骨粗鬆症とは?症状や原因、治療・予防法を解説
「骨粗鬆症」(こつそしょうしょう)は、「骨形成」(こつけいせい)と「骨破壊」(こつはかい)のバランスが乱れることで、骨密度が低下し、骨折しやすくなる病気です。特に高齢者にとっては、骨折が寝たきり状態の原因となることが多い傾向。自立した生活を送るためにも、骨折を避けることは大切です。「骨粗鬆症とは?症状や原因、治療・予防法を解説」では骨粗鬆症の原因や種類、治療方法などを分かりやすく解説。また、骨粗鬆症によって骨折しやすくなる部位や、未然に防ぐための予防法なども紹介します。
骨粗鬆症とは?

骨粗鬆症は、骨の代謝バランスが崩れ、骨破壊の方が骨形成を上回る状態が続き、骨がもろくなる現象です。
骨は「骨芽細胞」(こつがさいぼう:骨組織で骨を新しく生成するための細胞)によって新しい骨が形成される一方で、「破骨細胞」(はこつさいぼう:骨を壊す細胞)によって古い骨が吸収される「新陳代謝」(リモデリング)が繰り返されています。骨の新陳代謝は常に行われており、バランスが保たれることで骨の強度や構造を維持。しかし、新陳代謝のバランスが崩れると骨がもろくなり、骨折のリスクが高まります。
骨粗鬆症の発症
骨粗鬆症は、骨の強度が低下し、骨折しやすくなる状態で、骨密度や骨質の低下によって引き起こされます。生体内の骨は、常に「骨リモデリング」(骨の代謝)と呼ばれるプロセスを経ているのです。
骨リモデリングでは、骨が少しずつ吸収され(骨吸収)、同時に新たな骨が形成(骨形成)。しかし、骨吸収と骨形成のバランスが何かしらの影響によって乱れ、骨吸収の速度が骨形成を上回ってしまうと、骨密度が低下すると考えられています。さらに、骨リモデリングのバランスの乱れ、血糖値異常、酸化ストレス、ビタミンDやビタミンKの不足などが、骨質の低下に関与しているとの報告も。
したがって、骨粗鬆症の予防や治療には、骨リモデリングのバランスを改善することが重要です。適切な栄養摂取、適度な運動、ビタミンやミネラルの補給、生活習慣の改善などが推奨されます。
健康寿命との関係
骨粗鬆症と健康寿命は密接に関連。特に転倒による骨折は、健康寿命を阻害する主要な要因のひとつとなっています。骨粗鬆症になると骨の密度が低下するため、骨がもろくなり、骨折しやすい傾向に。背骨の骨折である「脊椎圧迫骨折」(せきついあっぱくこっせつ)と股関節(太ももの付け根)が骨折する「大腿骨近位部骨折」(だいたいこつきんいぶこっせつ)には、特に注意が必要です。
脊椎圧迫骨折は、体重によって骨が圧迫されて発症。この場合、背中や腰の痛みが生じ、寝たきりになることがあります。脊椎圧迫骨折は、転倒していなくても、勢いよく椅子に座ったり、ベッドに腰掛けたりするだけで発症する場合も。また、転倒などで大腿骨近位部骨折をすると、長い間歩行困難となります。
大腿骨近位部骨折は発症後、1年以内の死亡率が約8~24%という報告もあり、健康寿命にも影響を与える可能性が高い傾向です。脊椎圧迫骨折も大腿骨近位部骨折も受傷してしまうと、足腰の筋力が低下し、寝たきりになるリスクが高まります。
脊椎圧迫骨折は、ベッドから起き上がるときに、腰の痛みが強く出るため、ベッドから起きることに対して消極的になり、足の筋力低下につながるケースも。また、大腿骨近位部骨折では、体重を支えることが難しくなる場合が多く、これまで杖なしで歩いていた方は杖歩行に、杖歩行で生活していた方は、歩行器を使用して歩行を行うようになるケースがほとんどです。
これらの理由から、骨粗鬆症に伴う骨折が健康寿命を短くする要因となることは明らか。骨の健康は、全身的な健康と「生活の質」にかかわる重要な要素です。適切なケアと予防策を実施することで、骨のもろさによるリスクを軽減し、健康的な骨を維持しましょう。
骨粗鬆症の種類

骨粗鬆症には、①「原発性骨粗鬆症」(げんぱつせいこつそしょうしょう)、②「続発性骨粗鬆症」(ぞくはつせいこつそしょうしょう)、③「特発性骨粗鬆症」(とっぱつせいこつそしょうしょう)に分類されます。順番に見ていきましょう。
