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認知症介護はどのくらい続く?家族が限界を迎える前にできることを紹介

家族が、認知症の高齢者の介護を行う際、多くの場合において先が予測できないという問題に直面します。介護する人が重圧によって心身ともに疲弊しないためには適切なサポート、専門機関の利用が必要となるでしょう。「認知症介護はどのくらい続く?家族が限界を迎える前にできることを紹介」では、認知症における在宅介護の平均的な期間、相談先となる専門機関について詳しく解説します。

認知症介護はいつまで続く?

認知症介護

認知症の介護に要する期間は、発症の時期や症状によって変動。2019年(平成31年/令和元年)の調査によれば、認知症における介護の平均期間は6~7年とされています。

しかし、実際のところ介護期間は1~31年と非常に広いのです。認知症の発症が若い段階で始まるケースもあれば、高齢での発症も考えられることから、認知症介護の期間は多岐にわたることが伺えます。

認知症における介護がつらいと感じる要因

2017年(平成29年)に厚生労働省が実施した「国民生活基礎調査」によれば、介護に関連するストレスを経験している方は、介護を経験した方の約6~7割。ストレスを感じていない方はむしろ例外的であることが示唆されています。なお、認知症の介護がつらいと感じる要因については、以下の通りです。

暴力や暴言を受ける

認知症の進行によっては、暴言や暴力を振るうことも。その背後にはいくつかの主な原因があるのです。原因としては、認知症患者の方が自らの感情を適切にコントロールできないことによる不安を感じることや自尊心の低下、投薬の副作用などが挙げられます。

睡眠不足

認知症の患者に睡眠の変化が起こると、介護する人にも影響。特に昼夜が逆転して、夜に認知症の患者が徘徊してしまう場合は、介護する人に対し肉体的、精神的にも負担が増大するのです。

身体的な負担

認知症の介護

在宅介護では、着替えや起床時の介助、移動の補助、体位の変更、入浴と食事の介助など介護する人の身体に多くのストレスがかかる場面が数多くあります。認知症の度合いが大きくなるにつれて、負担も増大。体の疲れがなかなか取れない状態が続くのです。

さらに、介護は短期間で終わるものではなく、長期的になる可能性も存在。疲労が積み重なり、介護する人自身が介護疲れとなってしまうリスクが高まるのです。

コミュニケーション量が過剰になる

在宅介護を始めると家族や親戚だけでなく、医者、ケアマネジャーなどコミュニケーション量が増加。この過剰なコミュニケーション量は、精神的なストレスを引き起こす可能性をはらんでいます。また、複雑な人間関係に疲れ果ててしまうと、感情を外部に向けるのではなく、内に閉じ込めることもあり注意が必要です。

無理をしすぎると「介護うつ」が発症することも

うつ症状とは、脳のエネルギーが欠如している状態を指します。介護における持続的なストレスが蓄積し、適切な休息が得られない場合、脳の機能が過剰に働いている状態に。この結果、脳へのエネルギー供給が不十分となり、活力や判断能力が低下していまい、「介護うつ」となってしまうのです。

休息を確保することは、介護うつの予防に不可欠。介護の日常の中で、疲れが常態化してしまい、自分の体調の限界を見失うことがあるかもしれません。

自分が疲れていることを認識して、適切な休息を取ることが介護うつを未然に防ぎます。体調が思わしくないときは無理をせず、介護保険サービスや周囲にサポートを求め、十分な休息とリラックスをすることが大切です。

認知症で悩む際は専門機関へ相談を

認知症について悩んだ場合、早めに専門機関へ相談しましょう。介護負担を減らし、介護うつになることを防ぐことができます。

地域包括支援センター

「地域包括支援センター」とは、市区町村に設置された介護の窓口です。ケアマネジャーはじめ、専門的な知識を有するスタッフが在籍しており、介護支援における相談を受け付けています。また介護保険制度の利用に関するサポートも利用可能です。

公益社団法人 認知症の人と家族の会

専門家への相談

「認知症の人と家族の会」は、日本全国の47都道府県に支部を持つ、認知症の方やその家族、専門家との直接の対話の場を提供する機関。

ここでは、認知症における多岐のサポートが受けられます。問題や悩みが生じた際には、気軽に連絡を取ることが可能です。

若年性認知症支援センター

各自治体では、「若年性認知症支援センター」を設置して、若年性認知症に関するサポートを提供しています。若年性認知症支援センターの主要な役割としては、若年性認知症の患者と家族などからの相談、専門医療への紹介、利用可能な制度やサービスの情報提供などです。

また、若年性認知症の患者と家族へのサポートを強化するため、専門家などで構成されたコールセンターも設置。さらに、若年性認知症の患者を持つ家族同士の交流会なども積極的に行われています。

認知症疾患医療センター

「認知症疾患医療センター」とは、認知症に関する相談や診察を行う医療機関です。認知症疾患医療センターでは、もの忘れ相談から認知症の診断、治療、さらには介護保険制度の申請に関する相談まで、認知症に関する様々な支援を一貫して提供。

