老人ホームの重要事項説明書とは?確認すべき項目を解説
「重要事項説明書」とは、老人ホームの概要、サービス内容、入居者様の状況などを確認できる重要な書類を指します。細かな情報も掲載されており、たくさんの内容がありますが、入居する施設を比較するために必ず確認が必要です。また、各項目の内容について、それぞれが何を表すのか理解しましょう。重要事項説明書とは何か、確認すべきポイント、なぜ重要なのかについてご紹介します。
重要事項説明書とは
重要事項説明書とは、契約事項の詳細を紙にまとめ、入居希望者へ施設の情報を開示するための重要な説明書です。有料老人ホーム以外では、不動産売買や保険の契約などでも用いられます。「入居契約書」とは異なるため、注意しましょう。
基本的に、事業の運営状況や入居者様の割合、細かなサービス内容などは契約書で確認できず、重要事項説明書で確認します。契約書では専門用語が使われているケースもありますが、重要事項説明書に専門用語は多くありません。老人ホームは「老人福祉法」により、利用者に事業のサービス内容や利用料金などを、重要事項説明書で開示する義務があります。重要事項説明書には正確な情報が記載されているため、必ず確認しておきましょう。
重要事項説明書の確認すべきポイント
重要事項説明書に書かれている内容は、老人福祉法第29条により、施設運営者が施設を設置する都道府県へ提出することが定められている項目です。また、重要事項説明書の標準様式は、厚生労働省のホームページで公開されているため、項目のチェックができます。
なお、老人福祉法で定められた内容が書かれていれば、必ずしも標準様式の通りにする必要はありません。施設や自治体が独自に作成している場合もあるため、内容にはばらつきがあります。厚生労働省の標準様式をもとに、重要事項説明書で確認すべきポイントと各項目の内容を以下にまとめました。
重要事項説明書で確認すべきポイント一覧

- 事業主体概要
- 事業の概要(類型)
- 建物概要
- サービスの内容
- 医療連携の内容
- 職員体制
- 利用料金
- 入居者様の状況
- 苦情や事故等に関する体制
- 入居希望者への事前の情報開示
- その他
- 別添資料①:事業主体が当該都道府県、指定都市、中核市内で実施する他の介護サービス
- 別添資料②:有料老人ホーム/サービス付き高齢者向け住宅が提供するサービスの一覧表
事業主体概要
「事業主体概要」は、老人ホームを運営している法人や個人の情報についてまとめられた項目です。運営している事業主が個人もしくは法人なのか、運営する事業主の名称や所在地、連絡先などを確認できます。法人の場合は、営利法人や公益社団法人など、種類も記載されているため、運営元の基本情報を知るために大切な項目です。
事業主体概要で確認できる内容
- 事業主の種類(個人か法人か)
- 事業主の名称
- 主たる事業所の所在地
- 事業所の連絡先と代表者氏名
- 事業所の設立年月日
- 主な実施事業
また、主な実施事業は、後述する別添資料の項目に、まとめられているケースもあります。
有料老人ホーム事業の概要
有料老人ホーム事業の概要は、施設の概要についてまとめられている項目です。施設の名称や所在地、利用交通手段、建物の竣工日(建物が完成した日)、有料老人ホーム事業が開始した日付なども記載されています。
また、竣工日と有料老人ホーム事業の開始日は、時期が必ずしも同じではなく、期間が空く場合もあるのです。
施設の「類型」(タイプ)も確認できます。老人ホームの類型は、「介護付」、「住宅型」、「健康型」の3種。類型が介護付に該当する事業者は、類型と共に「介護保険事業者番号」と介護保険事業者として指定した自治体名、介護保険事業者の指定を受けた日、指定の更新日も記載されています。施設が介護付きかどうかを確認したい場合は、類型の欄をチェックしましょう。
有料老人ホーム事業の概要に書かれている項目を以下にまとめました。
有料老人ホーム事業の概要で確認できる内容
- 施設の名称
- 施設の所在地
- 施設へ行く主な交通手段(最寄り駅やバスでの行き方など)
- 施設の連絡先と管理者
- 施設で使用する建物の竣工日
