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介護保険サービスの種類とは?26種類を一覧表で解説

「介護保険サービス」は、被保険者が加齢に伴う筋力低下や認知機能低下、病気などの影響により、身の回りの動作が安全に行えなくなったときの手助けとなる制度です。日本における公的サービスは、全部で26種類あります。対象者、支援内容は各サービスで違うため、個人の能力、生活背景に合わせて、最適な支援を選択することが重要なのです。「介護保険サービスの種類とは?26種類を一覧表で解説」では、日本の公的介護保険サービスの詳細、要支援の方を受け入れている介護予防サービスなどについて解説。高齢者になっても、自立した生きがいある生活を送りたい方、介護サービスの選択に悩んでいる方におすすめの内容となっています。

在宅介護で利用する「居宅サービス」

自宅での暮らしをサポート

介護保険サービスは大きく分けて「居宅サービス」、「施設サービス」、「地域密着型サービス」の3つに分類されます。

そのうち、居宅サービスは、加齢や病気の後遺症などによって生活に支障が出ていても、自宅での暮らしを続けたい方に向けたサービスです。居宅サービスには、専門職員が在宅に来て行う「訪問サービス」、施設へ通う「通所サービス」、短期間だけ施設で過ごすことができる「短期入所サービス」などがあり、これらのサポートを組み合わせて、高齢者や一緒に過ごす方が安心して生活できる環境を設定するのです。居宅サービスの簡単な概要を一覧表にまとめました。

居宅サービスの一覧
サービスの種類 概要
訪問
サービス
訪問介護 スタッフが家に来て介護を行う。
訪問看護 スタッフが家に来て看護を行う。
訪問入浴 スタッフが家に来て入浴の介助を行う。
訪問リハビリ 住んでいる家におけるリハビリの実施。
通所
サービス
通所介護 施設へ通って介護を受けられる。
通所リハビリ 施設へ通いリハビリを受けられる。
短期入所
サービス
短期入所生活介護 最大連続30日間の短い期間で利用できる施設。
短期入所療養介護 医療的ケア対応の短期入所施設。
その他
サービス
居宅介護支援 ケアマネジャーによるプラン立案など。
福祉用具貸与 福祉用具の貸し出し。
特定福祉用具販売 特定の福祉用具を安く買える。

訪問サービス

訪問サービスは、自宅で過ごしながらも受けられる支援のこと。専門スタッフが決められた日に家を訪問し、様々な支援を行います。最大の利点は、要介護者が外に出たり、家族が送迎をしたりする必要がないこと。集団活動や環境の変化が苦手で、通いのサービスは合わないといった方に向いているサービスです。訪問サービスには、①「訪問介護」、②「訪問入浴」、③「訪問看護」、④「訪問リハビリ」といった種類があり、本人や家族の希望に合わせてサービスを依頼します。

1訪問介護(ホームヘルプ)

訪問介護は、職員が自宅に出向き、介護を行うサービス。内容は大きく分けて、「身体介護」と「生活援助」の2つがあります。

身体介護とは、食事の摂取や入浴、清拭、トイレなど、身の回りのサポートのことです。これに対し、生活援助は、食事の準備、部屋の片付け、洗濯、ゴミ出しなど、「生活関連活動」と呼ばれる家事動作などの支援になります。家族が仕事などで忙しく独居(どっきょ:ひとりでの暮らし)の時間が長い方、元々一人暮らしをしており家事などを充分にできない方が対象。定期的に人が家に来てくれることで、安否確認にも繋がります。

2訪問入浴

訪問入浴は、看護職員1名以上を含めた3名以上のスタッフが家に訪れ、入浴の手伝いをするサービス。入浴は日常的に行う動作の中でも、特に難易度の高い動作です。そのため、家族の力だけで入浴をするのは困難という事例は少なくありません。しかし、専門スタッフに協力をしてもらうことで、入浴が可能になるのです。具体的には、専用の浴槽を持ち込み、それを使用して入浴を行います。寝たきりや歩けない人でも、この方法であれば入浴が可能。身体の清潔感を保つことや、感染リスクの軽減に繋がります。

3訪問看護

訪問看護は、看護師が自宅にきて、健康管理を行うサービス。介護は生活の手助けを意味しますが、看護は治療や療養、健康の手助けを意味します。具体的には、血圧や体温、酸素飽和度などのバイタルサインのチェック、服薬状況の確認、褥瘡(じょくそう:床ずれのこと)や栄養失調などの二次的障害のケアを実施。家族や本人の健康管理だけでは不十分だと主治医が判断したときに、訪問看護が選択されます。

