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介護うつとは?初期症状やチェックシート、治し方を解説

「介護うつ」とは、介護を行う方が肉体的・精神的な疲労により、うつ病になってしまうことです。食欲がなくなったり、無気力になったりと、日常生活に支障をきたす症状が現れます。自覚症状がないうちに進行し、気付いたときには悪化してしまっていることも少なくありません。介護うつになってしまうと、要介護者も支援する方がいなくなり、共倒れになってしまうことも。そのため、介護疲れを軽減する方法を知っておくと、介護うつの予防にもつながります。

介護うつとは?

介護うつとは

介護うつとは、介護によるストレスで介護者がうつ病になってしまうこと。在宅介護を行う4人に1人が、抑うつ状態に陥る可能性があると言われ、誰にでも起こりうる症状なのです。

介護うつになってしまうと無気力になる、強い疲労感に襲われるなど、「抑うつ症状」が出現。精神状態が不安定になったり、行動する気力がなくなったりするため、介護を続けることが困難になります。初期であれば、一定期間の休養で寛解(かんかい:病気の症状が消失した状態)する可能性がありますが、重度に悪化してしまうと、生涯その症状と付き合っていかなければいけません。

介護うつにおちいってしまう主な原因として、肉体的負担、精神的負担、経済的負担の3つが挙げられます。要介護者の介助を行う肉体的な負担以外に、「本人の満足する介護ができているのか」、「自分ひとりで介護を行わなければいけない」といった精神的負担が生じるのです。また、在宅介護を行う上では、介護保険サービス費と医療費などが必要。経済的な負担も相まって、介護うつの症状が出てしまうのです。特に女性は年齢を重ねると、ホルモンバランスの変化によって心理的ストレスを感じやすく、うつ症状が出やすいとされています。

介護うつの初期症状

介護うつの初期症状は、以下の通りです。

  • 疲労感や焦燥感
  • 気持ちがひどく落ち込む
  • 食欲がない
  • 夜になっても眠れない

介護うつの前兆として、疲労感や焦燥感、気分の落ち込みなどが出現します。物事に対する興味関心がなくなってしまったり、「いつまで介護が続くのだろう」といった悩みが頭から離れなくなったりするのです。また、食欲不振や寝付けないといった症状が出てきた場合は要注意。栄養や睡眠の不足は、肉体的及び精神的な負担の増加につながり、介護うつの症状を悪化させてしまう可能性があります。

気分の落ち込み、食欲・睡眠不足などの症状が2週間以上続く場合は、心療内科などの医療機関へ早めに受診しましょう。

介護うつになりやすい人の特徴

介護うつになりやすい方とは

介護うつになりやすい人には、以下のような特徴があります。

1責任感が強い方

責任感が強い方は、自分ですべて抱え込んでしまい、精神的な負担が過多になってしまう傾向。介護を長期的に続けていくには、周囲や介護保険サービスを利用して、役割を分担するのが重要とされます。責任感が強すぎる方は、すべてを自分でやらなければいけないという意識が働きすぎて、自分を追い込んでしまうのです。また、自分が体調を崩していても無理をしてしまうので、気付いたときには介護うつとなってしまうことが多いとされています。

2完璧主義な方
完璧主義で手を抜けない方も、高い確率で介護うつに。要介護者の体調の記録を付けるなど熱心な反面、思い通りにいかないことに対して強いストレスを感じてしまうからです。また、介護者に対する要求も強く、理想とのズレにいらだってしまうこともあります。
3社会的交流が少ない方

社会的な交流が少ない方は、介護に関する相談をできる方が身近におらず、ひとりで抱え込んでしまうことがあります。また、要介護者以外の方との交流が少なく、ストレスの発散がしにくい状況を作ってしまい、その結果として介護うつになってしまうのです。特に、定年後で家にいる時間が多く、趣味などで外部との交流がない方は要注意。仕事による収入がないため、経済的な不安を感じやすく、孤立感と相まって過剰なストレスが生じます。日頃から気軽に相談ができるような、外部のコミュニティを持っておくのが重要なのです。

介護うつチェックシート

介護うつの予防には、現在の状況を把握するのが大切。以下のチェックシートを使って、自分の状態を把握してみましょう。

質問項目 回答
1 寝付くのに30分以上かかる日が1週間に3日以上ある はい・
いいえ
2 夜間に何度も目が覚めて、20分以上眠れない はい・
いいえ
3 目標の時間よりも起きるのが早すぎる、
もしくは遅すぎる
はい・
いいえ
4 悲しい気持ちを感じる時間が
1日のほとんどの時間を占めている
はい・
いいえ
5 食欲がわかない、もしくは食べすぎてしまう はい・
いいえ
6 2週間以内で体重が2キロ以上増減した はい・
いいえ
7 物事に集中できず、小さなことすら決断ができない はい・
いいえ
8 自分に自信がなく、他人に迷惑をかけていると感じる はい・
いいえ
9 死んだ方が良いと思ったり、自傷行為をしたりする はい・
いいえ
10 趣味や好きな活動に対する意欲が全くわかない はい・
いいえ
11 日常生活を送るだけで過剰に疲れる、
もしくは生活ができない
はい・
いいえ
12 話したり動いたりする速度が遅くなった気がする はい・
いいえ
13 座っていられなくなり、
歩き回らずにはいられないことがある
はい・
いいえ
「はい」と回答した合計数

チェックシートで6個以上「はい」が付いた方は、介護うつにおちいっている可能性があります。自覚症状がある方は、心療内科など専門的な医療機関を受診すべきです。また、いくつかあてはまる方もこの先、介護うつになる可能性が潜んでいます。ストレス発散や介護において相談できる窓口などを把握して、在宅介護が続けられるようにしましょう。