- 有料老人ホーム事業を開始した日
- 施設の類型
- 類型が介護付の場合は、介護保険事業者の認定日、指定した自治体、指定の更新日
有料老人ホームに限らず、他の老人ホームでも重要事項説明書には施設の概要を示す内容が記載されています。
建物概要
「建物概要」では、老人ホームが運営する建物の規模や設備内容などを確認できます。特に、居室の基本設備や個室か相部屋かなどが、数も含めて細かく記載されているため、必ず確認しましょう。居室に関する内容では、全室個室なのか、相部屋であれば一部屋の最少人数と最大人数を確認できます。居室は「一般居室個室」、「一般居室相部屋」、「介護居室個室」、「介護居室相部屋」、「一時介護室」に区分されており、各居室タイプの数や面積、トイレと浴室の有無も記載。例えば、自立から要介護まで受け入れている施設でも、介護居室が多い施設なら、要介護認定を受けた方が多く利用する施設だと分かります。
「共用設備」の欄で確認できることは、通常の浴槽に加えて「介護浴槽」を備えているか、食堂の有無、入居者様や家族が利用できる調理場の有無、エレベーターの有無などです。エレベーターは、車いすやストレッチャーに対応しているかも記載しているので、車いす利用者や寝たきりの方が施設を利用する場合は確認しておきましょう。緊急時にすぐ通報できる「緊急通報システム」などが備えられているかのチェックも必要です。
また、建物概要の一番下にある「その他」欄では、健康増進や身体機能の向上を目的に運動するための設備であるフィットネスルームなど、施設独自の設備が記載されているケースもあります。希望に合った設備があるか知りたい方は、その他欄もチェックしておきましょう。
建物概要で確認できる内容
- 土地の敷地面積
- 土地の所有者(事業主が所有しているのか、賃貸なのか)
- 延床面積(のべゆかめんせき:建物の各階床面積合計)
- 建物の耐火構造(耐火建築物、準耐火建築物、その他)
- 建物の構造(鉄筋コンクリート造、鉄骨造、木造、その他)と所有者
- 居室タイプ
- 居室内でトイレと浴槽の有無
- 共用トイレの数と男女別のトイレ数、車いすに対応しているトイレの数
- 共用浴室と介護浴槽の数
- 食堂の有無
- 入居者様や家族が利用できる調理場の有無
- エレベーターの数、車いすやストレッチャーに対応するエレベーターの数
- 消火器やスプリンクラーなど各種消防用設備の有無
- 居室やトイレ、浴室への緊急通報装置の設置有無
- その他(施設独自の設備など)
サービスの内容
「サービスの内容」では、施設が提供するサービスの具体的な内容を把握できます。施設が掲げる全体の方針や各種サービスを外部委託しているか、医療連携の有無なども確認が可能です。入居に際して必要なサービスがあるか、チェックしておきましょう。全体の方針では、施設が力を入れているサービスの内容が分かるため、方針に納得できるかどうかが重要です。厚生労働省の基準を満たした介護保険サービスが受けられる「特定施設入居者生活介護」に指定されている施設の場合、具体的な介護サービスの内容も記載されています。
サービスの内容で確認できること
- 運営方針
- サービス内容の特色
- 入浴や排泄、食事介助の有無
- 食事提供や掃除、洗濯など家事サービスの有無
- 健康管理や安否確認、生活相談サービスの有無
- 特定施設入居者生活介護に指定されている場合は各種介護サービスの有無
- 医療支援の内容や連携病院
- 入居後に居室を住み替える場合の条件や対応
- 入居要件
介護サービスと医療連携

サービス内容に応じて加算される「介護サービス加算」の有無を、重要事項説明書で確認できます。同じ種類の施設でも、対応している介護サービスが同じとは限りません。項目は多いですが、気になる介護サービスを中心に、内容を把握しすることが大切。もし、介護サービスの内容が分からない場合は、理解できるまで、施設職員に説明してもらいましょう。
また、提携している医療機関名や住所、連絡先、診療科目や医療サービスの協力内容など、医療支援の内容も確認が大切。救急車の手配や入退院時における付き添いなど、施設によって対応できる範囲が異なるためです。連携している医療施設の診療科目も調べておくと、入居者様に必要な医療ケアに対応しているか分かります。
