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高齢期の服薬管理で注意すべき点や飲み方のポイント

高齢になると、複数の持病を抱える方も多く、薬が複雑になりがちです。若い頃よりも目が見えにくい、指先が動きにくいなど、薬を飲む上での不自由も出てきます。認知症を発症して、どうしても薬を間違えやすい方も少なくありません。高齢者でよくある服薬トラブル、薬の飲み方のポイント、おすすめの管理方法を紹介します。

高齢者によくある服薬のトラブル

高齢者に多い服薬トラブル

高齢者の服薬管理について、よくある3つのトラブルを見ていきましょう。

1飲み忘れ・飲み間違い

薬の飲み忘れや飲み間違いは、薬の種類が多い方、認知機能が低下してきた方には、起きやすくなります。

飲み忘れや飲み間違いは薬の効果に直結し、副作用のリスクも上がるため、避けましょう。薬の飲み忘れに気付いたら、時間をずらして服用し、次の服薬と時間を空ければ問題ない場合もあります。しかし、タイミングを逃すと効果が変わってしまう薬も存在。

例えば「糖尿病」の薬には、食前に忘れたからといって、食後に飲んでも効果が出ない薬もあります。薬によって飲み忘れたときの対応が異なるので、事前に確認しておきましょう。薬の飲み間違いは、色々なパターンが考えられます。

うっかり2回分飲んでしまった、飲む時間ではないのに飲んでしまった、家族の薬を間違えて飲んだなど。こうした飲み間違いに気付いたら、医師、薬剤師に確認しましょう。

2薬の副作用

「副作用」とは、薬を服用することで生じる主作用(期待した効果のこと)が強く出すぎたり、主作用以外の望んでいない効果が出てしまったりすることです。

高齢者では、薬を吸収する力は若い頃とあまり変わらない一方、薬を分解して外へ出す力は低下するなど、副作用が出やすい状態となっています。副作用の症状には個人差があり、生活に影響のない軽い症状から、めまい、ふらつき、食欲低下など重い症状まで様々。

加齢による身体機能の低下に、さらに副作用も重なり、危険が増す場合もあります。薬を飲んでいて、どうも調子がおかしいと思ったら、すぐに医師へ相談しましょう。

3薬の相互作用

薬同士の飲み合わせによって、相互作用が起こると、効きすぎたり、効果が消えたりする場合もあります。薬の種類が多くなりがちな高齢者では、相互作用も起きやすい傾向です。

自分で気付くことが難しい相互作用は、薬を作ってもらう際に「お薬手帳」を見せて、薬剤師にチェックしてもらいましょう。いつも処方箋を持っていく「かかりつけ薬局」を決めておくと、薬剤師も把握しやすく、薬の確認や説明もスムーズに行われます。

薬の飲み方のポイント

服薬トラブルを回避するために、自宅で気を付けるポイントを解説しましょう。

1用法・用量を守る

薬の用法

薬の飲み方のポイント

薬は決められたタイミングで、決められた量を飲むのが大切です。

薬の用法には、「起床時」、「食前」、「食直前」、「食直後」、「食後」「食間」、「就寝前」という7つのタイミングがあります。なかでも誤解されやすいのは、「食間」です。食間は、食事と食事の間の「空腹時」を指しており、食事の最中ではありません。

また、多くの薬は「食後」と指定されますが、食事と混ざることで効率良く吸収される薬などは、特に「食直後」と指定される場合も。逆に、食事の影響で効果が落ちる薬などは、「起床時」、「食前」、「食間」と指定され、食事の時間を避けて飲みます。

薬の用量

薬の用量は、効き目や副作用にかかわるため、必ず守りましょう。体の状態に合わせて調節されている場合もあるので要注意。例えば、腎臓の働きが落ちている方には、腎臓から排泄される薬は少なめに処方します。若い家族と飲む量が違う、などと心配になったら、薬剤師に確認してみましょう。

