老人ホーム・介護施設の立地条件で後悔しない選び方
「老人ホーム」をはじめとする「介護施設」を選ぶときには、「立地条件」も重要な要素のひとつです。施設の特徴、サービス内容、費用を重視することも大切ですが、周辺の環境にも配慮しなければ、入居後の不満につながる恐れがあります。「老人ホーム・介護施設の立地条件で後悔しない選び方」では、施設選びで重要な4つの立地条件、立地条件が重要な理由について見ていきましょう。
老人ホーム・介護施設選びで重要な4つの立地条件

老人ホームや介護施設を探す際は、自分に合ったサービス内容や費用などを見極めるのも大切ですが、立地条件も重要な要素のひとつです。施設周辺の環境は、入居者様の安心感や生活の質に大きく影響します。
立地選びで意識したい4つのポイントを押さえて、入居者様だけでなく、その家族も満足できる老人ホームや介護施設を見付けましょう。
- 1住み慣れた環境に近い立地
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新しく老人ホームや介護施設に入居することは、住居環境が大きく変化することになります。環境の変化によってストレスを感じてしまう人も。そのため、自宅近くの施設に入居することで、これまでお世話になってきた「かかりつけ医」への受診が継続できたり、趣味活動を変わらぬ仲間と楽しめたりするメリットがあります。住み慣れた土地であれば、外出意欲の維持が期待でき、結果的に「身体機能」の維持にもつながることが期待できるのです。
ただし、場所を自宅近くに限定してしまうことで選べる老人ホームや介護施設の選択肢が狭まり、気に入る施設が見付からない可能性もあります。
- 2家族や親戚から近い立地
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老人ホームや介護施設が、家族や親族などの家から近いか否かも確認が必要です。面会時の負担が減るだけでなく、何かあった際に頼れる人が近くにいることは、入居者様の不安の軽減につながります。買い物や病院の受診における付き添いなどに対応しやすいのもメリット。万が一の緊急時にもすぐに駆け付けられるのは、双方の安心につながるのです。
ただし、もともと入居者様と家族が離れて暮らしていた場合、家族の近くの施設に入居することで環境の変化が心配されます。見知らぬ土地で新しい暮らしを始めるのは、入居者様のストレス増大につながる恐れもあるため注意が必要。入居者様と家族で話し合い、双方が納得する場所を選択しましょう。
- 3周囲の施設・環境が合っている立地
- 老人ホームや介護施設の環境、周辺施設が、入居者様の生活スタイルに合っている立地を検討するのも重要です。例えば、買い物や友人とお茶をするのが好きな方なら、ショッピングモールなどの商業施設が近くにある環境、散歩や風景画を描くのが趣味の方は、自然に囲まれている環境が適していると言えます。入居者様の趣味に合った環境を探すのも大切です。趣味や生活スタイルに合わせて施設を選ぶことで、今までの生活を変えることなく過ごせます。
- 4交通の便が良い立地
- 老人ホームや介護施設の周辺について、交通の便が良いかどうかも重要な要素のひとつ。交通の便の良い地域は駅周辺が比較的充実しているため、施設まで行き来しやすいです。ご家族や友人などの面会に便利なだけではなく、入居者様が外出する際にもメリットになります。
立地条件が老人ホーム・介護施設選びで重要な理由
老人ホームや介護施設を探す際に、立地条件が重要となる理由は、充実した生活が送れること以外にも、費用に大きく影響するためです。立地条件により、費用にどのような影響があるのかを理解することで、予算とのバランスを考慮した施設選びができます。
立地によって入居、月々の費用が変わる

老人ホームや介護施設の立地は、入居時や月々の費用に影響します。都市部に近いほど施設利用料は高くなりやすく、郊外になれば安くなる傾向にあるのです。
一般的に交通の便が良く、周辺に病院や医療施設、ショッピングモール、美術館などの商業施設、趣味の施設が充実している都市部は、老人ホームや介護施設の利用にかかる費用が高額になりやすい傾向。郊外は自然豊かで閑静な環境が特徴ですが、駅から離れており、周辺に施設が充実していない分、費用を安く抑えられるのです。
入居後の生活での優先順位を考えて、入居者様が納得して過ごせる老人ホームや介護施設を見付けることが大切。入居者様と家族で、どのような生活が送りたいかをじっくりと話し合って決めましょう。それぞれのメリットとデメリットをまとめました。
都心と郊外のメリット・デメリット | ||
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メリット | デメリット | |
都 心 の 介 護 施 設 |
・ご家族や友人が面会しやすい ・買い物や外出がしやすい ・様々なことに挑戦できる ・外部の介護サービスや医療ケアを利用しやすい |
・交通量や人が多い ・介護施設の利用料が高くなる |
郊 外 の 介 護 施 設 |
・自然に触れやすい ・静かな環境で暮らせる ・介護施設の利用料を安く抑えられる |
・面会や外出しにくい ・利用できる外部の介護サービスや医療ケアが限られる |
老人ホーム・介護施設を選ぶときは入居条件にも注意
老人ホームや介護施設を選ぶとき、まずは「入居条件」に該当していないと入居することはできません。希望する立地条件に合う施設をいくつか選んだら、入居条件を確認しましょう。入居条件で確認すべき点を以下にまとめました。
- 介護度(要支援、要介護度)
- 年齢
- 認知症の有無
- 必要な医療ケアの有無
- 収入(経済能力)
- 身元保証人、身元引受人の有無

