関節炎の症状と予防|原因・治療を併せて解説
「関節炎」(かんせつえん)は、関節に炎症が起きて痛みを感じる病気のことです。原因は様々ですが、そのひとつに加齢があります。高齢者の関節炎は、腰や膝、股関節で起こることが多く、放置すると歩くのが困難になって、「糖尿病」(とうにょうびょう:血糖値が高くなる病気で、インスリンの不足などによって引き起こされる)、「認知症」(にんちしょう:脳の損傷により、認知機能の低下が生じる疾患)、寝たきりを引き起こす可能性があるため、早めに対処することが重要です。関節炎の症状や予防法、対処法を解説します。
関節炎の症状

膝や股関節の関節炎は、関節を覆っている軟骨がすり減ることで起こります。
骨と骨の間でクッションの役割をする「椎間板」(ついかんばん)や、背骨を構成している「腰椎」(ようつい)が変形し、腰の神経の通り道である「腰部脊柱管」(ようぶせきちゅうかん)が狭くなることが原因です。
関節炎を発症すると、慢性的な痛みが発生しますが、その他にも症状は様々。ここでは主な症状について解説します。
変形性膝関節症
変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう/へんけいせいひざかんせつしょう)は、膝の関節部分に発生する病気のひとつです。関節にある軟骨の減少や変形、破壊によって、痛み、関節の可動域の低下、歩行困難などの症状を引き起こします。
主な症状は、痛みと水が溜まること。また、変形性膝関節症は男性よりも女性に多く見られます。初期のうちは、立ち上がるときや歩き始めるときにだけ痛みを感じますが、しばらく休むと痛みが良くなることが変形性膝関節症の特徴です。
しかし、進行するにつれて、痛みがなかなか取れなくなり、正座や階段の上り下りがつらくなる、動かすとゴリゴリ、コツコツなどの音がする、関節が腫れて熱を持つ、水が溜まって曲げると張って重く感じる、といった症状が現れます。末期になると、じっとしていたり、2~3歩動いたりしただけでも膝が痛むようになり、日常生活の動作が不便になることもあるのです。
変形性股関節症
変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)は、股関節の軟骨が減少し、変形や破壊が進行することで、痛みや可動域の低下、歩行障害などの症状が現れる疾患です。変形性股関節症になった場合、初期のうちは、歩き始めや身体を動かし始めるときに、股関節に違和感を覚えたり、軽い痛みを感じたりする程度ですが、進行するにつれて、股関節の可動域が狭くなり、歩きにくくなることも。末期には、動かさなくても痛みを感じ、筋力も落ちて足が細くなる、左右の足の長さが違ってくるなどの症状が見られます。
腰部脊柱管狭窄症
腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)とは、腰椎の脊柱管内にある神経や脊髄が圧迫されることによって、腰や足に痛みやしびれ、歩行困難などの症状が現れる疾患です。
腰部脊柱管狭窄症になると、腰や臀部、足に痛みやしびれを感じたり、足がもつれたりする場合がありますが、変形性膝関節症と同様に、しばらく休むと良くなるのが特徴。しかし、腰部脊柱管狭窄症が進行すると、排尿障害や歩行障害を起こしたり、仰向けで寝ると足がしびれるため、横になって背中を丸めないと眠れなくなったりする場合があります。
関節炎を予防するには
関節炎を予防するためには、日頃から以下のことを意識しましょう。
適度な運動をする