重要事項説明書内に記載された介護サービス加算一覧 | |
---|---|
介護サービス加算項目 | サービス内容 |
入居継続支援加算 | 痰の吸引ケアなど質の高い介護サービス提供をしている |
生活機能向上連携加算 | リハビリ専門職や医師が連携し、入居者様に応じた計画書を作成している |
個別機能訓練加算 | 理学療法士など専門職が計画に基づいて機能訓練を実施している |
夜間看護体制加算 | 医療機関や看護師と連携することで24時間健康管理などを行える体制を有している |
ADL維持等加算 | ADL評価を実施している |
若年性認知症入居者受入加算 | 若年性認知症の入居者様へ担当スタッフが中心となりニーズや特性に応じたサービス提供をしている |
医療機関連携加算 | 連携している医療機関や入居者様の主治医などに月1回以上情報を共有している |
口腔衛生管理体制加算 | 歯科医か歯科医の指示を受けた上で歯科衛生士が入居者様の口腔ケアを月2回以上行っている |
口腔/栄養スクリーニング加算 | 入居者様の口腔に関する健康状態や栄養状態を6ヵ月ごとに確認し、担当ケアマネジャーに報告している |
科学的介護推進体制加算 | 入居者様に対してサービスの質を向上させる目的で計画、実行、評価、改善を繰り返しながら精度を高める体制が整っている |
退院/退所時連携加算 | 入居者様が利用していた医療機関から退院/退所をした際、スムーズに施設生活を送れるよう医療機関と連携や調整をしている |
看取り介護加算 | 看取り体制が整っている |
認知症専門ケア加算 | 入居者様の半数以上が認知症の施設において、専門の研修を受講している職員が一定数いる |
サービス提供体制強化加算 | 介護職員の人員配置を強化し、国の基準を満たした上で、より質の高いサービスを提供している |
介護職員処遇改善加算 | 職場環境の改善や介護職員がキャリアアップを目指せる仕組みなど処遇改善をしている |
介護職員等特定処遇改善加算 | 経験や技能のある介護職員に対して処遇改善をしている |
人員配置が手厚い介護サービスの実施(上乗せ介護費) | 介護保険法で定められた以上の人員配置をしている |
出典:厚生労働省 別紙様式 重要事項説明書 介護サービスの内容
特定施設入居者生活介護等の提供を行っていない場合は、省略可能
入居後の居室住み替えや入居要件
「入居後に居室を住み替える場合の条件や対応」では、入居後の居室住み替え条件や、必要な費用、入居条件、解約条件も記載されています。居室住み替えとは、利用している居室を変更することです。
例えば、一般居室を利用していた入居者様の要介護認定が高くなった場合、状況によっては介護居室に移動しなければいけません。原則重要事項説明書で記載されている住み替えの判断基準をもとに、住み替えの提案をされるため、事前確認は必須です。住み替えをする場合に必要な手続き、追加費用の有無、居室変更により居室の仕様が変わるかなども確認できます。要介護度が高くなるなどで居室を変更する可能性のある方は、確認しておきましょう。
入居要件の欄には、契約解除を求められる内容、契約解除の予告期間、体験入居の有無などが記載されています。体験入居が可能な施設なら、施設の雰囲気やサービス内容を自分の目で確かめられるので、実際に体験入居をしてみましょう。
職員体制
「職員体制」では、職員が施設全体で何人配置されているかだけでなく、常勤や夜勤の人数も確認できます。介護職員や看護職員の他、入居者様が日常生活上で必要な身体機能を向上させるためのリハビリを行う「機能訓練指導員」など、専門的な職員の人数も把握できるため、手厚いサービスを求める場合は特にしっかり確認しておきましょう。資格を持っている職員の数もチェックできます。
1年間の退職人数や採用人数も調べられるため、同じ職員が長期間対応してくれそうかの目安にしましょう。退職者が多いなど、入れ替わりの激しい施設では、入居者様へ対応する職員が頻繁に変わることになり、あまり好ましくありません。