- 1原発性骨粗鬆症
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「原発性骨粗鬆症」は、閉経や加齢によって発症します。特に女性の閉経後には、女性ホルモンが低下することによって骨強度が低下し、骨粗鬆症を発症。また、加齢に伴いカルシウムの吸収が低下し、ビタミンDの不足も起こりやすくなります。このような要因によって、骨密度が減少するのです。
男性も加齢とともに骨粗鬆症を発症する可能性がありますが、女性ほど急速ではありません。
- 2続発性骨粗鬆症
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「続発性骨粗鬆症」は、他の病気や薬の副作用などによって、骨の健康が損なわれる疾患です。
例えば、「副甲状腺機能亢進症」(ふくこうじょうせんきのうこうしんしょう:副甲状腺が過剰に活動して副甲状腺ホルモンを多量に分泌し、その結果、血中のカルシウム濃度が正常より高くなる病気)、「甲状腺機能亢進症」(こうじょうせんきのうこうしんしょう:甲状腺から甲状腺ホルモンが過剰に分泌される状態)、「クッシング症候群」(体内にコルチゾールというステロイドホルモンが過剰に存在する状態)といった内分泌系の疾患や、「関節リウマチ」(免疫系が体自身の組織を攻撃することによって引き起こされる慢性的な炎症性疾患)などが原因として挙げられます。
また、胃切除後や、生活習慣病である「糖尿病」、「慢性腎臓病」、「慢性閉塞性肺疾患」(まんせいへいそくせいはいしっかん)、「肝疾患」なども、続発性骨粗鬆症を引き起こす傾向です。他にも、長期間のステロイド剤の使用、食事療法などが、続発性骨粗鬆症を引き起こす原因となります。
- 3特発性骨粗鬆症
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「特発性骨粗鬆症」は、加齢や疾患といった明確な原因ではなく、突然発症して急速に進行する骨粗鬆症です。
その代表的な例が、妊娠後の骨粗鬆症。この状態は、妊娠や授乳に伴う一時的な骨粗鬆症であり、産前産後に長引く腰痛の原因が、実は骨がもろくなって起こる「腰椎圧迫骨折」であることがあります。妊娠中や授乳中は胎児にカルシウムを供給するため、母体のカルシウムが減少。特発性骨粗鬆症はその名の通り、原因が不明で突然発症する骨粗鬆症で、予防策や特定の治療法が存在しません。
しかし、妊娠後の骨粗鬆症は、骨密度が一時的に低下するため、適切なカルシウムやビタミンDの摂取、適度な運動、安全な姿勢の保持などが重要です。産前産後の腰痛や骨折の症状が続く場合は、早期の医師の診断と治療を受けましょう。
骨粗鬆症の症状

骨粗鬆症は、自覚症状が少なく、徐々に背中が丸くなったり、身長が縮んだりするため、最初から病気だと気付きにくいことが特徴です。気付いたときには病状がかなり進行していることもあります。
骨粗鬆症によって、高齢者が太ももの付け根を骨折すると、治療に時間がかかり、全身の機能が低下し、寝たきりとなってしまうリスクがあるのです。
骨粗鬆症は、痛みがほとんどないことも特徴のひとつ。骨粗鬆症に気が付かず、弱くなった骨に力がかかると、「圧迫骨折」(骨が上下から圧迫されることで起きる骨折)が起こります。その結果、骨がつぶれたり、変形したりすることで、痛みなどの症状が出現。軽い転倒や尻もちをつく程度でも、圧迫骨折が発生することがあります。圧迫骨折を経験すると激しい痛みを感じることがありますが、痛みを伴わない場合も。特に高齢者は痛みに気付きにくいことが多いため、注意が必要です。
なお、骨粗鬆症になると、骨の弱化による圧迫骨折のリスクが高まります。したがって、骨粗鬆症に対しては早期の予防や治療が重要。定期的な「DEXA」(2種類の異なるX線を照射して骨密度を測定する検査)を使った骨密度測定やバランスの良い食事、適度な運動などを取り入れ、骨の健康を保つことを心掛けましょう。
骨粗鬆症の初期症状
