訪問看護とは?できること・できないことや料金を簡単に解説
「訪問看護」は、看護師、保健師、理学療法士などの専門職が利用者の自宅を訪問して、主治医の訪問看護指示書(指示書)に基づき、医療的なケアをするサービスです。主治医の指示があるので、病院と同じ処置ができ、利用者の生活をサポート。なお、利用者の状態によって、介護保険の適応になるか、医療保険の適応になるかが異なります。訪問看護のサービス内容、利用条件、費用、利用する流れなどをまとめました。
訪問看護とは

訪問看護は、主治医の訪問看護指示書(指示書)をもとに、看護師、保健師、理学療法士などが利用者の居宅を訪問して、医療的なケアをするサービスです。
主治医の指示があるため、病院と同じ処置ができて、自宅での療養生活を支援してくれます。要介護状態になった場合でも、利用者が可能な限り、自宅で自立した日常生活を送れるように、心身の機能の維持、向上をすることが目的です。
訪問看護は、病院、診療所、訪問看護ステーションから提供することが可能。利用者の年齢、疾患、状態によって、介護保険の適応になるか、医療保険の適応になるかが異なります。厚生労働省の調べでは、2021年(令和3年)、介護保険給付による訪問看護を利用した人は約66.9万人、医療保険給付によって利用した人は約38万人でした。
訪問看護のサービス内容
ここでは、訪問看護のサービス内容についてまとめました。
病状や健康状態の管理と看護

自宅を訪問して、病状や健康状態の管理や看護をします。
バイタルサインである体温、血圧、脈拍、血糖値、酸素飽和度(SPO2)などを測定して、健康状態をチェック。健康状態に問題がないか、変化がないかを観察し、記録します。
訪問看護では、利用者の心身状態をきちんと把握し、病状の悪化を防ぐために、自宅における療養上での注意点、生活指導、自立を促すアドバイスを実施。予防的な支援をすることで、自立した生活の継続や機能の回復を促します。
医療処置・治療上の看護
主治医の訪問看護指示書をもとに、看護師による医療処置や看護サービスを実施。症状の悪化を防いで、日々の生活を快適に過ごせるようにサポートします。実際に訪問看護で良く行われる医療処置は、以下の通りです。
尿道留置カテーテルの管理、自己導尿
膀胱に溜まった尿の排泄が困難な場合には、尿道にカテーテルを留置(挿入し、抜けないように固定すること)します。カテーテルのトラブルを予防し、トラブルがあった場合にはすぐに対応。具体的には、尿漏れ、自然抜去、閉塞、尿路感染、スキントラブルなどです。また、自己導尿をしている方に対しての指導や介助をします。
褥瘡を含む創処置、褥瘡予防
褥瘡(じょくそう:床ずれのこと)や他の傷を処置し、医師の指示をもとに軟膏の塗布、被覆材(ひふくざい:傷口を保護するためのシート)での処置を実施。傷の処置には医師と連携して、改善に努めます。訪問介護員には行えない専門的な判断が必要な傷の処置も可能です。
また、要介護度が高く、寝たきり状態の方は褥瘡ができる可能性が高くなっています。褥瘡を予防するためには、利用者の生活状況、栄養状態を評価し、褥瘡ができないようなポジショニング(自分で身動きが取れない方の姿勢を安全で快適な体位に保つこと)や、除圧(じょあつ)について、家族や訪問介護員に助言。その他、適切な福祉用具の導入について、ケアマネジャーと連携することも、必要な業務内容です。
点滴、注射の実施
訪問看護では、医師の指示をもとに、必要な点滴や注射をします。点滴方法には、腕の末梢静脈から点滴を行う「末梢静脈点滴」、鼠径部(そけいぶ:足の付け根にある溝の内側部分)から挿入した「中心静脈カテーテル」をはじめ、「CVポート」(皮下埋め込み型中心静脈ポート)、「PICC」(ピック:末梢静脈挿入型中心静脈カテーテル)、皮下点滴など様々です。
また、インスリン注射、血糖値測定も実施。なお、訪問介護員は注射や血糖値測定は行えないため、これらの業務は、看護師の重要な仕事です。
経管栄養、胃ろうの管理
嚥下機能(えんげきのう:飲みこみ機能)が低下している方は、胃ろうや経鼻カテーテルを使用して、栄養剤の注入をします。訪問看護では、胃ろうやカテーテル(チューブ)の抜去、閉塞(へいそく)、逆流などのトラブルに対応。また、利用者の生活状況や健康状態に応じて、経管栄養の提案、ケア方法を評価し、家族への指導も行います。医師と連携して、季節や体調に応じた水分量や栄養剤の調整をすることも、医療処置における重要な仕事です。
