文字サイズ
標準
拡大

history閲覧履歴

メニュー

看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)とは?料金や対象者を解説

「看護小規模多機能型居宅介護」(かんごしょうきぼたきのうがたきょたくかいご)とは、居宅介護を行うにあたって、必要な支援と医療ケアを提供する介護保険サービスです。「通所」、「短期入所」、「訪問介護」の3つの包括的なサービスと「訪問看護」が行われます。特に看護小規模多機能型居宅介護は、胃漏、気管切開など間を置かない医療ケアが必要で、従来の介護保険サービスでは対応が困難な方を対象。看護小規模多機能型居宅介護を活用するには、サービス内容と利用条件に関する理解が非常に重要です。理解を深めておくことで、スムーズに利用することができます。

看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)とは

包括的なケアが行われる

看護小規模多機能型居宅介護は、居宅介護に必要な支援と医療ケアをまとめて受けられる、介護サービスです。

看護小規模多機能型居宅介護の目的は、介護や医療ケアの必要な方が住み慣れた地域で長く生活できるようにすること。通所、訪問介護、短期入所の3つのサービスに訪問看護が加わり、居宅介護において医療ケアが必要な方へ支援を行います。

看護小規模多機能型居宅介護の特徴は、ひとつの介護事業所から、居宅介護及び医療ケアに必要なサービスがすべて提供されることです。他の介護保険サービスと異なり、ひとつの介護事業所から支援が提供されているため、利用者の状況、家族の都合に合わせたオーダーメイドの介護計画が立てられます。また、医師の管理のもと医療処置が必要な方だけでなく、認知症の方、リハビリが必要な方、看取りが必要な方にも対応可能です。

なお、看護小規模多機能型居宅介護では、毎回同じスタッフが対応。特に認知症の方は、環境が変わるとパニック状態になってしまうこともあるため、同じスタッフが担当することで安心感が得られます。

看護小規模多機能型居宅介護のサービス内容

看護師のケアを受ける利用者

看護小規模多機能型居宅介護のサービスは、大きく分けて①「通所」(デイサービス)、②「短期入所」(ショートステイ)、③「訪問介護」、④「訪問看護」の4つが存在。利用者は、この4つのサービスを組み合わせて利用可能です。

看護小規模多機能型居宅介護の4つのサービスについて、詳しく紹介していきます。

1通所(デイサービス)

通所とは、デイサービス施設へ日帰りで通い、レクリエーション、入浴、リハビリ、医療ケアなどの支援が受けられる介護サービスです。通所には自宅での引きこもり解消、他者との交流を図る機能と役割があります。

生活動作に必要な介護に加えて、理学療法士によるリハビリ、看護師による医療ケアにも対応。看護小規模多機能型居宅介護では看護師がいるため、胃漏や点滴など、医療処置の必要な方、末期がんで専門的な処置が必要な方など、幅広い状態の方が利用可能です。

また、一般的な通所では、日中の利用に限定されてしまいますが、看護小規模多機能型居宅介護では早朝から遅い時間まで対応しています。時間帯に制限されず、利用者や家族の都合の良いときに利用できるのが特徴です。

2短期入所(ショートステイ)

短期入所(ショートステイ)とは、利用者が介護施設へ短期間の宿泊を行う介護サービス。介護施設へ宿泊している期間は食事介助、排泄介助などの生活支援に加えて、看護師による医療ケアが受けられます。

看護小規模多機能型居宅介護における短期入所の役割は、家族や介護者の負担を軽減すること。家族が一定期間介護をしなくても良いため、心身の休息にもつながります。最も利用されることが多いのは、家族の出張、あるいは冠婚葬祭で介護者が家にいられないケース。要介護者が必要な生活介助を受けられなくなってしまうため、短期入所が利用されます。

看護小規模多機能型居宅介護における短期入所の特徴は、訪問介護、訪問看護時と同じスタッフが対応してくれること。自分の病状や身体機能の状態を理解したスタッフが対応してくれるため、利用者や家族も安心できます。

3訪問介護

訪問介護は利用者の自宅へ訪問して、食事介助、入浴介助、部屋の清掃などの生活支援を行う介護サービスです。怪我や病気などで、ひとりでは生活が困難な利用者に対して身の回りの介助を行い、自立を促します。

