福祉用具とは?役割や介護保険対象の種類一覧などを簡単に解説
「福祉用具」とは、介護を必要とする人の日常生活をサポートしたり、身体の機能訓練をしたりするための機具、用具のことです。介護保険の貸与対象になる用具と、購入が必要な用具は異なります。また、福祉用具には様々な種類があるので、選定するのが難しいと考える方も少なくありません。福祉用具の特徴、役割、貸与基準、利用方法、種類一覧、注意点を詳しく解説します。
福祉用具とは

福祉用具とは、介護を必要とする人の日常生活を支えたり、身体の機能訓練をしたりするための機器や用具のことです。具体的には、介護用のベッドや車いす、歩行を補助する歩行器、手すりなど。
厚生労働省によれば、福祉用具貸与の受給者数は、2007年(平成19年)には約850,000人だったのに対し、2016年(平成28年)には約1,910,000人となっており、高齢者の増加とともに増加しています。
福祉用具の役割
福祉用具は、被介護者の自立した生活をサポートし、介護する側にとっては介護の負担を軽減するという役割があります。例えば、介護ベッドなどの介護用品は、要支援、要介護者が日常生活を快適で、安全に過ごすのをサポートするために必要。また、車いすや歩行器などは、被介護者の移動、歩行を介助し、自分で移動できる能力を維持するために大切な用具です。
福祉用具貸与の認定基準、条件
福祉用具貸与の基準として、要支援1~2、要介護1~5の介護認定を受けていることが条件です。ケアマネジャーは、福祉用具専門相談員(福祉用具貸与、販売事業所)と協議してケアプランを作成し、必要な介護用品を選定。被介護者や家族の意向だけではなく、医師、看護師、理学療法士などのスタッフからも選定する福祉用具についてアドバイスをもらって、最も適した用具を選びます。
利用方法は3種類
福祉用具の利用方法は、①「貸与(レンタル)」、②「購入(受領委任払い)」、③「購入(償還払い)」の3種類。福祉用具は、販売ではなく、貸与(レンタル)を原則としています。被介護者の身体状況や要介護度、介助量の変化、福祉用具の機能向上に応じて、適切な用具を提供する必要があるからです。ただし、排泄や入浴など他人が利用した用具を再利用したくないと感じる特定福祉用具は、購入することになっています。
- 1貸与(レンタル)
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手すり、スロープ、歩行補助の杖、歩行器など合計13種目は、指定を受けた事業者から介護保険を利用してレンタル可能です。介護保険を利用して、原則1割負担(所得により2または3割)でレンタルできます。ただし、介護度によってレンタルできる種類が異なるので、注意が必要。例えば、要支援や要介護1の方には、介護ベッド、車いす、体位変換機などは原則、給付対象外です。
- 2購入(受領委任払い)
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排泄や入浴などで他人が利用した用具を再利用したくないと感じる特定福祉用具は、購入が必要。購入費用は、介護保険の給付が適用され、受領委任払いと償還払いの2つがあります。どちらの支払い方法を原則としているかは、市区町村によって異なるので、事前に確認が必要です。
受領委任払いは、購入費用(保険適用分)の1割(所得により2割または3割)を事業者に支払い、残りの保険給付分を利用者の委任に基づき、市区町村が直接受領委任払い登録事業者に支払う方法のこと。ただし、受領委任払いは、市区町村に登録している受領委任払い登録事業者でなければ適用されず、支給限度額もあるので注意が必要です。
- 3購入(償還払い)
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償還払いは利用者がいったん費用の全額を支払い、そのあとに市区町村に申請して、保険給付分の支払いを受ける支払い方法のこと。支給限度額内であれば、購入費用の9割が払い戻しをされます。受領委任払いのときと同様に、自己負担は1割(所得により2または3割)です。
購入の場合、給付対象になるのは、都道府県の指定を受けた販売業者からの購入が必須。インターネットで購入したり、自分が見つけた事業者で購入したりすると対象にならないため、注意しましょう。
福祉用具の種類一覧
福祉用具の種類には、福祉用具貸与の対象種目、特定福祉用具販売の対象種目があります。
福祉用具貸与の対象種目

