服薬指導とは?内容や流れを簡単に解説
服薬指導とは、薬剤師が患者に行う薬の説明のことです。具体的には、正しい飲み方、効果、保管方法、注意すべき副作用や飲み合わせについての情報を提供します。単に説明するだけでなく、患者の疑問に答え、薬についての相談に乗るのも服薬指導の一環。特に、薬の量が増えがちな高齢者の方々には有意義な時間になるでしょう。調剤薬局における服薬指導について、内容や流れを説明し、2023年(令和5年)8月から規制緩和された「オンライン服薬指導」についても解説します。
服薬指導とは
服薬指導は義務

服薬指導は、薬剤師が行う薬の説明のことです。薬剤師法で定められている業務のひとつで、患者に薬を渡す際に実施します。
薬は少量でも大きな影響を体に与え、複数の病気に使用が認められている薬も。薬の処方量や注意点は個人ごとに異なるので、説明書に書かれている一般的な説明だけでは不十分なことも多く、服薬指導は義務になっています。
服薬指導に患者自身も積極的にかかわろう
患者の中には、「すでに薬の説明を医師から聞いているのに、なぜもう一度聞かなければならないの?」、「簡単な薬だから、毎回説明はいりません」などと、服薬指導に疑問を持たれた方もいらっしゃるでしょう。
しかし、たとえ同じ薬であっても間違いなく服用できているのかなどは、定期的に確認することが必要。薬剤師がかかわることで、医師とは異なる第3者の目線で薬を評価することができるのです。
服薬「指導」という名称はついていても、実際は薬に関する相談を含む双方向のコミュニケーション。困りごとや医師に聞きにくいことなど、何でもご相談いただけます。高齢者の場合は持病を複数抱える方も多く、薬も複雑になりがち。服薬指導を活用して、薬に対する疑問や不安を解消していきましょう。
服薬指導の内容
服薬指導の内容は、大きく分けて以下の4つです。
- 1薬剤の説明
- 2相談対応
- 3アドヒアランス確認(患者が納得して薬を使えているか)
- 4アセスメント(薬物治療の客観的な評価)
4つのうち、患者が目に見える形で体験するのが、①薬剤の説明、②相談対応です。薬剤師は、患者とのやりとりを通して、③アドヒアランス確認として「患者が納得して治療に向き合えているか」を見たり、④アセスメントとして「薬を使っていて問題がないか」を見定めます。
また、服薬指導の際には、年齢や処方歴、副作用歴といった情報を確認して、薬を客観的に評価し、疑問があれば、事前に医師へ確認するのも薬剤師の仕事です。
服薬指導の具体的な流れ
ここでは、服薬指導の実際の流れを紹介します。
- 1症状のヒアリング
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薬剤師から薬を受け取るときは、薬の説明に入る前に、現在の症状や検査値などを聞かれることも。初めての薬局なら、事前に質問票の記入を求められるでしょう。
前回からの経過や、病状に変化はあったのか、薬はきちんと服用できているかなども聞かれます。薬剤師が受け取る処方箋には、薬のことは書いてありますが、患者の病状についての詳細は書いてありません。そのため症状のヒアリングは、今回の薬が患者にとって適切かどうか、薬剤師の目線でチェックします。
- 2処方薬の説明
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次に以下のような内容で、薬の説明があります。
- 薬の名前
- どんな効果があるのか
- 正しい服用法(用法・用量)
- 保管方法
- 起こりうる副作用
- 副作用が起きたときの対応
- 飲み忘れたときの対応
- 飲み合わせについて
実際の薬と、袋や説明書を見ながら、薬剤師と一緒に確認します。
- 3質問や疑問の対応
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一通りの説明が終わると、「分からないことはありませんか?」と薬剤師から質問があるはずです。安心して薬を服用するためにも、疑問や不安があればきちんと伝えることをおすすめします。副作用への心配や、「さっきの説明が分からないのでもう一度聞きたい」、「この薬が飲みにくくて困っている」など具体的に質問しましょう。
この時に、医師には聞きにくいことや聞き忘れたことを相談しても大丈夫。内容によっては一緒に対策を考えたり、医師への情報共有をしてもらえたりするなど、薬剤師ならではの目線で対応してくれます。
オンライン服薬指導とは

オンライン服薬指導とは、スマートフォンやパソコンのビデオ通話で行われる服薬指導のことです。指導を受けた薬を、自宅へ配送してもらうことも可能。ネット通販のように薬を届けてもらえるため、忙しい方や定期的に通院している方には便利です。
かつてのオンライン服薬指導は、原則としてオンライン診療による処方箋だけが対象で、初診は対象外。しかし、コロナ禍における対策をきっかけに、制限も緩和しました。2023年(令和5年)8月からは制限が撤廃され、すべての処方箋がオンライン服薬指導の対象になります。オンライン服薬指導は、薬局の窓口とは異なり、自宅などでプライバシーを確保しつつ話ができることが大きなメリット。待ち時間がなく、家族と一緒に指導を受けられることも魅力のひとつです。
一方でスマートフォンやパソコンを利用するため、操作に不慣れなうちは不便さを感じることも。また、お薬手帳が見づらいことや、薬の配送料がかかるのもデメリットと言えます。
オンライン服薬指導の流れ
ここでは、指導の前後を含めて、オンライン服薬指導の流れを説明します。薬局によって多少の違いがありますが、以下が一般的な流れです。
- 1薬局に処方箋情報を送る
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まず、画像撮影やファックスで、薬局へ処方箋の情報を送信。医療機関の受診時に申し出ると、医療機関側から送ってくれる場合もあります。
- 2オンライン服薬指導を予約する
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利用する薬局のWebサイトや専用アプリで、服薬指導の日時を予約します。
- 3薬局側で処方内容を確認される
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薬局では、送られてきた処方箋の内容を、薬剤師が確認。処方内容によっては対面指導が必要と判断され、案内が来るかもしれません。
- 4服薬指導を受ける
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予約の日時が来たら、服薬指導を受けます。内容は対面での指導と同じ。保険証番号をここで確認される場合もあります。
- 5薬を受け取る
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配送または、直接薬局に出向いて薬を受け取り。受け取りの前後、指定のタイミングで支払います。
最終的に、薬局には処方箋の原本が届くことが必要です。原本を医療機関から送る場合はファックス等の情報だけでも交付してもらえるので時間はかかりません。自分で届ける場合は、薬局が原本を確認したあとに薬が交付されるので、受け取りに若干時間がかかる場合もあります。
まとめ
服薬指導とは、薬剤師による薬の説明と相談のことです。薬剤師法で定められており、薬を渡す際には必ず実施。薬の正しい使い方を知ることはとても大切です。近年では、オンライン服薬指導も普及。こちらは待ち時間に縛られず、しかもプライバシーを確保しながら薬の話ができるため、今後も広がっていくことが予想されますので、上手に活用することをおすすめします。