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老後の必要資金はいくら?老後の生活費の目安と定年退職までにできる対策

老後の必要資金は「2,000万円」と大きな関心を集めたのは、2019年(平成31年/令和元年)に金融庁が公表した「高齢社会における資産形成・管理」がきっかけでした。「老後の必要資金は一体いくらあれば足りるのだろうか」と疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。「老後の必要資金はいくら?老後の生活費の目安と定年退職までにできる対策」では、老後における必要資金額、年金収入について解説。リタイア後の生活が不安な方に向けて、老後の生活費の目安と定年退職までにできる対策も併せて紹介します。

老後資金はいくら必要か

老後の資金はいくら必要か

結論から言うと、老後の必要資金は暮らし方や世帯によって金額に幅があり、その額は2,000~6,000万円ほどです。

金融庁が公表した高齢社会における資産形成・管理の家計調査では、高齢夫婦(夫65歳以上、妻60歳以上)世帯で無職の家計は、実収入より実支出の方が、月平均5万円ほど上回っています。また、日本人の平均寿命は男性81歳、女性87歳とされ、65歳で定年退職して平均寿命まで過ごすと、老後の生活期間は17~23年続くのです。

仮に定年退職してから90歳まで過ごした場合、月々の赤字分から老後の必要資金を概算すると5万円×12ヵ月×25年=1,500万円になるのです。この金額は、赤字分を引いた最低限の家計のため、医療費や介護費、予備費など暮らし方によって大幅に変わり、実際には2,000万円を超える老後資金が必要と推測されています。さらに、ゆとりのある生活を送るには、月に上乗せ額が14万8,000円も必要とのデータもあることから、約6,000万円の老後資金が必要になるケースもあるのです。老後の資金は、必要最小限の生活をするか、ゆとりのある生活を送るかで、かなりの差が出ることが分かります。

年金はいくらもらえる?

老後にもらえる公的年金は、「老齢基礎年金」(国民年金)と「老齢厚生年金」の2種類です。この年金は、単身か共働きかで世帯の受給額に差があります。

合計
老齢基礎年金 6万6,250円 6万6,250円 13万2,500円
老齢厚生年金 9万1,982円 9万1,982円 18万3,964円
合計 15万8,232円 15万8,232円 31万6,464円

公的年金は、20歳以上60歳未満のすべての国民が加入対象で、無職、学生、主婦、フリーランスなど職業を問わず受け取り可能です。一方、老齢厚生年金は、厚生年金保険の適用企業に勤める会社員や公務員などが加入対象で、老齢基礎年金に上乗せされる形で65歳から受け取り可能。

なお、日本年金機構が公表している2023年(令和5年)における公的年金の平均額は、次の通りです。

老齢基礎年金 6万6,250円
老齢厚生年金
(40年間就業した場合の給付水準)
9万1,982円

また、「平均的な公的年金額」を参考に、公的年金受給額をパターン別にシミュレーションしました。なお、金額は老齢基礎年金に40年間、老齢厚生年金に38年間加入した場合と仮定した値になります。

会社員または公務員と専業主婦の世帯
合計
老齢基礎年金 6万6,250円 6万6,250円 13万2,500円
老齢厚生年金 9万1,982円 なし 9万1,982円
合計 15万8,232円 6万6,250円 22万4,482円
夫婦共に会社員または公務員の世帯
合計
老齢基礎年金 6万6,250円 6万6,250円 13万2,500円
老齢厚生年金 なし なし なし
合計 6万6,250円 6万6,250円 13万2,500円
会社員または公務員の単身世帯
単身 合計
老齢基礎年金 6万6,250円 6万6,250円
老齢厚生年金 9万1,982円 9万1,982円
合計 15万8,232円 15万8,232円

毎年誕生月に送られる「ねんきん定期便」で受け取れる公的年金額を確認し、収入と生活費における支出の差額をあらかじめシミュレーションしておくのがおすすめです。

老後にかかるお金はどのくらい?

老後に必要なお金は主に「生活費」(医療費含む)、「ライフイベント費」、「介護費」の3つに分けられます。

生活費の目安

老後にかかるお金は?

医療費の自己負担は70~74歳で2割、75歳以上で1割になるものの、医療費が最もかかる75歳以上の時期はどうしても負担が大きくなるため、生活費の備えは必要です。また、老後にかかる生活費については夫婦、単身で異なります。

夫婦の場合

夫婦の場合における平均的な生活費は食費、光熱水道費、生活用品、医療費、交通費、通信費、レジャー費などで月に約22万4,000円。この他に税金、社会保険料などの非消費支出が約3万円かかるため、合計として約25万4,000円です。さらに、ゆとりのある生活を送るには月に約37万9,000円かかるとされています。

単身の場合

単身の場合、平均的な消費支出は夫婦と同様に食料、光熱水道費、生活用品、医療費、交通費、通信費、レジャー費などで月額は約13万3,000円。税金や社会保険料などの非消費支出の約1万1,000円を含めると約14万4,000円かかります。

