薬の副作用について解説!原因・症状・対処法
高齢者になると、多くの人が薬による治療を受けます。薬は、病気や症状に対して的確に働き、つらい症状を治癒の方向に向けてくれますが、場合によっては新たな体調不良を引き起こすこともあります。それは薬に「副作用」があるため。薬の副作用は、薬がもたらす本来の目的以外の効果のことです。副作用は、望ましい効果であったり、望んでいない効果だったりと様々。高齢者の体は、薬物を代謝し排泄する能力が低下しています。その結果、薬物が体内に長く留まり、副作用のリスクが高まるのです。「薬の副作用について解説!原因・症状・対処法」では、副作用とは何か、その原因と主な副作用の5種類について解説します。
薬の副作用とは?

薬には「主作用」と「副作用」の2つがあります。主作用とは、治療上効果を発揮してほしい、望んでいる効果のことです。
副作用とは、上の主作用以外の効果すべて。飲んだ人すべてに起こるわけではありませんが、場合によっては「重篤」(じゅうとく:非常に悪いこと)な症状を引き起こします。例えば、何らかの「病原菌」(びょうげんきん:病気の原因たる細菌や真菌のこと)に感染した際には「抗生物質」(こうせいぶっしつ:細菌の増殖を抑える薬)などを服用して治療。
しかし、抗生物質の効果によって病原菌を撃退しても、腸内の善玉菌なども同時に除去してしまい、お腹がゆるくなってしまうこともあります。薬の副作用は、「薬を飲んでみなければ、副作用が起こるかどうかが分からない」のです。
副作用が起こる原因
副作用が起こる原因には、薬が持つ効果や生活習慣などが関係しています。
薬の作用
薬自体の作用により、副作用が起こります。例えば、血圧を下げる「降圧剤」、血糖値を下げる「糖尿病治療薬」など、効果の度合には個人差が存在。一般的な量を服用していたとしても、血圧が下がり過ぎて「低血圧」になったり、糖値が下がり過ぎて「低血糖症状」などが起こることもあるのです。
体質や生活習慣
体質や生活習慣によって、副作用を誘発してしまうケースがあります。例えば、気管支を広げて呼吸をしやすくする「気管支拡張剤」を使用している場合、日常的に喫煙していると薬の効果が十分に発揮されない可能性も。
薬は肝臓によって消化されますが、タバコを吸うと消化を早めてしまうことがあり、これによって薬が通常よりも早く体内から消失し、効果の欲しい臓器以外の場所に作用して、副作用を起こすのです。また、嗜好品である酒は、肝臓の消化力を弱める可能性があります。日常的に飲酒をしている場合は、薬の効果を強めるのです。
飲酒の影響を受ける薬は多く、特に睡眠導入剤は飲酒によって効果が強くなり、日中まで眠気を感じる、ふらついて転ぶなどの二次被害を引き起こす危険もあります。
主な副作用の症状5種類
薬は種類が豊富で、起こりうる副作用も様々です。次の項目ではよくある副作用の症状について挙げていきます。
眠気・倦怠感

風邪や花粉症で使われる「抗アレルギー薬」や、睡眠を促したり不眠症を改善したりする「睡眠導入薬」、痛みを取る「鎮痛薬」、うつ病を改善する「抗うつ薬」などは、いずれも脳の中枢に働きかけます。
そのため、眠気や「倦怠感」(けんたいかん:体がだるいなど)を感じるのです。また、睡眠導入剤は眠気を促す薬ですが、効果が強過ぎると日中も眠くなります。
かゆみ・発疹
肌が弱い人は、貼り薬や塗り薬など、皮膚に直接塗布する薬剤の場合は使用した部位が腫れあがり、かゆみを感じることがあります。このような外用薬の他、飲み薬でもかゆみや発疹を引き起こすことがあるのです。
理由は、薬が体に合わず、免疫機能が過剰に反応して発疹、蕁麻疹などの症状が出てしまうため。薬による発疹は全身に及ぶこともあり、かゆみ症状が強く出るため、症状が出てしまったときには病院を受診した方が良いでしょう。
下痢・便秘
抗生物質などの殺菌作用を持つ薬は、お腹の中に棲む善玉菌も殺してしまうので、腸内バランスが崩れて下痢や軟便といった副作用を起こすことがあります。
また、「抗コリン」とよばれる作用を持つ薬剤の場合は、お腹の動きを抑制してしまうので便秘になることも。抗コリンには、剤吐き止め薬、抗うつ薬、睡眠薬などが該当します。その他、下痢止め、便秘薬などの薬を服用した際に、薬の効き過ぎで下痢、便秘を起こす可能性もあります。
胃の不快感・嘔吐
抗コリン作用を持つ薬は、お腹の働きを弱めます。場合によっては吐き気を感じることも。 消化が通常よりもゆっくりになるので、胃の不快感につながるのです。また、「解熱鎮痛薬」や「ステロイド」などは、胃酸の分泌を促し、胃の不快感を引き起こす可能性があります。
アレルギー
かゆみや発疹といった症状が出ている場合は、薬のアレルギー症状である可能性があります。薬に含まれている成分や添加物が身体の細胞を刺激し、蕁麻疹やかゆみ、発疹などの症状をもたらすのです。アレルギーが起こると体に発疹がみられたり、喉が腫れてしまったりすると呼吸困難となり死に至るケースもあります。
副作用かな?と思ったら
万が一、不快な副作用が起きてしまった場合でも、薬に関する相談窓口があります。また、副作用が原因で通院、入院となってしまった際は費用を負担してくれる制度もあるのです。
すぐに医師や薬剤師に相談する

