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軽費老人ホームの費用とは?平均やケアハウスとの違いも解説

家庭環境や経済状況などの理由により、自宅での生活が困難な高齢者を受け入れる「軽費老人ホーム」は、比較的少ない費用負担で利用が可能です。そのため、低所得の高齢者も入居でき、食事、洗濯などの生活支援サービスを受けながら、安心した暮らしが送れます。それでも、利用するには10~30万円を目安とした月額利用料がかかり、初期費用の入居一時金も合わせると、数十万円を用意しなければなりません。軽費老人ホームの種類別の費用相場と内訳、どうして安いのかについてご紹介します。

軽費老人ホームとは

軽費老人ホームとは

軽費老人ホームとは、自立した暮らしが難しい方を対象とした、無料または低料金で入居できる福祉施設です。1963年(昭和38年)に制度化された軽費老人ホームは、住宅事情、家庭環境、経済状況の悪化で自宅での暮らしに支障をきたす高齢者に、食事や生活支援、介護サービスなどを提供しながら、格安で住まいを供給してきた歴史があります。

当初は軽費老人ホームA型から始まり、1971年(昭和46年)になると食事提供をしない軽費老人ホームB型が登場しました。介護支援よりも、入居者様の暮らしの安定化に努めた結果、戦後の日本を支えた国による高齢者向け住宅政策とも言えます。そして、1989年(平成元年)ケアハウスの登場により、以降は軽費老人ホームとケアハウスを同義語として位置付けられるようになりました。

ケアハウスは軽費老人ホームC型の一般型に位置付けられ、さらに介護保険サービスが提供できる「特定施設入居者生活介護」の指定を都道府県から受けた施設では、介護型として運用されており、常駐する介護職員または看護職員から手厚い介護を受けられます。軽費老人ホームに入居後、安心して介護を受けられるのが、特定施設として位置付けられる介護型の特徴です。また、地価の高い都市部でも低所得の高齢者が入居できるように、居住費などの費用を低額に抑えた都市型軽費老人ホームも登場しています。

軽費老人ホームの費用相場

軽費老人ホームでは、入居一時金と月額利用料が必要です。一般的な費用相場は合計で16~60万円を目安とし、入居者様の介護度や病状に応じて変動します。また、施設の種類でも基本的にかかる料金に違いがあるのです。

軽費老人ホームA型の費用

軽費老人ホームの費用相場

軽費老人ホームA型は、食事提供のサービスも含まれた無料または低料金で利用できる高齢者向け施設です。16~20万円ほどの月額利用料が平均的なので、入居者様の事情によっては異なる場合もありますが、比較的費用を抑えたい方にとって負担軽減につながります。費用の内訳は、主に入居一時金で平均0~30万円かかり、月額利用料は平均16~20万円です。

軽費老人ホームA型の概要
特徴 ・低料金または無料で入居可能な高齢者向け施設
・食事も提供される
サービス 食事の提供、相談援助、入浴時の準備、健康管理、地域イベントの参加などで社会との密接なつながりを持つ
入居条件

・高齢等のため、独立して生活するには不安が認められる原則60歳以上の高齢者(要支援、要介護高齢者も入居可能)

・60歳未満で特定疾病による要介護認定を受けている

費用 入居
一時金
平均0~30万円
月額
利用料
平均16~20万円

軽費老人ホームB型の費用

軽費老人ホームB型は、無料または低料金で入居できる高齢者向け施設で、基本的に食事提供サービスはありません。比較的費用を抑えることも可能で、入居者様の負担軽減につながります。一般的な費用相場は、入居一時金と月額利用料などを含めて、平均16~50万円が目安。内訳は、主に入居一時金が平均0~30万円、月額利用料が平均16~20万円です。

軽費老人ホームB型の概要
特徴 食事が提供されない高齢者向け施設で、低料金または無料で入居できる
サービス 相談援助、入浴時の準備、健康管理、地域イベントの参加などで社会との密接なつながりを持つ
入居条件

・身体機能等の低下等が認められる原則60歳以上
(自炊が不可能な程度の身体機能の低下が認められる者を除く)

・高齢等のため独立して生活するには不安が認められる原則60歳以上(要支援、要介護高齢者も入居可能)

