介護予防教室とは?目的や対象者、内容・プログラムを解説
「介護予防教室」とは、高齢者の健康を維持し、要介護状態になることを防ぐために開催される事業のひとつです。介護予防教室では、高齢者を対象とした体操教室、転倒予防教室をはじめ、栄養、衛生、認知症についての勉強教室などが開催されており、高齢者が健康的に生きていくための知識、運動の機会が得られます。介護予防教室の特徴、主な内容、利用方法について詳しくまとめました。
介護予防教室とは

介護予防教室とは、「一般介護予防事業」で行われているサービスのひとつであり、高齢者が介護を必要とする状態になるのを予防するために行う事業のことです。
介護予防事業には、健康な人が病気、ケガになることを防ぐ「一次予防事業」と、病気、ケガを発症し、状態の悪化や介護度の増加を防ぐための「二次予防事業」があります。このうち、介護予防教室は「一次予防事業」に当てはまり、日常生活を自立、または軽い支援のみで送っている人に対し、介護を必要とする状態にならないよう促すことが目的となっているのです。
介護予防教室は、運動教室や健康についての勉強会、高齢者同士が集うための場所などを提供します。なお、介護予防教室は地域の高齢者に対して提供されるため、市区町村など各地方自治体が企画、開催。その他にもNPO法人が開催するものもあり、いずれも無料か、ほとんど費用がかからずに参加できるのが特徴です。
介護予防教室の目的
介護予防教室は、高齢者の健康維持と、生活習慣病の予防を目的に開催されます。年齢を重ね、老化が進行すると、筋力や内臓など体の様々な機能が低下し、生活習慣病に気を付けなければなりません。なかには、大きな病気、ケガを発症し、健康な生活をしていた人に介護が必要となってしまう場合も。
国内で介護や支援を要する人の割合は増加傾向にあり、介護に対する人的かつ費用的負担が問題となっています。介護予防教室を開催し、高齢者の健康維持に働きかけていくことで、要支援、要介護者の増加を抑えていく必要があるのです。
介護予防教室の対象者
介護予防教室は、地域に住む65歳以上の高齢者が対象となります。要支援・要介護認定の有無は関係なく、高齢者であれば誰でも参加可能。介護を必要としている人ではなく、介護状態となるのを予防することが目的であるため、幅広い人に参加の機会が設けられているのです。ただし、教室の内容によっては参加できない場合もあります。なお、65歳以下の人でも、ボランティアとして参加できることもあるため、年齢を満たしていなくても参加したいという場合は、相談しましょう。
介護予防教室の効果
介護予防教室に行くことによって、高齢者の健康維持には様々な効果があります。例えば、運動教室では、筋力、心肺機能を維持し、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病を予防することが期待。他にも、高齢者の食と栄養についての勉強、入れ歯、歯周病についての講習会などがあり、栄養学、衛生面についての知識を得ることができます。
また、介護予防教室には地域に住む多くの高齢者が参加。多くの人との交流を持つことで、社会性やコミュニケーション能力を保つことが可能です。人とのコミュニケーションを取ることは、認知機能の維持にも繋がります。このように、介護予防教室へ参加することで、高齢者の身体的・精神的健康を保つことが期待できるのです。
介護予防教室の内容・プログラム
介護予防教室では、様々な講座、プログラムが行われています。ここでは、主な健康維持プログラムの一部について紹介しましょう。
運動機能向上教室

