サ高住の登録基準とは?住宅・契約・サービスに関する基準を解説
サービス付き高齢者向け住宅(以下:サ高住)の登録基準には、高齢者に適した住宅に関するもの、契約に関するもの、サービスに関するものの3つがあり、すべての基準を満たす必要があります。ただし、登録基準は自治体によって異なるため、詳細は窓口で確認しなくてはなりません。「サ高住の登録基準とは?住宅・契約・サービスに関する基準を解説」では、登録基準とは何か、住宅、契約、サービスに関する基準、サ高住と有料老人ホームの制度の関係についても解説します。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の登録基準とは
サ高住の登録基準は大きく分けて、高齢者に適した施設や設備、契約、サービスの3つです。高齢者の住宅の安定を図る目的で設けられています。すべての基準を満たすと、各自治体でサ高住としての登録が可能。都道府県・政令市・中核市の窓口でサ高住として登録をすることによって、家賃やサービスなど住宅に関する情報はホームページで公開されます。登録基準は、自治体によって異なるので、各登録窓口で確認しましょう。
サ高住に関する基準
①入居者、②規模、③構造、④設備等、4つそれぞれに基準があります。
- 1入居者
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60歳以上の高齢者、要介護や要支援認定を受けている60歳未満の方、入居者様の同居者が入居可能。同居者は、配偶者、60歳以上の親族、要介護・要支援認定を受けている親族に限られます。
- 2規模
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各居住部分の床面積は原則25㎡以上が必要。ただし、居間、食堂、台所など高齢者が共同して利用するために十分な面積を有する共用設備がある場合は、18㎡以上でも可とされます。
なお、サ高住の各居住部分の床面積が25㎡以下の場合は、居間、食堂、台所など、共同利用部分の面積の合計が、各居住部分(25㎡未満に限る)の床面積と25㎡の差の合計を上回らなくてはなりません。例えば、居住部分が20㎡の場合、共同利用部分の面積を5㎡以上用意する必要があります。ただし、共用部分には事業者と共同で使用する部分、ホール、廊下、階段、エレベーターなどは含みません。
- 3構造
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サ高住は、バリアフリー構造(加齢対応構造)となっています。バリアフリー構造の基準は以下の通りです。
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- 床
- 段差なし
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- 廊下の幅
- 78cm以上、柱がある部分は75cm以上
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- 出入口の幅
- 居室は75cm以上、浴室は60cm以上
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- 浴室の規格
- 短辺120cm、面積1.8㎡以上、1戸建ての場合は短辺130cm、面積2㎡以上
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- 住戸内の階段の寸法
- T≧19.5、R/T≦22/21、55≦T+2R≦65
- (T:踏面の寸法[cm]、R:けあげの寸法[cm])
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- 主な共用の階段の寸法
- T≧24、55≦T+2R≦65
- (T:踏面の寸法[cm]、R:けあげの寸法[cm])
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- 手すり
- 便所、浴室、及び住戸内の階段に設置
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- エレベーター
- 3階建て以上の共同住宅は、建物出入口のある階に停止できるように設置が必要
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- 上記の基準を、そのまま適用することが適当ではないと認められる既存建物の改良などの場合
- 床、住戸内・共用部分の階段の寸法、手すりを満たすこと
バリアフリー構造については、法令で細かく規定されているため、サ高住では高齢者が安心して暮らせる構造になっています。
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- 4設備等
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各専有部分に、台所、水洗便所、収納設備、洗面設備、浴室が必要です。ただし、共用部分に共同で利用できる設備がある場合は、水洗便所と洗面設備を備えていれば認められる場合もあります。
設備の基準は以下の表の通りです。設備の基準は登録基準の主体となる自治体により異なるため、ここでは、千葉県を例示します。
設備 設備基準 台所 ・1組以上のコンロ、シンク、調理台を備えること。
・エレベーターでスムーズな移動ができる場合等を除き、居住部分のある階ごとに設けること。収納設備 ・寝具、衣類等が収納できる適切な大きさの物とすること。
・施錠可能な物とし、戸数以上に設けること。浴室 ・浴槽、及び洗い場を設置すること。
・概ね10戸当たり1ヵ所以上とすること。
・エレベーターでスムーズな移動ができる場合等を除き、居住部分のある階ごとに設けること。
・緊急通報装置を備えることが望ましい。
・入居者様の要介護状態が重度化したときに備え、機械浴室等を設置することが望ましい。また、居室内の寝室に緊急通報装置を備えることも必須です。生活の安全のために、緊急時にもすぐ助けを呼べる環境を整える必要があります。
サ高住の契約に関する基準
契約に関する基準は、以下の通り厚生労働省で定められています。
- 書面による契約であること。
- 専用部分が明示された契約であること。
- 権利金その他の金銭を受領しない契約であること。
(敷金、家賃・サービス費の前払金のみ徴収可) - 入居者様が入院した、あるいは入居者様の状況が変化したことを理由として、入居者様の同意を得ずに居住部分の変更や契約解除を行わないこと。
- 住宅の工事完了前に、敷金、及び家賃等の前払金を受領しないこと。
家賃・サービス対価の前払い金を受領する場合には、以下の基準があります。
- 家賃等前払金の算定の基礎、返還義務の金額の算定方法が明示されていること。
- 入居後3ヵ月以内に契約を解除、または入居者様が死亡したことにより契約を終了した場合を除き、家賃等の前払金を返還すること。
- 返還債務を負うこととなる場合に備え、家賃等の前払金に対し必要な保全措置が講じられていること。

契約は書面で行うことが義務付けられており、金銭の受領についても記載されています。また、事業者は契約を一方的に解除できません。入居者様が安心して契約できるよう、厳しい基準が設けられています。
サービスに関する基準
安否確認(状況把握)サービス、生活相談サービスの提供は必須です。少なくとも日中(概ね、9~17時まで)に、資格者が訪問や電話などで安否確認、生活相談を1日1回以上提供することが求められます。資格者とは、以下に該当する者です。
- 社会福祉法人・医療法人・指定居宅サービス事業所等の職員
- 医師、看護師、准看護師
- 介護福祉士、社会福祉士
- 介護支援専門員、介護職員初任者研修課程修了者
サービスの基準に関しては、資格者が常駐しない時間帯(夜間等)でも、設置された緊急通報システムによる通報があった場合は駆け付けて対応すること、資格者が登録住宅に近接する建物(歩行距離で概ね500m以内)に常駐する場合、入居者様から訪問の希望があるときは、訪問により状況把握や生活相談サービスを提供することなど、市町村独自の規定が存在します。詳細は各都道府県の、サービス付き高齢者向け住宅の登録基準でご覧いただけます。
サ高住と有料老人ホームの制度の関係
サ高住は、よく有料老人ホームと比較されますが、サ高住と有料老人ホームでは制度の内容が違います。
サ高住において提供必須の安否確認、生活相談以外に「老人福祉法」に基づく有料老人ホームの要件である「食事提供」、「介護」、「家事の支援」、「健康管理」のいずれかを実施しているサ高住は、「有料老人ホーム」に該当。有料老人ホームに該当すれば、「老人福祉法」の指導監督の対象になる点にも注意が必要です。
まとめ
サ高住の登録基準について、住宅に関する基準、契約に関する基準、サービスに関する基準の3つを紹介しました。登録基準は各自治体によって異なるので、詳細は各登録窓口での確認が必要です。登録基準をクリアして登録が完了すると、家賃やサービスなどの住宅に関する情報が「サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム」のホームページで公開されます。細かい基準をしっかり把握して、漏れがないように登録手続きを行うことが大切です。