副作用が起きた際は、かかりつけ医や薬剤師に相談することが重要。必ず処方された医師もしくは薬を調剤した薬剤師に相談しましょう。
処方を出した医師であれば、診断に至った経緯や処方した目的についての情報が明らかなので対応もスムーズです。
電話相談窓口に電話する
「もしかしたら薬の副作用かも?」と感じた際は、病院や薬局に相談に行くのが理想ですが、すぐに行けない場合は、「くすりの相談窓口」を活用するのも良いでしょう。相談窓口は「独立行政法人 医薬品医療機器総合機構[PMDA]」や市区町村、厚生労働省などに設置。副作用の相談はもちろん、薬の飲み合わせや使い方、使用期限など、薬全般の相談を受け付けてくれます。
医薬品副作用被害救済制度を利用する
「医薬品副作用被害救済制度」とは、副作用により入院治療などの医療費が必要となった際に、治療費を負担してくれる制度です。薬を正しく適切に使用したとしても、副作用が起こる可能性はなくなりません。副作用が原因で通院や入院など、何らかの治療が必要になるケースもあります。
医薬品副作用被害救済制度には最大で7種類の給付を受け取ることが可能です。ただし、場合によっては給付を受けられないこともあります。例えば、抗がん剤や生物学的製剤による副作用、薬を正しく使用していなかったと判明したときなどの際には給付されないため注意しましょう。
なお、インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチンなどの予防接種で起こった副作用については、「予防接種健康被害救済制度」の対象となり給付が受けられる可能性があります。以下は、医薬品副作用被害救済制度で給付される費用の種類です。
給付の種類 | 説明 |
---|---|
医療費 | 副作用による疾病の治療(注1)に要した費用(ただし、健康保険等による給付の額を差し引いた自己負担分)を実費補償するものです(健康保険の療養に要する費用の額の算定方法の例による)。 |
医療手当 | 副作用による疾病の治療(注1)に伴う医療費以外の費用の負担に着目して給付されるものです(定額)。 |
障害年金 | 副作用により一定程度の障害の状態(注2)にある18歳以上の人の生活補償等を目的として給付されるものです(定額)。 |
障害児養育年金 | 副作用により一定程度の障害の状態(注2)にある18歳未満の人を養育する人に対して給付されるものです(定額)。 |
遺族年金 | 生計維持者が副作用により死亡した場合に、その遺族の生活の立て直し等を目的として給付されるものです(定額。最高10年間を限度とする)。 |
遺族一時金 | 生計維持者以外の人が副作用により死亡した場合に、その遺族に対する見舞等を目的として給付されるものです(定額)。 |
葬祭料 | 副作用により死亡した人の葬祭を行うことに伴う出費に着目して給付されるものです(定額)。 |
注1:医療費及び医療手当の給付の対象となるのは、副作用による疾病が「入院治療を必要とする程度」の場合。
注2:障害の状態とは、症状が固定し治療の効果が期待できない状態または症状が固定しないまま副作用による疾病について初めて治療を受けた日から1年6ヵ月を経過したあとの状態。障害の状態が一定の重篤度(政令で定める1級または2級)に達している場合に障害年金及び障害児養育年金の支給の対象。
(引用:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構より)
「患者副作用報告」も活用しよう
「患者副作用報告」とは、薬を使用して副作用が起きたときの情報や状況について、使用した本人やその家族から直接、情報を収集する制度のこと。医薬品医療機器総合機構(PMDA)が取りまとめており、薬を使用した人から報告を受け付けて整理し、厚生労働省に報告しています。薬患者からの報告によって、これまで知られていなかった副作用が判明することもあるのです。
まとめ
「薬の副作用について解説!原因・症状・対処法」について紹介しました。薬には、主な効果である主作用と、意図しない効果である副作用があります。なかには薬の効果が強く出てしまうこと自体が副作用となるケースも。よくある副作用に、かゆみや発疹、眠気、下痢や便秘などがあります。
副作用かな、と感じたら早めに主治医やかかりつけの薬剤師に相談しましょう。受診が難しい場合は、電話での相談窓口なども設けられています。副作用は、比較的軽いものから重い症状まで様々。重い副作用については、「副作用救済制度」という医療費などの給付を受けることも可能です。