4訪問リハビリ

訪問リハビリは、リハビリの専門スタッフが自宅に来て、訓練を行うサービス。訪問するスタッフは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の3職種。理学療法士は、主に歩行や立ち座りなどの基本的な動作の練習を行います。作業療法士は、トイレや着替えといった生活の訓練が主体です。言語聴覚士は、言語障害や嚥下(えんげ:飲み込み)機能障害、注意力や思考力の低下といった高次脳機能障害の改善に向けた訓練を行います。

訪問リハビリの場合、施設や病院で行うリハビリとは違い、実際に住んでいる場所で実動作の訓練をできるということが大きな特徴。その人の生活に必要な動作にピンポイントで焦点を当ててリハビリをすることができるのです。

通所サービス

スタッフが自宅へ来てくれる訪問サービスに対し、通所サービスは利用者が施設に出向き、必要な支援を受けます。通いのサービスを使うことで、外出の機会になったり、同世代の方とコミュニケーションを取る機会になったりと、様々な魅力があるのです。外出やコミュニケーションの機会が健康の維持に繋がることも。家にひとりでいる時間を削減できるため、独居の時間が不安な方にも役立つサービスとなっているのです。通所サービスには、①「通所介護(デイサービス)」、②「通所リハビリ(デイケア)」があります。

1通所介護(デイサービス)

通所介護(デイサービス)は、施設に通い、食事やトイレ、入浴などの手助けを受けることができるサービス。リハビリやレクリエーションなどを行っている場所もあります。家族が仕事の間、ひとりで過ごす時間を減らすために利用したり、入浴を済ませるために利用したり、目的は個人によって様々。利用時間や支援の内容によって値段も違います。他者交流が好きで通所介護(デイサービス)に行くことを楽しみにしている方におすすめです。

2通所リハビリ(デイケア)

通所リハビリ(デイケア)は、利用者が施設に行き、リハビリを受けるサービス。訪問リハビリ同様、理学療法士や作業療法士などの専門職が訓練を実施します。通所リハビリ(デイケア)では、生活の自立や機能維持を目的とした個別訓練を受けることが可能です。その他にも、筋力訓練やバランス訓練、日常生活動作訓練、認知機能訓練など、ケアプランをもとに訓練を行います。個別リハビリ以外の時間は、マシーンを使った筋力訓練など、自主練を行える施設も多い傾向です。

短期入所サービス

短期入所サービスは、短期的に施設に入所できるサービス。一定期間だけ施設に入所し、介護や医療ケアを受けることができます。連続で入所できる日数は最大30日まで。冠婚葬祭や仕事など、家族が数日間家を空けてしまうときなどに有用です。短期入所サービスには、①「短期入所生活介護(ショートステイ)」と②「短期入所療養介護」があります。

1短期入所生活介護(ショートステイ)

短期入所生活介護(ショートステイ)は、「特別養護老人ホーム」などの施設に短期間入居することができるサービス。施設で生活しながら、食事の摂取、排泄処理、入浴、清拭など、身の回りの支援を受けることができるのです。施設によっては、リハビリを施行しているところも存在。短期入所生活介護(ショートステイ)には、要介護者の安全確保、介護をしている家族の負担軽減に繋がるといったメリットがあります。

2短期入所療養介護

短期入所療養介護もショートステイ同様に、一定期間施設を利用できるサービス。大きな特徴としては、医療的な行為にも対応しているという点です。医療行為の必要度が高い人の場合、施設によっては十分な対応ができないことから、受け入れを断られるケースがあります。しかし、短期入所療養介護であれば、医療行為に手厚く対応している施設がほとんど。一般のショートステイ同様に、身の回りの介護や生活の支援、リハビリなども提供しているため、利用しやすいと言えます。

その他のサービス

その他のサービスは、主に①「居宅介護支援」、②「福祉用具貸与」、③「特定福祉用具販売」の3つ。これらのサービスは、訪問や通いのサービスなど複合的に活用することで、より安心で安全な生活を送ることができます。

1居宅介護支援

居宅介護支援は、ケアマネジャーが実施する支援のこと。要介護1以上と認定された場合、担当のケアマネジャーが決められます。ケアマネジャーの主な仕事内容は、その人に合った適切なサービスを、円滑に受けられるように手助けすることです。具体的には、介護保険やサービスの手続き、その人の能力、生活背景、家族関係を配慮した上でのケアプラン立案、相談対応などに取り組みます。ケアマネジャーがいることで、地域住民のスムーズな支援に繋がっているのです。

