捻挫の症状と予防|やってはいけないことを解説
「捻挫」(ねんざ)は、関節を構成する「靭帯」(じんたい:関節を安定させ、骨同士を繋ぐ強靱な繊維性の組織)が過度に伸びたり、破れたりすることで起こる一般的なケガです。特に、足首や手首の捻挫が多く見られます。捻挫の主な症状は、痛み、腫れ、機能の低下、内出血など。症状の重症度によっては、専門家による診断と治療が必要となる場合もあります。「捻挫の症状と予防|やってはいけないことを解説」では、捻挫のしくみや予防法について解説。また、捻挫になってしまったときの対処法について紹介します。
捻挫の症状
そもそも捻挫とは

捻挫とは、関節を捻(ひね)ったり、挫(くじ)いたりすることにより、関節の周辺を傷付けてしまうケガです。
関節には、骨や筋肉の他に靭帯、「腱」(けん:筋肉と骨を繋ぐコラーゲン繊維の組織)、「軟骨」(なんこつ:関節と関節の間にあるクッションのようなやわらかい骨)、「関節液」(かんせつえき:関節内に存在する潤滑液の働きをする液体)など様々な組織が密集しています。
しかし、日常生活やスポーツ、階段の上り下りなどで、足や手首を捻り、外からの不自然な力が加わると、靭帯が引っ張られたり、切れたりなど、関節の組織が損傷し、捻挫につながるのです。
なお、捻挫の主な症状は、痛みや腫れなどですが、その他にも、内出血や熱感が生じる場合があります。
捻挫をするとどうなるの?
捻挫には、その損傷の程度によって大きく3つに分類されます。
- 11度(軽度)
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1度(軽度)の捻挫は、靭帯が伸びている状態です。関節部分の腫れは少なく、押すと痛みを感じるものの、痛みや腫れ自体は軽度。1週間~10日ほど安静にする必要があります。
- 22度(中等度)
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2度(中等度)の捻挫は、靭帯の一部が切れてしまっている状態です。周囲の血管が損傷し、内出血が起きているため、腫れも強く出る傾向があります。出血により、関節部分が変色することもあり、腫れ上がることで激しく痛む場合も。2~3週間ほどの治療期間が必要です。
- 33度(重症)
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3度(重症)の捻挫は、「靭帯断裂」(じんたいだんれつ:靭帯が完全に切れてしまっている状態)を起こし、内出血や炎症により大きく腫れ上がっている状態。
靭帯は関節を支える役割も担っているため、断裂してしまうと関節の動きにぐらつきが出て、歩行や運動に支障をきたしてしまうことが懸念されます。その他、捻挫により靭帯が強く引っ張られることで骨が変形することも。
また、3度(重症)の捻挫は治療期間も長く、場合によっては手術を行うこともあります。
捻挫しやすい場所とは
捻挫は身体にある関節のどこでも起こりうるケガですが、足首や手首、指先などで起こることが大半です。
特に足の捻挫は起こりやすく、歩いているときやスポーツのときなどに起こりやすいと言えます。足を捻挫すると、「外側靭帯」(がいそくじんたい:くるぶしの外側を支えている靭帯)が損傷。足の外側に腫れや痛みが出ます。
また、突き指も捻挫のひとつとされており、スポーツや転倒、歩行時のつまずきなど、日常の様々な動作で起こりうるのも捻挫の特徴です。
捻挫を予防するには
捻挫を起こさないためには、普段から関節をケアしておくと良いでしょう。捻挫のリスクが高いときには、事前の準備も大切です。具体的な予防方法について紹介していきます。
サイズの合った動きやすい靴を履く

階段を踏み外したり、ふとしたときにつまずいてしまったりなど、足の捻挫は多いと言えます。
そのため、普段から足元に気を付け、サイズの合った靴を履くことがおすすめ。
足元が不安な高齢の方は、杖などを使って転倒しないように予防することも大切です。
普段から柔軟を欠かさない
捻挫を防ぐには、普段からバランス力、柔軟性、筋力を保つことが重要。ストレッチやエクササイズなどで関節をやわらかくほぐしておくことで、捻挫の重症化を防ぐ効果が期待されます。
スポーツの前には入念に準備体操やストレッチを行い、運動中に事故が起こらないように、事前準備をしっかりと行いましょう。
サポーターやテーピングを活用
膝や足首、指など捻挫をしやすい部位にあらかじめ、サポーターやテーピングなどで保護したり、安定させたりすることもおすすめです。サポーターやテーピングは関節の可動域を制限してくれるため、関節を守ってくれます。
捻挫をしたらどうすれば良いか
万が一、捻挫をしてしまった際には、どうすれば良いかについてまとめました。
自分でできる対処法について

捻挫をしてしまった場合、すぐに氷のうや濡れタオル、冷却スプレーなどを使って患部を冷やしましょう。 冷やすことで血管が収縮し、炎症や痛みを抑えることができます。
捻挫の程度にかかわらず、むやみに関節を曲げたり、伸ばしたりしないようにしましょう。
安静な状態にして患部を固定、場合によってはテーピングなどを行います。出血によって「うっ血」(うっけつ:血が溜まっている状態)が起こることもありますので、包帯などで軽く圧迫。
また、症状の悪化を防ぐために、捻挫をした関節の心臓よりも上の位置にもっていくのも有効です。
やってはいけないこと
捻挫をした部分は、靭帯などの関節の組織が損傷している可能性があります。そのため、むやみに動かしてはいけません。痛みが少なく、歩けるからといって応急処置を怠らず、しっかりと冷やし安静にしておくことをおすすめします。
また、腫れが引かないうちに患部を温めたり、お風呂に浸かったりするという行為も避けましょう。捻挫をしてすぐの頃は、炎症や腫れがあるため、温めることで血流の流れが良くなり、痛みが増してしまいます。患部を温めるのは、捻挫をしてから数日が経ち、炎症や痛みが治まってからにしましょう。
どのくらいで治るの?
捻挫が治る期間は症状によって異なります。1度(軽度)の捻挫では、おおよそ1週間~10日で完治が期待。中等度と呼ばれる2度の捻挫では、2週間程度の安静が必要です。3度(重症)の捻挫であれば、治療には3週間以上かかってしまう場合があります。ケガの具合によっては手術を受けたり、ギプスなどで固定したりしなくてはなりません。
捻挫は治療が完了したとしても、すぐに激しい運動をするのではなく、リハビリや柔軟などで少しずつ関節を慣らしていき、サポーターやテーピングを使いながらジョギングをするなど、復帰に向けて徐々に運動強度を上げていく必要があります。
痛みが続く場合には
腫れや痛みなどの症状がそこまでひどくなく、内出血なども見られない場合には、無理に動かさず安静にして様子を見ましょう。
ひどく腫れ上がっていたり、動かせないほどに痛みを感じたり、関節がぐらぐらしたりするといった状況であれば、医療機関へ受診することをおすすめします。また、そういった症状がなくても、なかなか痛みが治まらないといったケースでも、しっかりと診てもらいましょう。
まとめ
本記事では、捻挫のしくみや予防法、もしものときに行うべき対処法についてまとめました。捻挫をすると、靭帯やその周辺組織が損傷し、痛みや腫れといった症状を引き起こします。場合によっては出血が起き、関節を動かすこともできなくなるほどの痛みが起こる場合も。
万が一、捻挫をしてしまったら、すぐに冷やし、安静にしましょう。症状が軽度であれば、様子見という選択肢もありますが、骨折など、他のケガを起こしている可能性も。そのため、病院で診てもらうことをおすすめします。