薬の服用タイミング
起床時 朝起きてすぐの空腹時
食前 食事の約1時間~30分前
食直前 食事の直前
食直後 食事の直後
食後 食後およそ30分以内
食間 食事の約2時間後(空腹時)
就寝前 寝る約30分前
2服薬の時間を守る

薬によっては、朝、夕、寝る前といった服薬の時間が大切な場合もあります。具体的には、朝に飲むことで日中の症状を抑える、夕食後に飲むことで副作用のむかつき感を軽減させる、寝る前に飲むことで起き抜け(起きたばかりのこと)の高血圧を予防するなどです。生活スタイルに合わせて規則正しく飲むよう習慣付けましょう。

一方で、1日の中でいつ飲んでも大丈夫な薬もあります。どうしても忘れやすい場合は、忘れにくい時間に変えられないか、医師や薬剤師に相談してみましょう。1日2回の服薬を1回に変えてもらうといった対策も、薬の種類を変更することで可能となる場合があります。

3誤嚥に注意する

薬を飲むときに、水や薬が気管に入ってしまう「誤嚥」(ごえん)は、高齢者だと起きやすいトラブルのひとつです。特に錠剤を飲み込むのは難易度が高く、高齢者でなくても苦手と感じる方も少なくありません。誤嚥には、以下のような対策があります。

  • 上を向かずにあごを引いて飲み込む
  • 上体を45度ほど傾けて飲む
  • 薬をオブラートや服薬補助ゼリーで包む
  • 水にとろみを付ける

医師や薬剤師に相談して、飲みやすい形状の薬に変更してもらうことも可能です。

4飲み合わせに注意する

薬の中には、普段の食べ物やサプリメントと飲み合わせが悪い物もあり、注意が必要。飲み合わせが悪い食品は、薬と同時でなければ食べて良い場合と、タイミングをずらしても食べてはいけない場合があります。

普段から買わないようにするなど、対策しましょう。また、病院から処方された薬と市販薬の飲み合わせが悪い場合もあります。

市販薬を買うときは、お薬手帳を持参して薬剤師に見せると、丁寧に確認してもらえるのでおすすめです。なお、飲み合わせの悪い食品の代表は以下の通り。該当する場合は、薬剤師から説明があります。

  • グレープフルーツジュース
  • 牛乳、乳製品
  • 納豆
  • コーヒー(カフェイン)
  • お酒(アルコール)
  • セントジョーンズワート(ハーブの一種)

高齢者の薬におけるおすすめの管理方法

服薬管理ツールを活用しよう

高齢者の場合、種類の多い薬を自分ひとりで管理することは、難しいと感じることがあります。

ここでは、おすすめの管理方法について紹介しましょう。

1かかりつけ薬剤師(薬局)を持つ

「かかりつけ薬剤師」は、いつでも相談できる担当薬剤師のことです。同意書にサインをすると担当に決定。そして、かかりつけ薬剤師がいる薬局を「かかりつけ薬局」と言います。かかりつけ薬剤師を持つことのメリットは以下の通りです。

処方箋がなくても相談可能

かかりつけ薬剤師は、処方箋を持っていく用事がない場合でも、相談に応じてくれます。薬局の薬だけでなく、市販薬やサプリメントについても、気になることがあれば、相談することも可能。休日や夜間など、薬局が閉まっている時間の場合は、電話で相談することもできます。

複数の医療機関から処方された薬を管理してもらえる

かかっている医療機関の薬を、すべてかかりつけ薬局で調剤してもらうことが可能です。日頃、どんな薬を飲んでいるかの把握や薬の管理をしてもらえる他、飲み合わせ、重複の有無、症状の変化、体調などを細かく確認してもらえることも大きなメリットと言えます。

訪問薬剤師を利用できることも

薬局によっては、患者の自宅へ訪問する「訪問薬剤師」がいる場合も。訪問薬剤師がいれば、体が不自由でも薬を届けてもらえる、心配ごとを相談できる、お薬カレンダーへのセットを手伝ってもらえる、といったメリットがあります。

