文字サイズ
標準
拡大

history閲覧履歴

メニュー

老人ホームの費用が払えないとどうなる?対処法や費用が抑えられる施設の探し方を解説

老人ホームの費用が支払えない場合、最終的に退去を求められる恐れがあります。万が一支払えなくなった場合の対処法、費用負担を軽減できる減免制度などを知っておきましょう。また、入居する前に費用を抑えられる施設を探すことも大切。老人ホームの入居者が費用を支払えない場合にどうなるのか、対処法と活用できる制度などについて解説します。

老人ホームの費用が払えないとどうなる?

費用の支払いを滞納すると、施設から退去を求められます。ただし、滞納した初月に退去を求められることはほとんどありません。まずは、身元引受人への請求と猶予期間を経て退去となります。

本人が支払えない場合は身元引受人に請求される

身元引受人も連帯債務を負う

入居者が居住費など施設利用料の支払いを滞納すると、入居者の身元引受人が支払いの債務者になります。身元引受人とは、入居者の代わりに入院などの意思決定や手続きをしたり、入居者の支払いが滞っている際に支払い義務を負ったりする人のことです。

老人ホーム利用の契約時、利用契約書や重要事項説明書に、本人の署名捺印とは別に、引受人もしくは「保証人」として署名捺印した方を指します。身元引受人も費用が払えないときは、猶予期間を経て強制退去となるのです。

なお、単身者や家族から支援を受けられない等の理由から、身元引受人を立てずに入居したい場合は、保証会社を利用できます。保証会社は、身元引受人と同じように、月額費用の連帯保証をしてくれるのが特徴です。

支払いを滞納すると猶予期間後に退去

身元引受人からの支払いもなく保証会社と契約していない場合は、支払い猶予期間が設けられ、猶予期間の間にも支払いができなければ、退去となります。猶予期間の日数は、契約の際の重要事項説明書のなかに明記されており、おおよそ約3~6ヵ月です。施設によって異なるため、契約時によく確認しましょう。

費用が支払えないときの対処法

費用が支払えないときは、まずスタッフや担当のケアマネジャーに相談しましょう。相談のあと、施設を移動するのか、負担を軽減できる制度を利用するのかなどを決定します。

まずは施設のスタッフやケアマネジャーに相談

まずはスタッフに相談する

費用が工面できないと思ったら、施設のスタッフやケアマネジャーに必ず相談しましょう。相談することで、支払期日の延長や分割払いが可能になることもあるためです。

また、利用できる支援制度の手続きをサポートしてもらったり、より低価格で利用できる施設を紹介してもらったりできる可能性もあります。

支払いの負担が少ない他の施設に転居する

費用をなるべく抑えたい場合、「特別養護老人ホーム」など、主に介護保険サービスが使える老人福祉施設に移ることも検討しましょう。特別養護老人ホームは、入居一時金が不要なため、入居時点での費用負担が月額利用料以外にはありません。ただし、公的機関が運営する施設は費用が安いため、待機期間が長くなる傾向にあることから、待機期間中にどこで暮らすのかも検討する必要があります。

負担を軽減できる制度を利用する

施設の利用負担を軽減できる各種制度を使うと、税金の還付金を受けられたり、介護保険料などを減額してもらえたりします。適用条件はそれぞれ異なるため、分からない場合は施設のスタッフやケアマネジャーへの相談が必要。内容を理解した上で制度を利用しましょう。

減免・助成制度を活用する

施設で活用できる減免制度や助成制度は、所得や利用する部屋のタイプなどによって、補助を受けられる金額が異なります。

特定入所者介護サービス費

減免、助成制度を把握する

「特定入所者介護サービス費」とは、介護保険施設において所得が一定の基準を下回る利用者に、負担限度額を超えた分の居住費や食費が給付される制度です。

介護保険施設は、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院等を指します。特定入所者サービス費制度の対象者は、市区町村民税非課税世帯。非課税世帯のなかで5つの段階に区分されており、所得や預貯金額によって負担限度額が変わる仕組みです。

