定期巡回・随時対応型訪問介護看護とは?費用やメリット・デメリット、人員基準を解説
「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」とは、利用者が自宅で自立した生活を送れるよう、昼夜を問わず必要な支援を提供する介護保険サービスのことです。「定期巡回・随時対応型訪問介護看護を利用できる回数は決まっているのだろうか」、「料金はどのくらいかかるのだろうか」と疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。定期巡回・随時対応型訪問介護看護のサービス内容、利用するメリット、デメリットを解説します。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護とは
日本では少子高齢化に伴い、在宅介護におけるニーズが増加していることから、2012年(平成24年)に定期巡回・随時対応型訪問介護看護が開始されました。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護の事業所は「一体型」、「連携型」の2つに分類されます。
一体型
一体型は、「ひとつの介護事業所で訪問介護と訪問看護のサービスを一体的に提供」と定義されており、介護と看護が同じ場で行われるため、情報がスムーズに共有可能。例えば、介護士が行う医療ケアについて、看護師から情報を受けることで、医療的な視点をもって利用者へ対応できることが挙げられます。
連携型
連携型は、「介護事業所が他の介護事業所と連携をしてサービスを提供」と定義されており、定期巡回・随時対応型訪問介護を行っている介護事業所が、他の介護事業所と協力してサービスを行うものです。
連携型は、いくつかの介護事業所が連携しているため、介護事業所同士が地域全体の情報や医療状況を共有できるメリットがあります。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護のサービス内容

定期巡回・随時対応型訪問介護看護を利用できるのは、要介護度1~5の方で、要支援1・2の方は利用できません。
なお、定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、①「定期巡回サービス」、②「随時対応サービス」、③「随時訪問サービス」、④「訪問看護サービス」を適切に組み合わせて実践されます。
- 1定期巡回サービス
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定期巡回サービスは、定期巡回・随時対応型訪問介護看護を提供する介護事業所が作成した「訪問介護計画書」をもとに行われるサービス。
この訪問介護計画書は、ケアマネジャーが作成した「ケアプラン」(介護計画書)をもとに作成され、利用者は他の訪問介護サービスと同じように、入浴介助、食事介助を中心とした支援を1日に何度も受けることが可能です。サービスの時間は1回あたり10数分の短時間であり、安否確認、服薬介助、おむつ交換などが定期的に受けられます。
- 2随時対応サービス
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随時対応サービスは、利用者からの連絡をオペレーターが受け、状況に応じて相談援助、訪問、看護師などを手配するサービスです。一般的に「ケアコール」と呼ばれる機器を利用者宅に設置し、利用者のケガや急変に備えてオペレーターが24時間体制にて受付をします。ただし、オペレーターに連絡したからといって、必ずしもスタッフが訪問する訳ではありません。あくまで、利用者の状況から「訪問する必要がある」と判断した場合のみです。
- 3随時訪問サービス
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随時訪問サービスは、オペレーターからの要請により、随時スタッフが利用者の自宅を訪問して、入浴、排せつ、食事などをサポート。日中だけでなく夜間も対応しているため、利用者は日夜問わずに安心して過ごすことができます。
- 4訪問看護サービス
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訪問看護サービスは、主治医の指示にしたがって看護師などが利用者の自宅を訪問し、療養上の世話、診療の補助を行うサービスです。具体的なサービス内容は、健康状態の観察、療養生活の相談、点滴、注射、リハビリテーション、緊急時の対応など。また、訪問看護サービスでは、自宅で最期を迎えたい終末期の利用者にも寄り添い、ニーズに合わせた看護を実施します。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護の費用
定期巡回・随時対応型訪問介護看護の費用は、月あたりの定額で、介護度によって利用料を設定。また、負担割合、所得などによっても費用は変わるため、利用を希望する介護事業所にあらかじめ聞いておくと安心です。定期巡回・随時対応型訪問介護看護における一体型と連携型、それぞれの費用例は下記の通りになります。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護における一体型の費用例 | ||
---|---|---|
介護度 | 訪問看護サービスなし | 訪問看護サービスあり |
要介護1 | 6,335円 | 9,243円 |
要介護2 | 1万1,307円 | 1万4,440円 |
要介護3 | 1万8,774円 | 2万2,041円 |
要介護4 | 2万3,749円 | 2万7,171円 |
要介護5 | 2万8,722円 | 3万2,917円 |
定期巡回・随時対応型訪問介護看護における連携型の費用例 | ||
---|---|---|
介護度 | 訪問看護サービスなし | 訪問看護サービスと連携あり |
要介護1 | 6,335円 | 1万1,905円 |
要介護2 | 1万1,307円 | 1万4,242円 |
要介護3 | 1万8,774円 | 2万1,709円 |
要介護4 | 2万3,749円 | 2万684円 |
要介護5 | 2万8,722円 | 3万2,507円 |
定期巡回・随時対応型訪問介護看護のメリット・デメリット
