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短期入所療養介護(医療型ショートステイ)とは?利用可能な施設や対象者を解説

「短期入所療養介護」(医療型ショートステイ)とは、居宅介護をしている要介護者が施設へ短期間入所して、専門スタッフによる医療ケア、機能訓練、日常生活上のケアなどを受けることが可能な、介護保険制度によるサービスです。短期入所療養介護とは何か、サービス内容、利用者の自己負担額、利用するまでの流れ、施設を選ぶポイントなどを解説していきます。

短期入所療養介護とは

短期入所療養介護は医学的な管理に対応可能

短期入所療養介護とは、普段は自宅で生活をしている要介護者が「介護老人保健施設」、「介護医療院」、病院などへ短期間入所して、医師、看護師、理学療法士などの専門職による医療ケアや、機能訓練、日常生活上のケアを受けられる介護保険サービスのひとつです。

介護サービスにおけるショートステイには、大きく、この短期入所療養介護と「短期入所生活介護」の2つがあります。短期入所療養介護は、医学的な管理・処置にも対応できますが、一方の短期入所生活介護は、日常的な生活の支援や介護のみが中心です。

目的

短期入所療養介護は、「レスパイトケア」の目的で利用される場合が多くなっています。「レスパイト」とは休息、息抜き、小休止を意味しており、家族が短期間でも介護から解放されて、リフレッシュできる時間を作ることです。また、急用あるいは介護者が病気により介護ができない場合にも、短期入所療養介護が利用可能。さらに、要介護者本人にとって、機能の維持・改善、生活環境の安定、活性化も図れます。

利用可能な対象者

短期入所療養介護は、要介護1~5の認定を受けている方が対象であり、要支援1・2の方は利用できません。また、施設によって対応可能な症状が異なるので、事前に確認するのがおすすめです。

利用可能日数

介護保険制度による、短期入所療養介護の利用可能な日数は、同じ月内または月またぎでも、1ヵ月につき連続30日まで。31日目からは全額自己負担での利用になります。連続として数えられないのは、他の施設へ入所した場合や、一度自宅へ帰宅した場合のみ。31日目に別の施設へ入所した場合には、連続利用として数えられる点に注意が必要です。

また、累積で利用できる日数にも制限があり、「介護認定期間」の半数を超えてはいけません。例えば、介護認定期間が180日であれば、90日まで利用ができます。この介護認定期間とは、要介護認定が有効とされる期間のことです。

ただし、やむを得ない理由がある際には、利用期間を超えて利用できる場合もあります。介護者の体調不良が長引いている場合や、要介護者が在宅介護に向けて生活リズムを整える必要性がある場合などです。期間を超えて施設を利用したい場合には、理由届出書をケアマネジャーから自治体へ提出しなければなりません。

短期入所療養介護の施設

短期入所療養介護として利用できる施設は、以下の4つです。

  • 介護老人保健施設
  • 療養病床を有する病院もしくは診療所
  • 診療所(療養病床を有する物を除く)
  • 介護医療院

2019年(平成31年)では、短期入所療養介護施設は3,781ヵ所あり、そのうち介護老人保健施設は増加傾向とされていますが、病院及び診療所は減少傾向に。また、介護老人保健施設は、短期入所療養介護施設のうち約93%を占めているのです。

利用状況

短期入所療養介護を含めた、ショートステイにおける2022年(令和4年)度の年間利用者数は約770,000人で、介護保険サービス全体の約14%。このうち、短期入所療養介護は約130,000人です。

