老後破産とは?実態や原因、回避するための4つのポイント
「老後破産」とは、定年後の年金生活で家計が維持できなくなり、生活が困難になることを指します。定年後、現役時代より収入が減る人は少なくありません。定年前にある程度の貯蓄があったとしても、収入に見合った生活を送らなければ日々の生活が困難となり、老後破産に陥る可能性があるのです。老後も安心して生活するためには、老後破産の原因を把握し、早めに対策しておくことが大切。老後破産とは一体どのようなものなのか、実態と主な原因、回避するための4つのポイントを解説します。
老後破産とは

老後破産とは定年を迎えたのち、年金生活で家計が維持できなくなり、生活が困難になる状況のことです。
定年、退職後は現役時代より収入が少なくなるのが一般的。ある程度、老後資金を備えていても、現役時代より生活水準を落とさなければ、貯金を切り崩していく必要があります。
生命保険文化センターの調査結果によると、老後のために蓄えておいた老後資金を使い始める平均年齢は66.8歳。定年後20~30年間暮らしていくうちに老後資金が尽きてしまい、老後破産に陥る可能性があります。必ずしも所得、年金の少なさだけの問題ではなく、誰にでも起こりうるのが老後破産。老後を日々不安なく過ごすために、老後破産の実態や原因を把握し、早めの対策が必要なのです。
老後破産の実態
老後破産の実態としては、2020年(令和2年)度における日本弁護士連合会の調査によると、破産債務者の割合は、60歳代16.37%、70歳代以上では9.35%と、併せて破産債務者全体の25%以上を占めています。具体的な推移は、以下の通りです。
老後破産の割合 | ||
---|---|---|
60歳代 | 70歳代 以上 |
|
2020年 (令和2年) |
16.37% | 9.35% |
2017年 (平成29年) |
16.40% | 7.51% |
2014年 (平成26年) |
18.71% | 8.63% |
2011年 (平成23年) |
17.50% | 5.02% |
2008年 (平成20年) |
12.54% | 3.93% |
2005年 (平成17年) |
14.20% | 3.05% |
2002年 (平成14年) |
14.23% | 2.73% |
60歳代では2014年(平成26年)、70歳代では2020年(令和2年)に最大値を示しています。なお、2022年(令和4年)における高齢社会白書では、65歳以上の人のうち「家計が苦しく、非常に心配である」と感じている人は、全体の7.5%です。こうした不安を抱えている人が、老後破産に陥る可能性があると考えられています。
老後破産の原因

老後破産の理由として挙げられるのは、主に以下の3つです。
- 生活苦、低所得:61.69%
- 病気、医療費:23.31%
- 負債の返済(保証以外):20.48%
老後の収入減少、医療費の負担、定年後の住宅ローンなどが破産の原因と考えられています。つぎにその老後破産の原因について、詳しく見ていきましょう。
生活水準が収入と合っていない
2022年(令和4年)の高齢社会白書によると、高齢者世帯の平均所得金額は312万円。この値は、高齢者世帯と母子世帯を除いた、その他の世帯の約5割です。なお、高齢者世帯の所得階層別分布では、150~250万円未満が最多。現役時代に比べると、大幅に収入が減ると想定できます。
定年後、年金などの収入だけでは生活費が足りず、貯蓄を切り崩しながら生活する高齢者は少なくありません。定年、退職後の収入減少に対して、生活水準が見合っていなければ、結果として老後破産につながる可能性があります。
住居費の圧迫
定年、退職後まで続く住宅ローンは、老後の生活にとって大きな負担。近年晩婚化によって、住宅を購入するタイミングが遅くなっている傾向にあります。例えば、40歳で35年の住宅ローンを組んだ場合のローン完済は75歳。60歳、65歳で退職し、収入が減った状況で10年以上住宅ローンの返済が続く状況は、家計を圧迫する要因となります。
また、マイホームの所有には住宅ローンだけでなく、固定資産税、リフォーム費用なども必要です。賃貸物件では毎月の家賃が発生します。住居費は必ず発生するため、老後の生活費に充てるつもりの貯蓄及び退職金を、住宅費に回さなければならない可能性は、誰にでもあるのです。
医療費、介護費がかさむ
高齢になると予期せぬ病気やケガ、入院などが必要になるケースは少なくありません。高齢者の医療費負担は1~2割負担。とはいえ、何度も通院が必要な場合、家計を圧迫する可能性があります。パートナー、自分自身に介護問題が出てきた場合、自宅ではなく老人ホームや介護施設の入所を検討することも必要です。介護施設は入所費用が高く、年金、退職金で賄いきれなくなる可能性も考えられます。
教育費、子どもの生活費
高齢出産、晩婚化の影響によって、定年後に子どもが高校生、大学生になるといった家庭もあり、教育費は家計を圧迫する要因。例えば、40歳で子どもが生まれた家庭は、60歳の時点で子どもは20歳で、大学などの学費、生活費などの費用が必要です。また、子どもが結婚して孫が産まれた場合、孫への出費がかさむこともあります。
老後破産を回避するには
老後破産を回避するには、定年前から対策をしておくことが重要。主な対策としては、以下の4つが挙げられます。
収入、支出のバランスを見直す
収入と支出のバランスといった家計の見直しは、今からでもできる対策。収入よりも支出が多い生活を続けると、どうしても家計は赤字になってしまいます。老後は収入を増やしにくいため、支出の削減が重要です。特に保険料、通信費、住居費などの固定費を削減するための見直しが効果的。固定費を見直すと毎月決まって出ていく支出を減らしやすくなります。
できるだけ長く働く
老後定年、退職後の収入源を確保するために、できるだけ長く働くのも有効な手段のひとつです。厚生労働省によると、2022年(令和4年)の日本人の平均寿命は、男性81.05歳、女性87.09歳。定年後も20年近く生活すると想定して、公的年金以外の収入源を確保しておくのが安心とされます。
従業員31人以上の企業約16万社のうち、「高齢者雇用確保措置」を実施している企業の割合は、99.9%。60歳以降でも継続雇用制度、再雇用などで働ける職場は少なくありません。定年前から、自分に無理のない定年後の働き方を検討しておくのも老後破産の回避につながります。
年金以外の老後の収入を増やす
公的年金、恩給だけではなく、年金以外の収入を増やすために備えておくのも有効です。老後資金の備えとして活用できるのはNISA、不動産投資といった資産運用と民間保険会社の個人年金。しかし、運用方法、運用先によってはリスクも伴うため、銀行窓口などでしっかりと相談する必要があります。
健康を維持する
老後破産を回避するためには、健康な体を維持することも重要。老後は医療費、介護費が増加し、家計を圧迫する可能性が考えられます。厚生労働省によると、2019年(令和元年)における平均寿命と健康寿命の差は、男性8.73年、女性12.06年でした。この健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことを指します。
今後、平均寿命が延びるにつれて健康寿命との差も拡がり、医療費と介護費が家計を圧迫することも懸念。医療費・介護費の負担による老後破産を回避するためにも、健康の維持は必要不可欠なのです。
まとめ
老後破産とは、定年や退職後の家計がやりくりできず、生活が困窮する状態。年収、貯蓄の有無にかかわらず、誰にでも起こる可能性があります。住宅ローンの返済、医療費、介護費、教育費などが老後破産につながる要因。収入に見合った支出でやりくりできているか、家計の見直しも大切になります。老後破産を回避するためには、健康を維持したり、老後資産を蓄えるために備えたりと早めの対策が大切です。