骨粗鬆症の初期症状としては、腰の痛みや可動域の制限、身長が縮むといった症状が現れますが、これらは比較的軽度であるため、気付きにくい場合があります。骨粗鬆症の初期症状では、痛みや腫れなど明確な症状が少なく、骨折して初めて気づくケースも。骨粗鬆症が重症化しないためにも、定期的な骨密度測定を行いましょう。
骨粗鬆症の中期症状
骨粗鬆症の中期症状としては、骨密度が低下し、骨がもろくなるため、徐々に骨が崩れたり折れたりする可能性が高まります。これまでは問題なかった日常生活の動作でも、骨が折れてしまうケースも出現するのです。
骨粗鬆症の後期症状
骨粗鬆症が進行した後期症状では、転倒や軽い負荷でも骨折するリスクが高まります。その結果、突然の強い痛みや持続的な痛みに苦しむことも。
特に高齢者では、股関節の骨折である大腿骨近位部骨折が多く見られ、要介護状態に陥ることもあります。また、どのタイプの骨粗鬆症の人でも、脊椎圧迫骨折が起こる可能性が高い傾向です。
脊椎圧迫骨折では、強い痛みを訴えたり、足の感覚異常を認めたりするケースも。動作時に背中を痛がる場合には、脊椎圧迫骨折を疑い、過剰に動かさないように気を付けましょう。過剰に動かしてしまうと、脊柱の「後壁」と呼ばれる部位を損傷するリスクがあります。
後壁損傷は、圧迫骨折の中でも「破裂骨折」と呼ばれ、脊髄や馬尾神経(ばびしんけい:脊椎にある神経根[しんけいこん])を圧迫することで、脊髄症状である麻痺や感覚障害を発症してしまう可能性も。急激に腰痛を訴えるようになったら、早急に受診しましょう。
骨粗鬆症によって骨折しやすい部位

骨粗鬆症では一般的に痛みはありませんが、転倒などのわずかな力でも骨折しやすくなります。特に、脊椎の圧迫骨折、手首の「橈骨遠位端骨折」(とうこつえんいたんこっせつ)、股関節(太ももの付け根)の大腿骨近位部骨折などが起こりやすい傾向。
それぞれの骨折が発生すると、その部位が痛くて動けなくなることもあります。また、背中や腰の痛みが出たあとには、体が丸くなったり、身長が縮んだりすることも。特に大腿骨近位部の骨折は、歩行が困難になりやすく、後遺症が出ることが多いため、要介護状態につながる危険性が非常に高いのです。
このような骨折は、転倒が主な原因となることがほとんど。さらに大腿骨近位部骨折は、寝たきり状態になる可能性が高く、手術後でも歩行能力が低下するケースが多く見られます。実際、骨折から1年経過しても、約50%の人が骨折前の歩行状態に完全に回復できないという報告も。さらに、骨折後の1年以内の死亡率は8~24%であり、5年間の生存率は悪性腫瘍よりも低いという報告もあるのです。
これらのデータは、大腿骨近位部骨折の重要性とその影響を示しています。骨折後の合併症や身体的な障害は、個人の「生活の質」に大きな影響を与える可能性が高いのです。そのため、骨折後の合併症、回復の難しさ、生存率の低下などについて理解し、骨粗鬆症の予防や適切なケア、リハビリテーションを行いましょう。
また、骨粗鬆症の予防だけでなく、転倒を防ぐことも非常に大切。背中が丸まったり、つま先が上がらなかったりすると、転倒しやすくなるため、体幹や下半身のトレーニングを行い、筋力低下やバランス能力低下などを改善することが、骨粗鬆症に伴う転倒予防には効果的です。
体の重みによる背骨の圧迫骨折は、腰や背中の曲がりの原因となります。圧迫骨折が起こっているにもかかわらず、本人には痛みがない場合が多く、「ただの腰痛だろう」と見過ごすことも。腕の付け根や手首なども、骨粗鬆症によって、骨がもろくなり、転倒するだけでなく、転んだ際に手を突いただけでも、骨折する可能性が高いと言えます。そして、1ヵ所でも骨折が発生すると、周囲の骨にも大きな負担がかかり、連鎖的な骨折を引き起こす可能性があるのです。
転倒転落には常に注意を払い、わずかな変化でも医師の診断を受けるか、定期的に骨密度の検査を受けることを心掛けましょう。骨粗鬆症は、早期の発見と治療が重要です。
骨粗鬆症の原因

骨粗鬆症の原因は、大きく2つのタイプに分けられます。まず、加齢や他の要因により起こる「原発性骨粗鬆症」。骨粗鬆症になるほとんどの患者が、このタイプに分類されます。そして、病気や他の要因により引き起こされる「続発性骨粗鬆症」です。
