高齢者におすすめの資産運用プラン|失敗しないコツ
65歳以上のシニア世代では、現役時よりも収入が減ってしまう傾向にあります。 そのため、「年金だけだと不安なので今あるお金を運用したい」と考えている方も多いのではないでしょうか。平均寿命から考えると、65歳から15~20年近い老後の生活費を用意しなくてはなりません。資産が減っていく不安を解消するためにも、資産運用について考えることは大切です。シニア世代が資産運用で失敗しないコツ、おすすめの資産運用を解説します。
シニア世代も資産運用が必要?
老後に向けて貯金していた金額にもよりますが、シニア世代であっても、資産運用を行うことは重要です。病気、ケガのリスクが高いシニア世代は、いつ大きな出費が起こるか分かりません。また子供、孫世代へ資産を残すためにも、積極的に資産運用することが求められます。
貯金だけでは資産が目減りしてしまう

65歳以上のシニア世代は、現役時から比べると、毎月の収入が、かなり少なくなる傾向。国税庁が発表している「民間給与実態統計調査結果」によると、60~64歳の平均年収は423万円で、月収にすると約35万円です。一方、日本年金機構の主要統計によると、2022年(令和4年)12月の年金月額は、国民年金が5万6,383円、厚生年金が10万2,303円となっています。
人によって違いはあるもの、現役世代の収入と比べると、月収が20万円ほど下がるのが現状。さらに物価も上昇し続けており、同じ物を買うにしても出費が増えるため、何もしない状態では、資産が目減りしてしまうと考えなくてはなりません。
老後に必要なお金の目安
老後の月々の生活費は、一人暮らしで約15万5,000円、夫婦2人暮らしで約26万9,000円とされています。つまり、単身だと年間約186万円、夫婦2人暮らしだと年間約323万円が必要になるのです。なお、老後に20年間生活すると仮定した場合、一人暮らしでは3,720万円、夫婦2人暮らしでは6,460万円となります。特に、一人暮らしでは、年金の収入と月の支出がほぼ同じになるため、急な出費に備えて資産運用することが重要なのです。
資産運用で失敗しないコツ
シニア世代に限らず、資産運用は短期で利益を求めず、低リスクかつ中長期的な利益が見込める金融商品の購入がおすすめ。資産運用で失敗しないコツを紹介します。
リスクを取りすぎないようにする
シニア世代の資産運用で何より気を付けることは、資産を殖やすのではなく「減らさないこと」。平均値を見ると、年金収入だけでもある程度の生活水準は保てます。そのため、余裕のある生活、突然の出費に備えて、今ある貯蓄を目減りさせないことが大切です。シニア世代の資産運用は、小さなリスクで、着実に資産を増やすことを意識しましょう。
利益率が高くても手数料が高い商品に注意
資産運用の方法は多種多様で、なかには利益率が高いと感じられる金融商品も存在。ただし利益率の面だけを見るのではなく、手数料についてもしっかり確認することが大切です。
手数料を多く取られると、運用する金額以外の出費が増えてしまいます。いくら利益率が高い金融商品でも、投資することで損をする可能性はゼロではありません。また、投資の際に支払う手数料は、基本的に運用で損失が出ても発生する費用。損失額を減らし、利益が出た際に手元へより多くの資産を残すためには、手数料及び税金をいかに安くするかが大切なポイントになるのです。例えば、専門家に運用を任せる「投資信託」では、以下のような手数料が発生します。
- 購入時手数料
- 運用管理費用(信託報酬)
- 監査報酬
- 売買委託手数料
なお、依頼する専門家によっても手数料は変動。運用する際は手数料の金額も確認することを念頭に置きましょう。
勧められるがまま金融商品を購入しない
銀行、証券会社に進められるがまま、金融商品のことをよく把握せずに購入することは、良くありません。利益を出すことが難しく、リスクが高い金融商品を選んでしまう可能性があるからです。提案された金融商品について、しっかり検討することが重要。自ら判断できない場合は、その場で購入を決めずに家族や外部の専門家に相談してから決めましょう。
おすすめの資産運用
シニア世代が資産運用を行う場合における、リスクと手数料が低いおすすめの資産運用を紹介します。
NISA(ニーサ)

