老人ホームを探す前に整理すべき6つの希望条件
老人ホームは、高齢者を対象にした住まいや介護サービスがある施設の総称です。「そろそろ介護が必要になってきた」、「老後、安心した暮らしがしたい」といった理由から、老人ホームを検討している方は少なくありません。しかし、老人ホームには、「介護付有料老人ホーム」、「住宅型有料老人ホーム」、「特別養護老人ホーム」など数多くの種類があり、施設によって入居条件やサービス内容も様々です。そのため、自分に合った施設を探すには、まず、本人と家族の希望条件を整理する必要があります。「老人ホームを探す前に整理すべき6つの希望条件」では、老人ホームを探す前にまとめておくと良い希望条件についてご紹介しましょう。
希望条件の整理
老人ホームには様々な種類がありますが、入居条件やサービス内容などは施設によって異なります。老人ホームを探している人の中には、「施設の利用を考えているが、どのように探せば良いか分からない」という人も多いのではないでしょうか。
また、せっかく理想の施設を見付けても、「入居対象ではなかった」、「予算が合わなかった」といった理由で入居を諦めなくてはならない人も少なくありません。そのため、老人ホームを探す前に施設を利用する本人や家族で話し合い、希望する条件を整理しましょう。

主にポイントとなるのは、以下の通りです。
- 利用者本人の要介護度
- 在宅介護、通所、入居
- 予算の上限
- 地域、立地条件
- 利用する時期
- 希望する過ごし方
すべての条件を満たす施設を見付けることは難しいと言えます。しかし、あらかじめ希望条件をまとめ優先順位を決めておくことで、より理想に近い施設を見付けることが可能となるのです。
要介護度
要介護度は、介護サービスがどの程度必要かを判断するための基準です。要介護度は、「要支援1~2」、「要介護1~5」までの7段階と、介護・支援が必要ない「非該当」に分けられます。順に見ていきましょう。
要介護度の目安 | |
---|---|
要支援1 | 日常生活の基本的な動作はほぼ自分で行えるが、複雑な動作などは部分的な介助が必要な状態。 |
要支援2 | 日常生活の基本的な動作はほぼ自分で行えるが、複雑な動作などは要支援1と比べて介助が必要な場面が多い状態。 |
要介護1 | 基本的にひとりで生活できるが、要支援2と比べ、運動機能や思考力の低下、問題行動などが見られる。日常生活において部分的な介護が必要な状態。 |
要介護2 | 起立や歩行が自力で行えない場合があり、食事、排せつなどの動作に対し部分的な介護が必要。要介護1と比べ、さらに運動機能や思考力の低下、問題行動などが見られる。 |
要介護3 | 起立や歩行などが自力で行えず、排せつ、入浴、着替えといった日常生活の全般において介護が必要。思考力や理解力の低下、認知症の症状なども認められる。 |
要介護4 | 基本的な動作が行えず、日常生活において全面的な介護が必要な状態。思考力や理解力の低下、問題行動が見られ、意思疎通が難しい場合がある。 |
要介護5 | 寝たきりの状態で、食事、排せつ、寝返りなどの介護が必要。意思疎通が困難な状態である。 |
非該当 (自立) |
日常生活において、支援や介護の必要がない状態。 |
要介護度に応じて、介護保険で受けられるサービスや支給限度額が異なります。また、老人ホームによって、「自立~要介護度〇までの方」、「要介護度〇以上の方」など入居条件を設けている場合もあるため、施設を探す前に必ず利用者本人の要介護度を確認しましょう。要介護度認定は、住民票のある市区町村の役所窓口で申請。結果が分かるまでの期間は、原則1ヵ月以内となっています。
在宅介護・通所・入居
介護が必要となった場合、「在宅介護」、「通所」、「入居」といったサービスがあります。それぞれについて詳しく解説しましょう。
在宅介護

在宅介護は、要介護度認定を受けている人が、老人ホームや介護施設などに入居せず、自宅で暮らしながら必要な介護サービスなどを受けることです。慣れ親しんだ自宅で、できるかぎり自立した生活を送ることを目的としています。
在宅介護には、ホームヘルパーが介助を行う「訪問介護」(ホームヘルプサービス)、自宅の浴槽で入浴できない人のために浴槽を持参して入浴の介助を行う「訪問入浴介護」、リハビリテーションの専門職がリハビリを行う「訪問リハビリテーション」、看護師や保健師などの医療従事者が療養上の世話や助言を行う「訪問看護」など様々。また、在宅介護を行う際、介護保険制度を利用することで介護に必要な福祉用具をレンタルしたり、購入したりすることができます。
通所
通所は、自宅から介護施設などに日帰りで通い、介護を受けるサービスのことです。通所型の介護サービスには、食事や入浴などの介護サービスを受けたり、レクリエーション活動を行ったりする「通所介護」(デイサービス)、医師によって利用を認められた人がリハビリを受けられる「通所リハビリテーション」(デイケア)などがあります。
また、認知症の高齢者を対象とした「認知症対応型デイサービス」や、重度の要介護者が利用できる「療養通所型デイサービス」なども存在。なお、通所型のサービスを利用する人の中には、在宅介護と通所の両方を組み合わせて介護サービスを受ける人もいます。
入居
入居は、老人ホームや介護施設などに入って、介護福祉士から様々なサポートや介護サービスを受けながら生活することです。多くの施設では、介護士や理学療法士だけではなく、看護師などが常駐しているため、安心して過ごすことができます。入居できる条件は、要介護度や認知症の有無など施設によって様々。また、施設内で受けられるサービスなども異なります。
在宅介護、通所、入居のどの方法が自身の心身状況に合っているかを考慮し、適切なサポートを受けましょう。
予算の上限