ここでは、多くの患者が分類される原発性骨粗鬆症の原因について見ていきましょう。
加齢
骨粗鬆症の主な原因は、加齢です。年を取ることで、骨吸収や骨形成が低下し、骨粗鬆症になりやすくなります。一般的に骨密度は20代がピークで、その後は徐々に低下。これまでは、骨折につながることのなかった僅かな外力でも、骨折してしまう可能性があるのです。
また、骨粗鬆症に伴う骨折で有名なのは、「いつの間にか骨折」と呼ばれる脊椎圧迫骨折。骨粗鬆症があると、転んでいなくても、骨折してしまう場合があります。
病気や服用している薬
疾患や服用している薬の影響で、骨粗鬆症となることがあります。関節リウマチや副甲状腺機能亢進症、糖尿病、慢性腎臓病、動脈硬化、慢性閉塞性肺疾患などの疾病は、骨粗鬆症を発症しやすくなる要因です。ステロイドのような薬物の副作用も、骨粗鬆症を引き起こすことがあります。
過度なダイエットや慢性的な運動不足
過度なダイエットや慢性的な運動不足は、骨粗鬆症のリスクを高めます。栄養不足による極端なダイエットや運動不足によって、骨密度が低下。その結果、骨がもろくなり、骨粗鬆症を発症するケースもあります。
閉経
女性においては、閉経を迎えることで「エストロゲン」の分泌が減少し、骨粗鬆症の発症リスクが高まります。エストロゲンには、骨吸収を緩やかにする効果がありますが、閉経後に、エストロゲンが減少することで、骨吸収のスピードが上がり、同じ年齢の男性よりも骨粗鬆症を発症しやすくなるのです。
このような要因を考慮しながら、健康な生活習慣を維持し、骨粗鬆症の予防に努めることが重要。定期的な適切な運動、バランスの取れた食事、過度なダイエットを避けること、飲酒・喫煙の制限などが予防策として有効と言えます。女性は特に閉経後の骨粗鬆症リスクに注意を払い、適切な対策を採ることが必要です。
骨粗鬆症の治療法

骨粗鬆症における治療の目的は、骨密度の低下を抑え、骨折を予防することです。
「薬物治療」が治療の中心となりますが、食事や運動といった長年の習慣も骨粗鬆症の発症に強く関与しています。そのため、薬物治療だけでなく、食事を見直す「食事療法」、有酸素運動などの「運動療法」も同時に行い、骨強度を向上させることが重要です。
薬物療法では、骨の形成を促進する薬や骨吸収を抑制する薬などを使用。これらの薬は、骨の健康をサポートし、骨密度の低下を遅らせる効果があります。食事の見直しでは、カルシウムやビタミンDなどの骨を強化する栄養素を十分に摂取するのが重要です。乳製品や魚、豆類、緑黄色野菜などの食品はカルシウムが多く含まれています。また、ビタミンDは太陽の光を浴びることでも生成されるため、適度な屋外活動もおすすめ。
運動療法では、心拍数が上がる程度の運動が骨密度の増加に効果的。ウォーキングやジョギング、筋力トレーニングなどの運動が、骨の健康を促進します。その他にも、バランス感覚を養うためのバランス運動も重要。運動は骨の成長と強化に関与し、骨密度の低下を防ぐ効果があります。
骨粗鬆症の治療には、薬物治療とともに食事療法や運動療法の総合的なアプローチが肝心です。医師や専門家の指導を受けながら、個々の状況に合った治療プランを立てましょう。
骨粗鬆症の治療薬
骨粗鬆症に対する薬はいくつかあり、それぞれ病気の進行度合いや摂取方法によって選択する薬が変わります。最新の治療薬には、従来の治療薬に比べ、骨密度増加の効果が強力な薬や、患者が治療を途中で辞めてしまわないように、投与間隔や剤型(ざいけい:患者に使用するために加工が施されている薬の形。剤形と表記する場合もある)が考慮された薬など。また、錠剤タイプの薬や自己注射、点滴などがあり、注射、点滴は一回の服用期間が非常に長いのが特徴的です。
しかし、骨粗鬆症の薬は薬価が高い物が多いため、「処方してもらったものの、服用するのを忘れていた」、ということがないように気を付けましょう。薬の効果を安全に発揮するためには、薬の使用方法を正しく守ることが重要です。各薬には、飲むタイミングや注意すべき点がありますので、医師や薬剤師の指示をよく確認しましょう。