ひとつずつ見ていきましょう。
介護度(要支援、要介護度)
老人ホームや介護施設では、「要支援度」や「要介護度」によって入居できる施設が限られます。要支援度や要介護度によっては入居できないケースもあるため、事前の確認が必要です。
老人ホームや介護施設を利用するには、まず、「要支援認定」や「要介護認定」を受ける必要があります。お住まいの市区町村か、「地域包括支援センター」で申請可能です。申請後は、役所の担当者が訪問し、入居希望者の身体状態や主治医の意見書などを確認します。認定を受けるまで1ヵ月ほどかかることもあるため、早めに申請手続きを済ませましょう。
年齢
介護サービスを提供する施設では、「介護保険」が適用となる65歳以上を入居条件としている施設も多いです。しかし、国が定めた「特定疾病」(とくていしっぺい:関節リウマチや骨折を伴う骨粗しょう症など)を患い要介護と認定された方は、40歳以上でも入居対象となるケースもあります。介護サービスを必要としない「住宅型老人施設」であれば、60歳で入居できるケースもあるため、事前に入居可能な年齢の確認が必要です。
認知症の有無
老人ホームや介護施設のなかには、認知症の方は入居できないことがあります。認知症の受け入れが可能な施設であっても、認知症の程度によっては入居できないケースもあるため、該当する方は入居可能かを事前に確認しておくと安心です。また、入居時に認知症を発症していなくても、入居中に認知症となり状態が悪くなってしまった場合には、退去せざるを得ない可能性もあるため注意しましょう。施設ごとに、認知症に対してどの程度の対応が可能なのかを確認しておくことが大切です。
必要な医療ケアの有無
老人ホームや介護施設では介護サービスの他にも、医療ケアの実施が可能なところもあります。しかし、医療ケアの内容によっては、対応できない施設もあるため注意しましょう。老人ホームや介護施設で対応可能な医療ケアは、以下の通りです。
- 在宅酸素療法(血液中の酸素不足時に酸素を吸入する治療法)
- 尿道留置カテーテル、導尿
- ストーマ(人工肛門)
- 人工透析
- 血糖測定、インスリン注射
- 胃ろう(お腹に小さな穴を開け、チューブを通して、直接胃に栄養を注入する措置)
- 痰の吸引
- 気管切開
- 中心静脈栄養(高濃度の栄養液を中心の静脈から投与する)
- 褥瘡(じょくそう:床ずれ)処置
- 注射、点滴
医療ケアを実施するには、医師や看護師が常駐していなければならないため、人員配置が整っている施設を選ぶ必要があります。特に、夜間にも医療ケアが必要な場合では、24時間看護師が常駐しているか確認が必要です。
収入(経済能力)
老人ホームや介護施設のなかには、入居後の支払いが可能かを判断するため、年金などの収入や資産の確認が必要な施設もあります。費用が高額な施設では、入居前の審査が通らない可能性があるため、事前にいくらかかるのかを確認して、予算に合った施設を選ぶようにしましょう。
身元保証人、身元引受人の有無
老人ホームや介護施設を利用するには、「身元保証人」や「身元引受人」が必要です。身元保証人や身元引受人とは、入居時の対応や健康状態の変化があった際に入居者様に代わって意思決定をしたり、入居中に必要な手続きを済ませたりする人を指します。実際に身元保証人、身元引受人が対応すべきことは以下の通りです。
- 施設利用料の支払い
- 緊急時の連絡
- 施設サービス計画書(ケアプラン)や治療方針などの決定、承諾
- 入院や転居、死亡時の対応
- 退去の手続き
- 身柄の引き取り
身元保証人、身元引受人はほとんどの施設で必要となり、一般的には家族が引き受けています。
まとめ

老人ホームや介護施設を選ぶ際は、施設の特徴だけでなく立地条件にも目を向けましょう。入居者様と家族の間で話し合っておくと施設選びがスムーズに進みます。実際に施設を見学する際には、自分達の希望の条件に見合っているか確かめて判断することが大切。周辺の施設環境だけでなく街の雰囲気も重要です。
入居者様と家族の双方が、ストレスや負担がかからず利用できる施設を選ぶことが大切。長い目で見たときに、のちのち後悔しない施設選びをしましょう。