職員体制で確認できる内容
- 管理者や生活相談員の人数
- 介護職員や看護職員の人数
- 機能訓練指導員や計画作成(ケアプラン)担当者の人数
- 栄養士や調理員、事務員の人数
- その他職員の人数
- 社会福祉士、介護福祉士、実務者研修修了者、初任者研修修了者、介護支援専門員などの資格を有する職員の人数
- 看護師または准看護師の人数
- 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師など専門資格を有する職員の人数
- 各職員の常勤、夜勤の人数
- 入居者様1人に対して介護、看護職員の人数
- 施設職員の1年間の退職者数や採用人数
- 経験年数に応じた人数の割合
利用料金

利用料金では、料金の支払い方式や月払い料金などの金額設定条件、利用料金プランや利用料金の算定根拠を記載しています。また、入院などで施設不在となった際、利用料金が減額されるのかなども記載。
利用料金では、家賃や食事代、管理費、光熱費、上乗せ介護費、介護サービス利用料といった各費用の金額をしっかり把握しておきます。
利用料金で確認できる内容
- 居住の権利形態(建物の利用とサービス一体型で入居者様が亡くなったときに契約終了となる利用権方式、月額利用料を支払っている限り入居者様は亡くなっても居住権を有する建物賃貸借方式、建物賃貸借方式のなかでも入居者様が亡くなったら契約も終了する終身建物賃貸借方式)
- 利用料金の支払い方式(選べる施設もある)
- 年齢や要介護状態に応じた金額設定の有無
- 入院などを理由とする不在時の月額利用料の取り扱い
- 利用料金の改定条件
- 利用料金の代表的なプラン
- 利用料金の算定根拠
- 前払い金の算定根拠
料金の支払い方式
料金の支払い方式は「全額前払い方式」、「一部前払い・一部月払い方式」、「月払い方式」の3種類があります。全額前払い方式は、入居者様が利用する期間を決め、必要な費用をすべて先に払う方法です。最初の費用負担は多くなりますが、月々の家賃は発生しません。また、退去の際に払い戻される返還金について、算定根拠も示されているため確認が必要です。
一部前払い・一部月払い方式は、必要な費用の一部を先に支払い、残額を月払いで支払うもの。月払い方式は、最初に大きな出費があまりありませんが、一部前払いをした場合より月々の利用料が高くなります。
利用料金のプランや算定根拠
入居者様の年齢や介護度に応じた料金プランが掲載されているため、費用負担の目安が分からない方は確認しておきましょう。料金プランの例は以下の通りです。

料金プランの例
- 個室へ1人で入居
- 前払い金なし
- 家賃が7万円
- 光熱費と管理費が合わせて4万円
- 食費が4万円
- 介護サービス費なし
- 月額利用料が15万円
特に確認が必要なのは、利用料金の内訳を分かりやすく示した「算定根拠」です。食費や光熱水費がいくらかかるのかなど、費用の内訳が分かります。もし算定根拠に疑問が生じたときは、入居後のトラブルを避けるためにも、必ず質問して疑問を解決しましょう。
入居者様の状況
「入居者様の状況」では、重要事項説明書が更新された時点における、性別、年齢、要介護度、入居期間別の人数を確認できます。要介護度の高い入居者様が多い施設は介護を必要とする方向け、自立している入居者様が多い施設は健康な方向けなど、施設の傾向を判断する目安になるためチェックしておきましょう。また、以前、入居者様が退去した際の退去理由も記載されています。退去理由から施設側の入居者様に対する満足度が判明する場合もあるため、よく確認しましょう。
入居者様の状況で確認できる内容
- 入居者様の性別、年齢、要介護度、入居期間別の人数
- 重要事項説明書が作成された時点における入居者様の平均年齢、入居者様の合計数、施設定員数に対する入居者様の割合
- 重要事項説明書が作られた年より1年前の年度における退去者数と退去理由
苦情・事故等に関する体制

「苦情、事故等に関する体制」は、施設に苦情がある際の相談窓口や対応内容を確認できる項目です。入居したあとに事故や苦情が発生したときは、書いてある連絡先へ連絡が必要となるため、チェックしておくと良いでしょう。