なお、骨粗鬆症の治療薬は、①「骨吸収を抑制する薬」、②「骨の形成を促進する薬」、③「その他」の3つに分類されます。順に解説しましょう。
- 1骨吸収を抑制する薬
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骨吸収が緩やかになると、骨形成が追いついて新しい骨が吸収された部位に適切に埋め込まれ、骨密度の高い骨が形成。骨吸収を抑制する薬には、女性ホルモン製剤の「エストロゲン」、「ビスフォスフォネート(BP)製剤」、SERMと呼ばれる「塩酸ラロキシフェン・バゼドキシフェン酢酸塩」、「カルシトニン製剤」、「抗RANKL抗体製剤」(デノスマブ)などがあります。
- 2骨の形成を促進する薬
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骨の形成を促進する薬は、「活性型ビタミンD3誘導体」といったビタミン製剤や、副甲状腺ホルモン「テリパラチド」が該当。これらの薬はカルシウムの腸管吸収を増加させる効果があり、骨形成と骨吸収のバランスを調整します。
- 3その他
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その他の治療薬としては、「カルシウム製剤」などが使用。カルシウムは骨の主要成分であり、骨粗鬆症患者では、食事と薬の摂取量を合わせて1,000mgが推奨されています。また、「タンパク同化ホルモン製剤」や「イプリフラボン」なども処方されることも。
骨粗鬆症の治療薬は多岐に亘りますが、最適な治療法は患者の症状や個別の要素に基づいて決定されます。医師との相談のもと、適切な薬物療法を受けることが重要。服薬とともに食事療法や運動療法を行い、骨の強度を高める取り組みを行いましょう。
食事療法
骨を強くするためには、適切な食事を摂ることも大切。カルシウムやビタミンD、ビタミンKなど、骨の形成に役立つ栄養素を積極的に摂取しましょう。特にカルシウムとビタミンDは同時に摂取することで、腸管でのカルシウム吸収が向上。また、高齢になると食の好みが変わったり、小食になったりすることがあります。そのため、タンパク質の摂取量が不足しがちです。タンパク質は骨密度の低下を助長するため、意識して摂取するようにしましょう。
バランスの取れた食事を規則的に摂ることが、食事療法の基本です。骨を強くするための栄養素や食品の例として、牛乳、乳製品、小魚、干しエビ、小松菜、大豆製品などはカルシウムを豊富に含む食材で知られています。また、ビタミンDを豊富に含む食材には、サケやウナギ、サンマ、カレイ、シイタケ、キクラゲ、イサキ、卵など。さらにビタミンKを豊富に含む食材としては、納豆、ホウレン草、小松菜、ニラ、ブロッコリー、サニーレタス、キャベツなどが挙げられます。
運動療法
骨粗鬆症は骨自体がもろくなってしまう状態で、老化や閉経などが骨粗鬆症の原因とされます。骨粗鬆症で最も心配なのは、何かにぶつかったり転んだりしたときに骨折してしまうことです。転倒では、特に腰椎や大腿骨の骨折が生じやすく、腰痛や寝たきりの原因となってしまいます。
骨粗鬆症の予防には、骨を形成するのに必要なカルシウムを摂取することや、カルシウムを活性化させるためのビタミンDを体内で生成するのに必要な日光浴を行うことが重要です。
さらに、ウォーキングや筋力トレーニングなど、骨に刺激を与える運動もおすすめ。骨は刺激が加わることで、骨の成長を促します。骨粗鬆症を予防するためには、重量のかかる運動であるウォーキングやジョギングが効果的。ダンベルを持ってウォーキングを行う「ダンベルウォーキング」や自身の体重に負荷をかけたウォーキングなど、適度な負荷を加えることもおすすめです。
また、骨は腱を介して筋肉につながっていることから、筋力トレーニングも有効的。ウエイトマシンなどを使って筋力トレーニングを行うと、重りを持ち上げるたびに筋肉が強く収縮し、骨に刺激が伝わります。上半身の筋力トレーニングを行うことで、有酸素運動だけでは鍛えることができない部位も効果的にトレーニングでき、骨も鍛えることができるのです。
