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老人ホーム入居に向けた資金計画|費用の目安・シミュレーションを確認しよう

核家族化や介護期間の長期化などの背景から、「老人ホーム」での生活を希望する高齢者が増え、そのために必要な資金計画の重要性が高まっています。老人ホームは介助と介護、生活支援サービスを受けながら余生を過ごす「終の棲家」となり得る場所。入居には「入居一時金」、「月額利用料」などの費用がかかります。入居する場合には、入居期間に必要な費用と、自分の資産が釣り合うか考えることも必要です。「老人ホーム入居に向けた資金計画|費用の目安・シミュレーションを確認しよう」では、資金計画のシミュレーション、どんな老人ホームがあるのか、詳しくご紹介します。

老人ホーム入居に向けた資金計画

老人ホーム入居に向け資金計画を立てる

一般的に、老人ホームの費用は月15万円程度とされています。一方、「厚生年金」と「国民年金」の総額は、厚生労働省の2020年(令和2年)資料によると月15万円程度でした。老人ホーム以外にかかる費用を考えると、余裕のある状況ではありません。安心して老人ホームに入居し、終の棲家とするためには、収入と支出のバランスを考えた資金計画を作成することが大切です。

資金計画の作り方について、大きく5つの手順に分けて解説します。

1資産状況の整理

老人ホームへの入居を考える際、まず、資産の総額を明確にすることが必要です。これには、銀行預金、証券、不動産、保険、年金、債権など、所有しているすべての資産があてはまります。自分で整理することが難しい場合には、専門家のアドバイスを求めることもひとつの方法です。「ファイナンシャルプランナー」や「税理士」などの専門家に相談することで、より正確かつ効率的な資金計画を立てることができます。

資産状況の整理は、老人ホーム入居をスムーズに進めるための基盤となる作業です。十分な時間をかけて正確な資金計画を立てることが、安心して老後を迎えるための第一歩となります。

2今後の収入の確認
安心した老後生活を目指す

自身や家族の現状の収入、今後の収入の見込みを確認します。今後、無理なく老人ホームの費用を支払っていけるかどうかの判断材料です。

年金収入は、メインとなる収入。公的な年金には、国民年金と厚生年金の2種類があり、それぞれの受給額は納付期間や現役時代の所得によって受け取れる年金額が異なります。具体的な受給額を知るためには、最寄りの「年金事務所」や「街角の年金相談センター」で、見込み額の試算が可能。また、1年に1度送られてくる「ねんきん定期便」でも確認できます。

なお、不動産を所有している場合は、売却を検討するか、賃貸として収入を得るか、そのまま保有するかといった選択肢を検討することが必要です。得られる収入は、老人ホームの費用の一部を補填するのに有効な手段になります。

3入居期間と自分の健康状態の想定

健康状態を考慮して、どれくらいの期間老人ホームに入居するかを想定します。入居期間を想定することで、必要な資金の総額の見込みを試算することが可能です。具体的には、老人ホームの月額費用や入居時の一時金、日常の生活費などを、想定する入居期間で計算したあと、自分の収入や貯蓄と照らし合わせます。

また計画の際に、「おおよそ何歳まで利用するか」という現実的な問題に向き合わなければいけません。自分の健康状態を考え、精度の高い入居期間を想定することが、老後の安定した生活に繋がります。

4老人ホームはどんな種類があるかを確認

老人ホームの資金計画を考える際、老人ホームの種類を確認することが重要です。老人ホームは、サービスの内容や提供する「医療ケア」のレベルによって、複数の種類に分類され、費用も様々。そのため、入居を検討する際には自身の健康状態や生活スタイル、希望するサービス内容を考慮し、適切な老人ホームの種類を選択することが必要です。

老人ホームのサービスと費用目安
概要 提供される
サービス
費用目安
入居
一時金
月額
利用料
特別養護
老人ホーム
介護が必要な方の老人施設、介護が目的。 ・介護(入浴/排せつ/生活支援)
・食事
・リハビリ
・健康管理
・看取り
0円 5~
15万円
1
介護老人
保健施設

在宅復帰と在宅療養支援を行うための施設。

主に長期入院をしていた方が、退院して家庭に戻るまでの間に利用することの多い施設。

介護保険が適用。

・入浴介助
・排せつ介助
・食事介助
・機能訓練
・医療ケア
・レクリエーション
・看護ケア
・リハビリテーション
・ターミナルケア
0円 6~
17万円
1
都市型軽費
老人ホーム

