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介護予防とは?目的や取り組み事例、できることを簡単に解説

「介護予防」とは、高齢者が介護状態になることを遅らせたり、防いだりすることです。高齢者の健康を維持して自立した生活を支え、生活の質を高めることを目指しています。最近では、日本国内の少子高齢化という人口構造が問題。今後、介護が必要となる高齢者が増えてくることが予想されます。介護を必要とする方の数を減らすためにも、要介護となることを防ぐ介護予防が大切です。若い方でも、介護予防の知識を身に付けておいて損はありません。特に家族の中に、高齢者がいる方には役立つ情報となるでしょう。介護予防の概要から必要性、サービスなどについて解説していきます。

介護予防の概要

介護予防とは

介護予防とは

介護予防は、介護保険サービスのひとつで、「要介護状態の発生をできる限り防ぐこと、そして要介護状態にあってもその悪化をできる限り防ぐこと、さらには軽減を目指すこと」と定義されています。介護状態を防ぐだけに留まらず、仮に要介護状態になったとしても、進行を遅らせること、できる限り介護の必要性が軽減するように取り組むことが含まれているのです。

また、介護予防に関しては、介護保険法でも義務付けられています。加齢による身体、認知面の変化を自覚して健康の保持をすること、要介護状態であっても機能維持、向上に努めることは国民の義務でもあるのです。

介護予防の概念

介護予防の考え方は、「一次予防」、「二次予防」、「三次予防」の3つに分類。それぞれによって、対象者と取り組む内容が異なります。

分類ごとの対象者と目的

一次予防は、活動性が高く介護を必要としていない方が対象。今後、要介護状態となってしまうことを防ぐ取り組みを指します。二次予防は、要介護状態になりそうな高齢者に対して、日常生活動作能力低下の早期発見と要介護状態になることを防ぐこと、遅らせることが目的です。三次予防に関しては、すでに要介護状態にある方が対象。介助量の増加を防ぐこと、介助量を少しでも減らすための取り組みが行われます。

介護予防事業とは

「介護予防事業」とは、一次予防に焦点を当てた「一次予防事業」、二次予防に焦点を当てた「二次予防事業」、三次予防に焦点を当てた「予防給付」の3つに分類。一次予防事業は比較的自立度の高い高齢者を対象とし、できるだけ活動的な期間を長くするための事業です。また、二次予防事業は要介護状態になる可能性の高い方が対象とされ、要介護状態になることを防ぎます。

介護予防の目的

介護予防の目的は、健康寿命を延ばすこと、高齢になっても質の高い生活を送ることです。

健康寿命とは

「健康寿命」とは、普通の寿命とは意味が異なり、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義。国民の健康寿命が延びれば、要介護者を減らすことにも繋がります。なお、日本は世界的に見ても平均寿命、健康寿命が長い傾向。今後も平均寿命と健康寿命の差をなくしていくことが大切なのです。

QOLとは

QOL(Quality of Life)とは、「生活の質」と訳されることもあり、生きがいや生活の満足度、活力といった意味を持ちます。楽しみ、趣味に恵まれて生きがいのある生活をしている方、活力に溢れた満足度の高い生活をしている方は、QOLが高い状態。介護予防の目的には、この高齢者のQOLの向上も含まれています。

なお、生きがいや生活の満足度は主観的なものとなるため、要介護状態の方、寝たきりの方のQOLが必ずしも低いとは言えません。しかし、要介護状態の方の生活範囲と趣味は限られてしまいます。できないことが多くなり、自尊心が低下してしまう方も存在。そのため、健康であることによって、生活の幅や趣味の幅は広がり、活気のある生活にも繋がるのです。

介護保険制度

介護保険制度は、介護保険サービス利用における自己負担費用を軽減させるもの。この介護保険制度の改正から、介護予防が設立されたという歴史もあり、介護予防と介護保険には密接な関係があります。

介護保険制度を利用するためには、市区町村から「要介護認定」を受けることが必要。介護保険を申請した場合、まず要介護認定をするための認定調査が行われます。これにより、要支援1~2、要介護1~5までの7段階で介護度を認定。要支援1は比較的症状の軽い方で、要介護5へ近づくに伴い、症状が重く介助量が多い方となるのです。それぞれの介護度によって、受けられる介護保険サービスや費用負担が異なり、要介護5へ近づくほど受けられる介護保険サービスも手厚くなっていきます。

介護予防の現状と必要性

日本の介護の現状

少子高齢化の人口ピラミッド

年々、要介護状態の人数は増加。2000年(平成12年)の認定者数は218万人だったのに対し、2017年(平成29年)には633万人まで増えているのです。要介護者が増えるということは、当然ながら介護保険サービスに掛かる費用も増えています。

日本の人口構造は少子高齢化であり、生産年齢人口(15~64歳の生産活動をしている人の数)の低下により、この先、介護へあてるお金が集まらなくなることも。また、介護保険料も年々増加しており、2000~2003年(平成12~15年)までの保険料の平均は2,911円でしたが、2018~2020年(平成30年~令和2年)では平均5,869円です。このように、介護を必要としている方の割合は増えており、必要な費用も増加しています。

