文字サイズ
標準
拡大

history閲覧履歴

メニュー

介護・医療の負担を軽減する公的制度や補助金を解説

老後にかかる費用には主に生活費、介護費、医療費がありますが、介護、医療における公的な制度を活用することで、費用負担を抑えることが可能です。活用できる公的制度が多数あるため、何が適用となるかについて事前に把握しておきましょう。「介護・医療の負担を軽減する公的制度や補助金を解説」では、老後にかかる介護費、医療費の負担を抑える各種公的制度について詳しく解説します。

老後の負担になる費用は様々

老後に負担になる費用は、主に生活費、介護費用、医療費用などです。ここでは、それぞれの費用について説明します。

生活費

65歳以上の老後に必要な1ヵ月あたりの生活費は、単身世帯で約160,000円、夫婦世帯で約270,000円。そのうち、保健医療の割合は5.7~6.6%を占めています。

介護費

2021年(令和3年)における生命保険文化センターの調査によると、月々の介護費は平均83,000円、介護に要した一時的な費用の合計は平均740,000円でした。また、在宅介護の場合には月平均48,000円、介護施設に入所した場合には、月平均122,000円かかるとされています。

さらに、介護期間は平均61ヵ月(約5年)であり、介護費の平均的な総額は約600万円です。なお、介護期間は4~10年未満が31.5%と最も多く、次いで10年以上が17.6%であるため、介護費が600万円以上かかる可能性もあります。

医療費

厚生労働省によると、65歳以上の医療費は年間733,700円であり、70歳以上は807,100円、75歳以上は902,000円と増加。なお「高額療養制度」によって、毎月の窓口負担の上限は決められています。一般的な所得の70歳以上の場合には、外来治療では18,000円、入院では57,600円が上限額であり、超過した分は還付されるため医療費を抑えることが可能です。

介護費の負担を抑える制度

介護費の負担を抑える、公的制度を5つ紹介します。

1高額介護サービス費制度

「高額介護サービス費制度」とは、1ヵ月に支払った介護保険サービスの利用料金が、自己負担限度額を超えた場合、超えた分をのちに払い戻す制度です。同じ世帯で複数人が介護保険サービスを利用している場合には、世帯全体の自己負担額で計算されます。

ただし、住宅改修費(介護リフォーム費)、福祉用具の購入費、施設入所中の食費などは、高額介護サービス費制度の対象外です。また、介護保険サービスにおける自己負担限度額は、介護保険サービス利用者の所得によって定められています。所得額別の自己負担額は以下の通りです。

介護保険サービスにおける自己負担上限額
区分 負担の上限額(月額)
課税所得690万円
(年収約1,160万円以上)
世帯140,100円
課税所得380万~690万円未満
(年収約770万~1,160万円未満)
世帯93,000円
市町村民税課税~課税所得380万円未満(年収約770万円未満) 世帯44,400円
世帯全員が市町村民税非課税 世帯24,600円
世帯全員が市町村民税非課税の世帯のうち前年の課税年金収入額+その他所得の合計が800,000円以下の個人 個人15,000円
生活保護受給者 世帯15,000円

なお、高額介護サービス費制度の支給は、要支援、要介護認定を受けている方が対象。ただし、介護保険料を滞納している場合には、適用になりません。申請には、市区町村の役所まで必要な書類を提出します。

必要な書類は高額介護サービス費支給申請書、通帳、介護保険被保険者証、マイナンバーカードまたはマイナンバーが分かる物です。一度申請すれば、自己負担上限額を超えるたびに、以降自動的に払い戻しがされます。高額介護サービス費制度を受けるには、介護保険サービスを利用開始した月の翌日1日から、2年以内の申請が必要です。

2医療費控除

「医療費控除」とは、1年間に支払った医療費が一定額を超える場合、確定申告の際に所得控除が受けられるもの。原則として、その年の1月1日~12月31日までに支払った医療費が100,000円以上の場合に、確定申告において医療費控除が可能です。