看護小規模多機能型居宅介護は、通常の介護保険サービスにおける訪問介護と異なり、時間、利用回数の制限がありません。利用者が認知症、重度の身体障害で食事の準備や排泄ができない場合、1日のうちで複数回、介護を行う必要があります。看護小規模多機能型居宅介護の訪問介護であれば、時間及び利用回数に捉われず生活支援が可能。一人暮らしで介護が必要な方が、在宅で継続して生活していくには、欠かせないサービスなのです。

4訪問看護

訪問看護は、看護師が利用者の自宅に訪問し、医療ケアを提供する介護サービス。在宅における継続した医療ケアが必要な利用者に対して、専門的な支援を行う役割があります。退院後の在宅療養では、看護師による医療ケアが必要です。訪問看護では看護師の訪問により、退院直後で不安を感じている人のケアを実施します。

また、看護小規模多機能型居宅介護では、医療処置に加えて自宅で最期を迎えたい方の終末期におけるケアにも対応可能。

在宅での看取りには、緩和ケアなど専門的な処置が必要です。看護小規模多機能型居宅介護では、緩和ケア以外に家族が抱える相談、指導など、在宅での看取りにおける様々なニーズに対応します。

看護小規模多機能型居宅介護の対象者

看護小規模多機能型居宅介護は原則として、「要介護認定」(要介護1~5)を受けた方、看護小規模多機能型居宅介護の介護事業所が所在する市区町村に住んでいる方が対象。具体的には、以下のような方を対象としています。

  • 退院後に在宅生活への移行が求められる人
  • がん末期などで、病状が不安定な人
  • 要介護度が高く、家族の負担軽減が必要な人

ケガ・病気からの退院直後は、入院しているときと同様の医療ケアが求められるケースがほとんど。家族、介護士では対応が困難な医療ケアが頻繁に必要な方は、看護小規模多機能型居宅介護の対象になります。

また、がん末期などで病状が不安定な状態も、看護小規模多機能型居宅介護の対象。病状が不安定になると、突発的に医学的な処置が必要になる場合があります。看護小規模多機能型居宅介護ならば、従来の介護保険サービスでは対応しきれない、急な訪問看護も行えるのです。さらに介護度が高く、家族の負担が大きい方も看護小規模多機能型居宅介護の対象。一時的なリフレッシュを目的に短期入所を利用することで、家族の介護負担の軽減が可能なのです。

看護小規模多機能型居宅介護のメリット・デメリット

看護小規模多機能型居宅介護を有効に活用するためには、メリットとデメリットを知っておく必要があります。これらを理解して、実際にサービスを受ける際に困らないようにしましょう。

看護小規模多機能型居宅介護のメリット

体操する利用者

利用の手続きが1度で済む

看護小規模多機能型居宅介護では、介護事業所と1度契約をするだけで、すべての介護サービスが利用可能です。

一般的な介護サービスでは、通所、短期入所、訪問看護など、別々の介護事業所が行います。そのため、各介護サービスを利用する際に個々の介護事業所と契約手続きが必要。一方、看護小規模多機能型居宅介護では、すべての介護サービスを利用できるため、手間がかかりません。日程調整などで、複数の介護事業所に連絡をする手間がないのは、大きなメリットです。

低い初期費用で利用できる

看護小規模多機能型居宅介護の利用を開始する際には、介護施設の入所時のような高額な費用負担がありません。複数の介護サービスを利用者の状態、家族の経済的環境に合わせて調整可能です。

看取りを含めた訪問看護に対応している

看護小規模多機能型居宅介護における最大のメリットは、訪問看護による医療処置に対応している点。主治医の指示のもと、在宅で専門的な医療処置が受けられます。また、自宅での看取りにも対応可能。終末期に必要な処置が行えるので、在宅での看取りに不安がある利用者の家族にもおすすめです。

毎回同じスタッフが対応している

看護小規模多機能型居宅介護では、毎回決まったスタッフが対応。そのため、毎回違うスタッフに対応されることに不安がある方には安心です。また、同じスタッフが対応するため、利用者の細かな病状変化に気付きやすい点もメリットになります。

介護サービスの内容を柔軟に変更できる

看護小規模多機能型居宅介護は、介護サービスの内容を利用者の体調、家族の日程に合わせて柔軟に調節可能。訪問看護、訪問介護、通所、短期入所を組み合わせて利用できるだけでなく、急な予定変更にも対応できます。さらに、24時間体制で臨機応変にケアを行ってくれるのもメリットと言えるのです。

