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認知症の初期症状をチェックリストで確認!予防方法、公的な相談先も解説

認知症は、高齢者に多い疾患のひとつです。初期症状としては、「忘れっぽくなった」、「今までできたことが苦手になってきた」といった症状が挙げられます。認知症はいつの間にか進んでいることがほとんどですが、なかには突然発症する場合も。また、進行速度には個人差があります。「認知症の初期症状をチェックリストで確認!予防方法、公的な相談先も解説」では、認知症の初期症状について詳しく解説。原因となる病気、予防方法、公的な相談先、認知症対応の高齢者施設もご紹介します。

認知症の進行

認知症の症状は、初期、中期、後期に分けられます。進行するスピードには個人差がありますが、各段階に2~5年など、年月をかけて進んでいくことが多い傾向です。

1初期(軽度)
認知症の進行

認知症の初期では、主に記憶障害が出現。加齢による物忘れとは異なり、直前のことも忘れたり、同じことを何回も聞いたりといった症状が挙げられます。日常生活では不便なことも生じますが、工夫すれば自宅で暮らし続けられる時期です。

ここでは、公益社団法人「認知症の人と家族の会」による「家族がつくった 認知症 早期発見の目安」を参考に、認知症の初期症状を見ていきましょう。

家族がつくった 認知症 早期発見の目安
物忘れがひどい 1 今切ったばかりなのに、電話の相手の名前を忘れる
2 同じことを何度も言う、問う、行う
3 しまい忘れ、置き忘れが増え、いつも探し物をしている
4 財布、通帳、衣類などを盗まれたと人を疑う
判断・理解力が衰える 5 料理、片付け、計算、運転などのミスが多くなった
6 新しいことが覚えられない
7 話のつじつまが合わない
8 テレビ番組の内容が理解できなくなった
時間・場所が分からない 9 約束の日時や場所を間違えるようになった
10 慣れた道でも迷うことがある
人柄が変わる 11 些細なことで怒りっぽくなった
12 周りへの気遣いがなくなり、頑固になった
13 自分の失敗を人のせいにする
14 「このごろ様子がおかしい」と周囲から言われた
不安感が強い 15 ひとりになると怖がったり、寂しがったりする
16 外出時、持ち物を何度も確かめる
17 「頭が変になった」と本人が訴える
意欲がなくなる 18 下着を替えず、身だしなみを構わなくなった
19 趣味や好きなテレビ番組に興味を示さなくなった
20 ふさぎ込んで何をするのも億劫がり、嫌がる

出典:公益社団法人 認知症の人と家族の会「家族がつくった 認知症 早期発見の目安

2中期(中等度)

認知症の中期では、日常生活での困難が少しずつ増えてきます。食事を終えたばかりなのに「食事は?」と言われるのはこの時期です。自分の状態を不安に感じ、攻撃性や落ち込みが見られることもあります。徐々に自宅での生活は困難になり、施設への入居が現実的になるのです。

3後期(重度)

認知機能の後期は、着替えやトイレが困難となり、生活のすべてに介助が必要になります。意思疎通も困難になる時期でもあり、古い記憶も思い出しにくくなり、家族のことも忘れてしまう場合も。また、不安な気持ちも忘れてしまうため、中期の頃より穏やかになる方も多い傾向です。徘徊などの問題行動も徐々に少なくなり、意欲の低下や加齢の影響で体も衰えていきます。さらに寝たきりになれば、認知症末期の状態。うまく飲み込めなくなって肺炎を起こす場合もあれば、老衰で静かに最期を迎える場合もあります。

認知症の種類

認知症の原因となる病気は様々です。ここでは、認知症の種類のうち、代表的な4種類を解説しましょう。

①アルツハイマー型認知症

認知症は脳の変化が原因

「アルツハイマー型認知症」は、認知症の中で最も多い症状で、全体の6割以上を占めます。アルツハイマー型認知症は、「アミロイドβ」や「タウたんぱく」という物質が脳に蓄積することで、神経細胞が減ってしまい、脳が萎縮する状態です。加齢だけでも脳は少しずつ縮みますが、アルツハイマーをはじめとする認知症では脳の縮むスピードが速くなります。