原則、既成市街地等(首都圏、近畿圏、中部圏にある一定の区域)に設置された、都道府県知事が指定する施設。

東京都、神奈川県、埼玉県、愛知県、大阪府など都市部を中心に広がっている。

・介護を必要としない入浴/排せつ/生活支援
・食事
・生活相談
・緊急時の対応
0~
30万円
10~
30万円
ケアハウス
(軽費老人
ホームC型)
自立型と
介護型あり

生活に不安を抱えた60歳以上の方が食事と生活サービスの両方を受けることができる。

2008年(平成20年)に制度が一元化され、ケアハウスと呼ぶようになる。

・安否確認
・生活相談
・食事
・緊急時の対応
0~
数十万円
10~
30万円
介護付き有料
老人ホーム

24時間介護スタッフが常駐し、洗濯や掃除など身の回りの世話が受けられる。

食事、入浴、排せつなどの介助サービスも受けられる。

都道府県の認可を受けている。

自立型、混合型、介護専用型の3種類。

・介護(入浴/排せつ/生活支援)
・食事
・健康管理
・リハビリ
・医療ケア
・安否確認
・生活相談
0~
数百万円
15~
30万円
住宅型有料
老人ホーム

主に自立、要支援もしくは要介護度が低い高齢者の方を対象にした施設。

介護は外部サービスを利用。

施設内に介護士がいないこともある。

基本は元気な方なので、レクリエーションが盛んなことも多い。

・介護(入浴/排せつ/生活支援)
・食事
・健康管理
・リハビリテーション
・医療ケア
・安否確認
・生活相談
0~
数百万円
15~
30万円
認知症
グループ
ホーム
(認知症対応型共同生活
介護)

認知症対応型共同生活介護として介護保険上に位置付けられ、認知症の方へ少人数(5人から9人)を単位とした共同住居の形態でケアを提供している。

要支援2以上の認定を受けている認知症の方が対象。

・介護(入浴/排せつ/生活支援)
・食事
・健康管理
・リハビリ
・医療ケア
・認知症ケア
・看取り
・夜間支援
0~
数十万円
15~
20万円
健康型
(自立型)
有料老人
ホーム

自立した介護の必要でない方が入居できる病院の特別室のようなイメージ。

富裕層向けサービスが充実。

有料老人ホームのうち1%ほどしかない。

アクティブな高齢者の方向け。

・介護を必要としない入浴/排せつ/生活支援
・食事
・安否確認(見守り)
・健康管理
・生活相談
・緊急時の対応
・リハビリテーション
・レクリエーション
0~
数億円(退去時に未償却分の返還あり)
10~
40万円














外部の介護サービス(在宅・訪問介護)を利用した、高齢者向けの賃貸アパート、マンション。

外泊や外出も比較的自由にできる。

安心を求める方向け。

・安否確認
・生活相談
0~
数十万円
10~
30万円


特定施設入居者生活介護認定を受け、内部の介護サービスが受けられる高齢者向け賃貸アパート、マンション。

外泊や外出も比較的自由にできる。

安心を求める方向け。

・安否確認
・生活相談
・介護・看護サービス
0~
数千万円
15~
40万円
シニア向け
分譲マンション
(高齢者向け賃貸住宅)
購入

高齢者が購入できるバリアフリー設計を重視した分譲マンション。

介護サービスは外部利用する。

なし 2 数千万~数億円 10~
30万円

1 ただし、負担限度額認定制度を使えば減免が可能で、原則非課税世帯が対象。部屋代や食費が安くなる。
2 フロント(受付)に1人常駐することがある。

5老人ホームにかかる費用を把握
入居後の費用を試算

老人ホームの費用は、施設の種類やサービス内容、地域によって異なるため、具体的な金額を知ることで今後の資金計画を立てやすくなります。

老人ホームへの入居に際しては、初期費用として入居一時金が必要となることも多く、加えて食費や光熱費、医療費などを含む月額利用料も必要。入居一時金と月額利用料は施設の設備やサービスの充実度により大きく変動するため、確認しておくことが大切です。さらに、老人ホームのサービス内容によっても費用が変わることもあります。例えば、24時間体制での看護や医療サービスが提供される施設は、その分費用が高くなる傾向です。

一方、自分で日常生活を送ることができる人向けのサービスが中心の施設は、費用が抑えられます。また、老人ホームの立地、施設の規模、設備の新しさ、都心部に位置しているかどうかも、費用が変わる要因です。