・60歳未満で特定疾病による要介護認定を受けている

費用 入居
一時金
平均0~30万円
月額
利用料
平均16~20万円

軽費老人ホームC型の費用

軽費老人ホームC型は、A型とB型の要素をかね備えた、低料金もしくは無料で入居できる高齢者向け施設です。入居者様の負担軽減につながるだけでなく、介護度や病状に合わせた利用もできます。費用は入居一時金と月額利用料などを含めて、平均10~数十万円が目安です。内訳は、主に入居一時金が平均0~数十万円、月額利用料が平均10~30万円。軽費老人ホームC型には、手軽な費用で必要に応じた介護を受けられる一般的な施設と、手厚く介護を受けられる特定施設に分類されます。

軽費老人ホームC型の概要
特徴

・身体機能の低下によって介護を必要とする一人暮らしの方が、安心して社会で生活できるようサポート

・地域と家庭のつながりを重視している

・委託契約締結している外部の介護事業所にて介護サービス(介護保険適用)を受けられる特定施設(外部サービス利用型)といった制度を活用できる

サービス ・社会生活において必要に応じた便宜が図られる、食事の提供、相談援助、健康診断、入浴などの準備
入居条件

・自立~要支援~要介護5

・一人暮らしすることに不安がある60歳以上

・40~59歳でも特定疾病の認定者であれば入居できる

・特定施設(外部サービス利用型)の一般型は65歳以上の要支援者または要介護認定者

・認知症者も可能

費用 入居
一時金
平均0~数十万円
月額
利用料
平均10~30万円
特定施設入居者生活介護指定を受けた軽費老人ホームC型の概要
特徴

・介護の必要な一人暮らし高齢者が、身体機能の低下により不安な社会生活を送るうえでサポートを受けられる

・地域と家庭のつながりを重要視している

・認知症者、重度要介護者、看取り介護を受けられる特定施設の制度を利用できる

サービス ・社会生活で必要に応じた便宜が図られる、個別の外出介助、標準回数を超えた入浴介助、入浴などの準備、相談援助、健康診断、施設の人員基準を超える手厚い介護、個人的な買い物代行、食事の提供
入居条件 ・自立~要支援~要介護5
・一人暮らしの生活に不安がある60歳以上
・特定疾病の認定者は40~59歳でも入居可能
・介護型は要介護認定者で65歳以上の方
・認知症者も可能
費用 入居
一時金
平均0~数十万円
月額
利用料
平均10~30万円

都市型軽費老人ホームの費用

都市型軽費老人ホームは、既成市街地(東京23区、武蔵野市、三鷹市、横浜市、川崎市の一部)を拠点とした低料金または無料で入居可能な高齢者向け施設です。都市部特有の物価相場に合わせた料金設定になっていないだけでなく、入居者様にかかる費用の負担軽減によって家計のやりくりもしやすくなります。費用は主に入居一時金と月額利用料などを含めて、平均10~60万円が目安。内訳は主に、入居一時金が平均0~30万円、月額利用料が平均10~30万円です。

都市型軽費老人ホームの概要
特徴

・開発が進んでいる都市部でもある既成市街地(東京23区、武蔵野市、三鷹市、横浜市、川崎市の一部)に所在する軽費老人ホーム

・20名以下の入居定員といった制限もある

サービス ・社会生活において必要に応じた便宜が図られる、食事の提供、相談援助、健康診断、入浴などの準備
入居条件 ・自立~要支援~要介護5
・一人暮らしの生活に不安がある60歳以上
・60歳未満で特定疾病による要介護認定を受けている
費用 入居
一時金
平均0~30万円
月額
利用料
平均10~30万円

軽費老人ホームの費用の内訳

軽費老人ホームの全体にかかる費用は、入居時にかかる数十万円と、入居後の月額利用料10~30万円が必要です。具体的な内訳について解説します。

入居一時金(保証金)

費用の内訳を把握する

軽費老人ホームは入居の際に、入居一時金として数十万円かかりますが、普通の介護を受けられる一般型の自立型と特定施設として手厚い介護を受けられる介護型では、入居一時金の捉え方の違いに注意しなければなりません。一般型の軽費老人ホームでは、「保証金」として初期費用に数十万円が必要です。保証金は一般的な不動産の賃貸借契約における敷金に似た役割の費用で、退去時に居室内の修繕、清掃などの原状回復費用に充てられます。家賃や管理費などの居住費が滞った場合の滞納分に充てられることもあり、退去時に問題がなければ返還される仕組みです。

軽費老人ホーム介護型の入居一時金は、想定される入居期間の家賃や管理費などといった、居住費の前払い費用として支払います。入居一時金の支払い方法には、全額前払い方式、一部月払い方式、月払い方式などの選択方式があり、入居者様が所有する資産の状況によって選ぶことが可能です。