2福祉用具貸与

福祉用具は、身体障害により、日常生活動作に支障が出ている人の動きを補助するための道具。歩行器や介護用ベッド、据え置き式の手すりなどが福祉用具に該当します。介護保険適用者は、福祉用具を低価格で借りることが可能。貸し出し可能な福祉用具は要介護度によって異なり、介護度が高いほど道具の種類も豊富になります。

立ち座りや歩くことが困難だった方が自立できたり、介護者の負担を減らしたりすることができるため、とても便利な道具。福祉用具は、工事を必要とせず、手軽に準備ができることが特徴です。

要支援1~2の方が借りられる福祉用具
福祉用具名 概要
手すり 工事での取り付けは対象外。据え置き式の物が対象。
スロープ 段差解消を目的とした道具。住宅改修をして作る物は該当しない。
歩行器 車輪付きの歩行器、ピックアップ歩行器(4点足の歩行器)など。
多点杖、松葉杖、ロフストランド杖(肘の下にカフの付いた杖)、プラットホーム杖(前腕支持型の杖)、カナディアン杖(肘の上にカフの付いた杖)のみ。一般的なT字杖は対象外。
自動排泄処理装置 排泄物を自動で処理する機器。排便機能もある装置は、要介護度4・5からレンタル可能。
要介護2~5の方が借りられる福祉用具
福祉用具名 概要
要支援1~2の人も
借りられる用具
手すり、スロープ、歩行器、杖、自動排泄処理装置。
車椅子と付属品 標準型の自走式・介助型の車椅子、電動車椅子。附属品は座面クッションや電動補助装置などがレンタル可能。
特殊寝台と付属品 サイドに柵が付いている、もしくは装着可能で、ギャッジアップ(頭部挙上)や下肢の挙上、ベッドの高さ調整ができる物。マットレスなどの特殊寝台と一緒に使用される物も該当。
床ずれ防止用具 エアマットレスなどの体圧分散の機能を有するマットレス。
体位変換器 体位変換の補助をする道具のみ。体位保持のみの効果の物は該当しない。
徘徊感知機器 認知症を患った人の徘徊を防止する装置。センサー機能により、一緒に住んでいる人が気付くことができる。
移動用リフト 自力での移動ができない人の、車椅子とベッド間の移動などを補助する道具。要介護者の体を吊り上げることで乗り移りを可能にする。
3特定福祉用具販売

特定福祉用具販売は、福祉用具を購入するための制度。レンタル同様、介護保険の範囲であれば、本人の負担額を削減することができます。福祉用具貸与でレンタルできない物が購入の対象。入浴やトイレなど、使いまわすには衛生面が懸念される福祉用具は、貸し出し対象外となっている傾向にあるため、購入する必要があるのです。具体的には以下の用品が該当します。

購入可能な特定福祉用具
福祉用具名 概要
トイレの
腰掛け便座
和式トイレの上に被せて洋式同様に使用できるようにする物。便器の座面の高さを上げる補高便座など。
排泄予測支援機器 膀胱内にどのくらい畜尿(ちくにょう)されているのか超音波で知らせる機械。排尿のタイミングも知らせてくれる。
自動排泄処理装置 排泄物が自動で処理される装置。この装置の交換可能な部分のみ。
簡易的な浴槽 工事を必要としない物に限る。空気式や折りたたみの物で、移動も簡単に行える物。
入浴の補助具 座面が比較的高く、背もたれや肘掛などが付いたシャワーチェア、浴槽の中からの立ち上がりを楽にするための浴槽台、簡易的に取り付けられる手すりなど。
移動用リフト つり具部分のみ。

施設に入居して利用する「施設サービス」

施設サービスとは

施設サービスは、要介護1以上の方が施設に入って受けることのできるサービスです。訪問や通いのサービスをフル活用しても、自宅での生活が難しい場合があります。家族の支援や居宅サービスだけではどうしても安全な生活を確保できないときなどに、施設サービスの利用が検討されるのです。

施設サービスの簡単な概要を一覧表にまとめました。

施設一覧
施設名 概要
介護老人福祉施設
(特別養護老人ホーム)
・要介護3以上の方が入所可。
・身の回りの支援などを実施。
介護老人保健施設(老健) ・要介護1から入所可。
・在宅復帰を目的とした施設。
介護療養型施設 ・療養が目的の施設。
・2024年(令和6年)に完全に廃止。
介護医療院 医療ケアや介護だけでなく生活支援も提供する施設。
特定施設入居者生活介護 都道府県に指定された4種の施設。

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)

介護老人福祉施設は特別養護老人ホームのことです。特別養護老人ホームは略して「特養」と呼ばれることもあります。入居条件は、要介護3以上であること。比較的介助の量が多い方が対象です。例外として、以下のような事情がある方は、要介護1~2でも対象になることがあります。

