心臓病とは?原因や初期症状、余命について解説
「心臓病」は、心臓の構造や機能に何らかの影響を及ぼすことで、心臓の働きが正常に機能しなくなる状態です。心臓病と呼ばれる主な疾患は、「冠動脈疾患」(かんどうみゃくしっかん)、「心筋梗塞」、「心不全」、「不整脈」、「先天性心疾患」(せんてんせいしんしっかん)などがあり、高齢者に多い病気としても知られています。心臓病の概要をはじめ、病気の原因、初期症状、余命について詳しくまとめました。
心臓病の概要

心臓病は、心臓の構造や機能に異常があることによって引き起こされる疾患の総称です。心臓病には様々な種類があり、その中には、心不全、「虚血性心疾患」(きょけつせいしんしっかん)とも呼ばれる冠動脈疾患、「心臓弁膜症」(しんぞうべんまくしょう)、「心筋症」(しんきんしょう)、不整脈、先天性心疾患などが含まれます。
これらは心臓の異常によって引き起こされる病気。心臓病の他にも、「大動脈疾患」、「末梢動脈疾患」、「肺血管疾患」といった血管の病気が存在するのです。心臓病や血管の病気は、個々の状況、原因によって異なる特徴を持ちます。正確な診断と適切な治療のためには、医師の診断を受けることが大切。早期の治療と生活の改善に取り組むことで、心臓病や血管の病気によるリスクを減らすことができます。
心臓病の種類と症状

心臓病、または心疾患は、癌(がん)と脳血管疾患と並んで、日本人の「3大死因」のひとつです。
2020年(令和元年)の統計では、死亡者すべての中で、高血圧症を除く心疾患が原因で亡くなった人の割合は15%。これは、日本人の6~7人に1人が心臓病によって亡くなっていることになります。心臓病には、様々な種類が存在。ここでは、大人の心臓病を中心に、主要な疾患を説明しましょう。
虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)
虚血性心疾患には、一般的によく知られている心筋梗塞と「狭心症」(きょうしんしょう)が含まれます。これらの疾患は、心臓における血液供給が不足している状態であり、「虚血」とは、血液が適切に供給されていない状態のこと。したがって、心臓に十分な血液が行き渡らない状態は、虚血性心疾患と呼ばれます。
冠動脈という血管が心臓の筋肉に酸素や栄養素を供給する役割を果たしていますが、「動脈硬化」などによって冠動脈が狭くなったり、血管がけいれんを起こしたりすると、血液が心筋に十分に供給されなくなってしまい、心臓は酸素不足の状態に。その結果、胸痛といった症状が現れるのです。
心臓弁膜症
心臓弁膜症は、心臓内に存在する右心房、右心室、左心房、左心室という部屋の間にある「弁」(べん)が、加齢、感染症、外傷、先天的な問題などによって正常に機能しなくなる状態。本来、それぞれの弁は、血液が流れる際に開き、血液の流れが終わったら閉じることで、血液の逆流を防ぐ役割を果たしています。しかし、何らかの原因により、弁の機能に異常が生じると、弁の開閉はうまく行われず、血液の流れが妨げられる「狭窄症」(きょうさくしょう)、弁が正常に閉まらず血液が逆流する「閉鎖不全症」または「逆流症」が生じることもあるのです。
大動脈瘤
大動脈瘤は、動脈硬化によって血管がもろくなることで、心臓から押し出された血液が血圧の力に負け、血管がコブ状に膨らんでしまう状態です。大動脈瘤は発生する場所によっていくつかに分類。「胸部大動脈瘤」は、横隔膜より上にできる大動脈瘤と呼ばれます。「上行大動脈瘤」は、心臓から上に伸びる大動脈で形成。「弓部大動脈瘤」は、大動脈が弓のように曲がっている部分にできるもので、「下行大動脈瘤」は、大動脈弓(だいどうみゃくきゅう)の下から横隔膜までの範囲に生じます。
また、「腹部大動脈瘤」は、横隔膜より下にできる大動脈瘤です。なお、大動脈瘤はその形態によって「真性大動脈瘤」と「仮性大動脈瘤」に分けられることもあり、瘤が大動脈の一部であるか、それとも血管壁の一部が膨らんでいるだけかによって区別されます。
心房細動(不整脈)