ライフイベント費の目安

60~70代前半までは、子どもの結婚で約150万円、家のリフォーム費で約200万円、車の買い替え費用で約200万円、その他、孫の誕生や旅行費などが存在。そのため、ライフイベント費もある程度確保しておくことがポイントです。

介護費用の目安

介護にかかる費用は、在宅介護か施設介護かによって大きく異なります。

在宅介護にかかる費用

在宅介護は、介護保険サービスの利用料やベッドなどのレンタル代に一定の費用がかかり、要介護度が重くなるほど費用が高くなる傾向です。在宅介護にかかる月あたりの費用は平均で5万円、また在宅介護を始める際にかかる住宅リフォームや介護用ベッドなどの一時的な費用の平均は74万円というデータも存在。初期費用と月額費用がかかる在宅介護ですが、それでも施設利用に比べると費用が抑えられます。

施設介護にかかる費用

少子高齢化の日本において老人ホームの種類は多く、料金は様々。「特別養護老人ホーム」、「ケアハウス」などの公的介護施設は基本的にリーズナブルで、月の利用料は約5~15万円です。「グループホーム」、「サービス付き高齢者向け住宅」、「介護付き有料老人ホーム」、「住宅型有料老人ホーム」などの民間介護施設は、月の利用料が約15~30万と高額。利用の条件は介護施設によって様々なため、事前にリサーチしておくと良いでしょう。

安心して老後を迎えるために、定年退職までに準備を

安心して老後を迎えるために、定年退職までにできることがあります。それは、収入を貯蓄に回せる早い時期から準備すること。つまり、現役で働いているうちに少しずつ準備しておき、老後の必要資金としておくことが重要です。

家計費の見直し

老後の必要資金のために始めやすいのは、家計費の見直し。家計は、毎月一定額を支払う固定費と、調整可能で使った分だけかかる変動費に分けられます。特に固定費は通信費、生命保険費、車の維持費など見直せる部分が多数あるため、必要最低限に切り詰めていきましょう。

年金以外の収入を増やす

年金以外の収入を増やす

公的年金だけでは足りない老後資金を補うために、「終身保険」、「個人年金保険」を活用して、年金以外の収入を増やす方法もあります。

終身保険

終身保険は、生命保険に加入してから一生涯にわたり継続する保険。毎月一定額を貯金するため、着実に積み立てられます。老後の資金が目的の場合は、60歳に払込み満了に設定して、実際に必要となる時期より前に、払込み期間を終わらせましょう。ただし、毎月の支払いで生活を圧迫しないよう、不要なオプションは付けず、無理のない範囲で行うのが理想的です。

個人年金保険

個人年金保険は、任意で毎月積み立てることにより、公的年金にプラスして受け取れる年金。契約時に定めた年齢から年金が受け取れ、受け取り期間は一括、一定期間、一生涯など契約によって異なります。なお、契約が生命保険料控除となる場合は、毎年の確定申告において節税対策にもなるのです。

資産運用を始める

収入のなかから任意の額を運用資金に回し、老後資金を準備できるのが、「iDeCo」(イデコ:個人型確定拠出年金)と「つみたてNISA」(ニーサ:少額投資非課税制度)です。他にも、手元にある資産を運用して、資産を増やす「投資信託」という方法もあります。

iDeCo

iDeCoとは、公的年金の他に給付を受けられる、私的年金制度のひとつです。公的年金と異なり加入は任意で、掛金の拠出、掛金の運用をすべて自分で実施。掛金とその運用利回りに応じて給付が受け取れます。また、運用益が非課税となるため、支払い時、給付金受け取り時に所得控除も受けられるのです。

つみたてNISA

つみたてNISAは、少額からでも運用可能な投資で、長期にわたって積み立てられる非課税制度。1人1口座開設でき、毎年40万円の上限で一定の買い付けが可能です。一般的に投資で得た収益に対しては一定の税金がかかりますが、つみたてNISAでは20年間、非課税で受け取れます。銀行に預金するより資産を増やせる可能性がある上、少額から始められるのです。

2023年(令和5年)の税制改正を受け、2024年(令和6年)から年間における投資上限金額の拡大、積み立て投資枠、成長投資枠の併用が可能、非課税保有期間の無期限化など、より使いやすい制度に変わることが示されています。

投資信託

投資信託とは、複数の投資家から集めた資金を、運用会社が国内外の株式や債券などを購入することで運用する金融商品です。ファンドマネジャーと呼ばれる投資の専門家へ資産運用を任せ、ファンドマネジャーは投資家から資金を集めて株式や債券などに投資して、利益が出ると各投資家に分配します。投資信託には、資金運用を専門家に任せられる、少額から始められる、分散投資でリスクを軽減できるなどのメリットがあるのです。

まとめ

老後資金は、2,000万円以上かかるとされ、 公的年金だけに頼ると安心な老後生活とはほど遠くなる可能性もあります。そのため事前に自分の生活水準に合った必要金額を算出し、シミュレーションしておくと良いでしょう。また、生活における固定費を見直して不要な支出を将来の貯蓄に回す、資産運用で賢く稼ぐ術を身に付けるなど、できることから始めるのがおすすめです。

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