かかりつけ医とは?メリット・デメリットや見つけ方を簡単に解説
「かかりつけ医」とは、ひとりの患者を継続的に診療し、健康状態を総合的に管理する医師のことを指します。患者が自身の健康に対する責任を持つ一方で、かかりつけ医はその健康状態を長期的に把握し、必要な診療や予防策を提供。身体の健康は人生の質を大きく左右します。そのため、自分に合った医師を見つけ、信頼関係を築くことは非常に重要なのです。かかりつけ医の役割、医師の選び方、また日本の医療制度における位置付けについて詳しく解説します。
かかりつけ医の概要

かかりつけ医は、病気になったり、健康についての心配があったりするときに、最初に頼る医師のこと。主に地域の診療所やクリニック、総合病院などで診療を行う医師のことを言います。
日本における医療体制では、かかりつけ医の役割はただ病気を治すだけではありません。国や日本医師会によると、かかりつけ医は「どんな問題でも相談でき、最新の医療情報を把握していて、専門医や専門の医療機関を紹介できる、地域の健康と福祉を支える医師」と定義されています。
つまり、ただ病気を診るだけでなく、地域全体の健康と福祉を見守る能力が求められているのです。特に高齢者が多い地域では、医療と介護の連携が必要となるため、地元で信頼されているかかりつけ医の存在がとても大切だと言えます。
かかりつけ医の必要性と役割

かかりつけ医を持つことが推奨される背景には、我が国では高齢者の増加に伴い、医療費が増大する問題があります。これに対処するために、医療を効率的に行うための新たな取り組みが進められているのです。
そのひとつが、診療所などの小規模な医療機関と大学病院などの大規模な医療機関の役割分担。まず患者は何か体調不良があれば、最初にかかりつけ医に相談し、その上で、一般的な治療で対応が難しいような病状が判明した場合、かかりつけ医から専門的な治療が可能な大きな病院への紹介が行われます。
そして、その大きな病院で必要な治療を受け、病状が安定したら、再びかかりつけ医に戻って通常のケアを受けるという流れです。これにより、各医療機関が得意とする部分で患者のケアを行い、医療全体の効率化を図ることができます。
かかりつけ医がいるメリット
病気、健康管理などの相談が可能になる

かかりつけ医がいるということは、長期間に亘り、ひとりの医師が家族全員の健康を見守るということです。それにより、ちょっとした健康の変化にも素早く対応することが可能となります。
また、慢性的な疾患や生活習慣病の管理もスムーズ。診察は定期的に行われるため、経過を安心して医師に委ねることができます。さらに健康チェックと相談を行うことで、病気を早期段階で見つけ、迅速な治療につなげることが可能になるのです。
他にも、かかりつけ医は、医学的な知識をもとに病気の発症を防ぐだけではなく、ワクチン接種や健康増進の支援も提供し、予防と健康増進の役割を担います。
専門医療機関への引き継ぎ、治療がスムーズ
かかりつけ医は、患者の日常生活における健康状態や病歴を把握しています。そのため、患者にいつもと違う症状が出れば、必要に応じて適切な専門医療機関に紹介。また、紹介状や検査結果などの情報を提供してくれるため、専門医との連携がスムーズです。
専門医からの診断や治療方針についても、かかりつけ医が説明や相談をしてくれるので、患者は安心して治療を受けることができます。
主治医意見書、訪問看護指示書の作成をしてもらえる
「主治医意見書」(しゅじいいけんしょ)は、病気の状態や治療内容を記した書類です。これは、障害年金や介護保険などの申請に必要な場合がある書類。また、訪問看護指示書は、患者の自宅で看護師による訪問看護を受けるために必要な書類です。訪問介護指示書は、かかりつけ医が症状や必要な看護内容を指示。かかりつけ医が、これらの書類を作成してくれることで、手続きがスムーズに進みます。
ケアマネジャーと連携できる
ケアマネジャーは、高齢者や障害者の介護サービスのプランニングや調整を行う専門職です。ケアマネジャーはかかりつけ医と連携することで、患者の状態やニーズに応じた適切な介護サービスを提供することができます。
入院時
入院時には、患者の日常生活や病歴などの情報を「入院時情報提供書」という書類で医療機関に伝えることが可能。そのため、医療機関は患者の状況を把握しやすくなります。
入院中
入院中の面会、外出、外泊の調整、退院予定の確認、介護保険の区分変更や福祉用具の必要性の確認などを行うことが可能。これにより、患者や家族の不安を軽減し、退院後の準備を進めることができます。
退院時
退院時、「退院調整シート」という書類で退院後の状況や必要なサービスを医療機関に伝えることが可能。これにより、医療機関は退院後のフォローをスムーズに行うことができます。
退院後
退院後、ケアプランの見直しと実施、訪問看護師や他院との連携などを行うことが可能。そのため、患者の在宅での安全かつ快適な生活を支援することができます。
以上のように、かかりつけ医はケアマネジャーと連携することで、患者の入退院や在宅生活を円滑にサポートする役割を果たすのです。
在宅での看取りが可能になる
自宅での看取りは、本人や家族の希望に応えられるだけでなく、住み慣れた環境で家族と共に過ごしながら、自由に時間を使えるというメリットがあります。
また、病院や施設に入るよりも経済的な負担が軽くなる可能性も。自宅で看取りをするためには、かかりつけ医の他にも訪問看護やケアマネジャーなどの支援が必要です。かかりつけ医は定期的に診察を行い、状態が変化したときや亡くなったときに、即座に対応します。訪問看護師は医療的な処置や日常生活のケアを行い、家族にも精神的なフォローや情報を提供。ケアマネジャーは介護保険の利用や介護サービスの調整を行い、介護と医療の連携を取ります。
自宅での看取りは、本人や家族の判断ですが、その選択肢を広げるためには、かかりつけ医がいることが大切です。かかりつけ医は本人や家族のパートナーとして、在宅医療の質を高める役割を果たします。
かかりつけ医がいないデメリット