「心房細動」(しんぼうさいどう)は、心臓の心房がけいれんのように細かく震え、正常に血液を体全体に送り出せなくなる病気です。長時間、心房細動の状態が続くと、動悸、息切れなどが激しくなり、疲れやすくなるなど、日常生活に支障をきたすようになります。
しかし、それ以上に懸念されるのは、心房細動が原因で、さらに重篤な疾患である「脳梗塞」、「全身性塞栓症」(ぜんしんせいそくせんしょう)を引き起こすリスクがあること。心房内で形成された血栓が血流に乗って、脳や他の臓器、組織の血管を詰まらせることで、重篤な合併症が生じる可能性もあります。そのため、心房細動を有し、脳梗塞を引き起こしやすい原因を持つ人は、血液凝固を防ぐ治療を受けることが重要となるのです。
また、心房細動は、「発作性心房細動」と「持続性心房細動」という2つのタイプに分類。発作性心房細動の場合、発作が出現しても、短時間で戻りますが、持続性心房細動の場合、発作は数時間続く傾向があります。
心房中隔欠損症
「心房中隔」(しんぼうちゅうかく)は、心臓の右心房と左心房の間を仕切る筋肉の壁を指しており、「心房中隔欠損」(しんぼうちゅうかくけっそん)とは、この壁に穴が存在する状態です。 先天性心疾患は、生まれつき心臓に何らかの異常がある状態を指し、一般的には約100人に1人の割合で発生するとされています。
大動脈解離
大動脈は内膜、中膜、外膜という3つの層によって構成されています。「大動脈解離」(だいどうみゃくかいり)とは、中膜が何らかの原因で裂け、壁の欠損部分から血液が流れ込むことで、大動脈内に2つの通り道が形成される状態です。
大動脈解離の原因は、動脈硬化、高血圧、高脂血症、糖尿病、遺伝など、多種多様な要因が関係していると考えられています。一般的に、大動脈解離の発症は男女ともに70代が多いとされていますが、40~50代で発症する場合も。また、大動脈解離は冬場に多く発生し、夏場には少ない傾向です。
時間的には、日中の活動時間帯である6~12時に多く発生し、深夜から早朝には少ないとされています。大動脈解離の症状は、ほとんどの場合、前兆なく突然胸や背中の激痛が出現。発症直後は、血管の壁が薄くなっており、破裂しやすい状態です。
特に上行大動脈に解離が及ぶ「スタンフォードA型」では、発症後1時間ごとに死亡率は1%上昇すると言われています。大動脈解離は、解離する部位によって、スタンフォードA型と「スタンフォードB型」に分類。なお、緊急性が高いのはスタンフォードA型で、発症した場合には、緊急手術が必要となってきます。
心筋症
心筋症の症状は様々ですが、無症状の場合も少なくありません。しかし、心筋症が進行すると、血液や栄養の供給は不十分になり、脳、肝臓、腎臓などの臓器に影響を及ぼす「慢性心不全」という状態になるのです。慢性心不全では、息切れ、倦怠感などの症状が現れ、日常生活に支障をきたします。
慢性心不全の一般的な症状としては、動悸、労作時の息切れ、呼吸困難、体のむくみ、体重増加など。症状が進行すると、夜間に突然息苦しくなって目が覚めたり、安静にしていても息切れが起こったりする場合もあります。また、心筋症のひとつである「肥大型心筋症」では、胸痛、めまい、失神などの症状も出現。不整脈を引き起こすこともあり、突然死の原因になる可能性も高い傾向です。
心臓腫瘍
「心臓腫瘍」(しんぞうしゅよう)とは、異常な増殖物である腫瘍が心臓から発生した状態。腫瘍は、心臓組織のあらゆる部位から生じる可能性があり、その特徴によって悪性と良性に分類されます。心臓腫瘍は、「原発性心臓腫瘍」と呼ばれ、心臓内で増殖し始めるのが特徴的。この状態では、悪性の腫瘍であっても良性の腫瘍であっても、心臓組織のどの部分からでも発生する可能性があります。
心臓の3大症状
胸部の痛みは、狭心症、心筋梗塞といった心臓疾患の代表的な症状です。狭心症では、胸の中央からみぞおちにかけて広がる漠然とした痛みが生じます。さらに、肩、首、腕、あご、歯に、痛みやしびれが生じることも。痛みの感じ方は人によって異なり、「押されるような感じ」、「しめつけられる感じ」、「重苦しい感じ」、「焼けるような感じ」、「鈍痛」といった様々な表現がありますが、一般的には非常に強い痛みではありません。狭心症の場合、安静にしていると通常は5分以内に痛みが治まります。