利用者の介護度は、要介護3が24.6%と一番多く、次いで要介護2の方が23.3%を占めています。

短期入所療養介護のサービス内容

歩行訓練をする利用者

短期入所療養介護におけるサービス内容は、以下の通りになります。

1病状の確認、療養上の世話
利用者の病状や負傷の状態を診断。服薬指導、インスリンの注射、経管栄養、喀痰(かくたん)吸引、褥瘡(じょくそう:床ずれのこと)の処置、尿管カテーテルなどの管理、酸素療法などを行います。
2医療機器の調整・交換
利用者が使用している医療機器(胃ろうチューブなど)の調整、交換。
3機能訓練(リハビリテーション)
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など、リハビリテーションの専門職が利用者の身体状況を評価して、必要なリハビリテーションを行います。
4認知症がある要介護者への対応
認知症を有する、利用者への専門的なケアが可能です。
5レクリエーション
他の施設利用者とともに一緒に集団体操をしたり、ゲームなどのレクリエーションを行ったりします。
6緊急時の受け入れ
介護者の急用、病気などによって居宅介護が困難な場合、要介護者を施設へ受け入れることも可能です。
7日常生活を送る上での世話・介護
食事サービスの提供、入浴、排泄など、利用者の日常生活における世話や介助を実施します。
8急変時の対応
利用者の状態が急変した場合には、医師の判断によって他の医療機関を紹介したり、治療を行ったりすることも可能です。
9介護生活上での相談、助言
利用者や家族に対して、介護生活における相談と助言を行います。
10ターミナルケア
余命が少ない終末期の利用者に対してのケアも可能です。

短期入所療養介護にかかる費用

短期入所療養介護の費用は基本サービス費と、身体状況に応じて加算されるサービス加算費、その他、滞在費や食費などがかかります。

基本サービス費

短期入所療養介護の費用

基本サービス費は介護、医療にかかる費用とされ、介護保険が適用されるため、自己負担額は1割です。これには食事介助、入浴介助、医療にかかる経費が含まれます。

また要介護度、使用する部屋の種類、施設の種類、職員の配置によっても基本サービス費は変動するのです。

サービス加算費

サービス加算費は、身体状況に応じて追加される費用で、介護保険制度により1割の自己負担額。サービス加算費には施設への送迎、機能訓練(リハビリテーション)、認知症への対応、緊急時の受け入れ費用が含まれます。

全額自己負担となる費用

基本サービス費、サービス加算費以外で全額自己負担となるものは食費、滞在費、レクリエーション費、希望した場合の理美容費などです。なかでも滞在費は利用する施設と部屋の種類によって異なり、部屋の種類には以下の4つがあります。

1多床室
1部屋あたり4床以下の相部屋
2従来型個室
居室は完全な個室で、洗面台とトイレは室内
3ユニット型個室
10人をひとつのユニットとしてサービスを提供しており、居室は個室
4ユニット型個室的多床室
以前はユニット型準個室と呼ばれており、仕切りによって個室へ改装

介護老人保健施設における滞在費(1泊の自己負担額)

介護老人保健施設は、介護を必要とする高齢者の自立を支援する施設。なお、運営の基準によって「基本型」、「在宅強化型」、「療養型」の3つに分類されています。介護老人保健施設における部屋別の滞在費は、以下の通りです。

多床室の場合
基本型 在宅
強化型
療養型
要介護1 827円 875円 857円
要介護2 876円 951円 941円
要介護3 939円 1,014円 1,057円
要介護4 991円 1,071円 1,135円
要介護5 1,045円 1,129円 1,210円
従来型個室の場合
基本型 在宅
強化型
療養型
要介護1 752円 794円 778円
要介護2 799円 867円 861円
要介護3 861円 930円 976円
要介護4 914円 988円 1,054円
要介護5 966円 1,044円 1,131円
ユニット型個室・ユニット型個室的多床室の場合
基本型 在宅
強化型
療養型
要介護1 833円 879円 944円
要介護2 879円 955円 1,026円
要介護3 943円 1,018円 1,143円
要介護4 997円 1,075円 1,221円
要介護5 1,049円 1,133円 1,296円

病院の療養病床における滞在費(1泊の自己負担額)

病院の療養病床では、介護職員と利用者の割合によって費用が異なります。例えば6:1とは、利用者6人に対して、1人の職員が配置されているという意味です。病院の療養病床における部屋別の滞在費は、以下の通りになります。

多床室の場合
介護職員4:1 介護職員5:1 介護職員6:1
要介護1 814円 759円 738円
要介護2 921円 866円 846円
要介護3 1,149円 1,020円 993円
要介護4 1,247円 1,171円 1,146円
要介護5 1,334円 1,211円 1,186円
従来型個室の場合
介護職員4:1 介護職員5:1 介護職員6:1
要介護1 708円 652円 629円
要介護2 813円 757円 738円
要介護3 1,042円 914円 885円
要介護4 1,139円 1,063円 1,037円
要介護5 1,227円 1,104円 1,077円
ユニット型の場合
介護職員3:1
要介護1 838円
要介護2 943円
要介護3 1,172円
要介護4 1,269円
要介護5 1,356円

老人介護医療院の滞在費(1泊の自己負担額)