かかりつけ医がいないことのデメリットは、健康上で何らかの問題が発生した際に、どの医療機関に相談すべきかが明確でないという点です。
また、患者自身の病歴やアレルギー情報などを深く理解している医師がいないことも大きな問題。さらに、異なる医療機関を頻繁に利用すると、それぞれの医師から最適なアドバイスを得ることが難しくなる可能性があります。
これらのことから、自身の健康を守るために、かかりつけ医を見つけることが大切なのです。
かかりつけ医の見つけ方
ここでは、かかりつけ医の探し方について紹介しましょう。
長期的に受診している医療機関から探す
かかりつけ医を探す方法のひとつに、長い間、通院している医療施設から選ぶという方法があります。すでにその医療スタッフや施設に慣れ親しんでいるため、信頼関係を構築しやすいのです。
その医療施設がどんな専門性を持ち、どのようなサービスを提供しているのかなどを理解していることが、かかりつけ医を探すポイントとなります。
実際に受診してみる

かかりつけ医を探す際、いくつかの医療施設に足を運んでみるという方法があります。これにより、患者自身がどのような医療環境や医師と相性が良いかを直接知ることが可能。
また、自分の健康に関する疑問や懸念に対して、医師がどう対応してくれるかも実際に見ることができます。
口コミやインターネットを利用する
他の患者からの口コミやインターネットの情報を利用する方法もかかりつけ医を探すための手段。他の患者の評価は、医療施設や医師の質を判断する上で参考になります。ただし、これらの情報は他人の視点から見たものであり、自分自身が体験してみないと確認できない側面もあるため、情報収集の一部として活用しましょう。
かかりつけ医の選び方・ポイント

かかりつけ医は「身近な医師」がおすすめです。かかりつけ医を選ぶ際のポイントとして、以下の5つを紹介します。
自宅の近くや通院しやすい医療機関
自宅の近くにあるなど、通院しやすい医療機関を選ぶと、いざというときにすぐに行くことができ、定期的な診察も楽になります。特に高齢者は移動が難しいこともあるので、近場の医療機関を選ぶと便利です。
医師が信頼できる、相性がいい
医師との信頼関係は非常に重要と言えます。専門的な知識だけでなく、人間性やコミュニケーションの取り方にも注目しましょう。自分が安心して話せる医師を選ぶことが大切です。
他の医療機関との連携を取れる
健康管理はひとりで行うものではありません。かかりつけ医だけでなく、専門の医療機関や地域のサポートセンターとも連携が取れることも重要と言えます。
いつでも対応してもらえる
急な体調不良のときなど、いつでも相談できる医師がいれば安心。診療時間や医療機関の診療時間などもチェックしましょう。
どんな症状でも診てくれる
かかりつけ医は、どんな症状でも対応してくれます。風邪から心臓の問題、精神的な問題まで、全身を診てくれる医師を選びましょう。それぞれの症状について、最善の治療を提案してくれます。
かかりつけ医を持つことは、健康管理にとって重要な要素です。自宅や勤務先から近い場所に医師を選ぶと、いつでも相談や治療が可能となります。
かかりつけ医との付き合い方
かかりつけ医との付き合い方

インターネット環境が発達したことにより、医療機関に相談する前に、あらかじめ症状を調べてから行く人も少なくありません。
しかし、かかりつけ医がいれば、身体の変化を継続的に診てもらうことができます。そのため、自分で調べたことを過信せず、かかりつけ医に自分の症状や意思を伝えたり、相談したりすることがおすすめです。
かかりつけ医と付き合う上で気を付けたいこと
かかりつけ医に対し、何かを贈ることを考える人もいますが、実は医師には倫理規範があることから、謝礼については負担になることがあります。他にも、外来でたくさんの方が待っているときに雑談を続けられると、断ることが難しく、どう対応すればいいのか悩むかかりつけ医も少なくありません。
日常を把握してくれるかかりつけ医だからこそ、話しておきたいことはたくさんありますが、同時にかかりつけ医が抱える他の患者への配慮も必要です。もし、ゆっくりと話したいような場合は、「今日は10分程度お話できますか?」など、あらかじめかかりつけ医に相談しましょう。