メリット
定期巡回・随時対応型訪問介護看護を利用するメリットは、以下の通りです。
- 24時間365日必要に応じてサービスを受けられる
- 自宅で介護を受けられる
- 1ヵ月あたり定額でサービスを受けられる
- 1日に何度か利用できる
自宅で過ごす利用者と家族にとって、いつでも対応してくれる体制は非常に安心と言えます。費用面について、介護サービスは利用頻度が上がると、費用負担が多くなりますが、定期巡回・随時対応型訪問介護看護では、何回利用しても定額のため、費用を気にせずに利用できます。
デメリット
定期巡回・随時対応型訪問介護看護を利用するデメリットは、以下の通りです。
- 他の介護保険サービスを併用できない
- 訪問スタッフが毎回代わる可能性がある
- 利用回数が少ないと費用面で損することがある
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、他の介護保険サービスである「訪問介護」、「訪問看護」、「夜間対応型訪問介護」と併用できないため、選択肢が限られてしまう場合があります。
また、定期巡回・随時対応型訪問介護看護では、エリアを巡回して対応するため、必ずしもいつも同じ訪問スタッフが対応するとは限らず、「訪問スタッフが代わると話しにくい」、「落ち着かない」といった方には向いていません。さらに、利用回数が少ない方にとっては、費用が高く感じる場合もあるため、注意が必要となります。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護を利用する流れ
定期巡回・随時対応型訪問介護看護を利用する際の手順は、以下の通りです。
要介護認定を申請する
市区町村の役所または「地域包括支援センター」に設置されている、介護認定の申請窓口にて「介護保険要介護認定・要支援認定申請書」、「介護保険被保険者証」または「医療保険被保険者証」、「主治医意見書」を提出します。主治医意見書をもらう際、主治医に定期巡回・随時対応型訪問介護看護を利用する意思を伝えておくと、よりスムーズです。
調査・認定
介護認定の申請書類を提出すると、自宅に調査員が訪問し、利用予定者の心身状態に関する質問、家族との面談が行われます。その後、主治医意見書をもとに一次判定、二次判定を経て介護度が決定。基本的に要介護1以上の認定であれば、定期巡回・随時対応型訪問介護看護が利用できます。
ケアプランを作成する
介護認定が認められると、担当ケアマネジャーがケアプランを作成。介護保険サービスは基本的にケアプランに沿って実行されるため、ケアマネジャーと積極的にコミュニケーションを取って、利用者の意思と希望する介護保険サービスを伝えておきましょう。
介護事業所を決定する
ケアプランの作成が終われば、介護事業所選びに入ります。ケアマネジャーが介護事業所と利用者の間に入って手続きを進めるため、分からないことはそのつど相談しながら決めると良いでしょう。介護事業所が決まり、契約が締結されれば、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の利用が可能となります。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護の人員基準
定期巡回・随時対応型訪問介護看護を提供する、介護事業所に配置されるスタッフは、管理者、訪問介護員、看護職員、オペレーターなどです。一般的な人員基準については、以下の通りになります。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護の人員基準 | ||
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管理者 | 常勤と専従1名 | |
訪問介護員 |
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看護職員 |
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オペレーター |
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計画作成責任者 | 定期巡回・随時対応型訪問介護看護従事者1名以上 |
介護事業所の選び方ポイント
どの介護事業所を利用するかは、情報を集めた上で、自分の希望に合うサービスを供給してくれるかがポイントです。介護事業所の選び方のポイントを3つ紹介します。
希望する日時に開いているか
利用者がどのようなサービスをいつ受けたいか、具体的な週間スケジュールを書き出して把握しておきましょう。週間スケジュールを決めたあとに、定期巡回・随時対応型訪問介護看護を提供する介護事業所に、希望する日時でサービスが可能かを確認します。
スタッフとの相性
定期巡回・随時対応型訪問介護看護では、随時訪問サービスなどで頻回にかかわるため、スタッフとの相性は大切。利用者が求める専門スキルがあるか、話しやすさなどをチェックし、安心してサービスを利用できるかを検討しましょう。利用者にとって信頼でき、安心して要望を話せるスタッフと出会えれば、快適な介護生活にもつながります。
介護事業所までの近さ
介護事業所までの距離が近いと、緊急時にすぐに駆け付けてくれるため安心。重病を抱えている場合、ケガのリスクが高い方は、即対応できないと命にかかわる状況にもなりかねません。そのため、自宅から介護事業所までの距離も、選択肢に入れておきましょう。
まとめ
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、24時間対応してくれる介護保険サービス。一人暮らしの利用者は生活の安心につながる、介護を担っている家族にとっては負担の軽減につながるなど、メリットが大きいのです。また、定期巡回・随時対応型訪問介護看護は定額で利用できるため、つど費用を心配しなくて良いのも安心材料。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、2025年(令和7年)に見込まれる「超高齢化社会」へ向けて、ますます需要が高まるサービスです。介護生活を快適に過ごすためにも、ニーズに応じて定期巡回・随時対応型訪問介護看護を利用してみましょう。