老人介護医療院は、医療ケアを重視した介護施設で、「Ⅰ型介護医療院」(重篤な要介護者を対象)と「Ⅱ型介護医療院」(比較的安定した要介護者が対象)に分類。老人介護医療院における、部屋別による滞在費は以下の通りです。

Ⅰ型介護医療院
多床室 従来型個室 ユニット型個室・ユニット型個室的多床室
要介護1 875円 762円 892円
要介護2 985円 874円 1,002円
要介護3 1,224円 1,112円 1,242円
要介護4 1,325円 1,214円 1,343円
要介護5 1,416円 1,305円 1,434円
Ⅱ型介護医療院
多床室 従来型個室 ユニット型個室・ユニット型個室的多床室
要介護1 828円 716円 891円
要介護2 925円 812円 993円
要介護3 1,133円 1,022円 1,215円
要介護4 1,223円 1,111円 1,309円
要介護5 1,303円 1,192円 1,394円

短期入所療養介護に従事するスタッフの人員基準

短期入所療養介護に従事するスタッフの人員基準は、以下のように定められています。

医師 1人以上
生活
相談員
利用者100人に付き1人以上
(うち1人は常勤、ただし利用定員が20人未満の併設事業所を除く)
介護
職員・
看護師・
准看護師
利用者3人に付き1人以上
(うち1人は常勤、ただし利用定員が20人未満の併設事業所を除く)
栄養士 1人以上
(利用定員が40人以下で特定の条件を満たした場合は除く)
機能訓練指導員 1人以上
調理員・
その他
従業者
実情に応じた適当数

短期入所療養介護を利用するまで

介護保険制度を利用して、短期入所療養介護を利用する流れは以下の通りです。

ケアマネジャーに相談

短期入所療養介護を利用したい旨をケアマネジャーへ相談します。どのような介護、医療ケアを受けたいかを細かく伝えておくと、施設を見つけやすくなるのでおすすめです。

施設の見学、面談

ケアマネジャーから紹介された施設を実際に見学します。施設の雰囲気、職員の働きぶりを見ると、書類上では分からない、施設の特徴が判明することもあるのです。その後、ケアマネジャーも同席の上で施設スタッフと面談を行います。

診療情報提供書を作成

施設が決まれば、主治医に診療情報提供書の作成を依頼。診療情報提供書は、利用者の病状、投薬状況を施設スタッフへ伝えるために必要な書類です。診療情報提供書の作成ができれば、施設と利用開始日を調整します。

ケアプランを作成

利用開始日が決定したあとに、ケアマネジャーにケアプランを作成してもらい、施設へ提出。施設側が受け入れを許可すれば、利用者と施設の間で契約へと進みます。

施設と契約、施設の利用を開始

契約が成立すれば、施設の利用を開始。ただし、施設及びケアマネジャーの都合によっては入所日が変更されることもあります。

短期入所療養介護施設を選ぶポイント

利用できる施設が様々なため、施設選びが難しいと感じる方も多いです。ここでは、短期入所療養介護施設を選ぶポイントを紹介します。

医療ケア

施設によって可能なケアが異なる場合があるため、利用者にとって、必要なケアが受けられるかどうかを確認すると安心です。例えば、医療ケアのなかでも手厚い処置が必要な方は、介護医療院を利用するのがおすすめ。

施設利用費

施設や部屋のタイプ、介護度によって自己負担額は異なります。利用する施設がどのような条件なのかを確認して、利用前に費用を把握すると安心です。介護の専門家であるケアマネジャーに聞けば、費用について確認できます。

事前見学

利用前に見学に行くことで、書面では分からない施設の雰囲気をつかむことが可能です。例えば、職員の言葉遣い、利用者に対しての接し方、清潔感などをチェックして、利用者が実際に利用する場面を想像しましょう。事前に施設や職員を確認しておけば、利用開始後の後悔を減らせます。

周囲の評判

実際に同じ施設を利用している人がいれば、評判を聞いておくのもおすすめ。利用した人にしか分からない情報があるかもしれません。

まとめ

短期入所療養介護は、在宅で介護する家族が介護から解放されてリフレッシュするためや、急な用事があった場合に利用できるサービスです。医療ケアが必要な方も安心して利用できます。ただし、利用する施設や、部屋のタイプ、介護度によっても自己負担額が異なるので、事前に確認してから利用するのがおすすめです。

短期入所療養介護を利用していても、在宅での介護を続けるのを困難に感じている方は、施設の利用も検討してみて下さい。

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