施設介護サービスとは?種類の一覧や利用までの流れを解説
施設介護サービスとは、介護保険施設の利用者が受けられる、介助やリハビリテーションなどのサービスを言います。該当する介護保険施設は、「特別養護老人ホーム」、「介護老人保健施設」、「介護療養型医療施設」、「介護医療院」の4種類です。ただし、介護療養型医療施設は、2024年(令和6年)3月をもって、介護医療院に統合されます。介護サービスの中身や施設介護サービスを受けることができる施設の種類、その利用方法について解説します。
施設介護サービスとは
施設介護サービスとは、介護施設で生活を営む人達が得られる様々なサポートのこと。体を動かしにくい人でも快適に生活できるよう、スタッフが行う清拭や整容、食事介助など、在宅復帰、体力づくりのためのリハビリテーションなどです。
施設介護サービスで受けられるサービス

施設介護サービスで行われるサポートは、以下の通りです。
- 摂食介助や整容、清拭、トイレ、更衣などの手伝い
- 医学的な措置
- リハビリテーション
施設での生活と居宅生活の大きな違いは、専門的な知識や技術を持った人達が複数人で支援をしてくれる点です。何かあればすぐに対処してくれるため、在宅で過ごすよりも安心で、家族の負担も軽減できます。
施設によって費用とサービス内容は異なる
サービス内容や料金は施設によって様々です。例えば、リハビリテーションは、導入している施設とそうでない施設があります。リハビリテーション自体の内容にも違いがあり、身体能力を維持させたり、介助を少しでも減らしたりすることを目標にしたメニューもあれば、在宅復帰を目標にしたメニューもあるのです。
在宅での暮らしが難しくなり、将来の在宅復帰を目指して一時的に施設に入居する場合は、リハビリテーションに力を入れている施設を選択する方が良いと言えます。また、施設を利用する際の料金にも差があり、入居の条件も多様です。
介護サービスの自己負担額・費用
介護サービスを利用するにあたっては、介護保険の制度によって、支払う金額が変わります。
介護保険サービス利用にかかる負担額

介護保険のもとでは、個人・世帯の収入の大きさによって、自己負担額が変わります。
基本的には、介護保険の範囲内でサポートを受けた場合、費用全額のうちの1割が支払い。例えば、施設介護サービスなどを利用して月に100,000円かかったとしても、10,000円の支払いで済みます。しかし、一定の金額を超える収入がある人は、自己負担額が2~3割に増える仕組みです。
自己負担割合の条件 | |
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自己負担割合 | 単身世帯の自己負担割合ごとの条件 |
1割 | 下記のいずれかに当てはまる場合 ・所得の合計が160万円未満 ・所得が160万円以上の場合は、年金+所得<280万円 |
2割 | 下記のすべてに当てはまる場合 ・所得の合計が160万円以上220万円未満 ・年金+所得≧280万円 |
3割 | 下記のすべてに当てはまる場合 ・所得の合計が220万円以上 ・年金+所得≧340万円 |
介護保険の支給限度額
介護保険のもとでは、利用した介護サービスの費用の補助を受けられますが、ひと月のうちに保険適用できる金額の限度額が定められています。支給限度額は「単位」で表現され、1単位あたり約10円と、地区によって1単位の値段が異なる仕組み。
要介護度が高くなればなるほど多くの介助が必要となるため、要介護度が上がるにつれて支給限度額も高くなります。限度額を超えた場合は、超過分の金額をすべて個人で支払うことになるのです。
要介護度 | 利用限度額 | 単位 (1単位=10円 の場合) |
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要支援1 | 150,320円 | 15,032単位 |
要支援2 | 105,310円 | 10,531単位 |
要介護1 | 167,650円 | 16,765単位 |
要介護2 | 197,050円 | 19,705単位 |
要介護3 | 270,480円 | 27,048単位 |
要介護4 | 309,380円 | 30,938単位 |
要介護5 | 362,170円 | 36,217単位 |
施設介護サービスを受けられる施設の種類
施設介護サービスを受けられる施設は現状、「介護保険施設」として括られる、「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」、「介護老人保健施設」、2024年(令和6年)3月で廃止が決定している「介護療養型医療施設」、そして「介護医療院」の4種です。
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)