運動機能向上教室は、高齢者の身体機能を維持するための体操教室、筋力トレーニング方法を指導する教室を指します。講師、指導員が方法を指示し、様々な体操、トレーニング方法を集団で実施。
運動機能向上教室には、地域で活躍する理学療法士、機能訓練士が講師として参加することもあり、体づくりについての指導を受けることができます。
運動機能向上教室は、高齢者を対象とした教室であるため、ハードなトレーニングや訓練は行いません。多くの場合、椅子に座ったまま行える体操、レクリエーションに近い感覚で実施できる運動といった、簡単で楽しく行えるプログラムを用意。また、一度だけでなく、繰り返し参加することで、少しずつ筋力や運動機能が向上していきます。
運動機能向上教室では、健康を維持するために役立つ運動を覚えることができるため、積極的に参加してみましょう。
転倒予防教室
転倒予防教室は、高齢者に多い転倒の危険性を伝え、予防するための運動指導を行う教室です。転倒についての知識、転倒が引き起こす骨折などの危険性、予防するために必要な筋肉や身体機能など、転倒にまつわる様々な勉強を行います。
また、知識だけではなく、歩行能力、バランス機能を維持するための運動も行い、足腰や体幹が衰えるのを予防。具体的には、集団でのウォーキング指導、足の筋肉を正しく動かす方法、立ったまま、座ったままステップを踏む運動など、簡単に行えるバランス能力の訓練を行います。
転倒による骨折は寝たきり、要介護となる原因のひとつです。転倒予防教室に通うことで、転倒の危険性を理解し、予防に役立つ知識と筋力を身に付けましょう。
口腔機能向上教室
口腔機能向上教室は、虫歯、歯周病の予防、歯の健康を保つための講義、噛む力、口腔内の衛生を保つ重要性を学べる教室です。「口腔ケア」、「オーラルフレイル」(口腔機能が衰えること)などが注目されるように、口腔機能は健康維持や衛生に重要とされています。
口腔機能が弱ると栄養を体に取り入れづらくなる他、食べ物を飲み込むときにむせるように。また、誤嚥(ごえん:食べ物や飲み物が食道ではなく気管に入ること)が起こりやすくなる懸念もあります。誤嚥は、肺炎の原因になる上、口腔環境が悪いと感染症を引き起こす場合もあるのです。
口腔機能向上教室では、歯科衛生士、言語聴覚士など、口腔機能に精通した専門家が講師を担当。歯や歯茎の健康に関連する講習会、歯磨き指導、入れ歯の手入れ方法など、口腔ケアにかかわる多くの知識を学ぶことが可能です。
嚥下機能向上教室
嚥下機能向上教室(えんげきのうこうじょうきょうしつ)は、言語聴覚士などが講師になって開催。嚥下とは、食べ物や飲み物を飲み込む動作のことを指し、嚥下機能が衰えると誤嚥を引き起こしやすくなります。誤嚥によって生じる「誤嚥性肺炎」は、寝たきりとなる原因のひとつです。
嚥下機能の衰えや誤嚥を防ぐために、嚥下機能向上教室では、嚥下機能の重要性、嚥下機能を維持するために大切な舌、口の筋力訓練、飲み込みに必要な呼吸の筋力訓練などを学ぶことが可能です。
栄養改善教室
栄養改善教室は、高齢者の栄養について勉強ができる介護予防教室です。高齢者は口腔機能の低下、運動量の減少によって、食欲も低下しやすく、低栄養状態に陥る人が少なくありません。逆に、運動量の減少に対して食事が変わらず、メタボリックシンドロームになる人、食の好みが偏り、高血圧などの生活習慣病を招く人もいます。
生活習慣病を予防するために、栄養改善教室では、高齢者の健康に必要な栄養やバランスの良い食事について学習し、指導を受けることが可能です。また、栄養改善教室は、管理栄養士などの栄養学に秀でた講師が担当し、日常生活で気を付けるべき食生活、健康を維持するために役立つ栄養素と食材の解説などを分かりやすく解説。健康を保つための栄養について分からない人、自分の栄養状態について気になる人は積極的に参加し、健康な食生活の参考にしましょう。
認知症予防教室
認知症予防教室は、高齢者の認知機能が低下し、認知症となることを予防するための教室です。認知症予防教室では、認知症に関する知識の勉強、認知症予防の重要性の解説、脳と体を活性化させる運動、レクリエーションなどを実施。難しい勉強やトレーニングをするわけではなく、分かりやすい講義と簡単な体操などを通して、脳と体に刺激を与えることが可能です。神経衰弱やカルタなどのレクリエーション、歌を使用した記憶力のトレーニングなど、気軽に参加できる内容が多く開催されています。
また、「認知症カフェ」と呼ばれる交流会が開催されることも。介護福祉士、看護師など認知症の介護について相談できる専門家が参加している場合もあり、認知症患者とその家族との交流を深めることもできます。
認知症は、記憶力、行動、精神状態に影響し、要介護認定においても重要視される病気です。もの忘れなど軽い症状であれば生活に支障は出ませんが、進行することで日常生活を送れなくなるだけなく、大きな事故を引き起こしてしまう場合もあります。認知症について知り、予防方法を学ぶことも大切です。
介護予防教室の参加方法
介護予防教室は、市区町村単位で開催しているため、申込みも地域の自治体ごとに行うのが一般的です。地域に住む65歳以上の人であれば、要支援・要介護認定されていなくても、参加可能となっています。ここでは、介護予防教室への参加方法と料金について解説しましょう。
自治体や地域包括支援センターに問い合わせる

介護予防教室は、各自治体や「地域包括支援センター」に申込むことで参加できます。多くの場合、市区町村の福祉課、福祉部で案内。なかには、役場の掲示板に介護予防教室の案内が掲示されていることもあります。福祉課、福祉部に直接声をかけるか、電話で問い合わせを行い、参加したいことを伝えましょう。
また、介護予防教室申込みは、地域包括支援センターで行うこともできます。地域包括支援センターは、地域に住む要支援・要介護者へのサポートを行う他、高齢者に対して介護予防事業の案内なども行っている施設です。要支援・要介護認定者ではない人に対しても、介護と介護予防についての相談を請け負っています。
介護予防教室の料金
介護予防教室は、ほとんどの場合が無料か、費用がかかったとしても1回あたり200~350円程度です。料金は開催される教室の内容によって変わるため、案内のポスターで確認するか、窓口に問い合わせてみることがおすすめ。参加費以外にも、教室で使う資料、道具などの費用がかかる場合があるので、要項などをしっかり確認しましょう。
まとめ
介護予防教室は、一般介護予防事業で行われているサービスのひとつであり、高齢者の健康を保つために開催。無料か、低価格で参加できるだけではなく、各分野の専門家が講師として呼ばれているため、健康について相談したり、指導を受けたりすることが可能です。
介護予防教室に参加するには、市区町村の介護福祉課や地域包括支援センターなど、介護保険を扱う施設に問い合わせます。介護保険を利用していない高齢者でも利用可能ですので、いつまでも健康に過ごしたい人、要支援状態から要介護にならないようにしたい人は、積極的に参加しましょう。