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ユマニチュードとは?4つの柱と5つのステップなどを分かりやすく解説

「ユマニチュード」とは、フランス出身の体育学者「イヴ・ジネスト」と「ロゼット・マレスコッティ」によって確立された、認知症を患った高齢者などへのケア手法です。2人はフランス文部省より病院スタッフの腰痛対策の指導者として、患者が本来持っている能力を奪わないことを前提とした様々な実践を繰り返すことにより、ユマニチュードを編み出しました。本記事では、ユマニチュードの概要、基本となる「4つの柱」、実践するための「5つのステップ」を解説します。

ユマニチュードとは

ユマニチュードとは

ユマニチュードは、認知症におけるケアのひとつであり、「ケアする人というのは一体何者なのか」との哲学に基づいて実施。ユマニチュードでは、「見る」、「話す」、「触れる」、「立つ」との4つの柱を軸に、実践における5つのステップで成立しています。

認知症の患者によっては、ときに攻撃的な場合もありますが、ユマニチュードの手法を習得した介護者によって認知症ケアが行われると、驚くほど落ち着いた様子を見せるようになるのです。

ユマニチュードの目的・目標

ユマニチュードの目的とは、認知症の患者自身を尊重したケアを行うこと。ユマニチュードでは、相手ができることを代わりにすることが、その方の持つ能力を奪うものとされます。

例えば、十分な歩行能力がある方に対して「危ないから車いすで移動しましょう」としてしまうと、その方は歩く機会を奪われるのです。

その状態が続けば、自力で歩行する力さえなくなってしまう可能性もあります。相手の能力を尊重し、残された機能を維持しながら、最後まで寄り添うケアを提供するというのが、ユマニチュードの目標なのです。

ユマニチュードにおける4つの柱

ユマニチュードにおける4つの柱は、認知症の方に対するケアの基本的な考え方とされています。ユマニチュードの手法は身体的な動作、姿勢だけでなく、それに伴う心の健康、感情の安定も考慮に入れるもの。4つの柱を意識して認知症ケアを行うことで、患者のみならず、介護者も不安と苛立ちを軽減して支援することができます。

見る

「見る」とは相手の表情、仕草、身体の動きなどから、その方の状態を観察すること。認知症の方は、言葉でコミュニケーションを取ることが難しい場合もあります。そのため、認知症の方の表情、仕草、身体の動きなどから、意図や気持ちを考えることが大切です。見るにおける具体的なポイントは、認知症の方に対して水平の高さの目線、正面から見つめること、近い距離で優しさと親密さを表現することにあります。

話す

「話す」とは、相手の言葉遣いや話し方などから、その方の意図と気持ちを考えること。認知症の方は、言葉によるコミュニケーションを取ることが難しい場合もありますが、じっくりと話を聞き、気持ちを汲み取ることが重要です。

触れる

「触れる」とは、相手の体に触れることで、安心感や信頼感を与えること。認知症の方に触れるときは、手のひら全体を使って意識させます。また、できるだけ強い力を使わないよう、優しく触れることが重要です。

立つ

「立つ」とは、人間らしさが表れる行為とされています。人間は立つことにより、体の生理機能が働くようにできているのです。そのため、寝たきりの状態を防ぐには、1日に合計20分以上立つことが重要。食事をしたり、トイレへ行ったり、お風呂に入ったりして立つ時間を増やしていくことが求められます。

ユマニチュードにおける5つのステップ

出会いの準備

ユマニチュードでは、介護の実践における5つのステップが存在。

始めは「出会いの準備」、次に「ケアの準備」、続いて「知覚の連結」、そして「感情の固定」、最後に「再会の約束」とされています。

出会いの準備

認知症の方をケアする際に部屋を訪れる際、患者側が十分な認知機能が働いていない可能性が存在。まずは覚醒を優しく促すためのアプローチから始めます。

13回ノック
2ノック後3秒間待ち、この間に返事があれば即対応
3返事がなければ、再び3回ノック
4ノック後、再び3秒間待機
5最後に1回ノックして、部屋へ入室
6部屋に入ったあとにベッドボード、ベッドの端を優しくノックして、自分の存在を明示

この手順は、認知症の方が周りの状況を適切に理解するのに、時間がかかることを尊重するためです。安心を与え信頼を築くためにも、大切なステップになります。

ケアの準備

認知症のケアを提供する際、相手との関係づくりが重要です。「これから何をする」と伝えるのではなく、まずは「あなたに会いに来ました」と、相手の気持ちに触れられるよう配慮した表現を選択。

また、介護者としてケアの内容を優先するのではなく、無理強いは避けて、相手の反応と意向を確認しながら進行し、ケアへの誘導、相手からの同意を得る際は、3分以上の時間をかけないようにします。もし3分を超えてもケアに対する同意が得られない場合は、その日のケアを見送る柔軟さも必要になるのです。

知覚の連結

実際にケアを行う際は、ユマニチュードにおける4つの柱のうち、2つ以上を組み合わせて実施することが求められます。例えば、優しい言葉をかけつつ、手を触れることで、強い安心感を提供。

ただし、言葉や態度の矛盾には注意が必要です。優しい言葉を使いながらも強く腕をつかむなどの行為は、相手に安心感のメッセージを伝えられません。

相手を常に尊重して、大切に思っていることが伝わるようなケアを提供することで、相手の安心感と信頼を築くことができるのです。

感情の固定

ケアが終わったあと、成果と感じた喜びを認知症の方と共有することで、次回のケアに対する前向きな気持ちを育むことができます。ポジティブな言葉を選び、優しく伝えることで良好な関係が維持しやすくなるのです。

再会の約束

ケアが終わった際の喜びと安心感を相手と共有して、感情を定着。「また来ますね」などの言葉を用い、次回のケアへの期待感を伝えるのです。

ユマニチュードの研修

ユマニチュードは認知症ケアの中でも、独特なアプローチ方法を持つ介護手法。このユマニチュードの研修は、「日本ユマニチュード学会」にて行われています。研修の種類は2種類あり、一般の方向けの「市民と家族のためのユマニチュード認定サポーター準備講座・養成講座」、介護・医療業界向けの「職業人向けユマニチュード研修」です。以下は、ユマニチュード研修において学ぶ一例になります。

基礎研修1

基本の哲学

ユマニチュードの基盤となる哲学、考え方を学習。ユマニチュードの哲学では、ケアする側とケアされる側との関係性、人間としての尊厳、価値観を学びます。

コミュニケーションの4つの柱

ユマニチュードにおける基本的な4つの柱について学習。それぞれについて具体例を用いながら理解を深めていきます。

基礎研修2

ユマニチュードにおける、5つのステップを詳細に学習。その後、5つのステップについてワークショップを実施します。

基礎研修3

認知症患者における行動や心理症状、認知症のメカニズムを学び、より専門的な知識を学習。その後、実際の認知症の事例を用いた、認知症ケアのシミュレーションを行い、実践的な応用技術を学びます。

まとめ

ユマニチュードは認知症ケアの方法のひとつであり、「ケアする人というのは一体何者なのか」とする哲学に基づいて実施。また、4つの基本的なコミュニケーションの柱を軸に、5つの実践法を行う介護方法とされています。何よりも、認知症の方の尊厳を重視した、常に心情に寄り添うケアなのです。

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