運動を行う際は、DEXA法などで骨密度を評価し、トレーニングを行う上での安全性を確保するために、医師の指導を受けることが重要。骨折の経験、関節痛がある場合は、かかりつけ医や整形外科医を受診し、しっかり相談してから運動を始めましょう。
なお、自身で運動を適切に行える自信がない場合には、「運動型健康増進施設」と呼ばれる、医療機関などに併設されている運動施設を利用するのもおすすめです。運動型健康増進施設には、基本的に、健康づくりのための運動を指導する「健康運動指導士」やその他の運動指導者がいるため、適切な運動指導をしてもらえます。
骨折しないための予防策

骨粗鬆症は骨の強度が低下しており、骨折のリスクが高まる状態。特に腰椎や大腿骨の骨折は、腰痛や寝たきりの原因となる可能性が高いと言えます。
骨粗鬆症の予防には、カルシウムの摂取や日光浴に加えて、骨の成長に必要な刺激を与える有酸素運動や、筋力トレーニングなどの無酸素運動を推奨。適度な運動は、骨の健康を促進する効果がありますが、運動を行う際は安全を考慮し、自身の体の状態や医師の指示に従うことが重要です。
ここでは、骨粗鬆症によって骨折しないための予防策について解説します。
骨を強く保つこと
高齢になって骨折しないためには、日頃から骨を強く保つことを心掛けることが肝心です。骨強度を向上させるには、できるだけ早い段階からカルシウム、ビタミンD、タンパク質など、骨の形成に必要な栄養素を積極的に摂取し、カルシウムを効果的に、骨に蓄積させるため、定期的な運動を行う必要があります。さらに、飲酒や喫煙を控えめにし、適度な日光浴も心掛けましょう。
一般的に、骨粗鬆症は年齢が上がるほど発症率が高まる傾向にありますが、それは「歳だから仕方がない」というものではありません。実際に、個人の生活習慣や骨の形成に対する取り組みによって、骨密度や骨の強度には大きな個人差が生じるのです。
カルシウムやビタミンD、ビタミンKの摂取
効率的なカルシウムの骨への沈着や体内への吸収に役立つ栄養素を摂取することは、骨の強度を高めるのに重要です。例えば、牛乳はカルシウム吸収率が非常に高く、効率良くカルシウムを摂取することができます。また、カルシウムの腸管からの吸収を助けるビタミンDも、転倒や骨折の予防に効果的です。ビタミンDは、魚類、卵黄、干ししいたけ、きのこ類に多く含まれています。
日に当たるのも大切な要素。日光に当たることで皮下脂肪の中にあるコレステロールが、紫外線の作用でビタミンDに変化します。冬なら1時間を目安に、夏なら30分程度の日光浴を心掛けましょう。骨折などの理由で外出が難しい場合でも、日に当たる機会をできるだけ作るように工夫する必要があります。
また、ビタミンKはカルシウムの骨への沈着を促進する「オステオカルシン」を活性化させる役割を果たし、骨代謝を調整。納豆や緑黄色野菜などにビタミンKは多く含まれています。特に納豆は、骨に必要な大豆やカルシウムなどの栄養素も含まれているため、骨を健康に保つために積極的に摂取したい食材です。その他のビタミン類、タンパク質、鉄分などの栄養素も、バランス良く摂取しましょう。
加工食品は控えめに
カルシウムの吸収を妨げるリンが多く含まれるスナック菓子やインスタント食品、アルコール、カフェインなどは摂り過ぎないようにしましょう。過剰な飲酒はカルシウムの吸収を妨げるだけではなく、カルシウムの排泄を促してしまいます。コーヒーや緑茶などに含まれるカフェインも、カルシウムの排泄を促進。リンは骨の形成に必要ですが、過剰摂取をすることで、血液中のカルシウムとリンのバランスを保つために骨のカルシウムが放出されてしまう可能性があります。一部の加工食品にリンが多く含まれているので、摂り過ぎには注意が必要です。
以上の注意点を守りながら、効率的なカルシウムの骨への沈着と体内への吸収に役立つ栄養素を摂取することで、骨を強くすることが期待できます。