さらに、介護には人手も必要です。しかし日本は少子高齢化にあるため、介護現場の人手不足、金銭面から、将来における介護に関する不安が囁かれています。

なぜ介護予防が必要なのか

介護予防が必要な理由は様々。前述の通り、要介護者は年々増加していますが財源には限りがあるため、介護保険費を抑えることが必要です。また、要介護者が増えても、高齢者を支える若い世代は増えていません。介護現場の人手不足を軽減するためにも、高齢者が自立した生活を長く行うことは、非常に大切なことなのです。

なお、医療の発展の影響もあり、平均寿命は増加傾向にあります。しかし、長寿であっても、寝たきりの状態では充実した生活を送るのは難しいでしょう。高齢者の方が、一度要介護状態になってしまうと、そこから抜け出すことは容易なことではありません。そのため、健康寿命を延ばして、充実した生活を行う上で、介護予防は大切な取り組みとされています。

また、最近は老後の生活に不安を抱えている方も少なくありません。老老介護、孤独死、老後破産など、老後が不安になるような言葉もよく耳にするようになりました。このような不安を軽減するためにも、要介護になることを防ぎ、活気のある自立した生活を送ることが必要なのです。

介護予防の現在の取り組み

2006年(平成18年)の介護保険法の改訂によって介護予防が追加され、様々な介護予防事業が行われています。しかし、情報が高齢者にきちんと広がっていない、介護予防活動への参加者が少ないなど、介護予防事業には様々な課題があり、これまで何度も見直しがされてきました。

現在では、高齢者の介護予防と社会参加に向けて、地域で支えていく体制が作られており、「地域支援事業」が実施されています。この地域支援事業とは高齢者が、自身の住み慣れた地域で自立した生活を営めるよう、要介護状態の予防、状態の悪化を遅らせるためのサービスや支援のことです。このように介護予防、介護者に対する支援は、自治体が中心となって行われています。

介護予防のチェックリスト

基本チェックリストは老化の早期発見に役立つ

介護予防のチェックリスト

介護予防を行っていく上で、重要な要素のひとつが老化の早期発見です。老化により、自身の身体や認知機能が低下していることに気付くことができないと、要介護状態を防止することはできません。適切な環境調整、予防を行うことで老化の発生を防ぐこと、遅らせることは可能です。

これらの原因を回避するためにも、老化のサインをいち早く捉えて対処することは重要と言えるでしょう。しかし、個人の感覚で老化に気づくには限界があります。そこで、「基本チェックリスト」を使用することで、要介護状態になるリスクの高い方を早期に発見することができるのです。

基本チェックリストの内容

基本チェックリストは、以下の25の質問から構成されています。

  • バスや電車にて、一人で外出しているか
  • 日用品の買い物をしているか
  • 預貯金の出し入れをしているか
  • 友人の家を訪ねているか
  • 家族、友人の相談にのっているか
  • 階段を手すり、壁をつたわらずに昇っているか
  • 椅子に座った状態から何もつかまらずに立ち上がっているか
  • 15分位続けて歩いているか
  • この1年間に転んだことがあるか
  • 転倒に対する不安は大きいか
  • 6ヵ月間で2~3kg以上の体重減少があったか
  • 身長(cm)と体重(kg)及びBMI(肥満度)について
  • 半年前に比べて固い物が食べにくくなったか
  • お茶、汁物等でむせることがあるか
  • 口の渇きが気になるか
  • 週に1回以上は外出しているか
  • 昨年と比べて外出の回数が減っているか
  • 周りの人から「いつも同じことを聞く」などのもの忘れがあると言われるか
  • 自分で電話番号を調べて、電話をかけることをしているか
  • 今日が何月何日か分からないときがあるか
  • ここ2週間、毎日の生活に充実感がない
  • ここ2週間、これまで楽しんでやれていたことが楽しめなくなった
  • ここ2週間、以前は楽にできていたことが今はおっくうに感じられる
  • ここ2週間、自分が役に立つ人間だと思えない
  • ここ2週間、わけもなく疲れたような感じがする

介護予防のサービス

介護予防に向けて、具体的にどのような事業が行われているのかも確認していきましょう。介護予防に関係する事業は「予防給付」、「総合事業」、「包括的支援事業」、「任意事業」の4つに分かれて行われています。

予防給付

訪問介護サービス

予防給付とは、要介護認定において要支援の認定を受けた方が対象の事業。これは、要介護状態になることを防ぐことが目的とされ、「介護予防サービス」と「地域密着型介護予防サービス」の2つに分類されているのです。

介護予防サービス

介護予防サービスには、さらに①「訪問型サービス」、②「通所型サービス」、③「短期入所型サービス」の3種類があります。

1訪問型サービス

訪問型サービスには「介護予防訪問リハビリテーション」、「介護予防訪問介護」、「介護予防訪問看護」などがあります。介護予防訪問リハビリテーションでは、リハビリ専門スタッフが、利用者の自宅へ訪問し日常生活の自立と改善に向けてリハビリテーションを実施。介護予防訪問看護では、利用者の健康管理を看護師、保健師が自宅へ訪問して行います。また、介護予防訪問介護では、ホームヘルパーが自宅にて、入浴や家事などの生活支援を実施するのです。

