上乗せ介護費とは?手厚い介護の場合にかかる?分かりやすく解説
介護付き有料老人ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホーム(介護型ケアハウス)では、家賃や介護サービス費以外にも様々な費用項目があります。なかでも、法令基準よりも多く配置したスタッフの分を人件費の名目で請求できる「上乗せ介護費」は、利用者にとって大きな負担になります。その分、手厚い介護を期待できますが、介護保険適用外のため全額自己負担になるのです。上乗せ介護費の内容と介護保険適用のサービス加算の違いをご紹介します。
上乗せ介護費とは

上乗せ介護費は、特定施設(介護保険の基準を満たす介護施設)に入居している要介護者に対して、日常生活上の介助、機能訓練などの世話をする「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた、有料老人ホームやケアハウスなどで発生します。
所定の基準以上のスタッフが配置され、手厚い介護サービスを行う施設で、上乗せ介護費を請求されるのです。
正式名称は「上乗せ介護サービス利用料」ですが、別名で「上乗せ介護料」、「オプション費用」と呼ぶ施設もあります。
有料老人ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホーム(介護型ケアハウス)に入居するにあたっては、原則として、要支援もしくは要介護認定が必要です。要支援1~2に認定されている方は介護予防特定施設入居者生活介護、一方で要介護1~5に認定されていれば、特定施設入居者生活介護の支援を受けることが可能になります。
特定施設入居者生活介護の施設を利用する際にかかる費用は、要支援度もしくは要介護度によって変動。厚生労働省の資料によると、要支援1の方は利用者負担が1日につき182円ですが、要介護5では1日ごとに807円かかるため、事前に把握しておきましょう。
利用者負担(1割負担) | |
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要支援・要介護度 | 料金(1日) |
要支援1 | 182円 |
要支援2 | 311円 |
要介護1 | 538円 |
要介護2 | 604円 |
要介護3 | 674円 |
要介護4 | 738円 |
要介護5 | 807円 |
上乗せ介護費は、介護付き有料老人ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホーム(ケアハウス)の特定施設入居者生活介護における施設で独自に適用されます。原則前払い制で、入居年数に応じた介護発生率と介護必要期間、職員の人員配置基準を考慮して合理的に算出する仕組みです。
上乗せ介護費が発生するのは人員配置次第
要支援または要介護の認定を受けている人数によって、介護職員と看護職員の基準数が定められており、基準を超過した場合に手厚い介護が施設側から提供されます。特定入居者生活介護の観点から、上乗せ介護費が発生する人員配置について見てみましょう。
人員配置基準
人員配置基準とは、入居者様とスタッフの人数比率を指し、スタッフとは介護職員と看護師のことです。例えば、介護付き有料老人ホームでは、入居者様とスタッフの比率は3対1以上と法令で定められています。そのため、要介護の入居者様が60名いたら、フルタイムのスタッフが最低20名は必要です。
3対1と言っても、入居者様3名に常に1名のスタッフが付きっ切りという訳ではありません。介護付き有料老人ホームでは、朝早くや食事などで忙しい時間帯はスタッフを増やしたり、一方で夜間は最少人数にしたりして運営しながら、人員のバランスを取っています。
介護施設のなかには、スタッフの比率を2対1や1.5対1など、法令基準を上回る人員配置を取ることにより、手厚い介護サービスを目指す施設もあるのです。つまり、上乗せ介護費が発生するのは施設内の人員配置次第ということ。高級な老人ホームほど人員配置を手厚くして、サービス向上に努めています。人員体制が手厚いと、スタッフの気持ちにもゆとりが生まれ、入居者様の個別対応に時間を割けるのです。
人員が手厚いと、どんなサービスを提供してくれるのか、毎月の支払い総額はいくらになるのかなど、事前に確認しておきましょう。
サービス加算との違い