在宅酸素療法の管理
肺や心臓の疾患によって、酸素を血液中に取り入れる力が弱っている方は、日常生活で酸素吸入をします。在宅で行う酸素療法の際には、酸素濃縮機や酸素ボンベの使用方法と管理について、利用者、家族に指導。また、自宅内で酸素療法をするときの注意点、楽に移動できる生活行動をアドバイスします。
人工肛門、人工膀胱の管理
「人工肛門」や「膀胱ろう」を利用している方に対して、パウチの交換やトラブルがあった際にサポート。排泄のトラブルが起きないように評価し、支援します。
浣腸、摘便(てきべん)
利用者の排便周期に合わせた排便をサポートするために、浣腸や摘便を実施。利用者の排便習慣や意向を評価し、適切なケアをします。排便周期がスムーズになるためにも、主治医との連携を行い、食事や水分量について、利用者、家族に指導するのも看護師の重要な仕事です。
服薬管理
認知症で一人暮らしをしている方や高齢夫婦で同居している場合には、服薬の管理が難しい場合も。定期的な服薬ができるように支援したり、指導したりすることで、服薬を管理します。訪問介護やケアマネジャーとも連携して、正しく服薬を行えるような工夫が必要です。
人工呼吸器の管理
気管切開をしている方や人工呼吸器を利用している方が、自宅で安全に療養できるように人工呼吸器を管理します。人工呼吸器のメンテナンスや点検は医療機器メーカーが行いますが、気管切開部(気切部)のケアや観察は看護師が実施。トラブルがあった際にすぐに対応できるように、医療機器メーカーとの連絡方法を決めておく必要があります。
喀痰吸引
訪問看護の医療処置では、自己排痰が困難な方に対して喀痰吸引(かくたんきゅういん)を実施。看護師は、家族や研修を受けた訪問介護員が適切な方法で行えているかどうかのチェック、指導も行います。
リハビリテーション看護
訪問看護サービスは、自宅で行うリハビリテーションもサポート。自宅での生活を維持できるように、身体機能や運動機能の維持、向上を目的とした機能訓練、褥瘡(床ずれ)、肺炎、寝たきりなどを防ぐ目的でリハビリをも行います。
リハビリテーション看護では、ベッド上での寝返りや起き上がりを訓練したり、座位や立位を維持したりするための訓練などを実施。日常生活動作を訓練して、動作方法や家族に介助方法を指導します。また、自宅での生活を維持するため、予防的リハビリに力を入れるのも役割のひとつです。
家族の相談と支援
家族が自宅で介護をする上での困りごとについて相談を受けて、アドバイスをしたり、サポートをしたりすることも。ケアマネジャーや医師との連携も行って、家族の困りごとを解決します。
療養環境の調整と支援
療養環境について評価し、問題があればケアマネジャーと連携をして、サポートすることも。例えば、寝たきりの人が使用するベッドのマットレス機能について、利用者に合っているかどうか、褥瘡ができる状態でないかどうかを評価します。
認知症と精神障害の看護
認知症に罹患(りかん)している利用者が自宅で生活する際には、事故防止を図ったり、家族から介護についての相談を受けたりするのも重要です。住み慣れた自宅でも、認知症の方にとっては事故につながるケースもあるため、プロの目から事故につながる場所や行動がないかを評価します。
ターミナルケア(終末期医療)
訪問看護は、末期がんの方、終末期のターミナルケアを受ける方に対して、痛みがない状態で療養できるように環境やサービスを整えるケアをサポート。利用者だけではなく、家族の精神的なケアも重要です。ケアマネジャーや他職種との連携を取って、穏やかな最期を看取ります。
在宅移行支援
患者が病院や施設から自宅退院した場合には、在宅生活の準備や指導、医師、病院、施設との連携を図り、自宅での生活がスムーズに行えるようにサポート。具体的には、医療処置やケアの引き継ぎ、在宅医療、看護体制の設備などを行います。
また、退院や退所後の生活を不安に感じる利用者と家族の不安を軽減するように支援。再び入院、入所になった場合には、在宅での医療処置やケアを病院、施設に引き継ぎをします。
地域における社会資源の活用