この医療費には、世帯全体の医療費が含められます。なお、介護保険サービスにおいても「居宅介護におけるリハビリ費」、「施設介護での食費、居住費」、「施設までの交通費」、「おむつ購入費」(医師からのおむつ使用証明書が必要)が医療費控除の対象です。

3家族介護慰労金

「家族介護慰労金」とは、要介護者を在宅介護している場合、家族に対して支給される給付金。金額及び支給条件は自治体によって異なりますが、約100,000~120,000円とされ、介護保険サービスを利用せずに、要介護4~5の要介護者を在宅介護している方が対象です。

4介護休業給付金
介護費を軽減する公的制度

「介護休業給付金」とは、「介護休業」を取得した際に支給される給付金。この介護休業とは、要介護状態にある家族を介護するため、2週間以上仕事を休まなければいけない場合に取得できるもので、要介護者1人について通算93日間を限度として、3回まで取得できます。

給付される金額は、休業開始時の賃金(日額)×支給日数(最大93日)×67%。ただし、介護休業期間中に賃金を受け取った場合には、減額されることもあるのです。

介護休業給付金が支給可能かどうかの条件は、労働契約に期間が定められていない場合と定められている場合で異なります。契約期間が定められていない場合には、介護休業の開始日より2年前において、被保険者期間が12ヵ月以上必要。

契約期間が定められている場合には、追加で介護休業の開始時に同一事業者に1年以上雇用されており、かつ介護休業制度の開始日から起算して93日を経過したあとも、雇用されている必要があります。介護休業給付金の申請期間は、介護休業が終了した翌日から2ヵ月後の末日です。給付金を受け取るためには、ハローワークまで介護休業給付金支給申請書、雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書を提出する必要があります。

5介護リフォーム補助金

「介護リフォーム補助金」とは、在宅介護において、自宅を改修する際に補助されるものです。介護リフォーム補助金には、介護保険制度によるものと、各市区町村が設定している補助金の2種類があります。

介護保険制度における補助金

介護保険制度における補助金では、「介護住宅改修費」として200,000円までの工事に対して、7~9割の補助を受けることが可能。住宅改修費支給の適用範囲は、手すりの取付け、段差の解消、滑り止め、床材料の変更、引き戸などへの扉の取り替え、洋式便器などへの取り替えなどです。

補助金を受けるには「要支援、要介護認定を受けている要介護者が居住」、「要介護者が入院及び介護施設へ入所していない」、「以前に上限額まで介護住宅改修費の支給を受けていない」などの条件を満たす必要があります。

各市区町村が設定している補助金

市区町村によっても介護リフォームの補助金制度を設けている場合があり、支給条件、上限額、対象となる工事も市区町村ごとに異なるため、居住する地域の役所まで確認が必要です。

医療費の負担を抑える公的制度

医療費の負担を抑える公的制度を6つ紹介します。

1高額療養費制度
医療費の負担を抑える公的制度

高額療養制度は前述の通り、1ヵ月の間にかかった医療費が高額になった場合、自己負担限度額を超えた分について払い戻しを行う制度。

自己負担限度額は年齢、所得によって定められています。ただし、入院時の食費、個室などの差額ベッド費、先進医療の代金などは含まれず、月をまたぐと別計算になる点に注意が必要です。

なお、高額療養制度は、加入している公的医療保険(健康保険組合、協会けんぽ、市町村国保、後期高齢者医療制度、共済組合など)まで、高額療養費申請書を提出して申請。支給までには、少なくとも受診した月から3ヵ月程度かかります。

2限度額適用認定証

「限度額適用認定証」とは、医療費が高額になると見込まれる際に、医療機関での支払いが自己負担限度額までとなる制度です。ただし、高額療養費制度と同様に食費、差額ベッド費には適用されません。限度額適用認定証は、国民健康保険の窓口にて申請すれば、即日で発行が可能です。

3高額医療・高額介護合算療養費制度

「高額医療・高額介護合算療養費制度」とは、健康保険(後期高齢者医療保険含む)と介護保険における自己負担額の合算額が、1年間(毎年8月1日~翌年7月31日)において著しく高額であった場合に、負担額を軽減する制度。所得、年齢別の自己負担限度額は以下の通りになります。