また、施設だけでなく入居者様へのアンケート実施や第三者による施設への定期的な評価もチェック可能です。定期的に評価が行われていれば、サービス向上に対する意識の高さや情報開示が積極的な施設かどうかが分かります。
苦情、事故等に関する体制で確認できる内容
- 苦情を伝える窓口の名称や電話番号
- 窓口の対応時間と定休日
- サービス提供を原因に賠償事故などが発生したときの対応
- 入居者様へのアンケート調査などの実施状況
- 第三者による施設評価の実施状況
入居希望者への事前の情報開示
「入居希望者への事前の情報開示」では、契約書の雛形や「財務諸表」など、施設に関する情報が入居前に確認できます。なかには、インターネットを通じて施設の公式ホームページで公表されている施設も。損益通算書で赤字が数年続いているなど、少しでも施設の倒産リスクを把握しておきたい方は、チェックしましょう。
その他
その他には、サービス内容や運営について家族と運営元が話し合う「運営懇談会」、「家族懇談会」、入居者様の要介護度が上がった場合に、提携する施設への転居があるかなどを記載しています。もし転居先施設の記載がある場合、要介護度など入居者様の状況が変わると、提携している施設への転居を求められる可能性があるということです。
別添資料①:事業主体が当該都道府県、指定都市、中核市内で実施する他の介護サービス
重要事項説明書には2つの別添資料があります。別添え資料①では、事業主が都道府県、指定都市、中核市内で実施される他の介護サービスの内容が確認可能。事業主がどのような事業展開をしているのか気になる方は、チェックしておきましょう。
別添資料①に掲載されているサービス例
- 居宅サービス
スタッフが利用者の自宅へ行き、介護やリハビリをする訪問介護や訪問リハビリテーション、一時的に特別養護老人ホームなどの施設に入所する短期入所生活介護など - 地域密着型サービス
利用者ができるだけ自宅で生活を送れるようスタッフが夜間帯に利用者の介護に行く夜間対応型訪問介護や、アットホームな雰囲気のなかで認知症の方が共同生活を送る認知症対応型共同生活介護など - 居宅介護予防サービス
要介護になるのを予防するためにスタッフが自宅まで行って簡易浴槽を提供し、入浴の介護をする介護予防訪問入浴介護、診療所や病院、介護老人保健施設で理学療法士や作業療法士などの専門スタッフによるリハビリが受けられる介護予防通所リハビリテーションなど
別添資料②:有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅が提供するサービスの一覧表
2つ目の別添資料には、有料老人ホームや「サービス付き高齢者向け住宅」が提供する様々なサービスの一覧が掲載されています。特定施設入居者生活介護に指定されている施設は、介護サービスや生活サービスなど、提供サービスの内容と費用を明確にしておく必要があるためです。各サービスが行われる頻度や回数も明記されているため、必ず確認しておきましょう。同じサービスでも施設によって料金設定が異なるため、注意が必要です。
厚生労働省の標準様式におけるサービス項目の内容例一覧 | ||
---|---|---|
サービス項目 | 記載内容 | |
介護サービス | 食事介助 | 食事介助サービスの有無 |
排泄介助 /おむつ交換 |
・おむつを利用していない場合は、トイレを利用するにあたっての介助サービスの有無 ・おむつを利用している場合は、おむつ交換サービスの有無 |
|
おむつ代 | おむつにかかる料金負担の有無 | |
入浴介助(一般浴) /清拭 |
一般的な入浴に際し介助サービスの有無、あるいは清拭サービスの有無 | |
特浴介助 | 寝たきりの方などでも利用できる特殊な機械を用いた入浴介助サービスの有無 | |
身辺介助 (移動/着替え等) |
場所を移動するときや着替えをするときの介助サービスの有無 | |
機能訓練 | 歩行訓練などの機能訓練サービスの有無 | |
