母を介護する息子が注意するべき3つのポイント
息子が母を介護する例が、増加傾向にあります。そのため、介護により仕事との両立が困難となり、「介護離職」をすることも多いのです。また、介護を行うにあたって「母の心情が理解できず、何をしたら良いのか分からない」と戸惑うケースでトラブルも起こる事例が多々発生。そこで、母を介護する上で息子が注意するべきポイントを、事前に把握しておくことが重要です。この記事では介護における相談窓口など3つの注意点について解説します。
母を介護するとき息子が気を付けたいポイント
介護はいつ始まるか分かりません。まだ母の介護を行っていない方、すでに介護中の方も、以下の3つの重要ポイントを把握しておくことが大切です。
- 1性差があることを理解する
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息子が母を介護する上で大切なのは、まず男女の性差(ジェンダー)があることを理解しておくことです。介護の場面では、異性に身体のケアを任せることに抵抗を感じる方は少なくありません。
例えば、入浴介助が必要なことに対し「息子に手伝ってもらうなんて恥ずかしい」、「自分の息子に介護してもらうなんて情けない」と考えることが多いのです。
オムツ交換やトイレ介助などの場合でも同様です。こうした性差があることを理解し、母の心情を尊重する必要があります。
- 2自分だけで解決しようとしない
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母の介護を、自分だけで解決しようと頑張りすぎる必要はありません。介護には終わりが見えず、時間と体力を要します。
特に男性は仕事中心の生活を送り、家事に不慣れな場合が大半。そのため、慣れない家事に加え、完璧な介護を求めて頑張りすぎてしまうと、精神的に追い詰められてしまうリスクが増大。
また、介護に力を入れるほど「これだけやってあげているのに」という思いが強くなり、相手への期待、見返りも高まってしまいます。長期に及ぶこともある介護は、自分だけでなく周囲の人にも協力してもらい、負担を減らすことも大切なのです。
- 3仕事との両立が必要な場合は、支援制度・介護保険サービスを活用する
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母の介護を行うためには、時間や体力だけでなく、経済的な負担もかかります。そのため、経済的な基盤を設けておくことが大切です。とは言え、介護離職をする人は少なくありません。
そこで、仕事を続けながら介護を行うために、「両立支援制度」、「介護保険サービス」を活用するのも有効な手段です。なお、育児・介護休業法による両立支援制度において、介護を行う労働者が利用できる制度は以下の通りです。

両立支援制度 | |
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介護休業 | 要介護状態にある対象家族1人につき通算93日まで介護休業を取得できる(上限3回) |
介護休暇 | 要介護状態にある対象家族1人であれば5日まで、2人以上であれば年10日まで、1日単位または半日単位で取得できる |
所定労働時間短縮等の措置 |
事業主は以下いずれかの措置について介護休業とは別に、要介護状態にある対象家族1人につき利用開始から3年間で2回以上の利用が可能な措置を講じなければならない ①短時間勤務制度(短日・隔日勤務を含む) |
所定外労働の制限 | 1回の請求につき1ヵ月以上1年以内の期間で、所定外労働の制限を請求できる(回数制限なし) |
時間外労働の制限 | 1回の請求につき1ヵ月以上1年以内の期間で、1ヵ月に24 時間、1年に150時間を超える時間外労働の制限を請求できる(回数制限なし) |
深夜業の制限 | 1回の請求につき1ヵ月以上6ヵ月以内の期間で、深夜業(午後10時から午前5時までの労働)の制限を請求できる(回数制限なし) |
転勤に対する配慮 | 事業主は就業場所の変更を伴う配置変更を行う場合、その就業場所の変更によって介護が困難になる労働者の状況に配慮しなければならない |
不利益取扱いの禁止 | 事業主は介護休業などの制度の申出や取得を理由として解雇などの不利益取扱いをしてはならない |
介護休業等のハラスメント防止措置 | 事業主は介護休業などの制度の申出や利用に関する言動により、労働者の就業環境が害されることがないよう、労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない |
介護休業給付金 | 雇用保険の被保険者が要介護状態にある家族を介護するために介護休業を取得した場合、一定の要件を満たせば、原則、介護休業開始前賃金の67%が支給される |
また、「介護認定」によって介護が必要とされた場合、要介護度によって以下の介護保険サービスが利用できます。介護保険サービスの活用を検討したものの、良く分からない場合は、住んでいる市区町村の「地域包括支援センター」へ相談してみましょう。母の介護がこれからという方も、事前に地域包括支援センターにて相談しておけば、いざというときに慌てずに済みます。
分類 | 目的 | 介護サービス |
---|---|---|
自宅で受ける 介護サービス |
日常生活の手助け |
訪問介護 訪問入浴介護 |
自宅でのリハビリ、看護、 相談 |
訪問リハビリテーション 訪問看護 居宅療養管理指導 |
|
24時間対応 |
定期巡回 随時対応型訪問介護看護 |
|
施設への通所による 介護サービス |
施設への通所 |
通所介護 通所リハビリテーション(デイケア) |
短期間施設への宿泊 |
短期入所生活介護 短期入所療養介護 |
|
通所・短期間宿泊 |
小規模多機能型居宅介護 看護小規模多様機能型居宅介護 |
|
介護施設 | 生活介護が中心の施設 |
介護老人福祉施設 認知症対応型共同生活介護 |
リハビリが中心の施設 | 介護老人保健施設 | |
医療が中心の施設 | 介護療養型医療施設 | |
生活を支える 介護サービス |
福祉用具を利用したい |
福祉用具貸与 福祉用具購入費の支給 |
自宅を改修したい | 住宅改修費の支給 |
施設介護について
介護が行える場所は、自宅だけではありません。「施設介護」を取り入れることで、仕事との両立した環境が整えられ、介護における負担も減らすことができます。
サービス付き高齢者向け住宅

「サービス付き高齢者向け住宅」(サ高住)は、生活相談や安否確認などのサービスが受けられる高齢者向けの賃貸住宅。
なお、サ高住には、「介護型」と「一般型」と呼ばれる分類があります。しかし正式な分類ではなく、介護型と呼ばれる施設は、「特定入居者生活介護」の認定を受けている施設。
要介護度が高くても入居可能で、施設に常駐している専門知識を有するスタッフから介護サービスを受けることが可能。それ以外の一般型と呼ばれるサ高住の場合、介護サービスが必要になったときは、外部の介護サービス事業者を利用可能です。
サービス付き高齢者向け住宅の概要 | ||
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入居対象 | 自立、要支援、要介護 | |
サービス | 見守りサービス、食事提供、入浴介護など | |
契約形態 | 賃貸 | |
費用 | 入居一時金 | 数万〜数千万円 |
月額利用料 | 平均50,000~400,000円 |
介護付き有料老人ホーム
「介護付き有料老人ホーム」は、介護スタッフが24時間常駐し、身の回りの世話や入浴などの介護保険サービスが受けられる介護施設。概要は以下の通りです。
介護付き有料老人ホームの概要 | ||
---|---|---|
入居対象 | 要支援、要介護 | |
サービス |
24時間介護スタッフが常駐 |
|
契約形態 | 利用権、賃貸、終身建物賃貸借方式 | |
費用 | 入居一時金 | 0〜数千万円 |
月額利用料 | 150,000~400,000円 |
住宅型有料老人ホーム
「住宅型有料老人ホーム」は、医療機関と連携しているため、緊急時の対応や健康管理に対する安心感があります。ただし、介護保険サービスの提供はないため、外部の介護サービス事業者との別途契約が必要です。住宅型有料老人ホームの概要は以下の通りになります。
住宅型有料老人ホームの概要 | ||
---|---|---|
入居対象 | 自立・要支援・要介護 | |
サービス |
健康管理、食事提供 |
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契約形態 | 利用権、賃貸、終身建物賃貸借方式 | |
費用 | 入居一時金 | 0〜数千万円 |
月額利用料 | 100,000~300,000円 |
まとめ
介護が必要な状況は誰にでも起こり得るため、自分の母親がいつ要介護となってもおかしくはありません。いざというときに正しく対処できるように、介護についての理解を深めておくことが大切です。また、無理に自分だけで解決しようとはせず、必要に応じて地域包括支援センターなど、専門家への相談も行いましょう。