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認知症の治療薬はある?効果や副作用について解説

認知症は、誰もが発症する可能性がある脳の疾患で、2025年(令和7年)には高齢者の5人に1人が発症すると予想されています。今のところ、認知症を根治させる薬はありませんが、症状の進行を抑える薬、認知症によって出現する精神症状を緩和する薬が存在。「認知症の治療薬はある?効果や副作用について解説」では、認知症で使用される薬の種類と効果、副作用、服薬管理のポイントについて解説していきます。

認知症薬で改善させる「薬物療法」

薬の服用によって症状を穏やかに

認知症の治療薬とは、認知症の進行を抑制し、認知症を患った際に出現する精神的な症状を緩和する物。

あくまで対症療法ですが、薬を使用しないケースと比べて、日常生活にも大きな違いがあるのです。

薬物療法とは

薬物療法とは、文字通り薬を使って認知症の諸症状を緩和する治療方法。薬物療法では、認知症治療薬や精神安定剤、睡眠導入剤などが使用されます。

薬物療法の目的

認知症における薬物療法では、残されている脳の機能を維持しつつ、日常生活に支障がないよう症状を緩和させることが目的です。認知症の症状には記憶力、理解力、注意力、判断力などの低下があります。認知症状が緩和されれば支障も減り、質の高い生活を送りやすくなるでしょう。

非薬物療法とは

「非薬物療法」とは、文字通り薬を用いない治療方法です。この非薬物療法には運動療法、回想法、音楽療法、美術療法、園芸療法、アニマルテラピー、認知刺激療法などが存在。様々な手法を用いて、脳の機能の活性化を図ります。なるべく認知症の方自身が関心を持ちそうな物、好きな物を使って治療を行うと効果が出やすいとされ、刺激を与え続けることで脳内の機能も活性化。

また、治療を通じて達成感などを得ることができ、精神状態を穏やかにする効果も期待できるのです。なお、生活で必要な動作を維持するためのリハビリテーションも非薬物療法に含まれます。

非薬物療法との違い

薬が脳の機能を高め進行を抑える

非薬物療法と比べると、薬物療法は期待できる効果が限定的です。例えば、認知症治療薬の場合には「脳の機能低下を緩和させる効果」が期待され、その他に使用される薬でも「気持ちを落ち着かせる」、「眠りを促す」など、ひとつの医薬品にひとつの効果が得られるのみ。

一方、非薬物療法の場合では、趣味などを通じて脳の活性化だけでなく、治療をしながら本人の心に働きかけることから、精神の安定化も促していくのです。

根本的な治療薬はまだない

認知症を根治させる治療薬はまだ確立されておらず、今後も研究が必要。あくまで認知症の治療は、今残されている機能の低下を防ぎ、普段の生活に支障をきたさないよう、症状を緩和していくことが目的です。そのため、治療を行っていても少しずつ認知症は進行していきます。しかし、治療により周辺症状も軽減されれば、認知症の方と家族にかかる負担を和らげ、より穏やかな生活を送れるようになるのです。

認知症の薬物療養のポイント

薬物治療では、毎日欠かさずに薬を飲み続けることが重要。服用によって進行を抑えられていたとしても、薬を止めてしまうと効果がなくなり、急激に悪化してしまう恐れがあるのです。しかし、副作用が起こる場合は、すぐに医師へ伝えましょう。また、認知症を発症している方は、薬の管理が症状の進行とともに難しくなっていきます。家族や介護する人が薬の服用をしっかり管理していきましょう。

4つの認知症治療薬の効果

「認知症治療薬」は、現在国内において計4種類が使われ、認知症における「中核症状」である記憶力低下、判断力低下、意欲低下を緩和する効果が期待できます。

アリセプト

「アリセプト」はアルツハイマー型認知症に対して有効性が確認された、世界初の認知症治療薬です。軽度から中等度までの認知症に対して使用されます。アセチルコリンエステラーゼ阻害薬とされ、脳内の神経の働きを活性化。思考力や見当識障害などといった症状を抑えるのです。他の治療薬と比べると使用できる認知症の適応が広く、レビー小体型認知症に対しても有効。