看護小規模多機能型居宅介護のデメリット

利用できる事業所が限定的

看護小規模多機能型居宅介護は、利用できる介護事業所の範囲が限定されているのがデメリット。「地域密着型サービス」になるため、住んでいる市区町村にある介護事業所しか利用できません。地域によっては、看護小規模多機能型居宅介護に対応した介護事業所がない可能性もあります。利用を希望する方は、あらかじめ住んでいる地域に看護小規模多機能型居宅介護に対応した、介護事業所があるかを確認しておくのがおすすめです。

利用人数に限りがある

看護小規模多機能型居宅介護は、介護事業所ごとに利用人数に上限が設けられています。29名の上限が設けられているため 、定員に達している場合は利用できません。また、介護サービスごとにも人数制限があり、通所は1日に18人、短期入所は1日に9人まで。短期入所などを特定の日に利用したい場合は、早めの予約が必要になります。

少人数コミュニティへの対応が必要

看護小規模多機能型居宅介護は、少人数に介護サービスを提供しているため、かかわる人が限定的。同じスタッフ、同じ他の利用者とのコミュニケーションが深まる一方、環境に馴染めないと、人間関係が大きなストレスになる可能性があります。

看護小規模多機能型居宅介護のケアプラン例

看護小規模多機能型居宅介護を実際に利用する際のケアプラン例を紹介。利用する際は、利用者の状況、家庭環境に合ったサービスを選ぶのが重要です。以下のケアプラン例をもとに、看護小規模多機能型居宅介護を利用する際の参考にしていただけます。

看護小規模多機能型居宅介護における利用者の例
年齢・性別・
介護度
70歳 男性 要介護4
病気 脳梗塞後遺症(左半身が動かない)、糖尿病、高血圧
家族構成 妻と2人暮らし

利用の経緯

利用者は脳梗塞を数年前に発症し、退院後は妻の介助のもと、居宅介護を送ってきました。しかし、本人の加齢に伴う筋力の低下、認知機能面の低下が強く見られるようになり、妻の介護量が増大。そのため、看護小規模多機能型居宅介護の利用となりました。

なお、看護小規模多機能型居宅介護における、1週間のサービス利用例は以下の通りです。

1週間の看護小規模多機能型居宅介護スケジュール例
午前 午後
訪問介護 訪問看護
通所サービス
訪問介護 訪問看護
通所サービス
訪問介護 訪問看護
通所サービス

看護小規模多機能型居宅介護のサービス内容として週に3日、通所を利用しつつ、訪問看護と訪問介護を合わせて利用しています。通所では入浴介助やリハビリも実施。訪問介護、訪問看護では、糖尿病や高血圧の服薬管理及び日常生活の介助を行っています。

看護小規模多機能型居宅介護の自己負担額

看護小規模多機能型居宅介護の利用費は、要介護度に応じた月額制です。通所、訪問介護など介護サービスの利用回数にかかわらず、一定の自己負担が生じます。要介護度別による月の自己負担額の目安は、以下の通りです。

要介護度別による月の自己負担額
介護度 料金
要介護1 1万3,470円/月
要介護2 1万8,847円/月
要介護3 2万6,494円/月
要介護4 3万50円/月
要介護5 3万3,991円/月

地域や利用者の世帯所得によって自己負担額が変動します。また、上記の自己負担額に加えて食費、宿泊費なども必要。なお、月の自己負担額以外でかかる費用は、以下の通りになります。

  • 事業所の体制に応じた加算
  • 利用者の状態に応じた加算
  • 通いや泊まり利用時の食費や宿泊費など

看護小規模多機能型居宅介護の利用の流れ

ここでは、看護小規模多機能型居宅介護における利用の流れを解説。介護事業所と契約をしてから、利用開始に至るまで数週間は必要です。契約から利用開始までの流れをよく理解して、スムーズに開始できるように準備しましょう。

ケアマネジャー、地域包括支援センターに相談

看護小規模多機能型居宅介護の利用に向けた最初のステップは、担当ケアマネジャーや地域包括支援センターへの相談です。なお、地域包括支援センターとは、市区町村に設置された介護における相談窓口になります。ケアマネジャーあるいは地域包括支援センターにて、どの介護サービスが自分に適しているかのアドバイスをもらいましょう。希望するサービス内容があれば、介護事業所を探してもらう前に伝えておくのが大切です。

介護事業所を探す

ケアマネジャー、地域包括支援センターの担当者が、利用者の要望にあう介護事業所を探します。看護小規模多機能型居宅介護は、住民票のある市区町村の介護事業所としか契約できない点を押さえておくのが重要です。また、介護事業所ごとの利用人数にも上限があるため、注意しておきましょう。

