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介護をすると相続で有利になる?寄与分についてや財産相続を有利にする方法

介護は多くの時間を要すため、「親身に介護をしたのだから、他の家族よりも相続で有利になるのでは」と考えている方も多く見られます。しかし、親族の介護は扶養義務の一環とされるため、原則として相続金額に影響することはありません。ただ、献身的な介護が認められることで増額されるケースもあるのです。「介護をすると相続で有利になる?寄与分についてや財産相続を有利にする方法」では、介護と相続の関係性について細かく解説します。

介護したからといって相続分は原則変わらない

介護は、身体的にも精神的にも大変なことです。しかし、残念ながら介護にかかった労力が大きかったとしても、基本的には相続で有利になる訳ではありません。その理由は以下の通りです。

親族の介護は扶養義務に含まれる

相続の割合は法律によって定められているため、「親の介護をしている」という理由で変動することは、基本的にありません。親族の介護は扶養義務に含まれるため、日常生活の全般的な世話、医療費、介護費用などを一部負担していた場合でも、相続分には原則として有利に働くことはないとされています。介護で苦労したとしても、法的にはほとんど影響がないことを覚えておきましょう。

寄与分が認められれば、多く相続できることも

原則として介護と相続の取り分に関係性はありませんが、「寄与分」が認められることで、より多く相続できるケースもあります。寄与分とは、故人の家業を無償で手伝ったり、献身的に介護したりすることで、顕著な貢献をした相続人へ与えられる特例のことです。この寄与分が認められると、介護による貢献度に応じて相続費用に上乗せして財産を受け取ることができますが、寄与分として認められることは非常に難しいため、弁護士など専門家へ相談しながら主張することが必要になります。

寄与分について

前述の通り、寄与分が認められると通常の相続分とは別に、追加で財産を受け取ることができます。こちらでは、詳しい寄与分の条件、追加で受け取る財産の目安についてまとめました。

寄与分が認められる条件

介護に献身的だと寄与分が認められることがある

寄与分が認められるためには、いくつかの条件が必要。まず、介護を行った相続人が、故人に対して一般的な範囲を超えた特別な貢献をしたことが基準となります。

例えば、長年にわたる介護、故人のビジネスへの積極的な貢献など、明確な証明が必要です。具体的には介護日誌の記録、関係者の証言などであり、ケアの内容、介護の頻度、介護に要した時間など、詳細な記載が証明として利用できます。また家族、近隣の住民、医療関係者からの証言も、故人への貢献を裏付けるものとして証明になるのです。

寄与分は認められにくいことに注意

一般に寄与分は法的に認められるのが困難で、単に故人の世話をしたり、一時的に援助したりした程度では、寄与分として認められません。例えば故人が病気になった際に、数ヵ月間病院への送迎、家事を代わりに行ったという程度では、寄与分として認定されることは難しいとされます。

寄与分の金額の目安

寄与分は貢献の程度、故人の財産の総額を考慮して決定されるため、明確な基準はありません。一般的には寄与した内容と期間、故人の財産総額などをもとに、裁判所や相続人の間で協議されるのです。具体的な数値を事前に予測することは困難ですが、通常は法定相続分に数%を加算する形で計算されることが多いとされています。

例えば、配偶者のいない故人の財産総額が1億円、相続人は故人の子ども2人とします。子どもAは10年間にわたり故人の介護を行い、子どもBは特に介護をしていないと仮定した場合、寄与分を含めた財産分与は以下の通りです。

例:配偶者のいない故人の財産総額が1億円、
相続人は故人の子ども2人の場合
子どもA 子どもB
法定
相続分
5,000万円 5,000万円
故人の
介護期間
10年 なし
寄与分 +500万円 -500万円
(子どもAの寄与分)
財産分与 5,500万円 4,500万円

上記の計算は、あくまで一例。実際の計算では、故人の意向、他の相続人との関係など様々な要素が影響します。寄与分の主張、計算については、相続の専門家である弁護士など、専門家のアドバイスを受けることが大切です。

寄与分を認めてもらうポイント

困難な寄与分を認めてもらうためには、具体的なアプローチが必要。寄与分が認められる3つのポイントについて紹介しますので、参考にしてみましょう。       

1自ら主張して同意を得る必要がある

寄与分を認めてもらうには、介護を行った相続人自身が積極的に行動を起こすことが重要。特に、故人への特別な貢献を証明するためには、事実と根拠を他の相続人にしっかり伝え、理解を求める必要があります。

