生活保護だと介護保険料は免除?自己負担はある?
「生活保護」とは、日常生活において困窮している際、必要な保護を行って自立をサポートする制度です。全国で164万世帯、203万人が生活保護を受給しているとされ、そのうち56%は65歳以上。生活保護を受けている場合でも、介護保険料は支払う必要性はあるのか、また介護保険制度が利用できるのかについて解説していきます。
介護保険料を支払う必要性はない
結論から言えば、生活保護を受けている人は自費で介護保険料を支払う必要はありません。そもそも介護保険制度は、社会保険、国民健康保険などの公的な医療保険制度、後期高齢者医療制度の加入者に限定されていることから、生活保護受給者は介護保険制度の適用除外なのです。
しかし、このままでは、介護保険サービスの利用ができなくなってしまいます。そのため、2000年(平成12年)の介護保険法施行と同時に、生活保護法も改正されて「介護扶助」の項目が追加されました。介護扶助が創設されたことにより、生活保護者の介護需要に対して、国が介護保険料、及び介護サービスの全額を負担し、介護サービスが受けられるようになっているのです。
それでも、年齢によっては手続き上、介護保険料を支払う義務が発生します。40~64歳の生活保護受給者の場合においては、介護保険制度が適用されず、介護需要が発生した際に「みなし二号被保険者」として認定されるまで、介護保険サービスの利用ができません。そのため介護保険料の支払い義務が発生しないのです。
一方、65歳以上の「第一号被保険者」の場合は、介護保険料を支払う義務が発生しますが、納めた金額分については、生活保護費内における「生活扶助」へ上乗せするので、自己負担分はありません。また、介護保険料の納付についても福祉事務所が代理で行います。このように65歳以上の生活保護受給者は、手続き上においてのみ、介護保険料の支払い義務が存在することを覚えておきましょう。
医療が必要な場合は「医療扶助」で賄われる
生活保護受給者は「社会保険」、「国民健康保険」から脱退するため、健康保険の適用を受けません。「後期高齢者医療制度」なども適用外となります。しかし、生活保護となった場合でも医療を受けることは可能です。生活保護費には「医療扶助」の項目があり、自己負担なしで保険診療が受けられます。医師による診察、処方箋の発行、入院や手術などが自己負担なしです。
ただし、診療は、生活保護法指定を受けた医療機関のみでしか受けられない制限があり、受診の際には「要否意見書」、または「診療依頼書」を持参することが必要。この要否意見書と診療依頼書は、生活保護受給者が診察を受ける際に福祉事務所から発行されます。
介護サービスの料金は?
生活保護を受けた場合、介護保険制度を利用した、介護サービスにおける自己負担金についてはどうなるでしょうか。
基本的に自己負担はなし
生活保護を受けている人は、介護サービスを受けた際に発生する自己負担額についても、生活保護費内の「介護扶助」によって支払われます。したがって、生活保護受給者が介護サービスを利用した場合、基本的に無料となるのです。
介護サービス内容によっては支払いが発生する場合も
生活保護受給者であっても、支払いが発生することもあります。生活保護受給者の介護サービスには条件が設定されており、介護扶助で受けられるのは各自治体で必要と認められているものだけです。すなわち、自治体で認められていない介護サービスや、追加利用などについては別途料金が発生。
また、基本的にケアマネジャーが作成したケアプランに基づいて介護サービスが行われますが、このケアプランが自治体で介護扶助として認められなければ、自己負担額が発生する場合もあります。
40~64歳の方が利用しても自己負担分はなし
通常、40~64歳の第二号被保険者であっても、特定の疾患を発症したときに介護保険制度を利用することが可能。生活保護受給者の場合では、この第二号被保険者に相当する年齢において「みなし二号」として介護保険制度が利用できるのです。その際、介護扶助によって介護サービスにおける自己負担分が支払われますので、実質無料となります。
生活保護受給者でも入所できる施設
生活保護を受けていたとしても、施設に入所することは可能です。ただし、生活保護制度に対応していないことから、入所できない施設もあります。生活保護を受けている人が注意すべき点は以下の通りです。
- 生活保護制度に対応していない施設がある
- 必要最低限の支援のため、介護サービスの追加利用などに制限
- 費用は生活保護費における介護扶助の金額内で選ばなければならない
- 転居、及び入所の際には書類の手続きが多い
生活保護を受けている人は基本的に自己負担金がありませんが、入所にかかわる費用が介護扶助額を超えてしまった場合、自己負担金が発生する可能性もあります。施設によって様々な介護・生活支援サービスなどを提供しており、生活保護における介護扶助の要件に当てはまらない可能性もあるのです。そのため、事前によく確認しましょう。
生活保護費で賄われる扶助と利用可能な施設
生活保護で賄われる扶助と介護施設での必要な費用については下記の通りです。
入所の際利用できる扶助 | 入所に必要な費用 | |
---|---|---|
生活保護 における扶助 |
住宅扶助 | 家賃 |
生活扶助 | 食費、管理費、雑費 | |
介護扶助 | 介護サービス費 | |
医療扶助 | 医療費 |
これらの扶助を利用することで、介護施設での費用を賄うことが可能。また、生活保護を受けている際には以下の施設が利用できます。
特別養護老人ホーム(特養)
特別養護老人ホーム(特養)は公的施設であり、社会福祉法人や自治体が運営する介護施設。国、県などの自治体から補助金が給付されており、入居にかかわる費用が民間企業の施設と比べて抑えられています。そのため、多くの特別養護老人ホームでは、満室状態であるのが難点。加えて入居条件として「要介護3」の介護認定を受けている必要があります。
住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームは、生活支援サービスを行う高齢者施設。プライバシーへの配慮が、しっかりしているのが特徴です。住宅型有料老人ホームでは、介護サービスを提供していないため、外部の介護サービス事業者に依頼する必要があります。また、介護の程度が低い人が対象となり、入居費用が特別養護老人ホームなどに比べても高額です。しかし、生活保護受給者向けの料金プランなどを設定している施設もあります。
サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅は、通称「サ高住」とも言われ、高齢者のためのバリアフリー完備の住宅です。様々な生活補助や見守りサポートなどを受けることができ、安心して生活を送ることができます。
「介護型」と「自立型」(一般形)の2種類があり、介護型は施設内で介護サービスを受けられるため、要介護度が高い方でも入居が可能。夫婦入居を希望する場合は、夫婦のどちらかが60歳以上、もしくは要介護認定を受けた60歳未満であれば、夫婦での入居もできます。
また、住宅型有料老人ホームとは、契約形態に違いが存在。住宅型有料老人ホームでは、終身利用権を得る形式を採っているのに対し、サービス付き高齢者向け住宅では「賃貸借契約」なのです。さらに、夫婦での入居を踏まえて住居面積は25㎡以上と広めに確保されています。
グループホーム
グループホームは、認知症患者が共同生活を送るための施設です。「認知症対応型共同生活介護施設」ともよばれ、認知症患者が自立した生活を目指せるように専門のスタッフが支援しています。施設のある地域に住民票を持つ必要があり、「要支援2」以上の介護認定を受けた認知症患者が対象。生活保護を受けていても入所は可能です。
グループホームは5~9人程度の少人数で共同生活を行い、日常生活で必要な家事を分担し、同居する利用者とコミュニケーションを取りながら自発性と自立性を養います。認知症の人は変化することに不安感を覚える傾向にあるため人員の変更が少なく、穏やかに生活しやすいことが特徴です。