  • 認知症や知的障害により生活に支障が出ている
  • 家庭環境、家族との関係性が良くないなど

特別養護老人ホームの目的は、生活を支援すること。そのため、多くの施設で、看取り(みとり:最期を迎えること)サービスにも対応もしています。その他、特別養護老人ホームの特徴は、以下の通りです。

  • 低価格で利用できる
  • 24時間体制で介護を受けることができる
  • 長期で入所可

特別養護老人ホームは重度の介助を要する方が対象となっており、丸1日サポートを提供。施設の費用は低額であるため、金銭的な事情から特別養護老人ホームの入所を希望する方も少なくありません。これらのことから、特別養護老人ホームは、介助量が多い方、看取りを希望する方、長期で利用したい方、金銭的に安く施設を利用したい方に向いていると施設と言えます。

ただし、特別養護老人ホームの主な目的は、生活のサポートと介護になるため、個別リハビリを行っていない施設も多数存在。また、特別養護老人ホームは医師や看護師の配置人数が他の施設に比べて乏しい傾向にあり、高度な医療行為には対応していない場合もあります。そのため、積極的な個別リハビリを希望する方、医療行為が必要な方は、入所希望を出しても断られてしまうことも、注意が必要です。

介護老人保健施設(老健)

介護老人保健施設は「老健」とも呼ばれ、要介護1以上の認定を入居条件としている施設のこと。介護老人保健施設の目的は、入所者を在宅復帰させることです。病気や怪我によって入院していた方の治療が落ち着いたのち、家に帰るためのリハビリなどを行います。介護老人保健施設の特徴は以下の通りです。

  • 在宅復帰に向けたリハビリの実施
  • 特養に比べ、医療的支援の体制が整っている
  • 医師や看護師の配置が充実している

介護老人保健施設は、在宅復帰が主な目的となっているため、施設の中では積極的にリハビリを実施。さらに、常勤の医師がいたり、看護師の配置人数が多かったりと、医療的な支援も比較的手厚い傾向にあります。在宅復帰や機能向上に向けたリハビリが主となっているため、特別養護老人ホームのように長期的な利用や、看取りを考えている人には向いていません。

介護療養型医療施設

介護療養型医療施設は、要介護1以上の方を対象とした施設。施設としての位置付けは、医療機関となります。病院での治療を受け病状が安定し、急性期(きゅうせいき:発症して間もない病状が安定していない時期)を脱したあとも、長期的な療養が必要な方を対象としているのです。介護療養型医療施設では、介護を受けることもできますが、サポートの中心は医療的支援になります。介護療養型医療施設の特徴は以下の通りです。

  • 医師や看護師の配置基準が高い
  • 手厚い医療行為
  • リハビリも充実

介護療養型医療施設は、医師や看護師、薬剤師など、専門スタッフの配置基準が高いため、様々な医療行為に対応。また、リハビリも充実している傾向にあり、病状だけでなく、身体機能や日常生活動作能力の維持、向上を図りたい方にも向いていると言えます。

医療行為の必要度が高く、入所可能な施設がなかなか決まらないという方も少なくありません。介護療養型医療施設はそのような方でも入所対応しており、入居希望者が多い傾向にあります。そのため、空きが少なく入居者様の退所待ちになるなど、入居難易度がやや高め。全身状態が安定し、医療的な支援の必要性がなくなった場合、退所をすすめられることもあるのです。

なお、介護療養型医療施設は、2024年(令和6年)3月に廃止が決定されています。それ以降は「介護医療院」が役割を担う形になるため、介護療養型医療施設と似たような施設を探している方は、介護医療院を調べましょう。

介護医療院

介護医療院は、要介護1以上の方を対象とした施設です。介助量が多い方、医療的な支援の必要度が高い方が入所しています。介護医療院は、介護療養型医療施設の転換先として設立された施設であるため、医療行為も手厚い傾向です。施設としての特徴には以下のようなものがあります。

  • 医師が昼夜常駐している
  • 手厚い医療支援
  • 長期利用や看取りにも対応

介護療養型医療施設のサービスは医療行為と介護がメインでしたが、介護医療院ではこれらの支援に加えて、生活支援も実施。生活支援とは、ただ世話をするだけの介護ではなく、要介護者の気持ちや考えを尊重し、できる限り自立した生活を実現するための支援です。入居者様の尊厳を守ることや自立支援を理念としており、身の回りの世話以外にも、その人の生活に視点を向けて、残りの人生を支えていこうという体制となっています。