ポイントとしては貢献の内容、期間、それが故人の財産にどのような影響を与えたのかを明確に示すことです。例えば、「故人が経営する飲食店に自分の貯金を投入して、店を改装し売上を◯万円増加させた」など、貢献度が分かるような取り組みは、寄与分の認定を受けるための強力な根拠になります。また、主張は客観的な証拠に基づいている必要があります。介護記録、共同で事業を運営していた場合の契約書、会計記録などは証拠となるでしょう。

他の相続人と円滑に協議するためには、事前に情報を整理して準備を整えておくことが大切です。

2調停を検討する
寄与分を主張しても他の相続人との間で財産分与の協議が決裂した場合、「調停」を検討するという方法があります。調停とは裁判所への申し立てにより、中立的な調停委員のもとで話し合いが進められる法的な手続きのことです。調停の場では、財産分与の協議と同様に自分の主張を明確にし、具体的な証拠を提出しましょう。
3急いでいる場合は弁護士へ依頼する
様々な理由で、相続を急いでいる場合、弁護士へ依頼することが最良の方法。複雑な相続の手続きをサポートするだけでなく、財産分与における協議でも代理人として、寄与分に関する主張を強化してくれます。

財産相続を有利にする4つの方法

介護の貢献による寄与分が認められるには、多くの証拠集めや主張が必要なので、手間だと感じることも。そこで要介護者の存命中から可能な、相続に有利になる4つの方法を紹介します。

1負担付死因贈与契約を利用する
相続について話し合う家族

「負担付死因贈与契約」とは、生前に他の方に対して自分が亡くなった際、特定の財産を贈与すると約束する代わりに、何らかの負担を課す契約です。例えば、不動産を贈与する代わりに、贈与を受け取る側が贈与者の介護を行うといったケースが挙げられます。

負担付死因贈与契約を結ぶと確実に資産を贈与できる点がメリット。また、負担付死因贈与契約は、口約束でも契約が成立するとされています。しかし、証拠がないと他の相続人とトラブルになる可能性が大きいため、贈与、負担の内容を明記した書面を作成しておくのが無難です。

2生前贈与してもらう

「生前贈与」とは、存命中に財産を他者へ贈与すること。親が生きている間に、自分の財産を子どもに譲ることなどを指します。生前贈与をしてもらえれば、介護に貢献した人に対してより多くの財産が渡される可能性が高まります。また、生前贈与は贈与する相手、内容、時期などが自由に選択でき、親族以外にも贈与可能。

なお、贈与を受け取ると、基本的に贈与税の対象となりますが、年間110万円までの贈与ならば非課税となるのです。さらに、家族間での生前贈与には特例があり、例えば住宅購入のための資金援助には、最大1,000万円の贈与税控除(住宅取得等資金贈与の非課税)が適用されることがあります。

3生命保険を利用する

「生命保険を利用する」ことも、相続を少しでも多く受け取れる方法のひとつ。介護に貢献した方を生命保険の死亡受取人に指定することで、保険金を渡すことが可能だからです。しかし、複数の方を受取人に指定してしまうと、後々、保険金の配分についてのトラブルが起こる可能性が存在。生命保険については契約者本人だけで内容を決めるのではなく、家族間で話し合いの場を設けることが大切です。

4遺言書を作成してもらう

「遺言書」を生前作成してもらうことで、財産相続が有利に働く場合があります。遺言書は、故人の財産分配の意向をまとめた文書で、故人の意向がより正確に反映される相続方法。介護をしている方は、生前に介護者と話し合いを通じて、遺言書の作成を進めることをおすすめします。

一般的な遺言書は手書きでも作成できますが、誤解と不備を避けるためには、弁護士など専門家に依頼すると良いでしょう。特に「公正証書遺言」ならば、「公証人」(契約書における法律行為の適法性を認証する公務員)の前で作成され、法的な信頼性が高いため、複雑な相続の場合は公正証書遺言が推奨されています。

まとめ

長年、親族の介護をしていた方が相続で有利になるためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。原則的に親族の介護をしたからといって、相続分が自動的に増える訳ではないため、寄与分としての加算を主張しなくてはなりません。ただし寄与分は、一定の条件を満たした場合にのみ認められるため、難易度が高いとされています。

そこで、生前からできる相続に有利になる方法を活用するのも、ひとつの手段。負担付死因贈与契約、生前贈与、生命保険の活用、遺言書の作成などを要介護者へ依頼することで、相続以外で財産を受け取れるかもしれません。何より、事前の相談が必要不可欠なので、他の相続人と話し合いの場を持つことが大切です。

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