要介護3とは?要介護2・4との違いや自己負担額、受けられるサービスなどを解説
「要介護3」とは介護保険制度における、要介護認定の段階を示しています。要介護認定では、どのくらい生活の上で手助けを要しているか、要支援1~2と要介護1~5で分類。要支援1は最も介護が軽い状態、要介護5は最も介護が重い状態を意味しているのです。要介護3と認定される基準、利用可能な介護保険サービス、介護生活にかかる費用について解説していきます。
要介護3とは
要介護3は、要介護認定において「常時介助が必要」と判断された状態です。
要介護3と認定される基準と認知症との関係

要介護3と認定される基準は、多くのことが自分ひとりでは遂行できず、他者の手助けを要する状態であること。老化や病気、認知症等によって、常に家族や専門家の介護が必要と思われる際に認定されます。
また、認知症は要介護状態への進行とかかわりが深いと考えられ、要介護状態になる原因においても、上位に位置。
認知症が進行すると記憶力や思考力の低下といった「中核症状」だけでなく、周りの環境によって出現する幻覚や幻聴、徘徊、暴力、暴言、妄想などの「周辺症状」により自活が厳しくなります。周辺症状により自宅内だけでなく、近所付き合いでのトラブル、交通事故、事件に巻き込まれてしまうなど様々なリスクが高くなるのです。
なお、要介護認定の際の判断基準として用いられる指標は、以下の5つになります。
- 身体機能・起居動作
- 生活機能
- 認知機能
- 精神機能
- 社会参加能力
これらの能力がどのくらい保たれているか、生活にどのくらい支障をきたしているかを判断し、さらに「要介護認定等基準時間」という評価基準も使用して判定が行われるのです。要介護認定等基準時間とは、厚生労働省の定めた介護に要する時間を示したもの。要介護3と認定される場合は、介護に要する時間が70分以上90分未満となります。
要介護2との違い
「要介護2」との違いは、介助を必要とする量。要介護2では日常的な動作においてのみ、部分的な介助が行われます。また、認知症における思考力の低下も要介護2においては軽度です。要介護2では、認知症によって記憶力や日付、場所の理解の低下など中核症状は出ていても、暴言や暴力、幻覚、妄想といった周辺症状は出現していないことが多いとされています。
要介護4との違い
「要介護4」は、要介護3よりもより多くの介助を必要とする状態です。要介護4においては自活能力もほとんどなく、認知症の進行により、コミュニケーションが困難なケースも少なくありません。また、ほぼ寝たきりとなり、施設入居が必須と考えても良いでしょう。
要介護3の認定をされても一人暮らしは可能か
要介護3でも一人暮らしは可能ですが、おすすめできません。実際に一人暮らしをするとなると、平日はデイサービスへ通所、もしくは訪問介護を受け、土日は家族が介護するといった生活が予想されます。このように介護保険サービスをフル活用すれば一人暮らしは可能と言えますが、様々な危険やリスクが潜んでいることを理解しておきましょう。なお、予測される危険事例は以下の通りです。
- 認知機能低下によって、外を徘徊して事故に合う、家に帰れなくなってしまう
- コンロの火の消し忘れによる火災を起こしてしまう
- 健康管理ができず、脱水や栄養不足、熱中症になってしまう
- 家の中で転倒してケガをしてしまう
利用可能な介護保険サービス
要介護3で活用できる介護保険サービスは多岐にわたり、介護保険サービスが利用可能。適切な介護サービスを使うことで、本人の生活の質向上だけでなく、サポートを行う家族のプライベートを充実させることもできます。
利用できる介護保険サービス一覧
要介護3の人が利用できる介護保険サービスには、自宅で行える在宅介護サービスから、介護施設への入所まで様々です。
- 訪問看護
- 訪問ヘルパー
- 訪問入浴
- 訪問リハビリ
- 訪問診療
- 通所介護
- 通所リハビリ
- ショートステイ
- 施設への入所

訪問型介護保険サービス
「訪問型介護保険サービス」では、専門スタッフが家を訪問して、生活の手助け、服薬や体調管理、リハビリテーションを実施。スタッフは看護師や介護士、理学療法士、作業療法士、医師などサービス内容によって異なります。訪問型介護保険サービスの大きなメリットは大きく4つです。