健康保険、介護保険における自己負担限度額
所得区分 75歳以上 70~74歳 75歳未満
介護保険+後期高齢者医療 介護保険+被用者保険または国民健康保険
所得 年収約1,160万円以上 212万円 212万円 212万円
年収約770万~1,160万円未満 141万円 141万円 141万円
年収約370万~約770万円 67万円 67万円 67万円
年収約156万~約370万円 56万円 56万円 56万円

高額医療・高額介護合算療養費制度は市区町村の窓口まで、高額医療・高額介護合算療養費制度申請書を提出して申請が可能です。

4高額療養貸付制度

「高額療養費貸付制度」とは、医療費の支払いが高額であり、前述の高額療養費が支給されるまでの間に、国民健康保険あるいは全国健康保険協会にて、無利子で貸付を行う制度。貸付金額は国民健康保険が9割、全国健康保険協会が8割になります。

国民健康保険の場合は、国民健康保険の窓口にて、高額療養費貸付制度申請書を医療費の領収書と一緒に提出して申請。全国健康保険協会の場合は、高額療養費貸付制度申請書を被保険証、医療費の請求書、高額医療費貸付金借用書を全国健康保険協会各支部まで提出して申請します。

なお、貸付金の返済については、国民健康保険では、高額療養費が支給されれば貸付金と相殺。全国健康保険協会の場合も、高額療養費の給付金の支払いが返済金に充てられます。

5高額療養委任払い制度

「高額療養委任払い制度」とは、国民健康保険に加入している方で医療費が高額になった場合に、医療機関への支払いを自己負担限度額までにできる制度。

事前に国民健康保険の窓口まで、医療費を支払うことが困難であることの申し立てを行う必要があります。申請者は、高額療養費の自己負担限度額のみを医療機関へ支払い、残りの高額療養費該当分は医療機関に国民健康保険から支払われるのです。

ただし、国民健康保険料の滞納がある場合には、高額療養委任払い制度が利用できない場合があります。申請については、国民健康保険の窓口にて確認してみましょう。

6傷病手当金制度

「傷病手当金制度」とは、病気休業中に被保険者、その家族の生活を保障するための制度。病気、ケガにて会社を3日以上連続して休んだ場合、4日目以降から給付金が支給されます。1日あたりの支給額は、標準報酬日額相当額の2/3です。標準報酬日額相当額とは、直近12ヵ月間における、各月の標準報酬月額を平均した額÷30日で計算されます。

また、病気、ケガで休んだ期間のうち最初の3日は待機期間であり、4日目から給付金を支給。通算で1年6ヵ月間を限度に支給されます。例えば、ケガのために7日間連続で休んだ場合には、4日分を支給。ただし、「休んだ間に給与が支払われる」、「障害厚生年金を受けている」、「障害手当金を受けている」、「老齢[退職]年金を受けている」、「労災保険から休業補償給付を受けている」などの場合には給付金の一部を支給、または支給されないため注意が必要。

さらに、「出産手当金」の額よりも給付金の額が多ければ、その差額を受給することが可能です。なお、傷病手当金制度については、勤務先の企業まで申請の必要があります。

生活保護の受給

生活が非常に困窮しており、前述の公的制度による負担減額でも厳しい場合は「生活保護」制度があります。この生活保護を受けることによって、介護費と医療費が大幅に軽減される可能性はありますが、あくまで最終手段とすることをおすすめします。生活保護の申請については、市区町村の福祉事務所、あるいは福祉課にて相談しましょう。

まとめ

老後に負担になる費用は、主に介護費と医療費ですが、費用負担を抑える公的制度が整っているため、活用することで負担を減らせます。ただし、公的制度の数が多く、自分が適用になるかどうかについて迷う方も多いかもしれません。公的制度について分からなければ、介護の窓口となる「地域包括支援センター」、ケアマネジャー、市区町村の役所まで相談してみましょう。

ページトップへ
ページ
トップへ