介護保険の認定を受けている場合は、担当ケアマネジャーに相談して、訪問薬剤師を紹介してもらうこともおすすめです。

2飲み忘れないように服薬管理ツールを使う

ピルケースやお薬カレンダーといった服薬管理ツールを使うと、飲んだかどうかが一目で分かり、服薬管理に大変役立ちます。服薬管理ツールには、様々な種類があり、高齢者でなくてもおすすめのツールです。

飲んでいる薬の大きさ、数、指先の動きやすさなどに応じて、使いやすい製品を選びましょう。また、同居する家族は、必要に応じて以下のようなサポートをすることがおすすめです。

  • 薬を飲んだか声をかける
  • 本人の代わりに薬を出す
  • 飲んだ空き包装がゴミ箱に入っているか確認
  • 家族が留守の間に飲む薬にメモを付けて準備しておく

なお、一人暮らしの高齢者に対しては、以下のようなことを気にかけておきましょう。

  • 薬の時間に家族が電話する
  • 訪問介護、訪問看護が来る時間に服薬する
  • 服薬時間を変えて良いか、医師や薬剤師に相談する
3服薬支援ロボットもおすすめのひとつ

服薬管理ツールとして、「服薬支援ロボット」を検討することもひとつの手段。服薬支援ロボットは、設定した時間がくると1回分ずつ薬を出してくれるため、飲み間違いや飲み過ぎを防ぐことができます。

高機能な服薬支援ロボットでは、服薬すると家族のスマートフォンへ連絡が行くなど、見守り機能がついた製品も。服薬支援ロボットは状況に応じて選びましょう。

4薬の数が多い場合は一包化してもらう

錠剤が多い場合、PTPシートから出しにくい場合は、1回分ずつ小袋にパックしてもらうと便利です。こうしてパックにまとめることを「一包化」(いっぽうか)と言います。複数の医療機関からの薬をまとめることも可能。

薬剤師に相談すると、医師へ確認の上、行ってくれます。パックには「朝食後」、「寝る前」といった服用タイミングも印字。タイミングごとに色分けして線を引いてくれる場合もあります。管理しやすい方法を相談しましょう。

「ポリファーマシー」とは?防ぐ方法

薬が多いと感じたら?

高齢者の服薬において「ポリファーマシー」が問題とされています。

ポリファーマシーは、直訳すると「たくさんの薬」という意味ですが、単に薬の数、種類が多いだけでは、ポリファーマシーとは言いません。

困るのは、多くの薬を併用していて、副作用や服薬間違いといった問題が起きやすくなること。このような、多剤併用に関連する好ましくない状態がポリファーマシーです。

一般的に5~6種類以上の薬を併用している状態をポリファーマシーと呼ぶことがあります。以下のような状態が出た場合には、医師や薬剤師に相談しましょう。

  • 薬を飲むのが大変
  • 指先や視力が弱まり、うまく薬を管理できない
  • 薬で副作用が出ている

薬が飲めない場合は薬剤師に相談しよう

薬を正しく飲めない原因は、以下のように様々です。

  • 種類が多く、飲み方も色々で間違えやすい
  • 包装が開けにくい、落としてしまう
  • うまく飲み込めない
  • うっかり忘れる
  • 副作用が心配

訪問看護師、リハビリスタッフに相談することも大切ですが、薬剤師なら薬の一包化や変更にも対応できるので、より根本的な対策が可能に。薬の変更に伴う医師への連絡も行ってくれます。薬が飲めなくて困っている方は、薬剤師に相談してみましょう。

まとめ

薬は用法用量を守って、規則正しく飲むのが大切です。しかし、高齢者では、目や指先が弱ってくる、認知機能が低下するといった、薬の管理に影響する様々な変化が出てきます。

複数の持病があれば、薬の種類も多くなりがち。加齢に伴って副作用も出やすくなります。こうした高齢者特有の状況において、薬を安全に使っていくには、工夫が必要です。便利な服薬管理ツール、薬剤師のサポートを活用しましょう。

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