- 移動や送迎の手間を省ける
- 環境を変えなくても良い
- 施設に入るより安価
- 自宅にて実践的なリハビリができる
介助量の多い人の送迎は容易ではなく、介護タクシーを使うこともできますが費用もそれなりにかかります。訪問型介護保険サービスでは、専門スタッフが家へ訪問するため、送迎の手間が減るのです。リハビリの面でも実際に過ごしている環境下で、立ち座り、歩き、トイレ動作、階段昇降などの機能維持訓練が行えるのが、大きな利点になります。
ヘルパーの利用回数は週3回程度
訪問看護は週に1~2回
訪問リハビリは週に120分まで
通所型介護保険サービス
「通所型介護保険サービス」は、訪問型介護保険サービスとは異なり、要介護者が介護サービス事業所へ出向いて利用します。なお、送迎に関しては、介護サービス事業所によっては自宅まで迎えに来ることも可能。
通所型介護保険サービスは、利用時間を長くすることで、自宅で引きこもる時間を減らせる上、外出や社会参加、他者交流の機会を持つことができます。これにより、認知症状や精神機能にも良い影響を及ぼすと考えられているのです。
デイサービスの利用は週3~4回が多い
短期入所型介護保険サービス
「短期入所型介護保険サービス」は常時介護施設へ入るのではなく、一定期間だけ介護施設に入所することができます。機能維持訓練、様々なレクリエーションを実地。1泊2日から利用できるのです。また、短期入所型介護保険サービスは、介護を行う家族にもメリットが存在。突然のできごとにより、要介護者の面倒を見ることができない場合の利用や、一時的に介護の負担を減らすことにも繋がります。
介護施設への入所
要介護3であれば、介護施設へ入所することも可能です。しかし、施設数はまだまだ足りず、空床がなくて退所待ちということも少なくありません。介護施設探しは、早めに動き始めることがおすすめです。
福祉用具のレンタル、介護リフォーム
その他の介護保険サービスとして、福祉用具のレンタル・購入、介護リフォームがあります。
福祉用具のレンタルや購入
介護リフォーム
要介護3の方にかかる費用の例
基本的に、介護保険サービスにおける自己負担額は総額の1~3割負担となり、この割合は老齢年金、所得によって決定されます。これらを踏まえて費用を確認していきましょう。
要介護3の支給限度額
介護保険には「区分支給限度額」があります。これは、介護保険から給付される限度額のことです。要介護3の限度額は、1ヵ月約270,480円。住んでいる地域によって多少前後します。
自宅における1ヵ月の自己負担額
自宅で過ごす場合の自己負担額は、介護保険サービスの利用量によって大きく差が出るのです。仮に介護保険サービスをすべて活用したとすると、自己負担額は27,048円になります。自宅において、介護保険サービスを利用した際の自己負担額のシミュレーションは、以下の通りです。
自宅における1ヵ月の自己負担額 | |
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サービス内容 | 1ヵ月にかかる費用 |
訪問看護 | 30分以上1時間未満を週1回、4週で約3,284円 |
訪問介護 | 30分以上1時間未満を週3回、4週で約4,752円 |
訪問リハビリ | 60分を週1回、4週で約3,684円 |
通所介護 | 8~9時間を週2回、4週で約7,288円 |
福祉用具 レンタル |
介護用ベッド1,000円、自走式車椅子800円 |
合計 | 20,808円 |
介護保険サービスの点数から値段を算出、1単位=10円、1割負担で計算
介護施設における1ヵ月の自己負担額

介護保険制度による公的な介護施設は、①「介護老人福祉施設」(特養)、②「介護老人保健施設」(老健)、③「介護療養型医療施設」、④「介護医療院」の4つ。
1ヵ月にかかる費用はサービス費に加えて、居住費、食費などです。このうち介護保険制度を利用できるのは、サービス費のみで、食費や居住費はすべて自費となるため、月の費用計算の際は注意しましょう。
介護施設において、介護保険サービスを利用した際の自己負担額のシミュレーションは、以下の通りです。
