親が認知症になったら介護はどうする?手続きなどのやるべきことを解説
親が認知症と診断されたとき、親の介護はどうしたら良いか、不安に思う方も多いのではないでしょうか。認知症は長期に亘り、継続してサポートが必要なため、介護者がひとりで頑張りすぎると親子ともに疲れ果てることになりかねません。周囲のサポートを受けながら適切なサービスを受けることがポイントです。親が認知症になったらすべきこと、介護方法、おすすめの施設をご紹介します。
親が認知症になったら?

認知症とは、様々な病気や障害により、記憶や判断などを行う脳の認知機能が低下し、仕事や日常生活に支障をきたすようになった状態のことです。
認知症の親と介護者が幸せに暮らすためには、周囲からのサポートは欠かせません。また、介護者は正しい情報を集め、専門家にいつでも相談できる体制を整えておくことが大切です。
正しい情報を集める
もし、親が認知症と診断されたら、その後の対応を様々な方法で探す方は少なくありません。しかし、ウェブサイトのなかには、誤った知識や古い情報を載せているページも多いため、注意する必要があります。
最新の情報を手に入れるなら、厚生労働省など、公的機関で探すことがおすすめです。例えば、厚生労働省の公式サイトでは、認知症の悩みに関する相談先を案内しています。
介護者が認知症の病状について理解を深めると共に、実際に他の人がどのような介護をしているか知ることで、負担が軽減することも。介護費用や受けられるサービスも調べておけば、準備をスムーズに行うことが可能です。
また、主治医と面談し、認知症の進行具合や今後の経過などの情報を聞いておくこともおすすめ。いずれにせよ、正しい情報を集めることを意識しておくと良いでしょう。
自治体や会社に相談する
介護は負担が大きいため、ひとりで抱えずに相談先を見つけることが重要と言えます。まず、親の住む自治体の「地域包括支援センター」(高齢者への生活窓口)に相談しましょう。
地域包括支援センターは、病気に関する悩み相談の他、保健福祉サービスにつながるような支援、どのような公的なサービスがあるかの説明など、様々な相談に乗ってくれる施設です。また、行政機関から派遣される「ケアマネジャー」(介護支援専門員)は、介護や福祉の面でサポートしてくれます。
その他にも、介護者の上司や同僚に親の認知症について伝えておくと良いでしょう。急な休みや緊急事態で迷惑をかけることもあるため、事前に職場へ伝えておけば、いざというときに周りも動きやすくなります。勤務先の両立支援制度(介護休暇や在宅勤務など)を確認して、上手に活用することが大切です。
要介護認定の手続きを行う
認知症の診断を受けたら、市区町村の窓口で「要介護認定」(介護保険サービスを受けるために必要な基準)の申請を行いましょう。認定までには1ヵ月ほどかかることがあるため、早めに手続きをしておくと安心。
要介護認定を受けると、訪問介護やデイサービスなどの「介護保険サービス」がスムーズに受けられます。
介護者自身のケアをする
介護者が親の認知症をひとりで抱え込むと、パニック状態に陥ったり、体調を崩したりしがちに。また、介護のストレスから発症する「介護うつ」や、介護に専念するために仕事を辞める「介護離職」など、悪循環を招くこともあります。普段から、介護者が安心して相談できる人や、リフレッシュできる場所を作っておくことが大切です。
認知症の親の介護方法
認知症の親の介護には、主に以下の3つの方法があります。親がどこで過ごしたいのか、介護者はどこなら介護しやすいかを考えて、お互いの意志を尊重して選択することが理想です。
- 1在宅介護
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在宅介護とは、認知症の親を家で介護する方法のこと。親は慣れ親しんだ家で家族と一緒に過ごせるため、精神の安定につながります。介護者としても、介護費用を抑えたり、移動の時間を削減することが可能です。しかし、24時間の介護が必要な状態になると、家族の負担は大きくなる傾向にあります。
なお、在宅介護でも様々な介護サービスを受けることが可能です。状況や症状に合わせてサービスを利用すれば、家族の負担を減らすことができます。介護サービスは、ホームヘルパーや介護福祉士が自宅に訪問し、食事や入浴などの生活に関するサポート、家事を代行するサービスなど様々。
その他にも、以下のようなサポートグッズを活用するなど、介護者の負担を減らしていくことを考えることが大切です。
サポートグッズの一例
- 小型のGPS:靴やカバンに設置しておくことで親の現在地が分かる。
- ポケットカレンダー:日ごとにやるべきことのメモや薬が入れられる。
- キーホルダー式のアラート:親が一定の区画を離れると音声で知らせてくれる。