面談や見学後、契約

利用を希望する介護事業所が見つかったら、介護事業所との面談を実施。見学も可能であるため、実際に介護事業所を見てスタッフの方々の動きも確認できます。その際、不安に思った点、疑問点はその場で相談しましょう。面談や見学を通して納得できた場合、介護事業所との契約を行います。

ケアプランを作成、医療開始

看護小規模多機能型居宅介護を利用する場合、「ケアプラン」(介護計画書)の作成は利用する介護事業所に在籍する、ケアマネジャーが担当です。元々担当してくれたケアマネジャーがいる場合でも、ケアマネジャーの変更をしなければなりません。ケアプランの作成が完了すると、看護小規模多機能型居宅介護の利用を開始。医学的処置、リハビリが必要になる場合は、主治医からの「指示書」が必要です。なお、看護小規模多機能型居宅介護の利用に関する相談や介護サービスの変更希望は、介護事業所のケアマネジャーまで伝えましょう。

看護小規模多機能型居宅介護と小規模多機能型居宅介護サービスの違い

看護小規模多機能型居宅介護とよく似ている介護保険サービスに「小規模多機能型居宅介護」がありますが、提供しているサービス内容と対象者に違いが存在。それぞれのサービス内容と対象者は、以下の通りです。

看護小規模多機能型居宅介護と
小規模多機能型居宅介護の違い
看護小規模多機能型
居宅介護
小規模多機能型居宅介護
サービス
内容
  • 通所
  • 短期入所
  • 訪問介護
  • 訪問看護
  • 通所
  • 短期入所
  • 訪問介護
対象者
  • 介護事業所と同じ市区町村に住んでいる方
  • 要介護1~5
  • 介護事業所と同じ市区町村に住んでいる方
  • 要介護1~5
  • 要支援1、2

看護小規模多機能型居宅介護と小規模多機能型居宅介護との大きな違いは、訪問看護のサービスの有無。小規模多機能型居宅介護は、居宅介護に必要な通所、短期入所、訪問介護の3つのサービスを提供しています。一方の看護小規模多機能型居宅介護では、小規模多機能型居宅介護で提供される包括的な介護サービスに加えて、訪問看護のサービスが提供されているのです。

また、看護小規模多機能型居宅介護は、利用対象者においても、小規模多機能型居宅介護とは異なります。小規模多機能型居宅介護は要支援の方も利用できるのに対して、看護小規模多機能型居宅介護の利用は要介護の方のみです。訪問看護のある看護小規模多機能型居宅介護は、在宅介護生活を送る人の中でも医療ケアが高く、要介護度の高い方が対象になります。特に、退院直後や看取りが必要な終末期の方など、小規模多機能型居宅介護では対応できない医療ニーズのある方が対象。看護師がいるため、対応できる範囲にも違いがあります。

看護小規模多機能型居宅介護の人員基準

看護小規模多機能型居宅介護に求められる人員は、サービスを計画するケアマネジャーと、実際にサービスを提供する介護士・看護師。看護小規模多機能型居宅介護はケアマネジャーと管理者以外は、日中と夜間で人員基準が異なります。

日中

日中の時間帯における人員配置基準は、以下の通りです。

1通所
利用者3人に対して、スタッフ常勤換算1人以上
2訪問介護、訪問看護
利用者1人に対して、常勤換算で2人以上

通所、訪問看護、訪問介護のうち、対応するスタッフの1人以上は看護師、准看護師、または保健師が在籍。さらに、看護師の数が常に2.5人以上いることが指定されているのも、看護小規模多機能型居宅介護の特徴です。医療ケアに対応できるよう、看護師が常に対応できる環境が求められています。

夜間

深夜の時間帯における人員配置基準は、以下の通りです。

1短期入所
2人以上(内1人は宿直での勤務も可)
2訪問介護、訪問看護
2人以上(内1人は宿直での勤務も可)

短期入所の利用者が1人の日でも、夜間を通して夜勤1名と宿直1名の配置が必要となります。また、人員については必ずしも看護師、准看護師、保健師である必要はありません。

まとめ

看護小規模多機能型居宅介護は、居宅介護に必要な生活支援と医療ケアが受けられる介護サービスです。訪問看護がサービスに含まれているので、退院直後や病状が不安定な方など、医療ニーズが高い方にも対応できます。しかし、利用できる地域と人数制限がある点には注意が必要。看護小規模多機能型居宅介護のサービス内容、メリット・デメリットを理解して、実際に利用する際に困らないようにしましょう。

ページトップへ
ページ
トップへ