特別養護老人ホームは、常時介護を必要とする人のための施設で、「特養」とも呼ばれます。
特別養護老人ホームでは、食事の提供、入浴や排泄の補助などが行われるだけでなく、機能の維持・回復を目指したリハビリテーションや、療養上必要な日常的ケアも提供。
特別養護老人ホームに入所を検討する際の基本的な条件は、原則として要介護3以上の認定を受けていることです。基本的には65歳以上の高齢者を対象としていますが、特定16疾病を持つ要介護3以上の人や、特例により入居が認められた人であれば、40~64歳の間でも入所が許可されるケースがあります。
居室は基本的に、風呂やトイレがない4人床を基本とした大部屋、もしくは個室です。個室には、「ユニット型個室」と「準ユニット型個室」の2種類があります。ユニット型個室とは、1ユニットに10名程度の利用者を配置し、それぞれのユニットに専任の介護スタッフを置くもので、プライバシーを確保したケアが可能です。
準ユニット型個室とは、ユニット型個室と従来型の多床室の中間に位置する居室のこと。準ユニット型個室は、ユニット型個室のように個室を配置していますが、ユニット内の利用者同士の交流を促すために、天井と壁に隙間を設けていたり、共同の洗面台やトイレを設置していたりします。
介護老人保健施設(老健)
介護老人保健施設(老健)とは、要介護1以上の認定を受けている高齢者が、在宅復帰を目標に、医療や看護、食事・入浴・排泄のケアなどの介護、機能訓練などのサービスを総合的に受けることができる施設。原則として65歳以上が対象ですが、特定疾病のある要介護1以上の人であれば、40~64歳でも入所可能です。
ただし、入所すると医療保険サービスが使えなくなるため、投薬が必要な場合は施設と相談することが必要。入居期間は原則3ヵ月で、3ヵ月ごとに審査があり、回復したと判断されたら退去になります。
介護医療院
介護医療院とは、要介護1~5の認定を受けている高齢者が、長期的な医療と介護を必要とする場合に、医師や看護師などの医療スタッフが24時間体制で常駐し、医療と介護を一体的に提供する施設です。40~64歳の特定疾病による要介護認定を受けている人も入所が可能。
介護医療院には、「Ⅰ型介護医療院」、「Ⅱ型介護医療院」の2つがあります。Ⅰ型介護医療院は、比較的に介護需要の高い重度介護者が対象。Ⅱ型介護医療院では、介護老人保健施設と同様に自宅復帰を目標としたサポートを提供します。医療保険が適用となる施設であることから、設備についても利用者の居室は「療養室」とされ、診察室や処置室も設置。面積基準は老人保健施設相当以上(8.0m²以上)とされており、プライバシーに配慮した環境が提供されます。
介護療養型医療施設
介護療養型医療施設とは、旧介護保険法第8条第26項に基づき運営されてきた施設です。介護療養型医療施設は、「療養病床等を有する病院または診療所であって、当該療養病床等に入院する要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護その他の世話、及び機能訓練その他必要な医療を行うことを目的とする施設」と定義。病状が安定期にある要介護者に対し、医学的管理のもとに介護やその他の世話、必要な医療の提供が行われてきました。
しかし、2006年(平成18年)に行われた医療保険制度改革と、診療報酬・介護報酬の同時改定において、廃止が決定。同時報酬改定時の実態調査の結果、医療の必要性の高い患者と低い患者が同じくらい混在し、医療療養病床と介護療養病床で入院患者の状況に大きな差が見られなかったことが原因です。医療保険と介護保険の区別ができていないことが課題となったため、2024年(令和6年)3月をもって廃止が決定し、介護療養院という形で引き継がれます。
施設介護サービスを利用する流れ
- 1要介護認定の申請
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要介護認定の申込みは、住んでいる市区町村の役所の窓口で行えます。
申込みをしたあとは、自宅での聞き取り調査が実施され、最大30日をかけて判定。認定調査後は通知が届きます。
認定を受けたあとは、要支援1~2の人は地域包括ケアセンター、要介護1以上の人は居宅介護支援事業者(ケアプラン[介護の計画書のこと]を制作する事業者)に相談をし、ケアプランを作ってもらいます。
- 2入居したい施設を選ぶ
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次に、入居したい施設を選択します。どのようなサービスがある施設が良いのか、部屋のタイプ、価格など、入居予定者や家族の希望に合った施設を探しましょう。施設選びで悩む場合は、担当のケアマネジャーに相談して考えると安心です。
- 3施設見学・体験入居をする
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入居を決定する前に、可能なら実際に施設を見学・体験してみましょう。パンフレットやホームページだけでは分からない実際の雰囲気を体感することができます。興味のある施設に連絡を取り、見学や体験入居を予約。人気の施設は予約が取りにくいこともあるため、できるたけ早期に連絡するのがおすすめです。
- 4申込み
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見学・体験をして、入りたい施設が見付かったら申込みをします。必要書類の提出や面談などがあるため、施設側に依頼された書類を準備します。申込みをし、入居の審査が通れば入居開始です。
まとめ
施設介護サービスとは、介護保険施設の利用者が受けられる、介助やリハビリテーションなどのサービスを言います。自宅での生活が難しいと感じたとき、施設介護サービスの利用を検討することも多いです。施設で生活しながら、食事や整容、入浴、排泄、医療的なサポートを受けることが可能。施設選びは、利用者の希望や予算、入居条件などをもとに、慎重に行いましょう。