入院・医療費の負担を軽くする公的制度を一覧で解説
高齢になると入院費用、医療費が高額になってしまう可能性がありますが、公的制度を利用すれば負担の軽減が可能です。なお、負担軽減に利用できる公的制度には「高額療養費制度」、健康保険から支給される「傷病手当金」などが存在。「入院・医療費の負担を軽くする公的制度を一覧で解説」では、入院費用、支払いが難しい場合の対処法、負担を抑えることができる公的制度について解説。医療費の負担を軽くするための公的制度についてしっかりと把握することができます。
入院費用の相場
入院時における、自己負担額の平均は208,000円。また、1日あたりの自己負担額は平均23,300円です。ただし、この入院費用はあくまで相場であり、治療内容及び入院期間によっても前後します。
入院費の内訳
入院時にかかる費用の内訳は以下の通りです。
入院基本料
医療機関の規模、種類によって設定される入院基本料は異なり、「入院基本料×入院日数」で入院費用の計算が可能
治療費、手術費
治療に利用した治療費、薬代、手術費用(健康保険適用)
先進医療代
高度な医療技術である先進医療を受けた場合、技術料部分は全額自己負担
食事代
全国一律で1食あたり自己負担額は460円(超過分は自己負担の必要性なし)
差額ベッド代
個室などを指定した場合に差額ベッド代が発生し、1日あたり平均6,000円程度
入院中の生活費
日用品、衣類の購入代、クリーニング代など
入院費、医療費の負担を軽くする公的制度
公的制度を利用することで、入院費、医療費の負担を軽くすることが可能です。
高額療養費制度

高額療養費制度とは、1ヵ月の間にかかった医療費が高額になり、自己負担限度額を超えた場合に、超えた分を負担して、払い戻してくれる制度。自己負担限度額は年齢、所得によって異なります。
加入している健康保険に支給申請書を提出して申請すると、受診日から約3ヵ月後に超過分を支給。ただし、差額ベッド代、食事代、先進医療の技術代などは含まれないことや、月をまたぐと別計算になる点に注意が必要です。
限度額適用認定証
「限度額適用認定証」の交付を受けていれば、医療機関での支払いが高額になった場合、支払いが自己負担限度額までとなります。前述した高額療養費制度では、あとから払い戻しがあっても、一旦かかった医療費の全額を支払う必要があるため、一時的に負担が増大。入院前に限度額適用認定証を取得しておけば、経済的な負担を減らせます。ただし、高額療養費制度と同様に、差額ベッド代、食事代、先進医療の代金には適用されません。加入している健康保険組合、国民健康保険にて、限度額適用認定証が申請できます。
高額医療・高額介護合算療養費制度
「高額医療・高額介護合算療養費制度」とは世帯内において、健康保険と介護保険における1年間の自己負担額の合算額が著しく高額であった場合に、負担額を軽減する制度。高額医療・高額介護合算療養費制度での自己負担限度額は所得、年齢ごとに定められており、一般的な所得の70~75歳以上の方は560,000円、75歳未満の方は600,000円です。自治体によっては、自己負担額が高額になった際に申請の案内が送付され、市区町村の窓口にて申請します。
高額療養貸付制度
「高額療養貸付制度」とは、医療費の支払いが高額になり、高額療養費が支給されるまでの間、無利子で貸付を行う制度。貸付金額は、高額療養費支払い見込み額の8~9割で、国民健康保険では9割、全国健康保険協会では8割になります。なお、医療機関などの承諾が得られていない場合は利用できないこともあり、注意が必要です。
高額療養委任払い制度
「高額療養委任払い制度」とは、国民健康保険に加入している方で、医療費が高額になった場合において、高額療養費の受領の権限を医療機関などに委任。貸付制度と同様に支払いを自己負担限度額内にとどめられる制度です。自己負担分を医療機関などに支払えば、残りの高額療養費分は、医療機関へ国民健康保険から支払われる仕組みです。利用には、国民健康保険への申請が必要になります。
傷病手当金制度
傷病手当金制度とは病気、ケガで働けずに会社を3日以上連続して休んだ場合、4日目以降より、健康保険から給付金が支給されるものです。ただし、会社を休んだ期間に会社から手当金よりも多い報酬を受け取った場合には、支給されません。なお、1日あたりの支給額は、標準報酬日額相当額(直近12ヵ月間における各月の標準報酬月額を平均した額÷30日)の2/3です。傷病手当金制度は、ハローワークまで申請が必要になります。
入院費、医療費の支払いが難しい場合
入院費が高額になって支払いが難しい場合は、支払い方法について医療機関まで相談しましょう。支払い期限の延長、分割払い、費用軽減をするためのアドバイスをしてくれる場合もあります。また、民間の「医療ローン」を利用すれば、病院と提携している金融機関から借り入れが可能です。ただし、医療ローンは一般的なカードローンよりも金利が低い分、審査が厳しくなっています。
まとめ
入院費、医療費は高齢になるほど、高額な金額になる可能性が高いとされています。入院費、医療費の負担を軽くするには、公的制度が利用できるのです。なお、公的制度を利用する際の自己負担額は年齢、所得によって異なるので、住んでいる地域の役所の窓口まで問い合わせましょう。また、公的制度を利用しても費用の支払いが難しい場合には医療機関へ相談して、分割払いや、医療ローンを利用することを検討しましょう。