これらの点を踏まえ、老人ホームを選ぶ際には自分の生活スタイルや健康状態、予算に合わせて、最適な施設を選ぶことが求められます。具体的な費用を知ることで、今後の資金計画をしっかりと立てることが可能です。

入居後の費用をシミュレーション

老人ホームにかかる費用について理解したところで、実際の入居後にかかる費用を3パターンに分けてシミュレーションしました。

ケース①サービス付き高齢者向け住宅(一般型)を選んだ場合

ケース①では、介護を必要とすることがあまりないため、比較的自由に過ごせて費用も高くないサービス付き高齢者向け住宅(一般型)を選択。費用を差し引いた最終の総資産が3,000万円残る計算のため、家族へ不動産を残すことが可能です。

基本情報 入居年齢:70歳
要支援:2
想定居住年数:15年
総資産 預貯金:3,000万円
不動産:一戸建て(土地付き)3,000万円相当
合計:6,000万円
収入 年金:30万円/2ヵ月
15年間の合計:2,700万円
費用 入居一時金:3,000万円
月額利用料:15万円
15年間の合計:5,700万円

ケース②介護付き有料老人ホーム(介護専用)を選んだ場合

ケース②では、要介護度が2であること、また今後の要介護度の上昇を想定し、重度の要介護度でも対応できる介護付き有料老人ホームを選択。収入と預貯金だけで10年間の老人ホームの費用を賄うことができるため、不動産を売却せず、家族に残したまま入居することが可能になります。

基本情報 入居年齢:75歳
要介護:2
想定居住年数:10年
総資産 預貯金:2,000万円
不動産:一戸建て(土地あり)2,000万円相当
合計:4,000万円
収入 年金:40万円/2ヵ月
10年間の合計:2,400万円
費用 入居一時金:300万円
月額利用料:20万円
10年間の合計:2,700万円

ケース③特別養護老人ホームを選んだ場合

ケース③では、要介護度が高く総資産も少ないことから、入居一時金が不要で介護サービスを受けることができる特別養護老人ホームを選択。特別養護老人ホームは看取りも可能なため、特別大きな病気にならなければ最期まで入院する必要がありません。そのため、追加費用が発生しにくいのも資金計画上ではメリットです。

基本情報 入居年齢:80歳
要介護:5
想定居住年数:10年
総資産 預貯金:2,000万円
不動産:なし
合計:2,000万円
収入 年金:25万円/2ヵ月
10年間の合計:1,500万円
費用 入居一時金:0円
月額利用料:10万円
10年間の合計:1,200万円

利用できる減免・助成制度を把握しておこう

利用できる「減免制度」、「助成制度」を把握して活用すれば費用負担を軽減できます。施設で活用できる減免制度や助成制度は、所得や利用する部屋のタイプなどによって補助を受けられる金額が異なることに注意が必要です。

特定入所者介護サービス費

「特定入所者介護サービス費」とは、所得が一定の基準を下回る入所者に、負担限度額を超えた分の利用費や食費が給付される制度です。特定入所者サービス費制度の対象者は、市町村民税非課税世帯になります。非課税世帯のなかで4段階に区分されており、所得や預貯金額によって負担限度額が変わる仕組みです。市区町村の窓口にて申請することができます。

高額介護サービス費

「高額介護サービス費」とは、月額の入所者負担が定められた負担上限額を超えた場合、超えた分を介護保険から給付される制度です。所得に応じて細かく分けられており、所得が上がるに応じて負担上限額も高くなります。所得制限はありません。制度を活用するには、地元の自治体の介護保険課へ申請が必要です。

高額医療・高額介護合算療養費制度

減免、助成制度を申請する

「高額医療・高額介護合算療養費制度」とは、同じ医療保険を使用している世帯のなかで、医療保険と介護保険の合計額が高額になった場合、合算後の金額から年額の負担上限額を超えた分が給付される制度です。負担上限額は年収と年齢によって変動しますが、年収による制度の利用制限はありません。給付を受けるには市区町村窓口にて申請が必要になります。

まとめ

老人ホームに入居し長い時間を過ごすためには、多くのお金が必要です。老後も安心して生活を送るためには、予算に合った最適な老人ホームを選ぶことが大切になります。資金計画のコツは、想定しているよりも少し多めに予算を見積もっておくこと。急な病気など、万が一の場合に備えたり、老人ホームでの生活を少し贅沢にしたりと、いろいろなことに役立ちます。老後を充実させるために、しっかりとした資金計画を立てることがおすすめです。

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