また、1日1回の服用で効果が期待でき、医療現場では最も多く使用されている薬です。デメリットとしては、開始時に吐き気、下痢、腹痛などの消化器症状を伴うこと。さらに個人差はありますが、比較的イライラする症状が目立ちます。不整脈が出るケースもあり、心臓に持病がある人は注意が必要です。レビー小帯型認知症に対しては、使用開始時に症状が悪化する副作用があるため、状態をよく観察しながら薬を使用しています。

レミニール

周辺症状も薬で緩和可能

「レミニール」は、アリセプトと同様に、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用を持つ認知症治療薬です。国内では2番目に登場したアルツハイマー型認知症治療薬で、中等度までの症状に効果が期待できます。

また、アリセプトと比べると比較的副作用が少ない傾向です。

イクセロン

「イクセロン」もアリセプトと同様、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用を持つ認知症治療薬。最大の特徴は、貼り薬タイプであることです。そのため、認知症の方が服用を拒否していたとしても使用可能。また、皮膚から吸収されることから、副作用も出にくいとされています。

メマリー

「メマリー」は脳内に過剰に働いている、グルタミン酸を抑えることにより認知症の進行を抑制する認知症治療薬です。NMDA受容体拮抗薬とされ、他の治療薬とは働きかける箇所が違うので、一緒に併せて使用することが可能。しかし、飲み始め時や、量を増やした際に副作用を起こしやすく、少ない量から飲み始めて徐々に量を増やしていく必要があります。なお、中等度以上のアルツハイマー型認知症に有効です。

血管性認知症や前頭側頭型認知症に使える薬はない

前述した4つの認知症治療薬のうち、アリセプト、レミニール、イクセロンについては、アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症への適応。メマリーについてはアルツハイマー型認知症のみの適応となっており、血管型認知症や前頭側頭型認知症に対してはいずれも適応となっていません。

行動・心理症状に対して処方される薬

認知症における周辺症状に対しては、それぞれ別の薬を使用して治療します。精神状態、睡眠状況に合わせて薬を使い分けていくのが有効です。

抗精神薬

幻覚、妄想などに対しては「抗精神薬」を使用。抗精神薬は、定型抗精神薬と非定型抗精神薬、部分作動型抗精神薬の3つに分類され、精神状態のどの部分を抑えるかによって使い分けていきます。非定形抗精神薬である「リスパダール」、「ジプレキサ」、部分作動型抗精神薬である「エビリファイ」などが存在。なお、抗精神薬は「糖尿病」を患っている場合には使用できません。そのため、投与の前に血糖値に異常がないかを調べる必要があります。

抗うつ薬

抑うつ症状に対しては「抗うつ剤」の使用が有用です。今では副作用が少ない「SSRI」、「SNRI」、「NaSSA」などが使われてきています。それでも、副作用の発現があるため、少量から飲み始め、徐々に量を増やしていく手法が採られているのです。

抗不安薬

不安感、焦燥感が強い場合は「抗不安薬」を用います。精神安定効果をもつ「デパス」、「リーゼ」、「ソラナックス」などがありますが、75歳以上の高齢者は副作用が出やすいことから推奨されないことも。そのため、中程等度以上の認知症の方に対しても使用は推奨されていません。75歳以上の高齢者には「リスパダール」、「エビリファイ」などが代わりに用いられます。

睡眠薬

眠りが浅い、夜中に目が覚めてしまう症状には「睡眠導入薬」を使用。効果時間によって超短時間型、短時間型、中間型、長時間型と使い分けていきますが、抗不安薬と同様に、副作用のリスクがあるため注意が必要です。最近では、睡眠のリズムを整える「ロゼレム」、「ベルソムラ」、「デエビゴ」などが副作用も少ないことから、注目されています。

漢方薬

「漢方薬」も周辺症状に対して使用。他の薬と比べると即効性は劣りますが、副作用も少ないため使用されやすいとされています。「抑肝散」は暴力、イライラ、興奮状態に対して、「釣藤散」はせん妄や妄想などの改善が期待。漢方薬は毎日飲み続けることで、徐々に効果を出す薬なのです。

