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老人ホームの入居一時金とは?相場や返金額の例も解説

老人ホームに入居する際、必要な費用のひとつが入居一時金です。老人ホームへ支払う金額を決める基準は、明確には定められていません。0円の施設もあれば数千万~数億円が必要な施設もあるなど、老人ホームによって金額が様々です。入居する際にかかる入居一時金の仕組み、施設ごとの相場、知っておきたい制度などについてご紹介します。

入居一時金とは?仕組みを解説

老人ホームと電卓

老人ホームの入居一時金とは、利用するにあたって家賃などの費用を全額前払い、一部前払い、選択方式での支払いのうち、いずれかの方法で支払うお金です。

入居後、入居者が施設の利用を続けると考えられる期間を「想定居住期間」と言い、入居一時金は、1ヵ月分の家賃などの金額に契約期間の月数を掛けた金額で算定。想定居住期間は施設内入居者のうち、約半分が入居を続けると予想される期間をもとに算出されます。厚生労働省が公示している「簡易生命表」を根拠とし、入居時点の体調や年齢などによって、入居を申請した方の想定居住期間が設定される仕組みです。

ただし、同じ種類の施設であっても期間が同じとは限りません。施設ごとに算出方法などを確認したうえで、どの施設を利用するかを決めることが重要です。

想定居住期間内で退去した場合は入居一時金の残額を返金

入居者が亡くなるなどの理由で早く退去した場合、入居一時金の残額が返金されます。ただし、いくら返金されるかは、入居期間や施設との契約内容で異なるため、確認が必要です。なお、入居から3ヵ月以内に退去した場合は、日割り家賃分を差し引いた残額がすべて返金されると法律で定められています。

想定居住期間を超えた場合でも追加の支払いは発生しない

想定を超えて入居し続けても、追加の支払いは基本的に発生しません。ただし、想定居住期間を超えて契約が継続する場合に備えて、設置者が受領する金額を入居一時金として、すでに支払っている場合に限ります。月払いの支払額も同じままです。つまり、入居する期間が長ければ長いほど、結果として費用負担は軽くなります。

入居一時金の相場|施設の種類別の比較

公的機関が運営している施設は、基本的に入居一時金がかかりません。しかし、民間企業などが運営している場合、施設によっては入居一時金の支払いが求められます。施設の種類で相場が異なるため、注意が必要です。

老人ホームの種類別入居一時金費用相場
施設の種類 入居一時金相場
公的機関が主に運営 特別養護老人ホーム 0円
介護老人保健施設
介護医療院
(介護療養型医療施設)
養護老人ホーム
施設によっては
民間運営
軽費老人ホームA型 0~30万円
軽費老人ホームB型
都市型軽費老人ホーム
ケアハウス 0~数十万円
民間が主に運営 介護付き有料老人ホーム 0~数百万円
住宅型有料老人ホーム
認知症グループホーム 0~数十万円
健康型有料老人ホーム 0~数億円
サービス付き
高齢者向け住宅
(一般型)
0~数十万円
サービス付き
高齢者向け住宅
(介護型)
0~数千万円

施設が入居一時金を求める際は、金額の算定根拠を書面で明示するよう、老人福祉法第29条9項で定められています。そのため、費用が高すぎると感じるときは、施設に内訳や計算方法を見せてもらうことも可能です。算出方法を見ても分からない場合は、職員に尋ねてみましょう。

償却とは

償却とは、初期償却を引いた残りの入居一時金を想定居住期間で割り、分割したうえで毎月支払った金額が使われていくことです。想定居住期間を全うせずに退去した場合は、使われていない残額が返金されます。想定居住期間を超えて退去すると、お金は返金されません。償却は、想定居住期間すべてで均等に割る方法と、初期償却で最初に何割かを支払ったうえで残額から使っていく方法があります。

初期償却・初期償却率を確認しよう

初期償却とは、入居一時金のうち、想定居住期間内で退去しても返金されない金額のことです。初期償却率は、返金されない金額の割合を表します。なお、短期解約特例制度(通称[90日ルール])を利用し、クーリングオフをした場合、初期償却はされません。

償却を用いた返金額の例

想定居住期間や初期償却率は施設によって大きく異なるため、複数の施設を比較することが大切です。そこで、想定居住期間内で退去した場合の返金額の求め方を、例を用いてご紹介します。

例では、施設をAとし、入居一時金は1,000万円、初期償却率が40%、想定居住期間は10年(120ヵ月)です。

この場合、まず、一時入居金と初期償却率を掛けて初期償却を求めると、1,000万×0.4で400万円。残額から毎月償却されるため、償却される金額は以下の通りです。

  • 初期償却を引いた残額:1,000万-400万=600万
  • 償却額:600万÷120ヵ月=5万

つまり、毎月5万円ずつ使われていきます。5年(60ヵ月)で施設Aから退去した場合、返金額は以下の通りです。

  • 償却済みの金額:5万×60ヵ月=300万
  • 返金額:600万-300万=300万

よって、施設Aでは300万円が返金されます。

なお、初期償却を用いない施設もゼロではありません。初期償却するかどうかは施設側が決めるため、事前確認が必要です。

クーリングオフ制度とは

クーリングオフ制度とは、入居から3ヵ月以内であれば、入居していた期間の家賃以外の入居一時金を返金してもらえる制度です。例えば、入居から1ヵ月で退去した場合、1ヵ月分の家賃を引いた残りが返金される仕組み。クーリングオフを利用すると、初期償却はされません。正式名称を「短期解約特例制度」と言い、通称「90日ルール」と呼ばれます。

制度が作られた理由は、入居者の退去時に施設との間でトラブルが多発したためです。制度が整えられる前までは、入居期間が1週間でも初期償却分が返還されない事態がたびたび発生していました。制度が整い短期解約特例制度が作られたことにより、状況が改善。制度の期間内で退去した場合は返金してもらえるようになりました。

保全措置とは

入居者と家族

保全措置とは、施設の経営が悪化するなどで倒産した場合に、入居一時金の未償却分を保障することです。

老人福祉法第29条によると、施設が入居一時金を受け取る場合は、この保全措置を講じなければいけません。

入居一時金を支払っているにもかかわらず、保全措置をしていない施設は法律違反です。

なお、老人福祉法に付随する厚生労働省の告示では、保全するのは500万円か未償却金のうち金額が低いほうとされています。

つまり、500万円以上の保全は明記されていません。施設の倒産時に未償却分が500万円以上残っていても、全額返金されない可能性があります。保全額がいくらまでなのかは、施設への確認が必要です。

入居一時金が0円の施設も

公的機関が運営する特別養護老人ホームや介護老人保健施設、介護医療院などの公的施設は、入居一時金が一切かかりません。また、民間運営の施設でも、不要としている場合があります。ただし、民間で入居一時金が不要な施設は、必要としている施設よりも月額利用料が高くなりやすい傾向にあるため、注意が必要です。

施設は入居一時金の金額だけで判断しない

入居一時金の金額は施設により異なるため、予算も考慮しながら比較することは大切です。しかし、入居一時金が高いからといって、介護などの対応が手厚いとは限りません。また、安くても、追加料金がかさむ可能性もあります。施設に求める項目をすべて考慮して、複数の施設を比べるのがおすすめです。疑問に思うことがあれば、施設や相談窓口に問合せてみましょう。

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