鍼灸とは?なぜ効く?施術内容や効果を解説
「鍼灸」(しんきゅう/はりきゅう)の施術を受けたことがある高齢者の方は多いのではないでしょうか。鍼灸は中国から伝わる伝統的な東洋医学の一種で、自然治癒力を高めることを目的とした施術法です。鍼施術では、特殊な鍼を用いて体表の経穴(ツボ)に刺激を与え、エネルギーの流れ(気)を整えることで、身体のバランスを回復。灸施術では、モグサと呼ばれる良質なヨモギを練り上げて作られた物に火を点け、経穴に温熱刺激を与えることで血行を促進し、症状の緩和を図ります。鍼灸は、痛みやストレスの緩和、免疫力向上、リラクゼーション効果など、幅広い効果が期待できるとして、世界中で支持されているのです。ホームメイト・シニアでは、鍼灸の施術内容、効果などをご紹介。「鍼灸を受ける前に効果を知っておきたい」「具体的な施術の流れを知りたい」という高齢者の方におすすめです。
鍼灸の施術内容

鍼灸は、東洋医学(人体をひとつの小さな宇宙と見なし、バランスが崩れることで病が発生すると捉える医学)のひとつです。身体の変化を手で触れることで確認し、鍼や灸を用いて身体のバランスを調整することで、機能回復を促す施術法になります。
日本では、高齢化や生活習慣病の増加により、「未病治」(病気になる前の微細な身体の情報をもとに病気の予防、治療を行うこと)の考えが浸透してきました。
このため、世界各国の医療関係者やWHO(世界保健機関)などが鍼灸に目を向け、そのメカニズムの研究が進められており、科学的根拠に基づく施術法として注目されています。
鍼灸の流れ
鍼灸を受ける際、初回の施術時には問診が行われます。これは、患者の症状や体質、生活習慣などを把握するために重要です。問診の結果をもとに、鍼灸師は最適な施術法を選択し、施術計画を立て、施術が開始。
また、身体の状態を把握するために、脈診や触診(しょくしん:触れて身体の状態を把握すること)が行われることもあります。これにより、鍼灸師は患者の症状や原因を詳しく調べ、鍼、灸を用いた施術を行うことができるのです。
なお、鍼は経絡のツボに刺すことで、気や血の流れを整える働きがあり、灸は、ツボに熱を加えることで、筋肉を緩めたり、新陳代謝を促進させたりすることができます。
施術後は、鍼灸師からセルフケアのアドバイスをされることも。自宅でのケアを行うことで、効果を持続させることができます。
鍼灸の注意点
鍼灸を受ける際には、いくつかの注意点があります。まず、感染症予防のために、使い捨ての鍼を使用しているかどうかを確認しましょう。また、施術前にアレルギーや持病などの情報を鍼灸師に伝えることが大切です。
施術後は、アルコールや過度な運動は避けるようにしましょう。飲酒や運動によって血行が良くなると、かえって症状が悪化することがあるからです。また、施術後は十分な水分補給を心掛けることで、体内の老廃物の排出がスムーズになり、効果が高まります。
もし、鍼灸の効果を実感できない場合でも、何度か施術を続けることが大切。鍼灸は効果が徐々に現れることが多いため、焦らず継続して施術を受けましょう。
ただし、何度受けても効果が感じられない場合や、症状が悪化する場合は、施術法の見直しや他の施術法を検討することが必要です。
鍼施術とは
鍼施術では、通常、直径0.12~0.18mm程度の非常に細いステンレス製の鍼が使用されます。「管針法」(かんしんほう:鍼を刺す方法)という方法では、金属製または合成樹脂製の筒が利用されますが、筒を使用しない方法も存在。どちらの手法でも、ほとんど痛みは感じません。
また、子ども向けの「小児鍼」では、鍼を皮膚に触れさせたり、圧力を掛けたりすることで施術が行われます。
灸施術とは
灸施術は、ヨモギなどの薬草を練り合わせて作られたもぐさを燃やし、経穴や特定の部位に温熱刺激を与えることで、血行を促進し、症状の改善を目指す施術法です。
灸の手法には、もぐさを皮膚に直接置いて火を点ける「直接灸」と、皮膚との隙間を空けて行う「間接灸」が存在します。間接灸では、味噌や薄く切られたしょうが、にんにくなど、熱を緩和する材料を皮膚との間に入れることで、熱さを緩和し、心地良い感覚が得られます。
鍼灸の適応症