特定入所者介護サービス費段階表
段階区分 所得 預貯金条件
第1段階 生活保護受給者等 条件なし
世帯全員が市区町村民税非課税かつ老齢福祉年金受給者 単身:1,000万円以下
配偶者あり:2,000万円以下
第2段階 世帯全員が市区町村民税非課税かつ本人の公的年金による収入とその他の収入合計が80万円以下 単身:650万円以下
配偶者あり:1,650万円以下
第3段階① 世帯全員が市区町村民税非課税かつ本人の公的年金による収入とその他の収入合計が80万超~120万円以下 単身:550万円以下
配偶者あり:1,550万円以下
第3段階② 世帯全員が市区町村民税非課税かつ本人の公的年金による収入とその他の収入合計が120万円を超える 単身:500万円
配偶者あり:1,500万円
第4段階 市区町村民税課税世帯 原則、給付対象外

出典:厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索「サービスにかかる利用料」

特定入所者介護サービス費制度を活用した場合の負担限度額

実際に制度を利用した場合の負担限度額は、特別養護老人ホーム・短期入所生活介護(ショートステイ)か、介護老人保健施設・介護医療院・短期入所療養介護かで異なります。さらに、利用する居室タイプでも異なるため、注意が必要です。

特別養護老人ホーム、短期入所生活介護を利用した場合の負担限度額
日額基準
費用
日額負担限度額
()はショートステイの場合
第1段階 第2段階 第3段階① 第3段階②
食費 1,445円 300円 390円
(600円)
650円(1,000円) 1,360円(1,300円)
居住費 ユニット型個室 2,006円 820円 820円 1,310円 1,310円
ユニット型個室的多床室 1,668円 490円 490円 1,310円 1,310円
従来型
個室
1,171円 320円 420円 820円 820円
多床室 855円 0円 370円 370円 370円
介護老人保健施設、介護医療院、
短期入所療養介護を利用した場合の負担限度額
日額基準費用 日額負担限度額
()はショートステイの場合
第1段階 第2段階 第3段階① 第3段階②
食費 1,445円 300円 390円
(600円)
650円
(1,000円)
1,360円
(1,300円)
居住費 ユニット型個室 2,006円 820円 820円 1,310円 1,310円
ユニット型個室的多床室 1,668円 490円 490円 1,310円 1,310円
従来型
個室
1,668円 490円 490円 1,310円 1,310円
多床室 377円 0円 370円 370円 370円

出典:厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索「サービスにかかる利用料」

高額介護サービス費

「高額介護サービス費」とは、月額の利用者負担が定められた負担上限額を超えた場合、超えた分を介護保険から給付される制度です。所得に応じて6段階に分けられており、所得が上がるに応じて負担上限額も高くなります。制度の利用に際して、所得制限はありません。なお、高額介護サービス費制度を利用するには、地元の自治体へ申請が必要です。

段階別高額介護サービス費月額負担上限額
段階 条件 月額負担上限額
第1段階 生活保護受給者等 個人:1万5,000円
第2段階 市区町村民税非課税世帯で公的年金の収入とその他の合計所得が合計80万円以下 個人:1万5,000円
世帯:2万4,600円
第3段階 市区町村民税非課税世帯で第1段階・第2段階に該当しない 世帯:2万4,600円
第4段階① 市区町村民税課税世帯~課税所得380万円未満 世帯:4万4,400円
第4段階② 課税所得380万~690万円未満 世帯:9万3,000円
第4段階③ 課税所得690万円以上 世帯:14万100円

出典:厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索「サービスにかかる利用料」

高額医療・高額介護合算療養費制度

「高額医療、高額介護合算療養費制度」とは、同じ医療保険を使用している世帯のなかで、医療保険と介護保険の両方で自己負担が発生した場合に、合算後の金額から年額の負担上限額を501円以上超えた分が給付される制度です。年収と年齢によって負担上限額が異なります。年収による制度の利用制限はありません。給付を受けるには市区町村の窓口へ申請が必要です。

高額医療・高額介護合算療養費制度の年間負担限度額
所得条件 70歳未満
負担限度額
70歳以上
負担限度額
住民税非課税で年金収入80万円以下 34万円 19万円
住民税非課税 34万円 31万円
年収約370万円以下 60万円 56万円
年収約370~770万円 67万円 67万円
年収約770~1,160万円 141万円 141万円
年収約1,160万円~ 212万円 212万円