介護うつを予防するには

介護うつになってしまうと、症状の改善に時間がかかります。療養期間は介護が行えないため、要介護者に負担が生じることも。介護うつにならないためにも対策をしておくのが重要で、具体的な予防方法としては以下の通りです。

介護保険サービスを利用する

介護うつを予防するには、介護保険サービスの利用がおすすめ。身体介助や周辺の世話を手伝ってもらえるので、介護者の負担が軽減可能です。在宅介護で頻繫に利用される介護サービスとしては「訪問介護」、「訪問看護」、「通所介護」があります。

訪問介護はヘルパーとも呼ばれ、おむつ交換や入浴介助から掃除・洗濯の補助まで、本人の周辺介護を支援してくれるサービスです。定期的な利用ができるため、介護者が一緒にいられない場合でも、快適な日常生活が送れます。また、訪問看護は、一般の介護者には難しい医療ケアを自宅にて実施。さらに通所介護は、1日あるいは半日間、要介護者を高齢者施設へ預けられるサービス。介護者は預けている間に買い物、趣味などに時間をあてられます。

このように、長期間の在宅介護を続けていくには、介護者にも無理が生じないように介護保険サービスを活用していくことが重要です。なお、介護保険サービスを利用しても、介護者の負担が過多になってしまう場合は、高齢者施設への入所も検討しましょう。

相談できる相手・環境を見つける

相談できる相手、環境を見つけておくのも、介護うつを予防するのに重要です。介護に関する悩みや不安を抱え込んでしまうと、ストレスの原因となり、介護うつが進行してしまいます。家族や友人、近所の知人など気軽に介護について話せる相手がいると、悩みや不安を抱えにくいのです。また、定期的に相談できる相手がいると、自分の様子を客観的に見てもらえるため、うつ症状が出る前に改善できることも。周囲だけではなく、担当ケアマネジャーにも相談すると、介護うつの改善について対応してくれます。

さらに、地域の自治体などが開催している講習会・研修会に参加すると、同じような境遇の方達との交流が広がるのです。介護の窓口となる、地域包括ケアセンターなどへ相談してみましょう。

完璧を目指さず、息抜きの時間をつくる

介護において完璧を求めると、思わぬことで問題が生じてストレスにつながり、介護うつになる可能性が高まります。在宅介護では、自分ひとりで完璧を目指さず、ときには他の方に任せたり、問題のないところでは手を抜いたりするのが重要です。押さえるべきポイントを理解して、要領良く進めていきましょう。

また、息抜きの時間を設けると、介護うつの予防につながります。息抜きの時間には、運動が良いでしょう。運動は臨床研究においても、うつの予防に効果が高いことが証明されています。時間がない方でも、数分から数十分程度の散歩を定期的に行うのがおすすめです。

介護うつの治療法

介護うつの改善には運動も

介護うつの治療法としては、以下の3つが挙げられます。

1休養

介護うつになってしまった際、最も優先されるのは休養。肉体的、精神的に疲労している状態では、冷静な判断ができず、行動する意欲も生まれません。まずは、介護の現場を離れて休養を取ることです。在宅介護で、介護者が休養するためには、以下のことを活用しましょう。

  • 他の家族などに介護を任せる
  • 介護保険サービスによるショートステイ、レスパイト入院を利用

他の家族などに一定期間介護を任せて、自分の休息時間を確保。1~2日の短い期間ではなく、まとまった期間に介護を任せられる方を選ぶのが重要です。

身近に介護を任せられる方がいない場合は、介護保険サービスの「ショートステイ」、「レスパイト入院」を利用して、高齢者施設や医療機関へ要介護者を短期間だけ預けられます。介護が必要な方はショートステイ、専門的な医療ケアが必要な方はレスパイト入院の利用を推奨。こちらは担当のケアマネジャー、地域包括センターまで相談してみましょう。

2薬物療法

介護うつには「薬物療法」も効果的です。医師から処方される抗うつ薬により、症状の即時的な改善が期待できます。介護うつになってしまう人のなかには、動けなくなってしまったり、何も考えられなくなってしまったりするといった症状もあり、その際には、薬物療法が一番有効なのです。

なお、薬物療法は運動や精神療法など、他の治療法と併せて利用するのがおすすめ。特に運動との併用は、うつ症状の改善が高まります。どのような運動をして良いのか分からない方は、まずは30分程度の散歩から始めてみましょう。

3精神療法

介護うつには「精神療法」も有効で、特に「認知行動療法」がおすすめ。認知行動療法とは、出来事の受け取り方や思考法を変えて、心身にかかるストレスを軽減させる治療法です。うつ病になってしまった方には、以下のような思考・行動の悪循環が見られます。

  • やる気が起きない
  • 必要なことがやれず、先延ばしになる
  • 行動できないことに対して自己嫌悪する
  • さらにやる気が起きなくなる

認知行動療法は、これらの悪循環を断つために思考や行動の改善を行うのです。それによって自己嫌悪に陥ることが少なくなり、症状の改善が可能。認知行動療法について詳細を知りたい方、実際に治療を受けたい方は、心療内科を受診してみましょう。

まとめ

介護うつは、介護者が肉体的疲労、精神的負担からうつ病になってしまう状態です。無気力、食欲不振などの初期症状があり、悪化すると治療に長期間を要します。特に、責任感の強い方や、完璧主義の方が陥りやすいため要注意。

介護うつの予防として、休養を取る、介護保険サービスを利用するなど、疲れを溜めすぎないようにしましょう。介護うつの治療法には、薬物療法や精神療法があります。症状の改善には早めの治療が大切になるため、症状が出始めたら、心療内科など専門的な医療機関を受診すべきです。

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