認知症の薬の副作用

認知症の症状に対して効果ができる薬には、副作用が存在。そのため、服用時には体調変化をよく観察する必要性があります。

アセチルコリンエステラーゼ阻害薬

認知症治療薬である、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬の副作用は、主に消化器症状です。吐き気、嘔吐、食欲不振、下痢、腹痛などが、飲み始めと薬の増量時期に見られます。重篤な副作用としては心室頻拍、心室細動、硬度徐脈などの心臓にまつわる副作用が存在。定期的に心臓の検査を行う、日々の血圧及び心拍数のチェックをしていくことが重要です。

NMDA受容体拮抗薬

NMDA受容体拮抗薬であるメマリーでは、飲み始め時にめまい、頭痛、ふらつきなどの症状があり、転倒などによるケガに注意が必要。重い副作用としては、痙攣、失神などが報告されています。

抗精神薬

抗精神薬は様々な場所に作用する性質を持つため、複数の副作用を引き起こす可能性があるのです。特に多いのは、意図せず手が規則的に震える、筋肉がこわばる、動作が緩慢になるといった症状。他には口が渇く、便秘、排尿困難などの副作用も。また、血糖値を上昇させることがあるため、定期的に血糖値の検査を受けた方が良いでしょう。

抗うつ薬

抗うつ薬には口が渇く、便秘、排尿困難といった副作用が多く存在。そのため、SSRI、SNRI、NaSSAなどの副作用が少ない新薬が使われています。SSRI、SNRI、NaSSAの副作用としては、脳内の神経伝達物質であるセロトニン量が増えすぎてしまうことで嘔吐、下痢などや、セロトニン症候群を起こしてしまうこと。特にセロトニン症候群では不安、興奮、落ち着かない、筋肉がこわばる、40度以上の発熱などが見られることがあるのです。

抗不安薬・睡眠薬

抗不安作用を持つ、ジアゼピン系薬剤は、同時に睡眠作用をもたらしますが、実際の睡眠時間と効果がかみ合わないことで、起床後も眠気が続きふらついてしまうこともあります。また、筋弛緩作用によって、力が入りづらくなる、踏ん張れないといった副作用を起こすことがあり、転倒によるケガのリスクにつながるため、注意が必要です。

漢方薬

漢方薬は副作用が少なく、重い副作用などはありません。しかしながら、漢方薬に含まれる成分が身体に合わなかった場合、服用後に肌にかゆみ、じんましんなどの副作用が現れることがあります。

服薬管理で気を付けるポイント

薬は、用法用量を正しく守って飲まなければ効果を十分に発揮できません。認知症の方は、薬の管理が自分ではなかなか行えないため、家族や介護する人の服薬管理が重要となります。

飲み忘れを防ぐ方法

正しく飲めるよう服薬をサポート

家族が同居している、もしくは、介護保険サービスなどを利用しているのであれば、周りの人がフォローすることで本人の意志を尊重しながら薬の管理が可能です。

認知症の方が軽度で一人暮らしの場合は、薬カレンダーを使用する、飲む時間になったら電話で知らせるなどで飲み忘れを減らせます。また、薬のケースを使用することで、1回ごとに飲む薬の内容を間違えるリスクも軽減。なお、調剤薬局に相談すれば、1回分ごとに薬をまとめてもらうこともできます。

飲み過ぎを防ぐ方法

認知症の症状では判断力と、記憶力の低下から、1日に何度も同じ薬を飲んでしまうリスクが存在。この飲み過ぎを防ぐには、1日に必要な分だけの薬のみを渡し、飲み終えたあとも薬のパッケージを捨てないことです。これにより、認知症の方でも薬を飲んだことが目で見て実感しやすくなります。

服薬を拒否する場合の注意点

認知症の症状によっては、服薬を拒否するケースも。「自分は健康だから飲まなくて平気」、「薬ではなく毒が入っている」、「副作用が出るから飲みたくない」といった妄想、副作用に敏感になりすぎてしまっていることが要因です。また、家族の顔を忘れてしまっている場合、「見知らぬ誰かから渡された薬なんて飲めない」と考えてしまい、拒否に至ることもあります。

この場合、無理に飲ませようとせず、気持ちが落ち着くのを待ってから服薬を提案してみることが必要です。薬をゼリー状、液状など、飲みやすいタイプへと変えることでも改善が期待できます。さらに、貼り薬ならば飲む必要がないため、薬の使用も楽になるのです。

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