認知症の方に歯みがきをするときの介助ポイント6つ
高齢者等、認知症を患っている方の歯みがきは、ただ単に口の健康を保つだけではなく、様々な疾病予防の観点からも重要です。認知症の方は不安や緊張から口腔ケアを拒否することがあり、症状によっては日常の歯みがきが一筋縄ではいかない場合があります。しかし適切な方法で行うことでスムーズに歯みがきができるのです。歯みがきの重要性を踏まえ、実際のケアで役立つポイントや注意点について詳しく解説していきます。
認知症の方は歯みがきを嫌がることが多い

認知症の方が口腔ケアを嫌がる理由は様々です。認知症の症状によっては、歯みがきが必要な理由が理解できなかったり、そもそも歯みがき自体を忘れてしまったりしている場合があります。このことにより、歯みがきという行為に対して、これから何をされるのか分からないなどの不安を感じたり、不安がもととなり拒否したりすることが起こるのです。
認知症の方が歯みがきを嫌がるときは、口を開けない、歯ブラシを噛んでしまう、あるいは歯みがきをしようとする人の指を噛むなどの反応を示すことがあります。
認知症の方に歯みがきをするときの介助ポイント6つ
認知症の方が安心して口腔ケアを受けるためには、次のような6つのポイントを押さえることが重要です。
口腔内に問題がないかチェックする
ポイントの1つ目は、口腔内に問題がないかチェックすることです。認知症の方が口腔ケアを受ける際には、痛みや不快感を適切に伝えることが難しい場合があります。
認知症の方が口の中に手を入れたり、口を覆うような動作を繰り返したり、口に触れられることを嫌がる場合、口の中に何らかの痛みや不快感があるサインかもしれません。そのため、ケアを始める前には、口の中に傷や歯茎の腫れがないかを慎重にチェックすることが大切です。適切な照明やライトを使用して、口腔内を丁寧に観察し、問題があればそれに応じた対応を行うようにしましょう。
介助は最小限にする
ポイントの2つ目は、介助は最小限にすることです。歯みがきは、介護者がすべてを行うのではなく、本人が自分でできることは、できるだけ本人に任せることが大切。
これにより、自立支援と自尊心の維持を促進します。介助は、必要最低限にして、できるだけ本人が自分で行えるように自助具を使うことがおすすめ。そのため介護者の役割は、本人が自力で行えない部分をサポートし、最終的な確認を行うことだけなのです。常に本人の尊厳を尊重し、能力に応じた最小限の介助が、質の高い口腔ケアにつながります。
姿勢を正して誤嚥に注意する
ポイントの3つ目は、姿勢を正して誤嚥に注意することです。歯みがきを行う際には、誤嚥を防ぐためにも適切な姿勢を取ることが重要です。顎を上げた状態での歯みがきは、誤嚥の可能性を増加させます。
代わりに、頭をわずかに前に傾けるうつむき気味の姿勢で歯みがきを行いましょう。ベッドでケアを行う場合は、ベッドを30~45度の角度に傾けることで、誤嚥のリスクを減らしながら、より安全に歯みがきをすることが可能です。
できるだけ短い時間で済ませる
ポイントの4つ目は、できるだけ短い時間で済ませることです。認知症の方への歯みがきは、単に歯をみがくだけでなく、口内の状態をチェックしたり、義歯のケアをしたりすることも含まれます。
慣れるまでには時間がかかるかもしれませんが、声掛けを適宜行いながら進めることが大切。手際良く、慎重にケアを行うバランスが重要となります。短時間で効率的にケアを進めることで、不快感を与えずに行うことが可能です。
拒否される場合はタイミングを改める
ポイントの5つ目は、拒否される場合はタイミングを改めることです。認知症の方に対する歯みがきは、日によっては難しいことがあります。そのようなときは、無理をせず歯みがきを中断し、あとでまた歯みがきを促してみるなどの柔軟な対応が必要。長期的に見て、根気強く続けることが重要です。
毎回、歯みがきの際には、優しい声かけを心がけ、安心感を与えることで、徐々に歯みがきを受け入れるようになる可能性が高まります。認知症の方にとって、一貫したケアと安定した関係性で、口腔ケアを習慣化することが必要です。認知症の方に対する口腔ケアでは、ルールを設けるのではなく、その人の気分が良いときに合わせて行う柔軟性が求められます。
声かけを行う
6つ目のポイントは、声かけを行うことです。声をかけられることなく急に口の中を覗かれたり、歯ブラシを入れられたりすることに抵抗を感じない人は少ないでしょう。
それは認知症の方も同じです。歯みがきの前には「これから歯をみがいていきますね」、「一緒に歯をきれいにしましょうね」というように、何をするのかをやさしく伝え、安心感を与えることが大切。
また、歯みがきが成功したあとには、「歯みがきをさせていただいてありがとうございました。おかげできれいにみがけました」、「次もまた一緒に歯をみがきましょう」などと感謝の意を伝えることで、歯みがきを心地良い経験と捉えてもらえ、習慣付けやすくなるでしょう。このような肯定的なコミュニケーションは、継続的に歯みがきをすることにおいて効果的です。
「口腔ケア」の介護サービスを利用しよう

これまで自分以外の歯みがきを行ったことがない方が、歯みがきの介助を行う場合、難しさを感じる可能性があります。
うまく歯みがきの介助ができない場合、認知症の方が嫌がり、口腔ケアを拒否してしまうことも。そうなってしまうと、歯ブラシを見るだけで、拒否することが出てきてしまいます。
歯みがきの介助に難しさを感じたときには、介護保険サービスを利用し、「口腔ケア」として歯みがきの介助をお願いしましょう。介護保険サービスを利用した在宅での口腔ケアは、月に最大4回まで受けることが可能。
口腔ケアは歯科衛生士が行い、受けるたびにその日の口腔ケアの詳細や口内の状態を記録した「口腔機能維持管理に関する実施記録」を作成してくれます。この記録の写しは、介護保険サービス利用者に提供されるため、担当のケアマネジャー、施設のスタッフなどと共有し、日常生活のケアに活かすことが推奨されるのです。
まとめ
本記事では、歯みがきの重要性を踏まえ、実際のケアで役立つポイントや注意点について詳しく解説しました。歯みがきの介助をする際には、介助される方の立場に立って行うことで、スムーズに進めることが可能。認知症の方の歯みがきは日によってうまくいったり、難しかったりします。
そのようなときは、一度中断して歯みがきができそうなタイミングを待ちましょう。それでも難しい場合は、ケアマネジャーなど介護の専門家や口腔ケアを行うスタッフと相談し、適切なサポートを求めることが大切です。