運動不足は筋力の低下を引き起こし、関節周りの筋肉が衰えることで、関節の動きが悪くなったり、痛みを起こしやすくなったりします。そのため、日頃から筋肉を鍛えることが大切です。
20~30分程度のウォーキングや筋力トレーニング、屈伸運動、ストレッチなど適度な運動を心掛けましょう。また、関節の冷えを防ぎ、浮力で関節に負担をかけない温水プールでのトレーニングも効果的です。
ただし、急に動いたり止まったりする動作は、股関節に大きく負担をかけてしまうため、避けなくてはなりません。
肥満を避ける
肥満になると関節に負担をかけ、身体を動かすことがつらくなり、さらに肥満が加速してしまう場合も。食事の量や栄養バランスに気を配り、適切な体重を保ちましょう。
関節の結合部分の組織を作るのに欠かせないアミノ酸や、軟骨を作るのに役立つと言われているグルコサミン・コンドロイチン、骨の材料となるカルシウムなどを意識して摂ると効果的です。
たばこや過度のアルコールの摂取は避ける
たばこは、軟骨の材料となるコラーゲンを作るときに必要なビタミンCを壊してしまいます。また、アルコールは軟骨の弾力性を弱めてしまうため、アルコールの摂りすぎにも注意が必要です。
トイレは洋式、寝るときはベッドを使用する
和式のトイレや布団での寝起きは膝を深く曲げるため、関節に負担がかかります。トイレは洋式、寝るときはベッドがおすすめです。また、座るときも床に座るのは避け、椅子を使用しましょう。
関節炎になったらどうすれば良いか
関節炎になった場合は、以下のような対処法が考えられます。
医師の診断を受ける

関節炎の症状が出た場合は、早めに医師に診てもらうことが大切です。
診断の過程では、まずは医師が患者の症状を詳しく聞き取り、身体検査を行います。症状によっては、血液検査、X線検査、MRI検査などの検査を行うことも。これらの検査により、炎症の程度や病気の種類、進行度合いなどを確認することができます。
診断が確定した場合、医師は適切な治療法を提供。薬物療法や理学療法、手術など、治療方法は病気の種類や症状によって異なります。また、治療の過程で症状が改善されたり、悪化したりすることがあるため、定期的な診察や検査が必要です。
一般的に、関節炎に対する治療は、早期の段階で開始することが重要。適切な治療法を受けることで、症状の進行を遅らせたり、痛みを軽減したりすることができます。
また、治療の過程で自分自身の体調や症状の変化を観察し、医師とのコミュニケーションを密に行うことも大切です。
適切な治療を受ける
痛みの緩和や関節の動きを改善するために、薬物療法や理学療法が行われることがあります。また、関節を温めたり冷やしたりすることで症状の改善が期待。関節炎の一般的な治療法は以下の通りです。
- 1薬物療法
- 薬物療法では、炎症を抑える効果のある非ステロイド性抗炎症薬や、関節の軟骨を保護する効果のあるグルコサミン、コンドロイチンなどのサプリメント、免疫抑制剤などが用いられます。ただし、薬物療法には副作用があるため、医師の指示に従って正しい量や方法で服用するようにしましょう。
- 2理学療法
- 理学療法は、関節を動かすことで筋肉を鍛え、関節の動きを改善することが目的です。ストレッチ、マッサージ、温熱療法、電気療法、水中運動などが用いられます。
- 3手術
- 関節炎が進行し、痛みや機能が著しく低下した際には、手術が必要な場合も。例えば、関節の人工関節置換術や、関節周辺の組織の切除など、関節炎の状態に合わせて行われます。
- 4生活習慣の改善
- 日常生活の中で、関節に負担をかけるような動作を避けることが重要です。また、適度な運動やバランスの取れた食生活も、関節炎の症状を改善する上で大切と言えます。
医師の指示のもと運動を行う
関節炎の場合、関節を動かすことで筋肉を鍛え、関節の柔軟性を保つことが肝心です。早めの診断と適切な治療を行い、運動や食生活にも注意。
ただし、無理な運動は関節に負担をかけてしまうため、必ず、医師や専門家の指導を受けるようにしましょう。
まとめ
高齢になると膝や腰、股関節の痛みを経験することが少なくありません。膝や腰・股関節の痛みは、運動不足による筋力の低下を引き起こし、健康に過ごすことができる期間を短くしてしまう原因にもなるため、早い時期から関節炎の予防をすることが重要です。
もし、関節炎を発症してしまっても、早期に対策すれば進行を遅くすることができるため、関節炎の予防や適切な対処を行いましょう。