訪問看護では、民間や関連機関の在宅サービス、ボランティアサービスを紹介。各種サービス提供機関との連絡や調整を図り、自宅での生活を継続できるようにサポートします。また、住宅改修や福祉用具の導入についての助言、医療費助成制度、公費負担医療制度などの活用についても紹介したり、支援したりするのも重要な役割です。
訪問看護でできないこと
訪問看護は、基本的な生活の介助、医療機器の管理、ターミナルケアなどの医療処置に対応した看護サービスであるため、看護以外のサービスは提供されません。ここでは、訪問看護でできないことについてまとめました。
掃除や洗濯などの生活援助
掃除や洗濯といった家事全般の生活援助は、訪問看護ではできません。また、日用品の買い出しといった援助も、訪問看護の仕事の範囲外です。掃除や洗濯などの生活援助をして欲しい場合には、訪問介護員に依頼する必要があります。
通院時の付き添い

訪問看護は利用者の居宅で行う看護サービスであるため、通院時の付き添いなど居宅以外で提供するサービスはできません。通院時の乗車、移送、降車の介助は「訪問介護」を利用する必要があります。
ただし、訪問介護でも病院内での移動は、原則、医療保険の適応になるため、病院スタッフが介助できない場合のみ利用可能。もし受診が困難な場合には、往診の利用がおすすめです。
訪問看護の利用条件

訪問看護の利用条件は、①「介護保険」、②「医療保険」、③「自費」によって異なります。それぞれの利用条件を見ていきましょう。
- 1介護保険の場合
-
65歳以上の要支援や要介護認定を受けている方(介護保険第1号被保険者)、40~64歳の方で介護保険の「特定疾病」による要支援、要介護認定を受けている方(介護保険第2号被保険者)は、医療保険よりも、介護保険を優先的に利用するように定められています。なお、特定疾病は老化に起因する疾患のこと。特定疾病には、以下の16種類があります。
- がん(末期がん)
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靱帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
介護保険は原則1割負担(所得によっては2~3割)で利用でき、医療保険の自己負担(1~3割)よりも負担が少ないという点はメリットです。40歳未満の方は、介護保険の対象年齢ではないため、介護保険での訪問看護は利用できません。
- 2医療保険の場合
-
医療保険は、介護保険が利用できない方、病気、重症の方が対象。年齢別に分けた利用条件は、以下の通りです。
65歳以上
医師が訪問看護を必要と認めた方で、介護保険の要支援や要介護に該当していない方が対象となっています。
40~64歳
医師が訪問看護の必要性を認めた方が対象であり、特定疾病の対象ではない方、または、特定疾病の対象でも、介護保険の要支援や要介護に該当しない方です。
40歳未満
医師が訪問看護の必要性を認めた場合には対象になります。
なお、「厚生労働大臣が定める疾病等」は、医療保険による訪問看護が可能です。65歳以上、40~64歳の方で介護保険の認定を受けている場合でも、疾病に該当し、主治医が特別訪問看護指示書を作成した場合は、介護保険ではなく医療保険が適用されます。
医療保険の適用になった場合には、訪問看護を利用できる回数が多くなり、複数の訪問看護事業所のサービスを受けることが可能です。具体的には週4日以上、かつ、1日2~3回の難病等複数回訪問看護での利用が可能。また、要支援や要介護の認定を受けても、医療保険での訪問看護を受けられます。「厚生労働大臣が定める疾病等」は以下の通りです。
厚生労働大臣が定める疾病等
- 末期の悪性腫瘍
- 多発性硬化症
- 重症筋無力症
- スモン
- 筋萎縮性側索硬化症
- 脊髄小脳変性症
- ハンチントン病
- 進行性筋ジストロフィー症
- パーキンソン病関連疾患
- 多系統萎縮症(線条体黒質変性症、オリーブ矯小脳萎縮症、シャイ・ドレガー症候群)
- プリオン病
- 亜急性硬化性全脳炎
- ライソゾーム病
- 副腎白質ジストロフィー
- 脊髄性筋萎縮症
- 球脊髄性筋萎縮症
- 慢性炎症性脱髄性多発神経炎
- 後天性免疫不全症候群
- 頸髄損傷
- 人工呼吸器を使用している状態
ただし、介護保険の訪問看護と医療保険の訪問看護を、併用することはできません。
- 3自費の場合