①特養でユニット型個室を 使用した際の自己負担額 |
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項目 | 1ヵ月にかかる費用 |
サービス費 | 約23,790円 |
食事代 | 約40,000円 |
部屋代 | 約60,000円 |
総額 | 120,000~130,000円程度 |
②老健でユニット型個室を 使用した際の自己負担額 |
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項目 | 1ヵ月にかかる費用 |
サービス費 | 約27,090円 |
食事代 | 約40,000円 |
部屋代 | 約60,000円 |
総額 | 120,000~130,000円程度 |
③介護医療型施設でユニット型個室を 使用した際の自己負担額 |
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項目 | 1ヵ月にかかる費用 |
サービス費 | 約30,060円 |
食事代 | 約40,000円 |
部屋代 | 約60,000円 |
総額 | 130,000円以上 |
④介護医療院でユニット型個室を 使用した際の自己負担額 |
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項目 | 1ヵ月にかかる費用 |
サービス費 | 約35,640円 |
食事代 | 約40,000円 |
部屋代 | 約60,000円 |
総額 | 130,000~140,000円程度 |
介護保険サービスの点数から値段を算出、1単位=10円、1割負担で計算
介護保険制度を利用するまでの流れ
介護保険制度による介護サービスの利用、給付を受けるには、以下の手順が必要になります。
- 1要介護認定の申請
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申請者本人が住む市区町村の相談窓口にて申請。申請時に必要な物は、介護保険被保険者証、申請書、主治医の意見書になります。
申請書は窓口、もしくはインターネットからのダウンロードでも入手可能。主治医意見書は、医師の名前や病院名、連絡先を書くと市区町村が作成依頼をしてくれます。
- 2自治体による聞き取り調査(認定調査)
- 市や町の職員が家に訪れ、聞き取り調査を実施。身体機能・起居動作、生活機能、認知機能、精神機能、社会参加能力に関しての調査が行われます。認知症でコミュニケーションの支障や、自己理解が不十分な場合は、家族も一緒に参加しましょう。
- 3一次・二次判定
- 一次判定では介護に要する時間、要介護認定等基準時間を判定。これは、聞き取り調査と主治医意見書の内容から実施されます。二次判定では複数の専門家によって介護認定審査会が行われ、要介護度が判定されるのです。
- 4要介護度の認定
- 要介護度の申請から30日以内には結果が出て、結果の通知書、被保険者証が郵送され自宅へ届けられます。
- 5サービス計画書(ケアプラン)を作成
- 要介護度が認定されれば、ケアマネジャーへ「ケアプラン」の作成依頼をします。ケアプランとは課題点、身体の状況、家庭環境を加味した上での目標がまとめられた介護計画書のことです。状況を確認するための面接や、専門家による協議の上でケアプランの原案を作成。原案ができたあとは、本人、及び家族が確認して修正し、ケアプランが交付されます。
- 6介護保険サービスの開始
- ケアプランをもとに、介護保険サービスの提供を開始。そのあとも問題点や不便なところ、困りごとがあればケアマネジャーへ適宜相談をして修正が検討されていきます。
まとめ
要介護3は、生活において全面的な介助を要する状態。認知症による周辺症状が出ることもあり、独居には多くのリスクが潜みます。また、介護も決して楽ではありません。要介護3になると、使える介護サービスは非常に豊富です。サービスを効率的に活用することで、安価に安全な生活環境を整えることができます。在宅での生活が難しいのであれば施設入所も選択肢のひとつ。無理のない範囲で、家族と本人が納得できる選択をしましょう。