また、介護医療院は地域に根付いた場所となることも目的としており、ボランティアなどの地域交流にも力を入れているのです。

特定施設入居者生活介護

特定施設入居者生活介護は、特定施設に入居している要介護者を対象に行われる、日常生活上の世話、機能訓練、療養上の世話のこと。この特定施設とは、地方公共団体から定められた施設で、人員や設備、運営の基準をクリアしていることが指定条件です。人員基準や設備基準を満たしていることもあり、バリアフリーや高品質な介護体制など、より高齢者が過ごしやすい環境となっています。特定施設に該当する施設は以下通りです。

  • 介護付き有料老人ホーム
  • 養護老人ホーム
  • ケアハウス(一部のみ)
  • サービス付き高齢者住宅(一部のみ)

場所によっては、施設内スタッフではなく、外部事業所に介護サービスを依頼することもあります。費用は介護度に応じて一定の価格となるため、介護の必要性が低い方の場合、自宅でサービスを活用して暮らすよりも割高になってしまう可能性があるため、注意が必要です。

地域密着型サービス

地域密着型サービスとは、高齢者がこれまで生きてきた思い入れのある地区で、自立した暮らしをできる限り長く送れることをねらいとしたサービス。市区町村が運営の核となっています。また、各サービスの最大人数が少なめに設定されているため、その地区で暮らす人々の繋がりを構築しやすいという魅力があります。地域密着型サービスの簡単な概要を一覧表にまとめました。

地域密着型のサービス一覧
サービスの種類 概要
訪問
サービス
夜間対応型訪問介護 深夜帯や朝方にも対応可能な訪問。
定期巡回・随時対応型
訪問介護看護
定期的に家を回り、予期せぬトラブルにも対処。
通所
サービス
地域密着型通所介護 最大人数が少なめに設定されたデイサービス。
療養通所介護 医療的行為にも対処できる通所施設。
認知症対応型通所介護 認知症患者にも応じている通所施設。
施設
サービス
認知症対応型共同生活介護 認知症を患った方が共に暮らす施設。
地域密着型介護老人福祉施設
入所者生活介護
最大人数が少なめに設定された施設。
地域密着型
特定施設入居者生活介護
最大人数が少なめに設定された特定施設。
複合
サービス
小規模多機能型居宅介護 訪問、通い、宿泊、介護のすべてにおいて単一の事業所で対応している。
看護小規模多機能型居宅介護 訪問看護も提供している小規模多機能型居宅介護。

地域密着型訪問サービス

地域密着型訪問サービスでは、専門従事者が自宅に出向いてサポートを提供。昼間だけでなく、夜中や緊急時にも応じているのが魅力です。サービスの種類には、①「夜間対応型訪問介護」、②「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」などがあります。

1夜間対応型訪問介護

夜間対応型訪問介護は、夜中から朝方の時間帯に、自宅に出向いてサポートを実施。午後18時~午前8時までの間で、専門の従事者が自宅を訪問します。夜間対応型訪問介護では、スタッフが定期的に家を回っていますが、それだけでなくトラブルが生じたときの緊急時にも応じているのが特色です。具体的には、夜中から朝方にかけての安全確認、オムツの処理、怪我や体調不良時の対処など。昼間だけでなく、夜中にもトラブルが生じる可能性があるため、自立度が低い方にとって安心できるサポートです。

2定期巡回・随時対応型訪問介護看護
地域密着型サービスとは

定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、決まった時間での訪問と、そのつど支援する場合のどちらにも応じています。

定期巡回は、その日に複数回、介護職員が自宅に訪れてくれるサービス。事前にプランを立ててサービスを行います。一人暮らしの方や認知機能が低下している方の安全確認に繋がるのがメリット。また、病気や体調不良の早期発見にも繋がることがあります。

随時対応型は、家族や当事者の相談を24時間いつでも受け付けている支援体制です。介護職員がいつでも話を聞いてくれるため、トラブルや悩みの解決に期待ができます。もし、急を要する状態だと判定されれば、介護職員が自宅に出向いて対処してくれることも。このように、丸1日いつでも頼れるのが魅力です。

地域の訪問支援をうまく活用することで、これまで生きてきた思い入れのある地区での安心した暮らしの実現が可能になります。

地域密着型通所サービス

地域密着型通所サービスは、規模が小さいことで、いつも同じ介護職員からサポートを受けられたり、地域で暮らす人とのかかわりが深くなったり、交友関係を構築しやすいことがメリットです。サービスの種類には、①「地域密着型通所介護」、②「療養通所介護」、③「認知症対応型通所介護」があります。

