親の介護が必要になったら|介護サービスを利用するまでの流れを解説
元気だと思っていた親が病気、ケガをして、突然介護が必要になった場合、何から始めれば良いのか、分からない方も少なくありません。本記事では、親が介護状態になった場合にやるべきことをまとめました。市区役所・町村役場の福祉課や地方包括支援センターへの相談をはじめ、介護サービス申請やサービス利用までの流れが分かります。
1.市区役所や町村役場の福祉課に相談する
親の介護が必要になった場合、まずは親が居住する市区役所・町村役場の福祉課に相談しましょう。
福祉課は、高齢者の福祉に関すること、介護保険事業にかかわる業務、高齢者福祉施設にかかわる業務などを行っています。
福祉課は、介護状態になった親に対して、どのような手続きをすれば良いのか、相談することが可能です。また、親が居住する地域を管轄する「地域包括支援センター」を紹介してくれます。
2.地域包括支援センターに連絡する

「地域包括支援センター」とは、保健師、看護師、社会福祉士、ケアマネジャー(介護支援専門員)などがチームとなって、高齢者やその家族に対して、健康の保持、生活の安定などに必要な援助を行う相談窓口です。
高齢者の介護、健康、医療、福祉など、様々な面でサポートしてくれます。地域包括支援センターには、専門的知識を持った職員が在籍。
高齢者が今まで居住していた地域で、日常生活における支援を受けるための相談に乗っており、介護保険を申請するために必要な窓口の役割も担っています。
3.主治医に相談する

親の主治医に、介護が必要になっていることを相談しましょう。介護保険の要介護(要支援)認定を申請する際には、「主治医意見書」が必要となります。
意見書には、医師名、病院名、所在地、電話番号を記載する欄があり、医師に記入してもらわなくてはなりません。
主治医に、親がケガや病気をする前の生活状況について説明し、介護認定を受けないと生活が維持できないことを話しておくと、主治医意見書の記入をスムーズに進めることが可能です。
4.要介護認定を申請する
主治医の意見書を受け取ったあと、「要介護[要支援]認定」を申請します。どれくらいの介護レベルであるかを専門家に判定してもらってから、介護保険サービスを利用することが可能です。
介護保険サービスの受給者は、65歳以上の第1号被保険者か、40歳以上65歳未満の医療保険に加入している特定疾患(初老期認知症、脳血管疾患、末期がんなど)によって要介護者や要支援者になった場合のみであり、要件に当てはまらない場合には申請できません。
要介護(要支援)認定の手続きに関する手順は以下の通りです。
介護保険の申請をする
親が居住している市区町村の窓口か、地域包括支援センターの窓口に介護保険申請をしましょう。
介護保険の申請は、本人でも家族でも可能です。申請に必要な書類は、所定の申請書、介護保険の被保険者証(65歳以上)、医療保険の保険証(40歳以上65歳未満の人)、主治医意見書があります。
また、マイナンバーを記入する欄もあるため、マイナンバーが分かる書類も必要です。介護保険の申請書は、市区町村の窓口や地域包括支援センターで入手することができます。
自治体によっては、インターネットからのダウンロードが可能のため、事前に記入しておくとスムーズに申請することができるでしょう。
また、申請する人の身分証明書も必要です。運転免許証やマイナンバーカードなど、顔写真付きの証明書を持参しましょう。
介護認定調査を受ける
専門家が介護に必要なレベルを判定するための訪問調査をし、介護や支援が必要な要介護度を決定します。
市区町村が委託した事業所の調査員、または市区町村の担当職員が自宅を訪問し、厚生労働省の告示によって定められている基本調査と特記事項について調査。これらの調査は74項目あり、全国共通です。
基本調査の具体的な内容をまとめました。
- 1身体機能、起居(ききょ)動作
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四肢に麻痺はあるのか、体幹や四肢に筋力低下はないか、基本動作能力(寝返り、起き上がり、座る、立つ、立位を保つ)、歩行能力などを確認する。
- 2生活機能
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食事や身の回りの動作(着替える、歯をみがく、顔を洗う、服を着替えるなど)、排泄行為(トイレで用を済ませられるかなど)、外出の頻度など、ひとりでどれくらい日常の生活が送れるかどうかを確認する。
- 3認知機能
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今日の日付、名前、生年月日、居場所の理解、簡単な記憶力の検査などをし、認知機能に問題がないかを確認する。
- 4精神機能
- 生活の中で、情緒不安定、被害妄想、昼夜逆転、突然大声を上げる、物を破壊するなど不適切な行動がないかを確認する。
- 5社会生活への適応
- 服薬管理、金銭管理、集団行動が可能か、簡単な調理が可能かどうかを確認する。
さらに追加で、以下の内容についても聞き取り調査をします。
- 6過去14日間に受けた医療行為(点滴、透析、経管栄養、酸素療法など)
- 7家族や住まいの環境
- 8現在利用しているサービスの内容
認定調査のときには、必ず家族も同席しましょう。認知症があったり、親が自分の状態を良く見せたいという気持ちがあったりすると、事実とは異なる状況を調査員に伝えてしまうことがあるからです。
親に必要な介護支援を受けるためには、日ごろの様子を分かっている家族が同席して、正確に日常生活での状況、困りごとを伝える必要があります。
主治医意見書を作成依頼する
主治医意見書は、どのくらいの介護が必要になるかを確認したり、認定調査結果の確認や修正に用いたりするために必要です。
主治医意見書は、市区町村によって依頼する方法が異なるため、必ず、親が居住する自治体に確認しましょう。主治医意見書は全国一律の様式で、自治体の公式サイトからダウンロード可能であり、書類を主治医に渡して作成を依頼。
自治体によっては申請時に記載した主治医の情報に基づいて、市区町村が主治医に意見書作成を依頼する場合があります。
もし、親に主治医がいない場合には、過去に受診歴がある医師や、市区町村が指定する医師に主治医になってもらうことが可能です。
審査判定(一次判定)
認定調査での聞き取り内容をもとに、コンピューターによって一次判定をします。判定には、要介護認定ソフトを利用。申請者にどれぐらいの介護時間が必要かを分析し、算出された要介護時間が長くなれば、介護度が上がるという仕組みです。
審査判定(二次判定)
一次判定の結果と主治医意見書の内容に基づいて、「介護認定審査会」による要介護度の判定が行われます。この介護認定審査会は、要介護者等の保健、医療、福祉に関する学識経験者5名程度で構成される合議会です。
介護認定・通知
介護認定審査会の判定結果に基づいて市区町村は要介護認定をし、申請者に結果を通知。申請から約30日後に「非該当」、「要支援1~2」、「要介護1~5」のいずれかが通知されます。
5.要介護認定を受けて、ケアプランを作成する

要介護(要支援)認定を受けたあとに、介護サービスを利用する際には、「ケアプラン」(介護サービス計画書)を作成する必要があります。
要支援1~2と認定された人は、地域包括支援センターでのケアマネジャーに「介護予防サービス計画書」を作成してもらいましょう。
また、要介護1~5と認定された人は、市区町村の指定を受けている「居宅介護支援事業者[ケアプラン作成事業者]」に、ケアプランの作成を依頼します。
ケアマネジャーは、本人や家族の話を聞いて、どのような介護サービスがどれくらい必要なのかということを判断。その後、介護保険の計画書を作成します。
6.介護サービスを利用する
ケアプランをもとに、介護サービスを利用開始しましょう。介護サービスの際に困ったことがあれば、担当のケアマネジャーに相談することで介護に関する不安や悩みを解決できます。