症状としては、物忘れが強く出やすいことが特徴。いつの間にか物忘れがひどくなることで認知症に気付き、あとから徐々に他の症状が出現します。

②レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、「レビー小体」というたんぱく質が神経細胞にできることで引き起こされる認知症です。脳のどこにレビー小体が多くできるかで、症状の出方は異なります。例えば、大脳皮質にレビー小体ができれば、物忘れがひどくなり、脳幹部にできれば、「パーキンソン病」のような手のこわばりや筋肉の震えが出やすくなるのです。

レビー小体型認知症の初期には、幻覚、妄想が出やすいのが特徴的。「リビングに知らない男性が座っている」、「廊下に大きなクモが3匹歩いている」といったような幻視症状が現れます。なお、物忘れの症状は初期には軽い場合が多く、病気の進行に伴って現れるのです。

③脳血管性認知症

脳血管性認知症は、「脳卒中」(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)を繰り返すことで、神経細胞に血液が行き届かなくなり、その結果として神経細胞は壊れ、症状が出現します。脳卒中は激しい頭痛を伴うと思われがちですが、気付かないうちに小さな脳梗塞を繰り返し、徐々に認知症に至ることも少なくありません。脳血管性認知症の初期は、物忘れよりも意欲の低下が目立つ傾向です。以下のような脳卒中特有の症状を伴うこともあります。

  • 手足のまひ
  • 嚥下障害(えんげしょうがい:食べ物や水分を飲み込みにくい状態)
  • 構音障害(こうおんしょうがい:言葉の発音が困難な状態)
  • 感覚障害(皮膚や体を動かす感覚などが、鈍くなったり過敏になる)

脳血管性認知症では、脳卒中が起きた部位によって、一部の認知機能だけが低下する「まだら認知症」の状態になることもあります。「物忘れは少ないのに、家事の要領が悪くなった」、「スマートフォンの使い方が分からなくなったが、判断力はしっかりしている」といった症状です。こうした症状が出た場合には、迷わず病院に行きましょう。

④前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症では、脳の前頭葉と側頭葉が萎縮します。この病気は、65歳未満の若い人が多く、70歳以上で発症することはほとんどありません。前頭側頭型認知症は、「前頭側頭葉変性症」という名前で「指定難病」となっています。

前頭葉は、感情を制御し、理性を持って行動できるようコントロールすることで「人間らしさ」を司る部位です。側頭葉は、言葉や物事を理解するための「知性」を担当しています。これらが萎縮することで、人格の変化、社会のルールに反するような行動障害、言語の障害などが起きてしまうのです。具体的には、平気で万引きをしたり、堂々と赤信号を渡ったりなど。しかし、本人には罪悪感がありません。

また、前頭側頭型認知症では、同じ行動を繰り返す症状も特徴的です。相手の言葉をそのまま繰り返す、毎日同じ物を食べる、毎日同じ時間に同じルートで散歩する、といった繰り返し行動が見られます。

認知症は早く気付くことが大事な理由

認知症の初期段階では、はっきりとした診断が付かないこともしばしばあります。「いつもと違う」とうすうす感じていても、つい見過ごしてしまう人は少なくありません。なかには、「認知症だと診断されるのが怖い」と感じる人もいます。しかし、違和感を見逃さずに早く受診することは、認知症の進行を遅らせるだけではなく、改善することも可能です。ここでは、認知症に早く気付くことが大切な理由について解説します。

認知症の進行を遅らせることができる

認知症の治療

認知症に早く気付くことで、認知症の程度に合わせた適切な治療やリハビリテーションを行うことができ、その結果、認知症の進行を遅らせることが可能です。アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症には、進行を抑える専用の薬がある他、脳血管性認知症の場合は、高血圧の薬、血液をサラサラにする薬を適切に使えば、再発予防につながります。

