための講習となっています。70歳未満の方が受ける講習と同じく、高齢者講習は単なる講習であり、合格や不合格の判定は設けられていません。

高齢者講習の内容・料金

高齢者が運転免許の更新を行う際の講習料金は、免許の種類や内容によって異なります。例えば、普通自動車の運転免許を更新する場合、2時間の講習を受ける必要があり、その費用は6,450円です。

一方、原付、二輪、小型特殊車、大型特殊車の免許では、実車による講習は不要で、講習時間も1時間となり、その料金は2,900円。さらに、75歳以上の運転者が受ける認知機能検査の費用は1,050円、技能検査の費用は3,550円で合計4,600円になります。

一度高齢者講習を受けていれば、次回の免許更新時には講習料金は不要で、2,500円の更新手数料だけが発生する点も覚えておきましょう。

認知機能検査とは

「認知機能検査」は、運転者の記憶力や判断力などの認知機能を評価するための検査です。これは、運転者が自らの認知能力を理解し、安全な運転を持続的に行うための検査として実施。

特に、運転免許証の有効期間が終了する年に75歳以上となる方は、免許を更新する前にこの検査を受けることが義務付けられています。この制度は、高齢者の交通事故を予防するために導入されており、高齢者自身の安全だけでなく、他の道路利用者の安全も考慮しているのです。

認知機能検査の内容・料金

認知機能検査は、運転免許の更新を希望する高齢者が安全に運転を続けるための一環として行われる検査です。この検査を受ける際には、事前の予約が必要となります。免許の更新時期が近付くと、半年前に手続きや内容に関する案内が郵送。

検査は、試験場、警察署、または一部の指定された教習所で実施されます。受検を希望する方は、これらの施設に直接連絡を取って、受検の予約をしなくてはなりません。

検査にはおおよそ30分の時間がかかり、手数料として750円が必要です。検査を受けたあと、認知機能に問題がないと評価された方は、次のステップとして高齢者講習を予約し、受講することになります。そして、無事に終えた方は、更新を行うことが可能です。

なお、認知機能検査には、①「手がかり再生」と②「時間の見当識」という2つの検査項目があります。

1手がかり再生

手がかり再生は、試験官が提示する特定のイラストを受検者が記憶し、その後、イラストに関する質問に答える検査です。ヒントありの回答とヒントなしの回答があります。

この検査を通じて、受検者の短期記憶力や認知機能を評価することが可能。高齢者の中には、年齢による記憶力の衰えが見られることがあるため、このような検査を通じてその状態を確認することが重要と言えます。

2時間の見当識

見当識の検査は、現在の自分自身や自分が置かれている具体的な状況を認識する能力を評価するための検査です。自分が今どこにいて何をしているのかを把握できているかを評価するもの。この検査を通じて、受検者の時間感覚と現実認識の状態を確認することができます。

特に、高齢者や認知症の疑いがある場合には、このような基本的な認知能力の評価が非常に重要です。検査の採点は終了後に行われますが、検査結果自体は、後日郵送となっています。

運転技能検査とは

運転技能検査とは

2022年(令和4年)5月13日における「道路交通法」の改正により、75歳以上の普通自動車免許を持つ運転者で、特定の違反履歴がある方は、免許の更新や手続きの際に検査を受けることが求められるようになりました。

運転技能検査は、実際の運転状況を模した課題走行を行い、その結果をもとに運転技能を評価。そして、この検査に合格しない限り、運転免許の更新はできません。ただし、免許の有効期間中であれば、何度でも検査の再受検は可能です。

従来における高齢者の運転対策は、認知機能の低下を中心に考慮してきました。しかし、高齢者による重大な交通事故の発生状況を鑑みて、運転技術の低下も大きな問題として捉え、このような新しい対策が必要と判断され、運転技能検査が導入されることとなったのです。

運転技能検査の対象者

運転免許の更新を希望する普通自動車免許保有者のうち、更新期間満了日時点での年齢が75歳以上で、過去3年間に普通自動車などの運転における特定の違反履歴を持つ方は、運転技能検査の受講が必要です。

ここでの過去3年間とは、免許証の有効期間満了日直前における誕生日の160日前からさかのぼった3年間のこと。この期間内に一定の違反履歴がある場合、免許の更新手続きに際して該当する運転技能の検査を受けることが必須となります。

高齢者の事故の原因は操作ミスが多い

高齢ドライバーによる事故

2019年(令和元年)の上半期に警察庁が行った交通死亡事故の分析によれば、75歳以上の方が関与する事故の約34%がハンドルやブレーキの操作ミスによるものであることが明らかになりました。

この数字は、75歳未満の方と比較して3倍という高さで、高齢者の認知機能や運転技術の低下が影響している可能性が考えられます。事実、高齢者による交通死亡事故は全体の14%を占めており、この問題は深刻です。

政府は対策として、高齢者の運転を、操作ミスを防ぐ特定の機能を持つ車両に限定する新しい免許制度の導入を考えています。

また、東京都では、アクセルとブレーキを踏み間違えるなどの急発進事故を防ぐ装置の購入に関する補助金を導入。この分析では、バイクや原付は除外され、高齢者による事故原因の初めての詳細な分析となりました。

免許返納の目安は何歳くらい?

運転免許返納の目安に、年齢による制約はありません。しかし、運転免許の自主返納の傾向を見ると、70~74歳あるいは85歳を超えた時点での返納者が多いことが確認されています。

これは70歳から免許の更新時に高齢者講習が必須となり、さらに75歳以上では認知機能検査が必要となることが背景にあるからです。そのため、自らの運転能力や安全性を考慮する上で、70歳前後を免許返納の目安として考えるのもひとつの選択肢。

返納に伴い、公共交通機関の割引券などの特典が市区町村によっては用意されているので、確認してみましょう。

まとめ

高齢ドライバーに関する議論は、しばしば「安全のために免許を返納すべき」という方向に傾きがちです。

しかし、運転は多くの高齢者にとって生活の必需品。車を運転することで、買い物、病院、趣味の場所へ自由に出かけることができます。しかし、自らの運転能力や安全性を考慮し、70歳前後を免許返納の目安として考えるのも選択肢。各自治体によっては、返納しても生活が困らないように、公共交通機関やタクシーの割引、生活用品の割引、ギフト券の還元など様々なサービスを受けられる場合があります。

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