通院介助 | 通院が必要な入居者様への介助サービスの有無 ※付き添い範囲を明確にするよう定められている |
|
生活サービス | 居室清掃 | 入居者様の利用する居室清掃サービスの有無 |
リネン交換 | シーツやまくらカバー交換サービスの有無 | |
日常の洗濯 | 着替えなどを洗濯するサービスの有無 | |
居室配膳/下膳 | 居室へ食事を持ってきたり、食べ終わった食事を下げたりするサービスの有無 | |
入居者様の嗜好に応じた特別な食事 | 入居者様の好き嫌いに合わせて食事内容を変更するサービスの有無 | |
おやつ | 食事以外でおやつ提供の有無 | |
理美容師による 理美容サービス |
カットやカラーなどを理美容師にしてもらうサービスの有無 | |
買い物代行 | 入居者様の代わりに買い物へ行ってくれるサービスの有無 ※利用可能範囲を明確にするよう定められている |
|
役所手続き代行 | 自治体の役所で必要な手続きを代わりにしてくれるサービスの有無 | |
金銭/貯金管理 | 入居者様の代わりに現金や貴重品を管理するサービスの有無 | |
健康管理サービス | 定期健康診断 | 定期健康診断サービスの有無 ※年何回など、回数を明確にするよう定められている |
健康相談 | 入居者様が健康に関する不安などを相談できるサービスの有無 | |
生活指導/栄養指導 | 入居者様が生活を送る上で必要な相談や指導を受けられるサービス | |
服薬支援 | 服薬を必要とする入居者様を支援するサービスの有無 | |
生活リズムの記録 (排便/睡眠等) |
トイレの利用や睡眠など生活リズムを記録するサービスの有無 | |
入退院時/入院中 のサービス |
入退院時の同行 | 入居者様が入退院を必要としてときに同行するサービスの有無 |
入院中の買い物 /洗濯物交換 |
入居者様が入院中に洗濯物を交換したり買い物へ行ったりするサービスの有無 | |
入院中の 見舞い訪問 |
入居者様が入院中に見舞いに来てくれるサービスの有無 |
出典:厚生労働省 別紙様式 重要事項説明書 別添2 有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅が提供するサービスの一覧表
重要事項説明書が重要な理由
重要事項説明書は、施設に関する重要な情報がたくさん記載されています。しっかりと読むことで、サービス内容や利用料金、施設の方針なども分かるのです。サービス内容や料金などについて、入居後のトラブルを防ぐためにも重要事項説明書は必ず確認しましょう。
入居後のトラブル事例
トラブルの事例には、「入浴回数が聞いていた回数より少ない」、「契約書に医師の訪問が週2回と書いてあるにもかかわらず、1回しか行われない」、「退去時の入居一時金の返金額が少なかった」、「パンフレットの月額費用と請求される金額が違う」などがあります。入浴頻度やサービス内容は重要事項説明書に記載されているため、よく読み込み、疑問点や不明点は事前に解消しておきましょう。長く生活していくことになるため、細かい疑問点もそのままにしないことが大切です。
重要事項説明書は更新されるため最新の物を確認

重要事項説明書は、1年に1回程度、定期的に更新されます。重要事項説明書に記載されている人員配置記載の欄には、更新された年月日が必ず記されているためチェックしておきましょう。情報が古いままでは、サービス内容が変わっている可能性もあるからです。
もし、最新の重要事項説明書が見付からず、時間も経っている場合は、施設職員に申し入れて最も新しい重要事項説明書を入手しましょう。見学や体験入居ができる施設では、実際に施設を訪れて自分の目で確認することもおすすめです。
まとめ
重要事項説明書には大量の情報があり、すべてを細かく読むのは難しいと感じる方もいます。しかし、入居したあとに想定していたサービスと異なっていたり、費用が予想よりかかったりしても簡単に転居はできません。重要事項説明書のチェックポイントを押さえた上で読み込んでおくと、入居後に後悔する可能性が少なくなります。重要事項説明書を読んだときに分からない項目があれば、必ず理解できるまで施設職員に確認しましょう。