貸与(レンタル)の対象になる種目は、要支援、要介護認定を受けている方が5種類、要介護2以上の認定を受けている方が追加で8種類、要介護4以上の方はさらに追加で1種類。介護度によってレンタルできる種目が異なるので、利用前に確認しておくと安心です。
要支援、要介護認定を受けている方が レンタル可能な種目 |
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手すり |
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スロープ |
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歩行 補助杖 |
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歩行器 |
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排便機能を有しない自動排泄処理 装置 |
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要介護2以上の方がレンタル可能な種目 | |
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車いす |
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車いす 付属品 |
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特殊寝台 (介護用ベッド) |
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特殊寝台付属品 (介護用ベッド) |
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体位 変換器 |
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床ずれ 防止用具 |
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認知症老人徘徊 感知機器 |
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移動用 リフト (つり具の部分は購入対象) |
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要介護4以上の方がレンタル可能な種目 | |
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排便機能を有する自動排泄処理装置 |
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要支援・要介護1の方に対する福祉用具貸与について
利用したい福祉用具の貸与要件に当てはまらない場合でも、病状によっては例外的に利用できる場合があります。例えば、以下のような場合です。
- 病気(パーキンソン病や重度の関節リウマチなど)やその他の原因により、日によってまたは時間帯によって状態が変動し、福祉用具が必要な状態
- 病気(末期がんなど)が急速に進行して、福祉用具が必要となる可能性がある場合
- 病気の症状の重篤化を避ける目的で福祉用具を利用する必要があると医師が判断する場合
特例で利用したい場合は、市区町村が医師の所見やケアマネジメントの判断を確認している必要があります。そのため、まずは医師やケアマネジャーに相談するのがおすすめです。
特定福祉用具販売の対象種目
特定福祉用具とは、排泄や入浴の際に使用する用具など、一度使用した物を別の人へ貸し出すことが難しい用具のこと。支給対象者は要支援1~要介護5の方で、購入費用は介護保険の対象になります。ただし、上限は1年間(4月1日~翌年3月31日)で税込100,000円と設定されており、それを超える場合は自己負担が必要です。
特定福祉用具販売の対象種目 | |
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腰掛便座 |
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入浴補助用具 |
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簡易浴槽 (ポータブル浴槽) |
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移動用リフトの つり具の部分 |
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自動排泄処理装置の交換可能部品 |
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福祉用具レンタル、購入時の注意点
福祉用具をレンタル・購入する際の注意点を紹介します。
介護保険でレンタルしても購入は保険適用外

介護保険を利用してレンタルできる種目を購入する場合には、保険が適用されません。
例えば、車いすや歩行器は介護保険を利用すれば1割負担でレンタル可能ですが、これらを購入した場合には全額負担する必要があります。レンタルと購入の対象になる種目が異なるので、購入前に確認しておくと安心です。
定期的なメンテナンスが必要
福祉用具は、レンタルした場合も購入した場合も定期的なメンテナンスが必要。レンタルの場合には、修理や交換は業者に依頼すればすぐに対応してくれます。購入した場合は、定期的なメンテナンスを自己責任で行う必要があり、修理が必要な場合には自己負担になることがほとんど。長期間利用する用具は、メンテナンスの頻度や手間を考えてレンタルするか購入するかを考えると後悔を減らせます。
支給限度額は要介護度別に異なる
要介護度によって、支給限度額が異なっている点も注意が必要です。支給限度額は、「区分支給限度基準額」と言い、1単位や2単位とカウントされ、1単位は10円前後(地域によって異なる)で円換算します。区分支給限度額は、福祉用具にかかる金額だけではなく、他の介護サービス(デイサービスや訪問介護など)を含めた金額です。介護度別の支給限度基準額は以下の表の通りとなっています。
1ヵ月当たりの区分支給限度基準額 | ||
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区分 | 支給限度基準額 | 利用限度額 |
要支援1 | 5,032単位 | 50,320円 |
要支援2 | 10,531単位 | 105,310円 |
要介護1 | 16,765単位 | 167,650円 |
要介護2 | 19,705単位 | 197,050円 |
要介護3 | 27,048単位 | 270,480円 |
要介護4 | 30,938単位 | 309,380円 |
要介護5 | 36,217単位 | 362,170円 |
(厚生労働省の「2019年介護報酬改定について」参照)
福祉用具レンタル・販売の流れ

福祉用具のレンタル、販売のおおまかな流れは、以下の通りです。
- 1ケアマネジャー、地域包括支援センターに相談
- ケアマネジャーや、地域包括支援センターの職員に相談。相談の際には、どのような福祉用具が必要かを伝えましょう。ケアマネジャーが被介護者の状態や希望を確認し、ケアプランを作成します。
- 2福祉用具専門相談員による情報収集と整理
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ケアマネジャーは、福祉用具貸与事業部を選定し、福祉用具専門員と打ち合わせを実施。福祉用具専門相談員とは、高齢者などに対して適切な用具の選び方や使い方などを助言し、ケアマネジャーとの情報交換も行って、必要な用具を選定する専門職員のことです。福祉用具専門相談員は利用者に合った福祉用具を選ぶため、利用者の自宅を訪問し、情報の収集と整理を行います。
- 3福祉用具サービス計画を作成
- 福祉用具専門相談員は収集、整理した情報をもとに、福祉用具サービス計画を作成。福祉用具サービス計画とは、利用者の希望や生活環境を踏まえ、福祉用具レンタルの目的と目標を達成するための具体的なサービスを記載した計画書です。
- 4計画書や福祉用具の説明と契約
- 福祉用具専門相談員は利用者や家族に計画書を説明し、福祉用具を納品。利用者に適切であるかを確認し、問題がなければ、契約を締結します。
- 5モニタリング(使用状況の確認)
- レンタル開始後は、福祉用具専門相談員が定期的なモニタリングを実施。用具に問題がないか、適切かどうかをチェックし、必要に応じて福祉用具の変更を行います。
まとめ
福祉用具は、介護を必要とする人が快適に日常生活を送る上で欠かせないアイテムです。杖や歩行器など、種類が多岐に亘るため、自分に必要な用具をしっかり選定する必要があります。要支援、要介護の状態によっては低額でのレンタルが可能なので、福祉用具専門相談員やケアマネジャーなどの専門家と相談しつつ、利用を検討しましょう。