ペースメーカーが必要な病気や手術・費用・注意点とは
「ペースメーカー」は、心臓のリズムを正常に保つための医療機器です。心臓リズムの異常(アリズミア)に対して、適切なタイミングで心臓に電気的刺激を与えることで、正常な心拍を維持する役割を持ちます。なお、ペースメーカーが必要な人は高齢者が最も多く、ペースメーカーの植込み手術は高齢でも安全に行うことが可能。しかし、その後の日常生活においては特定の注意が必要です。ペースメーカーを持つ人が普段から気を付けるべき点、経済的な負担を少なくする方法、また介護施設での受け入れに関する情報を紹介します。
ペースメーカーとは

ペースメーカーは心臓のリズムを正常に保つための医療機器で、心臓の拍動が遅くなる病気を持つ人にとって重要な役割を果たします。
ペースメーカーは、「発振器」と呼ばれる電池、電気回路を組み合わせた部分、これに接続するリード線で構成。このリード線の先端を心臓の内部に取り付けることで、発振器からの電気刺激を心臓に伝え、心臓のリズムを一定に保つ仕組みです。
ペースメーカーの発振器は非常に小さく、手のひらに乗るほどのサイズしかありません。しかし、その中には複雑な電気回路と長持ちする電池が収められています。電池の持続時間は、使用状況やペースメーカーの種類によって異なるため、一定の期間が経過すると医師のもとで定期的なチェックが必要です。
ペースメーカーの仕組み
ペースメーカーは、ペースメーカー本体とペースメーカーリードの2部分で構成。ペースメーカー本体は、電池と電気回路が内蔵され、この部分から発せられる電気刺激を心臓に伝える役割を持っています。
大きさは500円玉2枚程度で、重さも20~30gと非常に軽量です。ペースメーカーリードは細長く、先端には電極が付いており、この電極を心臓の筋肉に接触させて電気刺激を与えることで、心臓の拍動を調整。この本体はバッテリーで動作し、心臓のリズムをモニターし、必要に応じて電気刺激を提供します。
心臓の自然なリズムが不規則になったり、遅くなったりした場合、ペースメーカーはこの異常を検知し、リードを通じて心臓に正確なタイミングで電気刺激を送る仕組みです。これにより、心臓の拍動が正常なリズムに戻るよう調節されています。
ペースメーカーが必要な病気・入れる基準
「完全房室ブロック」、「洞不全症候群」などの病気を持つ患者には、ペースメーカーが必要となることが一般的です。
一方、易疲労感(いひろうかん:疲れやすいこと)や 労作時の息切れは、心臓の機能が低下している状態を示す症状であり、このような症状を持つ患者にもペースメーカーが必要となることもあります。特に心不全を伴う「徐脈」(じょみゃく:脈が遅くなる不整脈のこと)のような状態では、ペースメーカーの植込みが考慮される場合がほとんどです。
また、動悸のように心臓の拍動を強く感じる症状は、心拍数が増加している状態を示すことが多く、これに対しては薬物療法が考慮されますが、なかにはペースメーカーで治療が可能なケースもあります。
ペースメーカーの手術
ペースメーカーの本体は、患者の状態やニーズに応じて体内に植込まれます。最も一般的な植込み方法は、鎖骨下の静脈を通じてペースメーカーリードを心臓に挿入し、ペースメーカー本体は胸部の皮下に配置する方法です。
しかし、特定の患者、例えば小児や心臓手術を受けたあとの患者などには、異なる植込み方法が選択されることもあります。その場合、心臓の表面に直接心筋電極を固定し、ペースメーカー本体は腹部に植込むことがほとんどです。
ペースメーカーにかかる費用の目安
ペースメーカー治療は、ペースメーカー本体、リード、手術費、入院期間を含んだ諸費用を合算すると、おおよそ3,000,000~3,500,000万円の高額な治療費がかかるとされています。
しかし、「高額療養費制度」を利用すれば、患者による自己負担金額は、所得や医療費の総額に基づいて上限が設定。特に、「国民健康保険」、「政府管掌健康保険」に加入している人は、この公的な高額医療費支給制度を活用することで、定められた限度額を超えた分の医療費をあとから給付金として受け取ることが可能です。
具体的な数字としては、3,000,000円の医療費がかかった場合でも、患者の自己負担額は100,000円程度にとどまることがほとんど。ただし、この負担額は加入している保険の種類、内容によって異なるため、具体的な金額と詳細については、自身が加入している保険組合や窓口に直接、問合せることをおすすめします。
ペースメーカーをしている人の注意点
ペースメーカーを体内に持つことで、日常生活にいくつかの注意点があります。ひとつずつ見ていきましょう。
定期的な心拍数の確認

ペースメーカーを持つ人やその家族は、脈拍数の測定を定期的に行うことが推奨されています。これは、ペースメーカーが機器のため、リードの位置がずれるなどして、正常に動作しなくなる可能性があるからです。
日常的な脈拍数の測定を行うことで、異常があった場合でもすぐに気付くことができます。具体的には、毎日同じ時間に手首の親指側を使って脈拍数を確認し、この値を血圧計などで得られる脈拍数と照らし合せること。
さらに、数ヵ月に1回は医療機関での定期検査を受けることがおすすめです。特にめまいや失神のような症状が出た場合、測定した脈拍数が異常に低い場合は、ペースメーカーが正常に動作していない可能性が考えられるため、すみやかに医療機関を受診するようにしましょう。
皮膚トラブル
ペースメーカーの挿入部分にかゆみを引き起こすことがあり、これをきっかけに皮膚トラブルが生じることが考えられます。認知症の症状を持つ人は、特に注意が必要です。挿入部分は、お風呂で優しく洗うようにし、毎日皮膚の状態を確認することが重要。もし、極端な赤みが現れた場合は、感染のリスクも考えられるため、すぐに医療機関を受診しましょう。
いざというときに不安な方は介護施設の検討を
ペースメーカーを利用して日常生活を送ることに対し、特別な医療的ケアは必要ないと言われています。そのため、多くの介護施設や老人ホームでも受け入れを実施。
特に、看護師が常勤している施設では、もしペースメーカーに関連した異常が生じた場合も、迅速に対応してくれるので安心です。しかし、ペースメーカー以外の病気や状態が伴っている場合、一部の施設では、受け入れが難しいことも考えられます。
そのため、施設選びの際は、患者の全体的な健康状態を考慮し、主治医、ケアマネジャーとよく相談することが大切です。専門家によるアドバイス、経験をもとに、最も適切な施設を選びましょう。
まとめ
本記事では、ペースメーカーを持つ人が日常生活で守るべき注意点、介護施設での受け入れなどについて解説をしました。
ペースメーカーは、高齢者を中心に心臓の拍動が遅くなる病気を持つ人にとって重要な医療機器です。ペースメーカーの植込み手術などにかかる費用は高額ですが、高額療養費制度などを活用することで自己負担額は軽減されます。
心臓の健康は患者の「生活の質」に直結しているため、ペースメーカーについて理解することは肝心。なお、ペースメーカーを利用しての生活に不安がある場合には、介護施設や老人ホームへの入所を検討することもおすすめです。