一方、心筋梗塞では、不安や恐怖を伴う痛みが30分以上も継続。痛みの場所は狭心症と似ていますが、心筋梗塞の痛みは非常に激烈です。顔面の蒼白、冷や汗、呼吸困難、吐き気などの症状も伴うことがあります。心臓の機能に異常がある場合、軽い動作でも息切れや呼吸困難が出現。症状が進行すると、安静時でも息切れを感じることが増えます。
また、心臓の機能低下により、体内の各部に酸素が適切に供給されず、末梢部では酸素不足に。これによって、脳の呼吸中枢はより激しい呼吸を促す指令を出すため、息切れや呼吸困難が生じます。心不全が進行すると、肺はうっ血し、肺からの酸素摂取は不十分に。そして、血液中の酸素レベルが低下して、息切れなどの症状が出現します。
一方、心筋梗塞では血管が詰まることで血流は遮断。これにより、心筋細胞が酸素供給できなくなり、細胞の一部が壊死(えし)している状態になります。一般的に心筋梗塞では、胸部に激しい痛みがあると言われていますが、胸痛がなく、吐き気やだるさなどの症状だけで心筋梗塞になってしまう場合も。
他にも、自覚症状がなく、検診などで心電図を受けた際に、偶然心筋梗塞が発見されるケースもあります。「無痛性」または「無症候性心筋梗塞」と呼ばれるこの状態は注目されており、全体における心筋梗塞の2~3割を占めているのです。
心臓病の原因

心臓病の発症原因は、動脈硬化をはじめとして、長期にわたる高血圧、高血糖状態などが関与。このような状態が続くと、血管壁には、コレステロールなどの物質であるプラークが沈着し、「粥状硬化」(じゅくじょうこうか:動脈の血管壁に悪玉コレステロールが蓄積し、ドロドロとした粥腫[じゅくしゅ]が形成される状態)と呼ばれる状態を引き起こします。
高血圧が続くと動脈硬化を引き起こしやすく、逆に動脈硬化が進行すると高血圧のリスクも高まることもあるのです。さらに、血糖値が長期間にわたって高い状態が続くと、血管に損傷を与え、動脈硬化の進行を促進してしまいます。
飽和脂肪酸
心臓病には、いくつかの脂質が関与します。脂質は、人間の体にとって重要なエネルギー源であり、「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分類。飽和脂肪酸を多く含む「動物油」は過剰摂取すると、コレステロールや中性脂肪の上昇を招き、動脈硬化の原因になることが知られています。
飽和脂肪酸には心臓の健康に悪影響を及ぼす可能性がありますが、その具体的なメカニズムはまだ不明確です。一方で、不飽和脂肪酸を多く含む「植物油」は、一般的に健康に良いとされ、不飽和脂肪酸である「オレイン酸」は、細胞をダメージから守る働きがあると言われています。このオレイン酸は、オリーブ油、キャノーラ油、ナッツ類などに含有。心臓の健康を保つためには、過剰な飽和脂肪酸の摂取を控え、代わりに不飽和脂肪酸を含む食品をバランス良く摂取することが重要と言えるのです。
トランス脂肪酸
「トランス脂肪酸」は、健康への悪影響が注目されている成分。脂質は、油と固体の脂という2つの形態があり、「脂肪酸」と「グリセリン」から構成されています。脂肪酸は、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分類されますが、この不飽和脂肪酸には、「シス型」と「トランス型」があり、トランス型の不飽和脂肪酸がトランス脂肪酸です。
トランス脂肪酸は、植物油を固体の油脂に変えるための加工技術である「水素添加」によって生成。この水素添加によって製造される食品には、マーガリンやショートニングが含まれており、これらが使用されるパン、ケーキ、ドーナツなどにも、トランス脂肪酸が含まれます。
トランス脂肪酸は生体に必須の成分ではありません。過剰に摂取すると健康への悪影響が懸念されており、トランス脂肪酸の摂取量が多いと、血液中の悪玉コレステロールが増えてしまい、善玉コレステロールが減少するため、冠動脈疾患といった心臓病のリスクが高まることが示されています。