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自費による民間の訪問看護サービスは、要介護度、病気の症状、種類、年齢に問わず、誰でも利用できます。例えば、40歳未満であるが交通事故の後遺症で寝たきりの方、末期がん、難病、退院直後で自宅生活に不安のある方など。また、自費での訪問看護サービスは、介護保険、医療保険の訪問看護サービスと併用可能です。
訪問看護の費用

訪問看護の費用は、訪問する専門職によって異なります。また、自己負担額は原則1割負担ですが、所得が多い方は2~3割負担。
地域によって、1単位あたりの金額が異なるため、利用する際には事業所に金額を確認しましょう。
保健師・看護師による訪問看護
保健師、看護師による訪問看護の場合、単位数、自己負担額(1割負担の場合)は、以下の表の通りです。
保健師・看護師による訪問看護の費用 | ||
---|---|---|
時間 | 単位数 | 自己負担額 (1割負担の場合) |
20分未満 | 313単位 | 313円 |
30分未満 | 470単位 | 470円 |
30分以上60分未満 | 821単位 | 821円 |
60分以上1時間30分未満 | 1,125単位 | 1,125円 |
(参照:厚生労働省|介護報酬の算定構造)
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士による訪問看護
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士による訪問看護の場合、単位数、自己負担額(1割負担の場合)は、以下の表の通りです。
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士による訪問看護の費用 | ||
---|---|---|
時間 | 単位数 | 自己負担額 (1割負担の場合) |
1回あたり20分(①) | 293単位 | 293円 |
1回あたり40分(①×2回) | 586単位 | 586円 |
1回あたり60分(①×3回)×90% | 791単位 | 791円 |
(参照:厚生労働省|介護報酬の算定構造)
要介護度別の費用
要介護度別に、介護保険から給付される上限額が定められています。そのため、訪問看護も限度額内であれば自己負担額は1割で利用可能です。所得に応じて、自己負担額は2~3割負担になります。
要介護度別支給限度額の一覧表 | ||||
---|---|---|---|---|
要介護度 | 支給 限度額 |
自己負担額 (1割負担の 場合) |
自己負担額 (2割負担の 場合) |
自己負担額 (3割負担の 場合) |
要支援1 | 50,320 単位 |
5,032円 | 10,064円 | 15,096円 |
要支援2 | 105,310単位 | 10,531円 | 21,062円 | 31,593円 |
要介護1 | 167,650単位 | 16,765円 | 33,530円 | 50,295円 |
要介護2 | 197,050単位 | 19,705円 | 39,410円 | 59,115円 |
要介護3 | 270,480単位 | 27,048円 | 54,096円 | 81,144円 |
要介護4 | 309,380単位 | 30,938円 | 61,876円 | 92,814円 |
要介護5 | 362,170単位 | 36,217円 | 72,434円 | 108,651円 |
(参照:厚生労働省|2019年度介護報酬改定について)
医療保険を利用した場合の費用
医療保険には月額の支給限度額はありませんが、年齢によって自己負担割合が異なります。具体的には、以下の通りです。
医療保険の自己負担割合 | |
---|---|
年齢 | 自己負担割合 |
75歳以上 | 1割(一定以上の所得がある方は2割、現役並みの所得がある方は3割) |
70歳以上75歳未満 | 2割(現役並みの所得がある方は3割) |
70歳未満 | 3割 |
就学前 | 2割 |
介護保険や医療保険は利用する際に、要介護度、年齢によって自己負担額は異なり、利用回数、看護師の滞在時間に制限があります。そのため、訪問看護を利用する際には、事前にケアマネジャーに相談しましょう。
