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母の介護で知っておくべき5つのポイント

病気やケガなどで、ある日突然母親の介護が始まることは少なくありません。急な介護問題に直面すると「母親の介護は誰がやるのか」、「介護費用はどうするのか」と大半の人は戸惑ってしまいます。金銭問題、介護の分担に関する家族間のトラブルだけでなく、介護者の精神的な負担の増大などのリスクを避けるためにも、事前の備えが大切です。この記事では、「母親の介護で知っておくべき5つのポイント」について解説します。

母親の介護が始まる前に確認しておくべきこと

母親の介護が始まる前に、確認しておくべきことは、大きく分けて「介護に関する情報」と「母親自身に関する情報」の2つです。

介護に関する情報

介護において事前確認を

介護に関する情報がなければ、急な介護問題に直面した際、何から始めたら良いのか、どこへ相談したら良いのか分からず困惑してしまいます。

介護に困った際の相談先、介護保険制度、企業における介護休暇制度などは日頃から確認しておきましょう。「まだ母親は元気だから」と考えず、介護に関する予備知識を深めておくことが大切なのです。

母親自身に関する情報

母親の介護に備え、「母親自身に関する情報」も把握しておく必要があります。介護を始める上で、主体となるのは母親自身。

やみくもに家族だけの意見を母親へ押し付けたり、介護職員にすべて任せてしまったりするようでは、母親が求める介護生活とはかけ離れてしまいます。

そのため家族全員が安心して介護を始められるよう、母親に関して事前に確認しておくべき情報は、①「生活習慣」、②「人間関係」、③「経済状況」、④「介護の希望」、⑤「医療・延命の方針」の5つです。

①生活習慣を確認 

母親の生活習慣は、事前に確認しておきたい情報のひとつ。具体的に確認しておきたいのは、以下の通りです。

  • 起床時間、就寝時間(睡眠薬の有無)
  • 食事の内容(好き嫌いの有無など)
  • 日常生活動作(杖、歩行器の有無など)
  • 排泄状況(失禁の有無)
  • 過去の病歴、手術歴
  • 現在の体調(通院歴、内服薬の有無など)
  • アレルギーの有無

母親とコミュニケーションが取れる間に上記の内容を聞き出したり、観察したりしておくことが大切。介護が必要となった際、ケアマネジャーによってケアプランが立案されますが、この際に重要視されるのが母親の生活背景になります。

例えば、「もともと自宅内でも杖で歩いていた」という情報があれば、ケアマネジャーはそれをもとに必要な介護サービスが組み立てやすくなるのです。

そのため日頃から「母は階段を手すりがあれば登れる」、「膝の痛みがあり通院している」、「夜はトイレに不安があり尿取りパットを使用している」など、注意深い観察力が求められます。

②人間関係を確認 

介護に備えて確認しておきたいのは、母親を取り巻く人間関係。押さえておくべき事項は以下の通りになります。

  • 近隣に住む人
  • 自治会の人
  • 趣味、サークル仲間
  • 学生時代、職場の友人
  • 親戚
  • かかりつけ医

母が遠方に住んでいたり、頻繁に連絡を取っていなかったりすると、交友関係を把握するのは困難なケースも少なくありません。また、近所の人、趣味などで交流のある仲間は、母親の介護に協力してくれる可能性があります。こちらも事前に確認しておくと安心です。

③経済状況を確認

母親の介護における備えとして、経済状況を確認しておく必要があります。介護にかかる費用は、親の年金、貯金などの資産から支払うのが基本。

厚生労働省における2022年(令和4年)国民生活基礎調査によると、「介護を要する者[あるいは配偶者]」が介護費用を負担している世帯は全体の約8割で、具体的には以下の通りとされています。

介護費用の負担 割合(%)
介護を要する者(あるいは配偶者)の収入 73.5
年金・恩給の収入 71.7
その他の収入 8.5
介護を要する者(あるいは配偶者)の貯蓄 10.3
介護を要する者(あるいは配偶者)以外の者の収入・貯蓄 7.1

介護期間の長さは、どの程度かかるのか予測できません。そのため、介護者のみが費用を出し続けることは、大きな負担がかかります。家族の間で金銭的トラブルへ発展しないためにも、事前に母親の経済状況を確認しておくことが大切です。

④介護の希望を確認 

母親の介護に備え、大切なのは本人の希望。介護者の意見だけでなく、母親がどのような介護を希望するのか事前に確認しておくことも大切です。

まだ先の話とは考えず、急な病気などで正しい判断ができなくなってしまう前に、母親本人が望む生活を話し合っておきましょう。

介護を受けるにあたり選択肢となるのは、住み慣れた自宅での「居宅介護」、あるいは老人ホームなどの「施設介護」のいずれかです。

居宅介護 

住み慣れた自宅や地域で過ごしたいことから、居宅介護を希望される方は少なくありません。居宅介護は環境の変化が少なく、生活スケジュールが比較的自由に決められるといった利点があります。なお、居宅介護で受けられる主な介護保険サービスは以下の通りです。

  • 訪問介護:入浴・排泄・食事などの身体介護、洗濯・掃除などの生活支援
  • 訪問看護:看護師による療養上の世話、床ずれの処置などの医療行為
  • 通所介護(デイサービス):デイサービスへの通所にて介護を受ける
  • 短期入所生活介護(ショートステイ):施設へ短期間入所して介護を受ける

上記の介護サービスを利用するためには、はじめに介護認定を受けなければなりません。この介護認定によって「要介護度」が決まり、要介護度に応じた介護サービスが利用できるようになります。

施設介護 

施設での介護

自宅で家族に負担をかけながら、生活するのはつらいと考える方にとっては、施設介護が最適な選択肢となるでしょう。

居宅介護に比べて費用は割高になりますが、家族の精神的・肉体的な負担軽減になります。なお、代表的な介護施設は、以下の通りです。

  • 介護付き有料老人ホーム:24時間体制で介護、日中は看護師が常駐
  • 住宅型有料老人ホーム:介護保険制度による介護サービスの利用が可能
  • グループホーム:認知症の高齢者限定の施設
  • 特別養護老人ホーム:利用料が安価な公的施設

⑤医療・延命について方針を確認 

急な病気、ケガなどによって、本人の意思が確認できなくなるリスクはゼロではありません。事前に医療・延命処置についても方針を定めておきましょう。

特に「どこまで医療処置を受けるのか」、「どこまで延命を続けるか」などについては、母親個人の意志を尊重すべきです。

また、延命治療に関する意思表示には、「事前指示書」と呼ばれる書類を作成しておくのも有効な手段。事前指示書は、各自治体や病院などでも入手できます。

まとめ 

母親の介護に備えて、家族間で事前に話し合いの場を設けましょう。兄弟がいる場合、主に介護の中心となるキーパーソンを決め、ひとりだけに負担がかからないような役割分担が重要。

兄弟がいない場合は、親戚などに協力を得られないかも確認しておく必要があります。トラブルに発展しがちな介護費用については、特に家族間でしっかり話し合って共有することが重要です。

母親自身の費用では賄えない場合、公的な制度を利用する方法もあります。安心して介護が行われるよう、何事も事前に備えておくことが大切なのです。

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