1地域密着型通所介護

地域密着型通所介護は、食事や入浴、トイレの介助、身体や口腔嚥下機能のリハビリ、レクリエーションを楽しむことができるサービス。地区の交流会やイベントへの参加にも力を入れています。

地域密着型通所介護の最大人数は18人で設定。人数が少なめに構成されているため、介護職員が利用者のことをしっかりと把握でき、個々に合わせた柔軟なサポートを行うことができます。落ち着いた雰囲気、居心地の良い場所を求めている方におすすめです。

2療養通所介護

療養通所介護は、デイサービスの位置付けとなっています。他のサービスとの違いは、医療的行為を要する方や介助量の重い方を受け入れている点です。具体的には、神経難病や脳血管疾患により重度の介助を要する方、進行した認知症状により常時の見守りや重度介助を要する方が療養通所介護の対象となっています。

療養通所介護では、食事、トイレ、着替え、入浴などの日常的な動作の手伝い、健康サポートや医療行為を実施。食事が困難で、経管栄養により栄養摂取している方にも対応が可能です。医療行為の必要性、介助量の重さから、他の通所施設では対処困難なときに、療養通所介護が選択肢のひとつになります。

3認知症対応型通所介護

認知症対応型通所介護は、生活支援、リハビリ、レクリエーションを提供する通所施設です。認知症対応型通所介護の最大の特色は、認知症が発症している方のみを受け入れていること。通常の通所施設では、認知症の方に応じていない場合がありますが、認知症対応型通所介護なら安心して利用することが可能です。

認知症の方とかかわる上では、様々な面に配慮する必要があり、誤ったかかわり方は、自尊心を傷付け、症状を進行させてしまう可能性があります。しかし、認知症対応型通所介護では、認知症の方とのかかわりに慣れた介護職員が、高品質なサポートをしてくれるのも大きな魅力です。施設の最大人数は12人に設定されており、人を覚えるのが苦手な方、刺激がたくさんある状況が苦手な方でも過ごしやすい通所施設になっています。

地域密着型施設サービス

地域密着型施設サービスは、施設に入所してサポートを受ける点は施設サービスと変わりありません。明確な違いとしては、最大人数が少なめに設定されているところです。サービスの種類には、①「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」、②「地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護」、③「地域密着型特定施設入居者生活介護」があります。

1認知症対応型共同生活介護(グループホーム)

認知症対応型共同生活介護(グループホーム)は、認知症の方だけを受け入れる施設。その地区に住む認知症を患った方が、介護職員のサポートのもとで共同生活を送ります。

施設の定員は、1ユニットに5~9人の構成。新しい物事を覚えることや刺激の多すぎる状況が不得意な傾向にある認知症の方でも、暮らしやすい環境となっています。認知症患者とのかかわりにおいて、経験が豊富な介護職員がサポートをしてくれるため、本人の過ごしやすさ、症状進行の遅延にも期待ができるのです。規模が小さく、見慣れた介護職員からサポートを受けられるという点も、安心感に繋がります。

認知症対応型共同生活介護では、住んでいる人達が介護職員のサポートのもと、家事にかかわるのも特色のひとつ。役割があることで、自尊心の維持や向上に期待ができるだけではなく、暮らしをより楽しむことができます。地区の交流に力を入れている施設もあり、地域への愛着が深い方におすすめです。

2地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護

地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護は、特別養護老人ホームに似ている施設。生活の自立度が低い、重度介助者を受け入れています。食事、入浴、トイレの支援、療養を目的とした施設で、利用できる最大人数は29人。なお、一般的な特別養護老人ホームは29人以上受け入れていることも多いため、定員数が特別養護老人ホームと異なる点と言えます。

3地域密着型特定施設入居者生活介護

地域密着型特定施設入居者生活介護は、地方公共団体に定められた、4種類の施設のことです。

  • 介護付き有料老人ホーム
  • 養護老人ホーム
  • ケアハウス
  • サービス付き高齢者住宅

これらの施設は自治体に定められており、最大29人という規模で運用されています。自立度を保ちながら安全な暮らしを送りたい方は、こちらの利用を検討することもおすすめです。

訪問・通い・宿泊の組み合わせサービス

訪問・通い・宿泊の組み合わせサービスは、介護職員が自宅に来てくれる訪問支援、利用者が通所施設に出向くことでサポートを受けられる通所の支援、施設に入所する宿泊の支援、という3つの支援を総合的に使える複合サービスです。