訪問看護を利用する流れ

保険制度によって訪問看護を利用する流れは異なります。ここでは、介護保険の対象になる場合の流れについて紹介。
なお、医療保険や自費による訪問看護を利用する場合は、まず主治医や訪問看護介護事業者へ相談しましょう。
- 1要介護認定の申請
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要介護認定の申請は、住んでいる市区町村の地域包括支援センターに相談をするか、役所の高齢者福祉窓口に提出します。申請に必要な物は、以下の通りです。
- 申請書
- 介護保険被保険者証(65歳以上の方)
- かかりつけ医の情報が分かる物(診察券など)
- マイナンバーが確認できる物
- 医療保険証(40~64歳までの方)
要介護認定の申請は、原則本人が行う必要がありますが、困難な場合には家族や地域包括支援センター、居宅介護支援事業者、介護保険施設(申請者が入所中の場合)による代行での申請もできます。
- 2認定調査・審査判定
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要介護認定の申請後には、市区町村の調査員が自宅や施設を訪問して、要介護認定を受けたい方の状態を評価する目的で、認定調査を実施。認定調査は、全国共通の基本調査74項目で心身の状態をアセスメント(評価・査定)します。また、市区町村が利用者の主治医に依頼して、主治医意見書を作成してもらいます。
認定調査の結果と主治医意見書の一部項目をコンピューターに入力して、一次判定を実施。その後、一次判定の結果と主治医意見書をもとに保健、医療、福祉の専門家5人で審査会が構成されている「介護認定審査会」で、要介護、要支援の認定を判定します。判定結果は、申請日から30日以内に利用者に通知するのが原則です。要介護認定の結果は、要介護度が明記された結果通知書と被保険者証が利用者に届きます。
- 3ケアマネジャーに相談
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介護保険を利用する際には、ケアマネジャーに「介護サービス計画書」(ケアプラン)の作成を依頼。ケアプランを自分で作成することも可能ですが、介護保険に詳しいケアマネジャーに相談するのがおすすめです。訪問看護を受けたいことを相談して、利用頻度、時間、事業所について相談します。
- 4主治医に訪問看護指示書の作成を依頼
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訪問看護を利用する場合には、訪問看護指示書(訪問看護ステーションに対して主治医が交付)の作成が必須。主治医が訪問看護を必要と判断した場合にしか利用できないためです。訪問看護指示書には最長6ヵ月の有効期限があり、期限を超えた場合は利用ができません。
初めて訪問看護を利用する場合には、利用者や家族が主治医に相談して、承諾を得る必要があります。ただし、利用者や家族から主治医に対して訪問看護の利用について説明が難しい場合には、ケアマネジャーから相談してもらうことも可能です。
- 5訪問看護ステーションと契約
- 訪問看護指示書の交付を受けたあと、ケアマネジャーから紹介された事業所や自分で探してきた事業所と契約を結びます。契約時に、サービス内容、かかる料金などについて疑問や質問があれば、聞いておくと安心です。
- 6訪問看護計画に基づき、訪問看護を開始
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訪問看護ステーションは、主治医が作成した訪問看護指示書に基づいて「訪問看護計画書」を作成。訪問看護計画書は、看護、リハビリテーションの目標、問題点、解決策、評価をまとめた物であり、担当ケアマネジャー、主治医、利用者、家族に定期的に提出する必要があります。
訪問看護計画書に基づいて訪問看護を開始。以下のような場合には、訪問看護計画書を作成し直して、提出する必要があります。
- 主治医からの指示が変更された場合
- ケアプランが変更された場合
- 利用者の状態が変わった場合
訪問看護計画書の提出は定められていませんが、できれば毎月交付して利用者や家族に訪問看護計画書を確認してもらいましょう。
訪問看護では、どんな人が来る?