また、治療に加えて普段の生活やリハビリテーションも重要な要素。リハビリテーションでは、食事、着替えといった生活動作の練習をする「ADL訓練」、立ち上がる、歩く、姿勢を保持するといった動作を練習する「身体能力訓練」などを行います。できるだけ自分のことは自分で行い、自立した生活を続けることが認知症の進行予防になるからです。

その他、認知症患者同士で運動やゲームを楽しむ「集団作業療法」では、コミュニケーション能力、心身の機能を鍛えられます。誕生日会、お花見会などのイベントも目的は同じです。手芸、工芸などを行う「創作活動」では、持てる能力を活かして作品を作り上げることで達成感を味わうことができ、脳に良い刺激が生まれます。

今後の生活の準備をすることができる

判断力がしっかりしているうちに、今後の生活について考えられるのも、早期発見のメリット。特に、財産の管理においては判断力が低下すると、本人名義の貯金が下ろせなくなり、介護費用に困る場合もあるのです。財産の管理を他の人に手伝ってもらう場合は、家族に管理してもらう「家族信託」、家庭裁判所に後見人を選んでもらう「成年後見制度」が選択肢となります。ただし、家族信託は契約時点で本人の意思が確認できない場合、契約行為ができないため利用できません。

成年後見制度は、判断力が低下していても利用できますが、後見人の最終決定が家庭裁判所の判断となる点、毎年財産状況の報告が必要な点など、いろいろな注意点があります。なお、財産管理は「地域包括支援センター」などでも相談できるため、検討することもひとつの手段です。

判断力があるうちに、将来どんな施設に世話になりたいか、自分で見学に行くこともできます。認知症が軽度であれば、住み慣れた自宅で訪問介護の世話になりながら、ときにはデイサービスに行くことも可能です。

早めに治療すれば改善可能な場合がある

「認知症だと思っていたら、実は違う病気だった」という場合もあります。治療可能な病気ならば、認知機能がもとに戻ることも。例えば、「正常圧水頭症」、「慢性硬膜下血腫」では、脳が髄液や血腫で圧迫されて認知症のような症状が起きます。この場合、圧迫している原因を取り除けば、症状も回復する可能性もあるのです。

うつ病、うつ状態も、意欲の低下から認知症と間違われることがありますが、適切な療養や服薬で回復を目指すことが可能に。「甲状腺機能低下症」などの内分泌疾患でも、活気が低下し、認知症のような症状が起きる場合もあります。しかし、薬を服用し、ホルモンを適切にコントロールすることで改善する見込みがあるのです。

このように、病気によっては治療することで、認知機能の低下などがもとに戻る可能性があります。病院で問診や検査を受け、病気を診断することが大切です。

認知症の相談先

認知症の相談先

ここでは、認知症における生活や介護の相談窓口、診断・治療につながる医療機関を6つ紹介します。

認知症に関する情報やサービスは多く、自分には一体何が必要なのか、混乱してしまうことも少なくありません。早いうちから専門家に事情を話すことで、必要なことを教えてもらうことができます。

1地域包括支援センター

「地域包括支援センター」は、自治体が主体となって設置している施設です。高齢者の健康維持、生活の安定、福祉、医療など、総合的に相談を受け付けています。相談担当は、保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員といった専門職です。「認知症かもしれない」という不安な気持ちを相談して構いません。他にも日常の困りごとを遠慮なく相談しましょう。

また、地域包括支援センターは、地域の医療機関の情報から老人サークルの活動事情まで、幅広い情報を持っています。介護事業者、ボランティア団体、民生委員などともつながりが深いため、相談内容に応じて必要なサービスを紹介。さらに、地方包括支援センターは、自治体によって「高齢者支援センター」、「地域ケアプラザ」などと呼んでいる場合もあります。サービス内容について、住まいの自治体に問い合わせましょう。