2通所型サービス
通所型サービスには「介護予防通所リハビリテーション」があり、デイケア施設へ利用者が日帰りで通い、機能向上に向けたリハビリテーションなどを実施。なかには、食事や入浴といった生活支援を行うデイケア施設もあります。
3短期入所型のサービス
短期入所型サービスとは、利用者が介護老人福祉施設、介護療養型医療へ短期間入所し、介護や医療ケアを受けることができるものです。

地域密着型介護予防サービス

地域密着型介護予防サービスは、住み慣れた地域で生活を継続できるよう、地域の特徴に合わせて実施されるサービス。地域密着型介護予防サービスにはさらに、①「介護予防認知症対応型通所介護」、②「介護予防小規模多機能型居宅介護」、③「介護予防認知症対応型共同生活介護」の3つがあります。

1介護予防認知症対応型通所介護
介護予防認知症対応型通所介護は、通所型のデイケア施設に通う認知症の方に対して実施される、日常生活の支援、身体機能訓練です。認知症を有する要支援1~2の方が対象であり、認知症の進行の抑制が目的となっています。
2介護予防小規模多機能型居宅介護

介護予防小規模多機能型居宅介護は、高齢者が自立した生活を続けるための援助を提供するサービスです。主な目的は入浴、排せつ、食事などの介助、リハビリテーション訓練を通じて、利用者の身体的及び精神的な機能の維持や回復を図ること。介護予防小規模多機能型居宅介護は、家庭のような温かい環境と地域社会との密接な繋がりを通じて行われます。

このサービスでは、利用者が可能な限り自宅でサポートを受けることを理想としていますが、必要に応じて高齢者施設へ通ったり、高齢者施設にて短期間の宿泊を利用したりすることも可能です。

3介護予防認知症対応型共同生活介護
介護予防認知症対応型共同生活介護は、認知症の方を対象としたグループホーム施設へ入所し、リハビリテーション、入浴及び排泄介助など療養生活を実施するサービス。ここでは地域社会との密接な繋がりも大切にされています。

総合事業

総合事業は地域が主体となって行う支援事業。「介護予防・日常生活支援サービス事業」と「一般事業」の2つに分類されます。

介護予防・日常生活支援サービス事業

介護予防・日常生活支援サービス事業は、要支援1~2の認定を受けた方、前述の基本チェックリストで該当者となった方を対象とするサービス。通所型サービス、訪問型サービス、生活支援サービスが行われ、訪問型サービスでは、ヘルパーが自宅へ訪問して日常生活を支援し、介護予防訪問介護と同じようなサービスを提供します。通所型サービスでは、利用者がデイケア施設へ通うサービスを提供し、介護予防通所介護と同等のサービスが利用可能です。また、生活支援サービスでは、高齢者の栄養状態を管理するための配食サービス、高齢者の見守りなど、市区町村が独自で提供します。

一般介護予防事業

一般介護予防事業は、65歳以上のすべての高齢者が対象。高齢者の介護予防に向けた、身体的なアプローチ、環境作りへの働きかけを実施します。また、地域が主体となるコミュニケーションセンターを作り、地域住民同士の繋がりを深め、生きがいを持って生活を営めることも目的としているのです。

一般介護予防事業で行っている事業は「介護予防把握事業」、「介護予防普及啓発事業」、「地域介護予防活動支援」、「一般介護予防事業評価事業」、「地域リハビリテーション活動支援事業」の5つになります。

介護予防把握事業は、基本チェックリストや、地域で収集した情報等を用いて、支援が必要な方や引きこもり状態の方を把握して、介護予防に繋げる事業。介護予防普及啓発事業では、介護予防に関する情報を広めるために、パンフレットの配布、講演会などを行います。地域介護予防活動支援事業では、地域の高齢者が集まるコミュニケーションセンターにて、介護予防に関する育成や支援を実施。

一般介護予防事業評価事業は、介護保険事業計画で定められた目標の達成状態を確認し、目標達成に向けた計画、数値的な評価を実施します。また、地域リハビリテーション活動支援事業は、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などのリハビリ専門スタッフによる地域へのかかわりを促進し、介護予防の取り組みを強化するための事業です。

包括的支援事業

包括的支援事業では、「地域包括支援センター」の設置・運用を実施。地域包括支援センターは市区町村が運営し、高齢者における介護予防、要介護者に対する介護保険サービスの提供を担います。また、様々な専門職員が配置されており、介護の窓口として相談に対応しているのです。

任意事業

任意事業は、高齢者が要介護状態になることを防ぐために、市区町村独自の発想により行われる事業。「介護給付等費用適正化事業」、「家族介護支援事業」が行われ、介護方法の指導、要介護者の家族支援、介護保険に関する理解を深めるための取り組みが実施されています。

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