なお、「世界保健機関」(WHO)は、トランス脂肪酸の摂取量を総エネルギー摂取量の1%未満とするよう勧告。日本人の平均摂取量はこの基準を下回っており、約1日あたり1g未満です。しかし、脂質の摂取量が多い人は、トランス脂肪酸も多く摂取する傾向があるため、注意しなくてはなりません。
心臓病の予防

日本人の平均寿命は、男性が78歳、女性では85歳です。死亡原因のうち、全体の30%が癌、15%は心臓病、そして14%が脳血管疾患とされています。心筋梗塞の発生率は10,000人に1~4人であり、欧米と比較すると、日本における心筋梗塞の発生率は約20倍低い傾向です。
しかし、食事の欧米化、生活習慣の変化などにより、心臓血管病の発症が増加しているとも指摘されています。狭心症、心筋梗塞など、心臓血管病の多くは、動脈硬化が主な原因です。また、治療や手術を受けても再発する可能性が高いと言われています。そのため、動脈硬化の予防、再発予防は非常に重要。心臓血管病にならないためにも、いくつか気を付けるべきポイントがあります。ここでは、心臓病の予防方法について、紹介しましょう。
- 1禁煙
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タバコの煙には、ニコチンや一酸化炭素など有害物質が豊富に含まれています。ニコチンは交感神経を刺激し、心拍数の増加、血圧上昇、心筋の収縮力の増加などを誘発。同時に、血管収縮による血流量の低下、酸素や栄養の供給不足をもたらします。また、一酸化炭素は、酸素供給能力の低下、血管内皮の組織障害、血栓形成の原因。このように、喫煙が血管系に与える影響は重大であり、虚血性心疾患の発症や悪化のリスクを高めます。
喫煙による心臓への影響は、心拍数の増加、血圧上昇、心筋の収縮力増加などによっても出現。喫煙に伴い、心臓の負担が増加し、酸素需要は上昇する一方、血管収縮による血流量の低下、酸素や栄養素の供給不足も起こります。そのため、禁煙することは、心臓の健康維持や虚血性心疾患の予防において重要と言えるのです。
- 2栄養バランスが取れた食生活
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心臓病予防のための食事は、適切な栄養素の摂取とバランスが重要となります。エネルギー、タンパク質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラルなどを適切な量で摂取することが必要。さらに、食物繊維、ポリフェノール、植物ステロールなどの非栄養素成分にも注意を払う必要があります。
植物ステロールは、「フィトステロール」とも呼ばれ、コレステロールと似た構造を持つ成分。植物ステロールは、血中コレステロールを下げる効果が期待されており、とうもろこし、ごま、ピーナッツ、大豆などに多く含まれています。
これらの食品を摂取することで、心臓病予防につながるのです。また、食事中の食塩を控え、加工食品、調味料の摂取にも注意を払うことで、高血圧の予防にもなります。心臓病予防のためにはバランスの取れた食事を心がけましょう。
- 3適度な運動
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動脈硬化の治療や予防には、軽い有酸素運動が推奨されています。速歩き、ウォーキング、ジョギング、水泳など、週3~4回、30分以上の運動を行うことが効果的。適度な運動は、血液循環を促進し、血管の健康状態を改善する効果もあります。自身の体調や症状に応じた運動を行うことで、心臓の機能向上や「生活の質」の向上を目指しましょう。
- 4ストレス解消
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過度のストレスは、自律神経や内分泌系に影響を与え、心臓の機能に変化をきたす可能性があります。ストレスが続くと交感神経は刺激され、「カテコールアミン」という神経伝達物質を分泌。このカテコールアミンによって、血圧と血糖値は上昇し、心拍数が増え、心臓の収縮は促進されます。