2公益社団法人「認知症の人と家族の会」

1980年(昭和55年)に結成された「認知症の人と家族の会」は、全国に支部があり、認知症カフェの開催、情報発信などの活動を行っています。「認知症の人と家族の会」では、認知症介護の経験者が研修を受け、相談員として電話相談を実施。自治体の認知症コールセンターも請け負い、信頼できる相談先のひとつです。

なお、「認知症の人と家族の会」は、認知症に関心のある人なら認知症の本人、または家族でなくても入会できます。年会費を払って会員になると、会員向けの「つどい」に参加可能。会員には、認知症に関するニュース、医療や介護についての読み物、読者の体験談など、毎月「会報」が届きます。

3若年性認知症コールセンター

若年性認知症コールセンター」は、若年性認知症に特化した電話相談です。65歳未満で発症した認知症は、どの病気が原因でも「若年性認知症」と呼びます。若年性認知症の症状は高齢者と同じです。

しかし、仕事や家事を現役で担っている人が大半のため、若年性ならではの問題が生じます。例えば、家計を支えている人が発症すると経済的な問題が大きくなりがちに。また、主婦が発症すれば、家庭内の役割が困難になるだけではなく、子供が未成年の場合には、介護の負担が配偶者に集中することもあります。親の介護と重なる可能性もあるのです。若年性認知症コールセンターは、こうした若年性認知症特有の問題について相談することができます。

4認知症疾患医療センター

「認知症疾患医療センター」は、都道府県や指定都市が指定した医療機関に設置され、認知症の診療、医療相談を専門的に受け付けている機関です。専門医、臨床心理技術者、精神保健福祉士、保健師といった職員が配置され、CTなど画像検査の設備も整えられています。認知症の診断、治療はもちろん、本人や家族への相談支援サービス、当事者同士の交流会など、様々な活動をしているのが特徴です。

かかりつけ医や地域包括支援センターとも連携しており、情報共有しながらサポート。住民向けに無料の公開講座を行っている場合もあるので、認知症疾患医療センターの様子を知るために参加してみるのもおすすめです。認知症疾患医療センターの受診には、多くの場合、予約や紹介状が必要となります。Webサイトで受診方法を調べるか、センターの相談窓口に問い合わせましょう。

5かかりつけ医

本人に、かかりつけ医がいる場合は相談することをおすすめします。普段の本人を知っているかかりつけ医は、家族と違う目線で症状を判断。必要に応じて専門医を紹介してくれることもあります。家族からの指摘は嫌がる人でも、かかりつけ医に言われると専門医を受診する気になる場合も。認知症になってからも、日頃の健康管理はかかりつけ医に頼むのが一般的です。認知症の人は自分の状況を説明するのが難しくなるため、今まで以上に持病のコントロールが大切になります。

6物忘れ外来

「物忘れ外来」、「認知症センター」といった認知症専門外来では、認知症専門医の診察を受けることが可能です。認知症専門医は「認知症医療に関する一定以上の知識と経験、技量を有する医師」を、日本老年精神医学会と日本認知症学会がそれぞれ認定している医師のこと。「認知症疾患医療センター」にある診療部門も、物忘れ外来の一種です。

物忘れ外来の多くは脳の画像検査のために、CTやMRIといった設備を整えています。詳しい検査が必要な場合などは、総合病院などと連携し、すみやかに紹介受診が可能です。病院によっては、家族だけで相談が可能な場合も。本人が乗り気でない場合、まずは家族が物忘れ外来を訪ねることも、ひとつの方法です。

まとめ

認知症は、物忘れの進行によって気付くことが多い傾向です。認知症の種類によっては、物忘れ以外の症状から始まったり、急激に進行したりすることもあります。早期の治療で良くなる場合もあるため、違和感を見逃さずに受診するのが大切。しかし、家族だけで対応し続けるのは困難なため、専門家に相談しましょう。また、認知症が初期のうちは工夫すれば自宅で生活も可能ですが、徐々に自宅では難しくなります。そのため判断力があるうちに、将来どのような施設に住みたいかについて考えたり、自分の目で見学したりすることもおすすめです。

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