老人ホームに入居するには、初期費用や月額費用をはじめ、急な病気の治療費、娯楽費など様々な費用がかかります。せっかく希望の老人ホームを見付けても、予算が合わなければ入居することができません。
無理のない予算のなかで入居するためには、自身の資金や収入の把握はもちろん、具体的に必要となる費用を確認しておくことが肝心です。
資金計画を立てるときに確認しておくと良いポイントは、以下の通りとなっています。
- 預貯金、売却可能な株式や債券、不動産といった資産
- 年金収入、有価証券の配当など、定期的な収入
- 満期を迎える生命保険
- 利用可能な補助金や助成制度
- 入居に必要な初期費用(入居一時金、保証金など)
- 毎月必要となる月額費用(家賃、介護サービス費など)
初期費用や月額費用は施設によって異なるため、事前に問い合わせましょう。
地域・立地条件
老人ホームを探す前に、施設の立地条件を確認することも大切です。利用者本人の希望条件はもちろん、交通の利便性、周辺環境などを考慮しましょう。施設探しの際、考えておくと良い条件は以下の通りです。
- 住み慣れた地域が良いかどうか
- 家族や友人が訪問しやすい場所かどうか
- 最寄り駅やバス停からの所要時間はどれくらいか
- 周辺環境で重視したいものは何か(公園、商業施設など)
- いざというとき、近くに病院や介護サービス事業所などがあるか
施設が都市部か郊外にあるかによって、かかる費用や交通利便性などが異なります。何を優先したいかを決めながら、利用者本人の希望に合った施設を探しましょう。
利用する時期
老人ホームを利用したいと考える時期は人それぞれ。主な理由を見ていきましょう。
- 1要介護度が上がり、介護者の負担が増えた
-
本人の要介護度が上がればその分、介護者の身体的な負担が増えてしまい、介護の限界を感じることもあります。
仕事をしながら介護をしている場合には、介護の時間が増えることで両立が難しくなり、介護離職に発展するケースも少なくありません。
また、「家族に迷惑をかけたくない」という理由から、施設への入居を考える場合もあります。
- 2在宅介護が必要となった
- 病気やケガで入院していた人の中には、退院後、在宅介護が必要となる人も。しかし、自宅が介護できる環境ではなかったり、介護してくれる人が近くにいなかったりなど、様々な理由で在宅介護が困難なケースがあります。そのような場合でも、食事や日常生活支援などのサービスが受けられる施設に入居することで安心して生活できるため、老人ホームや介護施設を検討する人もいます。
- 3充実したシニアライフを送るため
- 老人ホームのなかには、食事の提供、掃除などのサービスをはじめ、露天風呂、トレーニングルームなどの設備、季節ごとのイベント、サークル活動、レクリエーションなどに力を入れている施設も存在。支援や介護の必要がない健康的な人でも、充実したシニアライフを送るために施設を利用したいと考える人も少なくありません。
希望する過ごし方
老人ホームの利用者本人が希望する生活を送るためには、事前に施設を見学し、可能であれば体験入居することもおすすめです。見学や体験の際にチェックすると良いポイントをまとめました。
- 施設の雰囲気(スタッフや他の入居者様の表情など)
- 施設で受けられるサービスの内容
- セキュリティー面
- 個室や設備などの居室環境
- レクリエーションやイベント
- 施設の周辺環境

パンフレットやWebサイトの情報だけでは分かりづらい内容、気になることがあれば気軽に聞いてみましょう。
また、施設における1日の流れを確認することで、希望する過ごし方であるかどうかはもちろん、施設が自分の心身状態に合っているかが分かります。
まとめ
「老人ホームを探す前に整理すべき6つの希望条件」では、老人ホームを探す前に整理しておくと良い希望条件についてご紹介しました。老人ホームの種類は多く、施設ごとに入居条件が異なるため、まずは自分の心身状況を把握した上で予算や立地条件、希望の過ごし方などを整理しておきましょう。事前に利用者本人や家族の希望内容をまとめておくことで、より理想に合った施設を見付けることが可能となるのです。