- 2施設介護
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施設介護とは、認知症の親を施設で介護すること。家族の負担が少なく、常に介護スタッフが症状を監視してくれるという安心感があります。一方で介護費用が高額だったり、親が施設に馴染めずにストレスを抱えたりする可能性がある点がデメリットです。
施設によってはすぐに満室になるため、タイミングを逃さないよう、早いうちに予約するのがおすすめ。施設によっては、シニアライフを満喫できるよう娯楽設備が充実しているなど様々です。実際に見学をして、親が納得したところを選ぶのが大切です。
なお、親の貯金や年金では費用が足りない場合、子どもが費用を負担する必要も出てくるため、予算に見合った施設を探すことや、費用の捻出先を検討しておくなどの対策も、あらかじめ考えておきましょう。
- 3遠距離介護
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遠距離介護とは、親と離れた場所に暮らしたまま日常生活をサポートすることです。親は住み慣れた土地に住みたいものの、子どもの状況によって同居することが困難な場合に、遠距離介護が考えられます。
厚生労働省の「2019年(令和元年)国民生活基礎調査」によると、要介護者がいる世帯の状況として、「同居」が54.4%で最も多く、次いで「別居の家族等」が13.6%で多いことが分かりました。
遠距離介護は近くで介助ができない分、家族で役割を分担しながら行わなければ、手が回りません。以下のようなサービスを活用して、しっかり介助できる体制を整えることが求められます。
利用すると良いサービス
- 弁当の宅配サービス:決まった曜日と時間に弁当を届けてくれるサービス
- ネットワークカメラ:自宅にいる親の様子が分かるサービス
- 見守りサポート:もしものときにボタンひとつでスタッフが駆けつけてくれるサービス
認知症介護におすすめの介護施設
認知症の介護におすすめの介護施設を4つ紹介します。認知症のレベルや住んでいる地域によって対象者や条件が異なるため、事前に確認しましょう。
- 1特別養護老人ホーム
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特別養護老人ホームは、寝たきりや障害など、比較的重度な方が入所する施設です。原則、65歳以上で要介護3以上の方が入所条件。
特別養護老人ホームは、生活支援やリハビリテーション、レクリエーションといったサービスの他に、看取り対応 (死期まで見守ること)を行う施設が多く、特別養護老人ホームを「終のすみ家」(ついのすみか)として考えている方も大勢います。国から補助が出るため、有料の老人ホームより、費用がかからないことが特徴です。
- 2介護老人保健施設
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介護老人保健施設は、リハビリテーションを中心とした施設で、病院から自宅に戻るための自立を目的としています。入所対象は、原則として要介護1以上の認定を受けている65歳以上と40歳以上の認知症患者。
介護老人保健施設では、理学療法士や作業療法士によるリハビリ、看護師や介護士による支援を受けることが可能です。特別養護老人ホームと同様に、国からの補助があります。
- 3介護付き有料老人ホーム
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介護付き有料老人ホームは、要介護1~5(65歳以上)や認知症の症状がある方まで、幅広く受け入れている施設です。看取り対応を行っているところもあり、要介護度が高くなっても転居しなくて済むことがメリットだと言えます。
また、介護付き有料老人ホームは民間事業者が運営しており、設備やレクリエーションなどが豊富であることも特徴です。
- 4認知症グループホーム
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認知症グループホームは、認知症ケアに精通したスタッフのサポートを受けながら、少人数のユニットで共同生活を送る施設。入居者様の心身状態に合わせて、家事を分担することで、リハビリテーションの役目と認知症の進行を和らげる目的があります。
なお、要支援2または要介護1以上の認知症患者で、施設と同じ自治体に住民票がある方が入所条件です。
認知症グループホームは、家庭のような雰囲気で過ごせるため、小規模で落ち着いて過ごしたい方におすすめ。ただし、医師や看護師が常駐している訳ではないため、医療行為が必要な方は入所できない場合があります。