上乗せ介護費は、特定施設入居者生活介護における各種加算と混同しやすいため、注意が必要です。上乗せ介護費の取り扱いと間違えやすいサービスの内容や、事業者の体制によって上乗せされるサービス加算を、以下にまとめました。
サービス加算の種類 | 特徴 |
---|---|
生活機能向上 連携加算 |
医療提供施設と連携して、機能訓練指導員が個別機能訓練計画に基づき、介護・医療サービスを提供する |
個別機能訓練加算 | 個別機能訓練計画に基づいて、機能訓練指導員、介護職員、看護職員、生活相談員その他の職種職員を1名以上配置してサービスを提供する |
ADL維持等加算 | ADL(日常生活を送るために必要な基本動作)研修を修了した看護職員が、ADL評価に基づくサービスを提供する |
夜間看護体制加算 | 夜間における施設内との連絡連携による体制が整っている |
若年性認知症 入居者受入加算 |
若年性認知症入居者様に対して、本人の特性やニーズに応じたサービスが提供される |
医療機関連携加算 | 協力医療機関、または入居者様の主治医と連携して不測の事態に対応できる環境が整っている |
サービス提供体制 強化加算 |
施設に在籍する職員のうち、介護福祉士が充実しており、勤続年数による長短で職員体制の強化が図られる |
2021年(令和3年) 9月30日までの 上乗せ分について |
各介護給付費に対し、0.1%の報酬が上乗せされる |
他にも、医療と連携する口腔衛生管理体制加算、口腔・栄養スクリーニング加算、看取り介護加算も挙げられます。いずれも、特定施設入居者生活介護の施設で行うには、人員を増加させなければなりません、しかし、これらはすべて介護給付費として賄われるため、上乗せ介護費に直接含まれることはないものです。
また、サービス加算のうち、2021年(令和3年)9月30日までの上乗せ分については、2021年(令和3年)10月付で廃止しており、その後は介護職員等ベースアップ等支援加算に代替されました。
名称に加算という言葉が含まれる点が、誤解されやすいので注意が必要です。これらのサービス加算は、上乗せ介護費という枠組みではなく、介護給付費の割合負担として自己負担が発生するケースもあります。
上乗せ介護費の注意点

上乗せ介護費は、特定施設入居者生活介護の施設において介護給付費の割合負担と介護保険サービス利用料以外で別途、毎月の支払いが発生します。
介護保険サービス利用料とは、施設内で個別に行われる買い物代行や外出介助、標準回数を超えた介護支援のことです。
上乗せ介護費とは枠組みが別のため、混同しないよう注意が必要。施設の費用内訳に上乗せ介護費があった場合は、次の点に留意します。
上乗せ介護費は介護保険の適用外
上乗せ介護費は、介護保険が適用されないため、全額自己負担で支払わなければなりません。
例えば、50人の入居者様がいる特定施設入居者生活介護では、要介護者1人に対して2~3人の介護職員、または看護職員が連携しながら付く手厚い介護を提供します。最低の人員基準が17人なのに対して、実数が25人のため、8人分の上乗せ介護費が発生。人件費を1人当たり200,000円と仮定すると8人で160万円となり、160万円を入居者様の人数50人で計算すると25,000円となるのです。つまり、1人当たり25,000円の上乗せ介護費が費用としてかかります。
費用は施設の職員配置数が増えれば増えるほど増額。手厚いほどに利用者が支払う料金は高くなりますが、その分充実したサービスを受けやすいなどメリットも大きいです。また、上乗せ介護費は施設側が独自で定めるため、地域の物価や給与などによって料金に差が生じる場合もあります。
入居前に上乗せ介護費の確認をしておこう
上乗せ介護費と一口に言っても、施設の規模や人員配置の状況などによって金額が異なります。さらに、特定施設入居者生活介護の指定を受けている施設によっては料金設定が異なるため、複数の施設を比べてみましょう。
介護保険の適用範囲や自己負担額、また不要なオプションが付いていないかなどは、入居前にチェックするのがおすすめ。有料老人ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホーム(ケアハウス)から選択するときに費用を確認する際は、上乗せ介護費が適用されているかや、料金の他に人員配置が基準通りになされているかについて、確認してみましょう。