このような状態が持続することで、心臓の機能は低下しやすくなるのです。ストレス管理は心臓病の予防や管理において大切。ストレスを軽減するためには、適切なリラクゼーション法やストレス解消の方法を取り入れましょう。
また、良質な睡眠を確保し、健康的な食事や生活習慣を心がけることも重要です。心臓病の発症リスクを抑えるためには、ストレスとの適切な向き合い方が欠かせません。以上のように、心臓病の予防には、禁煙、食事生活の改善、適度の運動、ストレス解消が重要。それぞれ単体で行うのではなく、組み合わせて心臓病の予防に努めましょう。
高齢者と心臓病

心臓弁膜症の原因のひとつとして、加齢に伴う様々な要因が知られています。
特に高齢者において、加齢に伴う弁の変性、及び石灰化(やわらかい組織が硬くなること)による心臓弁膜症は増加。そのため、65歳を過ぎたら心臓の検査を受けましょう。心臓弁膜症は、弁の病気ですが、進行すると心筋が障害され、心臓全体の病気になります。
また、弁に対する治療だけでは心筋の障害は回復せず、心臓の機能も低下。心臓弁膜症は自然に治ることはないため、心筋の障害が進行する前に早期の診断と治療は非常に重要です。
高齢者の心不全と心臓の収縮
高齢者における多くの心不全は、心臓の収縮力が保たれたまま、左心室の拡張機能が低下する「拡張機能不全」によって引き起こされています。しかし、高齢者は、高血圧、糖尿病などの基礎疾患を抱えており、活動的な生活を送っていないことも多いため、拡張機能不全が発症していることに気付きにくく、放置される傾向です。拡張機能不全では、心臓が血液を効率良く戻す力が弱まるため、うっ血、むくみなどの症状が出現。心臓に不安を感じる人がこれらの症状を経験した場合は、早めに医師に相談することが重要です。
高齢者の心不全とフレイル・サルコペニア
高齢者は、長年の労働によって心臓の機能が衰え、息切れや疲労感などの症状が現れることがあります。高齢化に伴い、心不全の患者数も増加しており、現在では慢性心不全患者の約70%が65歳以上です。また、心不全による入院は繰り返されることが多く、そのたびに生活の質が低下していきます。このように、高齢者にとって心不全は寝たきりの原因となり、生活の質を低下させる重要な要因です。
超高齢社会では、フレイルやサルコペニアと心不全の関連も指摘されており、問題となっています。フレイルとは、高齢者の筋力や身体機能が低下した状態のこと。フレイルは、障害がまだ現れていない段階であり、自立した生活は可能ですが、転倒やささいな病気がきっかけで、要介護状態に陥る危険性が高い状態です。心不全になると、息苦しさなどから活動量は減少し、筋力が低下してフレイルになることがあります。
一方、サルコペニアは筋肉量の減少と筋力低下を指し、高齢化や長期の安静、栄養不良、癌などの慢性疾患が原因。心不全を抱える高齢者は、入院中や日常生活での運動が少なくなりがちであり、筋力の低下、サルコペニアの進行が起こりやすいため、注意が必要です。高齢者の多くは基礎疾患や既往歴を抱え、心不全による入院も頻繁に増えています。そのため、心不全と関連するフレイルやサルコペニアとの関係にも注意しましょう。心不全が進行する前の段階から、早期の診断と適切な対処を行うことが重要と言えます。
心筋梗塞になった高齢者の治療
急性心筋梗塞の治療にはいくつかの治療法が存在。心筋梗塞の主な原因は血栓であるため、血液をサラサラにするための「抗凝固剤」、血小板凝集を防ぐ「抗血小板剤」の投与が行われます。
冠動脈閉塞部の血栓を溶解するためには「血栓溶解剤」を使用します。ただし、高齢者では出血性疾患のリスクが高まるため、注意が必要です。急性心筋梗塞は、一度発症したら、薬物療法が重要となってきます。
具体的には、「抗血小板凝集薬」や脂質異常を改善させるスタチン系の薬、「ACE阻害薬」、「β遮断薬」で高血圧の治療など。適切に薬を内服することで、内服していない場合に比べて、寿命が延びる効果が期待できます。これらの治療方法は、患者の状態や病院の設備によって異なる場合があるため、必ず医師の指示に従い、適切な治療を受けるようにしましょう。