「NISA(Nippon Individual Savings Account)」とは、個人投資家のための税制優遇制度です。
通常は株式、投資信託などの利益を受け取った場合、配当金に対して約20%の税金がかかります。一方、NISAは「NISA口座」内で投資し、定められた金額の範囲内で、購入した商品から得られる利益が、非課税になるというもの。例えば100万円の運用益が出たとすると、通常であれば20万円は税金として徴収されますが、NISAであれば全額が自分の収入となるのです。
NISAには、以前から「つみたてNISA」と「一般NISA」という2種類が存在していますが、 2024年(令和6年)1月から新たに、より投資しやすくなった「新NISA」が始まりました。既存の「つみたてNISA」と「一般NISA」は、それぞれ「つみたて投資枠」、「成長投資枠」という形へ変更。これまではどちらか1種類しか投資できませんでしたが、新NISAではどちらも併用して投資が可能です。
また、新NISAでは、今までのNISAよりも、投資額が大きく上昇しています。年間に投資できる金額が、最大120万円から360万円に変更され、非課税で保有できる限度額も最大800万円から1,800万円へと増枠。さらに、つみたてNISAが最大20年間、一般NISAが最大5年間の非課税期間が決められていましたが、この非課税期間が無期限化され、よりお得に投資ができるようになりました。
新NISAの仕組み | ||
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つみたて投資枠 | 成長投資枠 | |
年間投資枠 | 120万円 | 240万円 |
非課税保有期間 | 無期限化 | 無期限化 |
非課税保有限度額 | 1,800万円 | |
‐ | うち、1,200万円まで利用可能 | |
口座開設期間 | 恒久化 | 恒久化 |
投資対象商品 | 長期の積立、分散投資に適した一定の投資信託 | 上場株式、投資信託等 |
対象年齢 | 18歳以上 | 18歳以上 |
債券

「債券」とは国、地方公共団体や一般企業などが、投資家から資金を調達するために発行する有価証券。債券には満期日が設けられており、期日まで保有することで、償還金(しょうかんきん)が受け取れる仕組みです。
この償還金は、債券の額面100%が受け取れるのが一般的。例えば、額面10万円の債券を購入した場合、満期日には10万円が支払われます。投資家の利益は主に保有時の利息もしくは、購入時と償還時の差額です。利率が決まっている債券では、保有している間は半年に1回など、定期的に利息が受け取れます。利息のない債券の場合は、購入時の価格が割り引かれているのが一般的。例えば額面100万円の債券を90万円で販売し、満期まで保有していれば100万円で償還するという方法。この場合、購入時と償還金の価格差が、投資家の利益になります。
債券は利子の受け取り、償還金の支払いスケジュールが決まっているので、計画的に運用できるのがメリット。特に国が発行している「国債」は、国が破綻しない限りは償還金を受け取れるので、かなりリスクが低い資産運用法です。しかし、債券は利子が低い傾向にあるので、どれくらいの資金を投入するかは資産状況、得たい利益額によって変わります。
投資信託
投資信託とは、別名「ファンド」とも呼ばれ、複数の顧客から資金を集め、取りまとめて運用の専門家が投資と運用を行い、利益を投資家へ分配する資産運用です。株式投資の売買は基本的に100株単位のため、株価の高い企業に投資してしまうと、取引価格が大きくなってしまいます。企業によっては数百万円を用意する必要があることに注意しましょう。
なお、投資信託では、少額からの売買も可能。複数銘柄を購入すれば、リスクを分散させられます。また、投資信託は、大きく分けて「アクティブファンド」、「インデックスファンド」、「バランスファンド」の3種類があり、なかでも、比較的リスクが低いとされているのが、「インデックスファンド」と「バランスファンド」です。また、これらとは別に資産配分の自由度が高い「ファンドラップ」というサービスもあります。
インデックスファンド
インデックスファンドとは、市場の指標に合わせた動きをする投資信託。市場の指標よりも上回ることを目的とする、アクティブファンドより低リスクとされています。その代わり、大きな利益率を期待するものではなく、中長期的に投資して利益を出す資産運用です。
バランスファンド
バランスファンドとは、複数の資産に分散投資する方法。投資する金融商品は、国内外の株式、債券、不動産などです。バランス良く分散投資できるので、どれかひとつが大幅に下落しても他の資産が下落していなければ、ファンドの価格が大幅に下落することを防げます。そのため、リスクを抑えて手堅く資産運用できるのです。
ファンドラップ
投資家の投資目的、投資期間などに合わせて購入するファンドを複数決め、専門家が運用、管理を行うサービスが「ファンドラップ」。分散投資ができるので、リスクが抑えられるのが特徴です。すでに販売されている投資信託を購入するのではなく、購入する投資信託の中身を自分で決められる、もしくは専門家から中身の提案を受けます。ファンドラップは、資産配分の自由度が高いので、自分の目的に合わせて購入できるのが魅力です。
まとめ
物価の上昇により、老後に必要な資金は、年々増加傾向にあります。さらに、年金の受給金額も減少傾向にあるため、シニア世代も資産運用を行い、緊急時に対応できるように資産を殖やしていくことがおすすめです。ただし、リスクの高い投資を行う必要はありません。大きく増やすのではなく、今ある資産を減らさないというイメージを持って、コツコツと投資に臨むことが大切です。
また、資産運用する際は、自分自身が納得した上で購入することが重要。投資の専門家と相談して疑問点を解消した上で、投資先を選ぶようにしましょう。