鍼灸は、肩こり、腰痛、神経痛、関節痛などの症状に対応しますが、その他にも様々な症状や疾患に効果が期待できる施術法です。
鍼灸は血流の改善や免疫細胞の増加、活性化にも効果的。さらに、内臓機能を調整する自律神経を整え、身体のホメオスタシス(生体恒常性のこと。外部から受ける環境や内部の変化にかかわらず、体温や血糖、免疫といった身体の状態を一定に保つ能力)を高める作用があります。
そのため、最初は腰痛や肩こりで来院されても、鍼灸を受けることで体調が良くなり、風邪を引きにくくなったり、身体が軽くなったり、よく眠れるようになったりするなど、体調の変化を実感される方も。症状が改善されたあとも、病気の予防や健康維持、向上を目的に、定期的に鍼灸院を訪れる方もたくさんいます。
鍼灸は原則として、神経痛やリウマチ、五十肩、腰椎症(ようついしょう)などの疾患が保険対象。また、次のような疾患は鍼灸の適応症です。
動脈硬化症
動脈硬化症は、食生活や喫煙といった生活習慣、そして加齢によって血管(動脈)が硬くなり、狭くなることで引き起こされる病気のこと。
特に動脈硬化が引き起こす下半身の代表的な病気「下肢閉塞性動脈硬化症」は、生活習慣病の発症率が上昇することに伴い、50~70歳の男性に多く見られます。閉塞性動脈硬化症に対しては、生活習慣の見直しや病院での治療と併せて鍼灸施術を受けることで、長期的な効果が期待できるのです。
自律神経失調症
鍼灸は自律神経失調症にも効果的。自律神経失調症は、自律神経系がバランスを失い、心身の機能に影響を及ぼす状態とされています。症状は多岐に亘り、心拍数の変化、冷え性、発汗異常、めまい、不眠、消化器症状などです。
鍼灸では、自律神経のバランスを整えることを目的としており、鍼や灸を特定のツボに適用することで、交感神経と副交感神経の働きを調節し、自律神経の機能を正常化。これにより、自律神経失調症に伴う症状が緩和されることが期待できます。
鍼は効果があるか

鍼灸は肩こりや腰痛などに限らず、様々な身体の疾患に効果があることが知られています。
また、各国の研究により、鍼灸で身体の一部を刺激すると、中枢神経内でモルヒネ(医療用の鎮痛薬として、痛みを和らげる効果がある)に似た働きを持つホルモンが放出されることが明らかになりました。
このホルモンは、痛みを脳に伝える神経経路を遮断。さらに、鍼灸刺激は神経を活性化させたり、血流を向上させたりすることで、痛みや疲労を引き起こす物質を排泄する効果もあります。
なお、人間の免疫力を活性化する効果についても研究が進められており、いまだに解明されていない鍼灸の効果にも期待が寄せられているのです。
ただし、鍼灸の効果は個人差があります。症状や体質によっては効果が現れにくい場合や、逆に大きな効果を実感する方も。また、施術者の技術や経験によって、効果に影響するため、信頼できる鍼灸師を見つけることが重要と言えます。
まとめ
鍼灸は、筋肉や関節痛、自律神経失調症といった様々な症状に対して、効果が期待できる施術法です。科学的根拠も徐々に明らかになっており、痛みや炎症の抑制、自律神経、内分泌系の調整に役立つことが分かっています。鍼灸を上手く活用し、健康な体を維持しましょう。