施設によって償却期間と償却率がそれぞれに定められており、一定期間内に退去した場合には、その返還規定に基づいて計算された金額が、入居者様あるいは家族に返還されます。例えば、入居一時金が90万円で償却期間は3年、そのうち初期償却が30%として入居後1年で退去した場合、入居していた1年(12ヵ月)分の償却金は戻ってきません。しかし、残期間2年(24ヵ月)分の42万円は返還されます。入居一時金や初期償却、償却期間は施設で異なるため、契約時の入居契約書または重要事項説明書での確認は必要です。

入居一時金における返還金の考え方
入居後の
年数
償却金 未償却金
(返還金)
契約時 90万円 63万円
1年目 21万円 42万円
2年目 21万円 21万円
3年目 21万円 0万円

月額利用料

軽費老人ホームの月額利用料には、月払い分の居住費や食費、共益費(管理費)、水道光熱費が挙げられ、平均的に約10~30万円です。都道府県から特定施設指定を受けた軽費老人ホームは、スタッフの数が多めで手厚い介護サービスを受けられる一方、その分別途上乗せ介護費と介護サービス利用料がかかります。費用の内訳は、施設で配置されている職員の属性(介護士と看護師、准看護師の比率など)や、提供しているサービス内容によって変わるため、平均的な費用は目安にしましょう。

月額利用料の内訳
費用の内訳 金額
居住費 1万8,000円
食費 5万円
共益費(管理費) 1万6,000円
水道光熱費 3,000円
サービス提供費 15万円
介護保険サービス費
(介護給付費)
の自己負担
1万7,000円
上乗せ介護費 4,000円
介護サービス利用料 1万円

生活費

軽費老人ホームにおける生活費は、居住費や食費、日用品などの日常生活費、共用部分の水道光熱費にかかる月額費用です。軽費老人ホームにはA型とB型、C型、都市型などの種類があり、軽費老人ホームA型、C型ではすべての生活費が自己負担。軽費老人ホームB型は、食事の提供がないため自炊となりますが、実在する大半の施設は軽費老人ホームC型に移行しており、食事サービスが提供されます。

居住費

生活費のうち居住費の内訳は、賃料や管理費、居室内の水道光熱費などです。賃料は施設に住まうための費用で、管理費は施設を維持・管理するためにかかる費用。居住費の金額は地域や設備、居室の広さなどによって様々であり、一般的に都市部は高く設定されています。

サービス提供費

一般型の軽費老人ホームにおけるサービス提供費の支払いは、全額入居者様負担です。一方で、介護型の軽費老人ホームは特定施設指定制度の枠組みで運営されており、介護給付費として、1~3割の実質自己負担が発生します。一般型でサービス提供費、介護型では介護給付費の割合負担が発生。軽費老人ホームのサービス提供費は、運営事業者に対して払う事務費用といった位置付けから、施設の維持管理費や人件費に充てられます。

サービス加算

一般的な軽費老人ホームに付随する加算は、外部サービスを利用して介護サービスを受けるため、直接入居施設から費用を請求されません。理由としては、一般型では介護職員の常駐は、義務付けられておらず、直接的介護サービスを提供しないためです。

ただし、委託契約した居宅介護サービス事業者と連携している場合は、サービス加算を含めて間接的な支払いが発生します。サービス加算とは、介護保険サービス費における基本算定とは別に提供された介護にかかる加算です。