訪問看護では、看護の専門職である、保健師、看護師、准看護師、助産師が訪問。また、リハビリテーションの専門職である、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が来てくれる場合もあります。
例えば、経管栄養などのフォローをして欲しい場合には、看護の専門家が訪問し、自宅でのリハビリテーションを実施して欲しい場合には、リハビリテーションの専門家が訪問。どの専門家も訪問看護指示書に沿って、医療機関などと連携してサービスを提供してくれます。
訪問看護の提供を行っている機関

訪問看護を提供している機関には、主に、①「訪問看護ステーション」、②「保険医療機関」、③「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」、④「看護小規模多機能型居宅介護」、⑤「民間企業の訪問介護サービス」などがあります。順に見ていきましょう。
- 1訪問看護ステーション
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訪問看護ステーションは、保健師、看護師、理学療法士などが所属している事業所のこと。訪問看護ステーションの管理者は保健師や看護師ですが、理学療法士などのリハビリテーションの専門家も在籍しているので、看護だけではなくリハビリのサポートも可能です。
訪問看護を提供するためには、主治医からの訪問看護指示書が必要。訪問看護ステーションは保険医療機関ではありませんが、介護保険や医療保険を利用することが可能です。なお、訪問看護ステーションは独立した事業所で対応しやすいため、小規模の訪問看護ステーションが多く存在します。
- 2保険医療機関
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病院や地域の診療所、薬局のことを保険医療機関と言い、病院や診療所などの「訪問看護部門」や病院の外来部門が兼任して、訪問看護サービスを提供。訪問看護ステーションと同じく、介護保険や医療保険のどちらかを利用して訪問看護を提供することが可能です。その場合には、「介護保険法のみなし指定訪問看護事業所」として扱われます。
- 3定期巡回・随時対応型訪問介護看護
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定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、2012年(平成24年)から開始している介護保険制度の地域密着型サービス。日中、夜間を通じて、訪問看護と訪問介護の両方を提供し、定期巡回と随時の対応をします。定期的な訪問だけではなく、必要なときに随時訪問を受けることも可能です。
要介護度が高い方や認知症が進行している方でも、住み慣れた自宅で生活できるようにサポート。定期巡回・随時対応型訪問介護看護では、24時間サービスを受け付けているため、緊急時の訪問も可能です。
- 4看護小規模多機能型居宅介護
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看護小規模多機能型居宅介護は、「看多機」(かんたき)と呼ばれる施設のこと。訪問看護と訪問介護などの支援を提供する地域密着型サービスのひとつです。
医療依存度が高い方、退院直後で状態が不安定な方、在宅での終末期、家族に対する「レスパイトケア」(介護をしている方が、一時的に介護から解放されるように代理の機関が介護を行うこと)など、自宅での療養を支えるために提供。主治医との連携を図って、「訪問看護、リハビリ」「訪問介護」「通い(デイサービス)」「泊まり(ショートステイ)」を24時間365日提供します。
利用者の状況に合ったサービスをひとつの事業所で提供しているので、どのサービスを利用しても顔なじみの看護職や介護職が対応可能です。また、サービスを利用する際の手続きは1回で済みます。専属のケアマネジャーも配置されており、自宅での療養生活を送るサポートを目的にした施設です。
- 5民間企業の訪問介護サービス
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民間企業が運営しているサービスは、介護保険や医療保険の利用はできません。そのため、他の事業所を利用する場合よりも自己負担額は増えますが、公的サービスと同様のサービスが受けられます。
民間のサービスでは、利用者の年齢や疾病、利用頻度の制限などもないので、利用者や家族の希望に応じたサービスを提供可能。公的サービスで受けられない部分を民間のサービスで補うこともできます。
まとめ
訪問看護は、看護師、保健師、理学療法士などが自宅を訪問して、主治医の訪問看護指示書(指示書)に基づいて、医療的なケアをするサービス。住み慣れた自宅での療養生活をサポートしてくれます。訪問看護の利用条件は、年齢や疾病、介護認定の有無で異なる点に注意が必要です。
訪問看護を利用したい方は、医療機関、訪問看護ステーション、地域包括支援センター、市区町村の介護保険の担当窓口に相談しましょう。