サービスの種類には、①「小規模多機能型居宅介護」、②「看護小規模多機能型居宅介護」があります。

1小規模多機能型居宅介護

小規模多機能型居宅介護は、通所施設でのサポートを主軸としながら、短期間の施設入所や訪問介護にも応じたサービス。訪問・通い・宿泊の3つの支援に対応しており、多機能なサービスと言えます。ひとつの事業所と契約すれば、これら3つのサポートを受けることが可能。そのため、手続きや施設とのやり取りがスムーズに行えるといった魅力があります。

小規模多機能型居宅介護では、同じ事業所の介護職員がサポートをしてくれるため、介護職員自身は利用者の情報を把握しやすく、利用者本人は慣れた人からサポートを受けられるといった点も魅力です。人員の変化が苦手な方でも利用しやすい仕組みとなっています。

2看護小規模多機能型居宅介護

看護小規模多機能型居宅介護の支援内容は、小規模多機能型居宅介護とほぼ同じですが、両者の違いとしては、看護小規模多機能型居宅介護では、訪問看護も行っていることです。そのため、健康管理や医療的な支援を必要としている方が向いていると言えます。

要支援の方が利用できる「介護予防サービス」

介護予防の取り組み

介護予防サービスは、地区で暮らす高齢者の介護予防の実現が目的です。

介護予防とは、生活に介助を要する状態を未然に防ぐこと、もしくは介助が必要であっても、さらなる自立度の低下を防ぐことを意味。介護予防を実現することが、高齢者の生き生きとした暮らしや、健康寿命を延ばすこと、「QOL」(Quality of life:生活の質)の向上に繋がるのです。特に、少子高齢化で医療費や介護費用がかさむ日本では、健康寿命を延ばすことが課題にもなっています。

介護予防サービスの対象者は、要支援1~2の方です。地域包括支援センターに配置されている、ケアマネジャーに相談することで、介護予防のプラン立案を行ってくれます。このプランに基づいて、介護予防のサポートが実施されるのです。具体的な介護予防の内容は、身体や口腔嚥下機能のリハビリ、栄養摂取の管理など。実際の事業内容については以下の通りです。

介護予防サービスの事業内容
サービス名 概要 料金形態
介護予防
訪問入浴
自宅に専門介護職員が入浴車で訪問し、入浴のサポートを行う。自宅での入浴が困難な方でも介護職員のサポートで可能になる。 全身浴、部分浴、清拭かによって支払額は変動する。
介護予防
訪問看護
看護師が自宅にきて健康サポートや服薬状況の確認など、療養上のサポートを実施する。 訪問看護ステーション、病院、クリニックなど、どこから来てもらうかによって支払額は変動。
介護予防
訪問リハビリ
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といった専門職が家を訪問し、身体機能や嚥下機能、言語機能の訓練を提供。 リハビリは20分ごとに値段が設定。
介護予防
通所リハビリ
利用者が日帰りで通所施設に行き、食事、入浴のサポート、リハビリを受けることができる。 要支援1、2それぞれで基本料金が設定。その他のサービスの利用ごとに追加料金が発生。オムツなどの日用品、食費は別途で支払いが必要。
介護予防
認知症対応型
通所介護
認知症を患った方を受け入れる通所施設。食事、入浴、着替えなどのサポート、機能訓練などを実施。 利用料金は要介護度と時間ごとに設定。
介護予防
小規模多機能型
居宅介護
訪問、通い、宿泊の支援を複合的に提供。生活の介助、料理やゴミ出し、片付けなどのサポート、リハビリを行っている。 費用はサービスの利用内容によって変動。
介護予防
短期入所生活介護
完全に施設に入所するのではなく、数日~30日間の短期間だけの施設入所に応じている。家族の負担軽減や、介護者が不在になるときの対処として利用。 多床室か個室か、要支援度によって費用は変動。食費や散髪代などは別で支払いが必要。
介護予防
短期入所療養介護
医療的ケアに対応したショートステイ。医療行為のニーズが高い方を受け入れる。 施設の形態、要介護度によって支払額は前後する。
介護予防
特定施設入居者
生活介護
自治体に定められた、介護付き有料老人ホーム、養護老人ホーム、ケアハウス、サービス付き高齢者住宅の利用。 施設によって1日の料金が変動。
介護予防
認知症対応型
共同生活介護
(グループホーム)
少人数のアットホームな空間で、認知症を患った方達が共に暮らしを営む施設。要支援2の方が利用可。家事などに利用者が参加し、役割を得られるのも特徴。 施設環境によって値段は異なる。食費、日用品の代金は個々で負担する。
介護予防
福祉用具貸与
自立度を上げるための福祉用具の貸し出し。据え置き式の手すりや歩行器などをレンタルできる。 レンタルする商品によって変動。
介護予防
特定福祉用具販売
入浴時に使う福祉用具、トイレを行いやすくするための福祉用具、移動用リフトのつり具など、対象の商品を安く購入できる制度。 用具ごとに変動する。