出典:厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索「サービスにかかる利用料」

社会福祉法人等による利用者負担額軽減制度

「社会福祉法人等による利用者負担額軽減制度」とは、生活保護の受給者や、低所得で生活が困難な方が、社会福祉法人などの協力によって介護保険サービスの費用負担を軽減できる制度です。食費、居住費、宿泊費、介護サービス費1割負担分のうち4分の1、また老齢福祉年金受給者は2分の1を原則に、自治体が制度の申請者ごとに判断した額を軽減されるのが特徴。

なお、生活保護受給者は、居住費の全額が免除されます。生活保護受給者以外の方で受給対象になる方は以下の通りです。

生活保護受給者以外で低所得者の受給条件

  • 年収が単身で150万円、世帯の人数がひとり増えるごとに
    50万円を加えた額以下
  • 預貯金などが単身で350万円、世帯の人数がひとり増えるごとに
    100万円を加えた額以下
  • 居住用の家など日常生活に必要な資産以外に活用できる資産がない
  • 負担能力のある親戚や家族の扶養に入っていない
  • 介護保険料を滞納していない

出典:社会福祉法人等による利用者負担額軽減制度について

なお、対象サービスも定められています。利用しているサービスが対象範囲かどうかは事前に確認が必要です。

対象サービス
  • 訪問介護
  • 通所介護(地域密着型サービスを含む)
  • 短期入所生活介護(介護予防サービス含む)
  • 定期巡回、随時対応型訪問介護看護
  • 夜間対応型訪問介護
  • 認知症対応型通所介護(介護予防サービス含む)
  • 小規模多機能型居宅介護(介護予防サービス含む)
  • 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
  • 看護小規模多機能型居宅介護
  • 介護福祉施設サービス
  • 介護予防型訪問サービス
  • 介護予防型通所サービス
  • 短時間型通所サービス

出典:社会福祉法人等による利用者負担額軽減制度

生活保護

生活保護とは、収入が国の定めた「最低生活費」に満たない場合、最低生活費の不足分を給付される制度です。収入には年金給付も含まれます。生活保護は扶助の内容を細かく分けていることが特徴。そのなかに、介護サービスの費用や医療サービスの扶助も含まれています。

生活保護を受けるには、自治体の福祉事務所で相談し、申請が必要です。なお、福祉事務所で生活保護の相談をしても、必ず認定される訳ではありません。預貯金額や就労の可能性などを調査された上で、保護が必要と認定された場合に、生活保護の給付を受けられます。

費用が抑えられる施設の探し方

地方の施設を探す

都市よりも地方のほうが、施設費用が安い傾向にあります。さらに、最寄りの交通機関からの距離を考慮しないのであれば、交通アクセスが良くない施設を選ぶのも費用を抑えるコツです。

公的施設を探す

費用を抑える施設も検討

特別養護老人ホームなど、介護保険制度のもとで老人福祉施設、老人保健施設として運営している施設は、入居一時金がかかりません。月額費用も安く抑えられるため、なるべく費用負担を少なくしたい方におすすめです。ただし、公的施設は人気が高く入居順も介護を必要とする優先度で決められるため、すぐには入居できないこともあります。

個室ではなく多床室で探す

多床室とは、1室を2~4人で使う部屋のことです。相部屋が気にならない方であれば、個室で入居するより費用を抑えられます。ただし、プライベートな時間を確保しにくかったり、同室者がいることでストレスを感じたりする場合もあるため、施設見学などを行い、無理なく生活できるかどうか判断しましょう。

在宅での介護も検討しよう

在宅介護をすると、施設を利用するよりも費用負担を軽減できます。ただし、在宅介護を家族だけで行うことは、大きな負担。また、介護を受ける方の状態によっては、施設を利用したほうが良いケースもあります。介護を受ける本人の意思が確認できる場合は、本人とよく相談し、家族が介護疲れを抱え込まないように、外部の介護サービスの利用も検討しましょう。

まとめ

施設に入居する前に、どれくらい費用が必要か、施設のスタッフなどと確認しましょう。想定したよりも多く払う場合に備えて、少し余裕のある予算を用意すると安心です。入居後に費用が足りなくなり、身元引受人にも支払えなければ、退去せざるを得なくなることもあります。もし費用の工面ができそうにない場合は、生活保護などの制度の利用を検討しましょう。

ページトップへ
ページ
トップへ