また、かかりつけ医、地域包括支援センターなどと緊密に連携し、認知症患者とその家族をサポートしています。

介護保険サービスを利用して負担を減らす

介護保険サービスを利用することで、在宅における認知症介護の負担を大幅に軽減することが可能。家族が認知症と診断された場合、積極的に活用していきましょう。

訪問介護

「訪問介護」は、日常生活に関する介護保険サービス。訪問介護では介護福祉士、ホームヘルパーなど専門スタッフが利用者の自宅を訪れ、入浴、食事、排泄の介助や家事の補助、通院の際の移動サポートなどを提供します。

訪問看護

「訪問看護」は、主治医の指示を受けて保健師、看護師、理学療法士などが利用者の自宅を訪れて、医療的ケアを行う介護保険サービス。健康チェック、点滴の管理などが含まれます。

また、利用者は自分に適した訪問看護を選ぶことができ、病状が急に悪化する可能性がある場合や、夜間のケアが必要とされる場合には、24時間対応している訪問看護を選ぶことも可能です。

訪問入浴

「訪問入浴」は、利用者が自宅での入浴が難しい場合に、専門の浴槽を使用して入浴介助を行う介護保険サービス。訪問入浴を行う前後には、利用者の血圧や体温などの健康状態を確認し、血圧が高いなどの問題があれば、そのつど主治医へ相談することもあります。

訪問リハビリテーション

「訪問リハビリテーション」では、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などが利用者の自宅にて、心身の機能を維持、回復をさせるためのリハビリテーションを提供。この訪問リハビリテーションは、利用者の日常生活の自立、社会への参加を促進する目的で行われます。なお、訪問リハビリテーションは医療機関への通院が難しい方や、退院後の生活に不安を感じる方など、主治医が訪問リハビリの必要性を認定した場合のみ利用可能です。

デイサービス

「デイサービス」は、利用者が日帰りでデイサービス施設へ通い、入浴、排せつ、食事などの介助、リハビリテーションを受ける介護保険サービス。また、デイサービスへ通うことで利用者が孤立することなく、周囲や地域とコミュニケーションを継続させる狙いもあります。さらに、デイサービスを利用することで、介護を担う家族の身体的、精神的な負担の軽減がされることが期待されるのです。

ショートステイ

「ショートステイ」は、利用者が一時的に施設へ入所し、介護と生活のサポートを受ける介護保険サービス。具体的には、入浴や排泄、食事など介助、リハビリが提供されます。また、ショートステイは、利用者の家族が一時的に介護から解放されることで、その負担を軽減する役割も果たしているのです。利用できる施設としては、「老人短期入所施設」、「特別養護老人ホーム」などがあり、一度の利用期間は最大30日まで。利用者の大半が、平均2週間程度滞在しています。

医療型ショートステイ

「医療型ショートステイ」は、医療ケアと介護を必要とする利用者が、一時的に医療機関へ入所する介護保険サービスです。医療ケアや介護、リハビリテーションを受けることによって、利用者の生活の質を向上させるとともに、介護を行う家族の負担も軽減。医療型ショートステイも一度の利用期間は、最大30日までとされています。

施設への入居も検討

認知症の方を在宅介護することに限界を感じたら、施設の入所を検討しましょう。なお、施設の中には、介護保険制度の適用となる施設もあるため、自己負担額を抑えて利用することもできます。

グループホーム

介護施設

「グループホーム」は、認知症の方々が共に生活を営むために特化した施設です。認知症の進行は、脳への刺激が少ない状態で加速することが知られているため、施設で家庭的な環境を提供して、症状の進行を遅らせることが目的。

グループホームには、「ユニット」と称される生活空間が設けられ、複数の居室やキッチン、食堂などでの共同生活を行います。共同生活の中で、入居者様同士が家事の役割を分担したり、コミュニケーションを深めたりすることで自立した生活を促進。

なお、グループホームは、介護保険制度における地域密着サービスの一部であるため、基本的には施設の所在地に住民票を持つ方が入居対象です。

特別養護老人ホーム

特別養護老人ホームは公的施設で、比較的安い料金にて利用でき、認知症の方も受け入れています。しかし、施設内での医療ケアが限られているため、3ヵ月以上の入院が必要な状態となった場合、施設を退去しなければならないことに注意が必要です。また、認知症の症状が進行し、他の入所者、スタッフに対して問題行動が見られる場合も、施設からの退去が求められます。

介護付き有料老人ホーム

「介護付き有料老人ホーム」は、高齢者が安全かつ快適に過ごせる施設で、日常の生活サポートから身体介護まで、幅広いサービスを提供。自立している方から要介護5まで、様々な介護度の方が利用できるのが特徴です。

また、24時間体制での介護やプライバシーも確保されています。介護付き有料老人ホームの多くは民間企業が運営しており、サービス内容、利用料金は施設によって違いが存在。そのため、利用者のニーズに合わせて選ぶことができます。

まとめ

認知症における、在宅介護の平均的な期間は約6~7年。しかし、在宅介護には様々な問題点があり、介護する人ひとりで抱えてこんでしまうと、介護うつ発症の危険性もあります。専門機関へ相談の上、介護保険サービスを積極的に活用し、介護負担を減らしていきましょう。また、在宅介護に限界を感じた場合は、迷わず施設への入居を検討することも大切です。

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