要支援・要介護状態になることを防止する「地域支援事業」

地域支援事業は、介助を要する状態になる前から地区で暮らす高齢者に働きかけ、介護状態になることを防ぐ事業のこと。主な対象者は、自立した暮らしを送っている高齢者です。地域支援事業は、高齢者が介護を要する状態になったとしても、これまで生きてきた地域で、できる限り自立した暮らしを送れるように支援することを目的としています。

地域支援事業は、「介護予防・日常生活総合支援事業(総合事業)」、「包括的支援事業」、「任意事業」の3つの事業で構成。それぞれの特徴を以下の表にまとめました。

地域支援事業の種類
介護予防・日常生活
総合支援事業
(総合事業)
体制や目的

・訪問や通所のサポートを地域が主体となり行い、それぞれの地区の実態に合わせて年配者を支えようという体制。

・住民同士の支え合いや、より効果的なサポートを提供することがねらい。

・対象は要支援1~2、または基本チェックリスト該当者。

介護予防
・生活支援
サービス事業

・要支援者、基本チェックリストの該当者(生活機能の低下が示唆・予測される方)が対象。

・訪問サービス
介護職員が家に訪れ、身体、生活のサポートを行う。

・通いのサービス
通所施設の利用、趣味や運動機会となる集いの場を提供。

・その他のサービス
食事の宅配、安全確認のための見守り、トラブル時の対処など、地区の特性に合わせて独自で実施。

・介護予防マネジメント
介護予防を要する人達を支えるための、プラン立案など。

一般介護予防事業

・65歳以上の方が対象。

・介護予防把握事業
各機関や住民と情報共有し、生活や健康維持にサポートが必要な人達の問題を把握し、早期の予防を図る。

・介護予防普及啓発事業
介護予防の理念を普及させるための、相談会やパンフレット配布など。

・地域介護予防活動支援事業
地域で暮らしている人達が主体となって、趣味活動や運動、他者交流ができるような地域展開、通いの場を作る。

・一般介護予防事業評価事業
具体的な目標値を設定し、事業の効果判定や評価を行い、現状の事業の修正・向上に努める。

・地域リハビリテーション活動支援事業
リハビリの専門セラピストと協働し、地区で暮らす人達の自立支援に働きかける。

包括的支援事業 体制や目的 ・地域包括支援センターを設置し、運営する。早期の介護予防や適切かつ円滑なサービス提供がねらいの事業。
介護予防
ケアマネジメント
事業

・その人の身体・精神機能、生活背景に合わせた適切な介護予防サポートを、個々の選択のもとで受けられるようにする。

・課題分析、目標設定、モニタリング、評価と見直しを行い、ケアマネジメントをする。

総合相談
・支援事業

・様々な機関との繋がりを構築、高齢者の生活状況の把握を行い、相談と支援を行う。

・介護保険範囲のサポートの他、社会資源などを活用した解決方法などの情報提供。

権利擁護事業

・高齢者の生活や財産、尊厳を守るためサポート、契約の手助けなどを行う。

・虐待への対応、支援拒否に対する助言や指導、高齢者を狙った消費者が不利な契約の防止、成年後見人制度活用のアドバイスを実施。

包括的・継続的
マネジメント

・ケアマネジャーのスキルアップやサポートがねらいの事業。

・各機関の連携を構築し、ケアマネジャーが情報交換しやすい環境作り。

・ケアマネジャー同士が情報共有や協力が行いやすい環境を促進させる。

・地域のケアマネジャーのスキルアップに向けた指導、相談窓口の設置。

任意事業 体制や目的 ・地域の状況や特性を考慮した事業の展開。各地域が主軸となって行う。
事業内容 ・事業内容は地区によって多種多様。家族に向けたサポート、見守り、福祉用具や住宅改修に関するサポート、成年後見制度のサポートなど。

まとめ

介護保険制度には、自宅での暮らしを手助けする居宅サービス、思い入れのある地域で生きがいある生活を継続するための地域密着型サービス、施設入所者をサポートする施設サービスがあります。これらに加え、要支援1~2の方が対象の介護予防サービス、現在自立した生活を送っている方を対象とした地域支援事業といった、介護状態を未然に防ぐことを目的としたサービスがあることも覚えておきましょう。個々の身体状況、生活状況、価値観に合わせて、残りの人生を安全かつ楽しく暮らせるサービスの選択が大切。悩んだときは、ケアマネジャーや地域の窓口に相談することをおすすめします。

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