サービス加算の種類
サービス加算の内訳 概要
入居継続支援加算 1日あたり、220~360円の費用がかかる。介護福祉士や社会福祉士などの職員体制が整っており、かつ介護機器の適切な活用がなされている。
生活機能向上連携加算 1ヵ月につき1,000~2,000円の費用が発生する。医療やリハビリテーションとの連携が図られている。
個別機能訓練加算 施設の体制により、1日120円または1ヵ月200円のいずれかが発生する。看護職員、介護職員、機能訓練指導員、生活支援員もしくはその他職種の職員が個別機能訓練計画書に則って支援した場合に加算される。
ADL維持等加算 1ヵ月につき300~600円の費用がかかる。入居者様が安定した生活を送るための指標でもあるADL評価が実施されている。
夜間看護体制加算 1日あたり100円の費用が発生する。24時間体制で入居者様に対して看護支援できる仕組みの整っている施設が算定できる。
若年性認知症入居者
受入加算
若年性認知症と診断された方に対してサービスを提供した場合に、1日1,200円の費用が発生する。
医療機関連携加算 1ヵ月につき、800円の費用がかかる。協力医療機関との連携により、入居者様の体調の変化に合わせた体制が整っている。
口腔衛生管理体制加算 1ヵ月で300円の費用が発生する入居者様に対して、口腔ケアにかかる技術的アドバイスと指導を行った場合に加算される。
口腔・栄養
スクリーニング加算
1回あたり200円かかる。口腔内の状態を確認したうえで、ケア方針を定めている場合に施設側が算定する。
科学的介護推進体制加算 400~500円の月額費用がかかる。入所者様の栄養管理、口腔状態、認知症の度合い、ADL値を総合的に判断し、適切なケア方針を定めている施設が算定する加算。
退院・退所時連携加算 1ヵ月で400円の費用が発生する。退院、及び退所にあたり、医療担当者との連携を図った場合に計算される。
看取り介護加算 医学的見解と医師の判断に基づき、本人または家族同意のもとで看取り対応した場合に、1日につき720~1万7,800円で計算される。
認知症専門ケア加算 1日につき、30~40円の費用が加算される。認知症介護における専門的研修を修了している職員がケアを実施した際に加算される。
サービス提供体制
強化加算
1日につき、60~220円。施設に従事する職員の勤続年数が7年以上の割合を30%以上、もしくは介護福祉士の配置割合が全体の割合(35~80%)で手厚い介護を提供している施設が算定している加算。
介護職員処遇改善加算 施設介護サービス費と各種加算を合算した金額の3.3~8.3%が費用としてかかる。施設運営の基準(研修制度の導入や運営の見える化など)を満たした施設が算定している加算。
介護職員
特定処遇改善加算
施設介護サービス費と各種加算を合計した金額から2.3~2.7%の費用が発生。直接介護に従事する施設内職員以外の事務担当など、介護職員処遇改善加算に該当しない職員に対して、施設側が算定できる加算。

介護保険サービスの自己負担額

介護保険サービス費は、入居者様の年間収入に応じて1~3割の自己負担が発生します。介護給付費とサービス加算で合算された必要に応じた金額を、入居している施設側に直接支払わなければなりません。

軽費老人ホームには、特定施設の指定を受けていない一般型と、指定を受けて手厚い介護が可能な介護型が存在し、費用の仕組みに違いもあるため自己負担にも金額差が生じます。目安として、一般型軽費老人ホームは外部サービスで介護保険サービスが適用され、約1万7,000円の1割負担で約1,700円。一方で、介護型軽費老人ホームにおける自己負担の目安は、約2万1,000円の1割負担で約2,100円です。

介護保険サービス費にかかる月額自己負担額
区分 介護保険報酬 自己負担割合
1割 2割 3割
要介護1 16万4,610円 1万6,461円 3万2,922円 4万9,383円
要介護2 18万7,240円 1万8,724円 3万7,448円 5万6,172円
要介護3 20万8,940円 2万894円 4万1,788円 6万2,682円
要介護4 22万8,780円 2万2,878円 4万5,756円 6万8,634円
要介護5 25万170円 2万5,017円 5万34円 7万5,051円

軽費老人ホームはどうして安い?

低料金で利用できる軽費老人ホーム

軽費老人ホームが安い理由は、施設が自治体の助成を受けているためです。軽費老人ホームを運営している組織は、地方自治体や社会福祉法人といった公的機関。軽費老人ホームの運営にあたって国と県、市区町村から介護給付の名目で補助金(軽費老人ホーム事務費補助金)を受けます。

一方、有料老人ホームを運営しているのは、医療法人や社会福祉法人、民間企業などのため、介護給付費による補助の対象外です。

その他、利用者様の収入に応じた費用と料金の減額があります。軽費老人ホームの費用は、料金的にも低所得者は優遇されており、本人または扶養義務のある家族の世帯年収によって、減額措置が適用できる点が安さの秘密です。

軽費老人ホームはどんな方におすすめ?

軽費老人ホームは、低所得で一人暮らしに困難を感じ始めた60歳以上の方、もしくは特定疾病の認定を受けた40歳以上の方におすすめです。軽費老人ホームは、生活に困窮するほどでなくとも比較的裕福でない方が入居の対象となります。介護老人保健施設(老健)の入所待ちの方、有料老人ホームの費用支払いが困難な方にもおすすめです。

まとめ

軽費老人ホームは、月額利用料30万円を目安に費用がかかり、入居一時金も合わせると数十万円の出費となりますが、他の老人ホームと比べると格安で利用できるのが特徴です。高齢者の暮らしにおける必要最低限の設備が整っており、人員配置も最小限に抑えた施設だからこそ、安い経費で入居できます。

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